今シーズンを占う国内ロードレース開幕

目次

3月13日に兵庫県でJプロツアー開幕2連戦、そして14日には広島県にて西日本チャレンジサイクルロードレースが行われた。国内リーグがJプロツアーとJCLに二分化した今、まずはJプロツアーのレース、そして早速交流戦の位置付けともなった西日本チャレンジロードレースから今シーズンの行方を考察する。

 

開幕一発目のチーム戦

JPT初戦

3月13日(土)、兵庫県にある播磨中央公園にて国内ロードレースシリーズの一つ、全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の主催するJプロツアーが開幕した。
上り区間もある1周3kmのコースで、午前中には第一戦として20周する60kmのレースが、午後には第二戦として15周する45kmのレースが行われた。

JPT初戦

前年王者のマトリックスパワータグのメンバーが先頭でスタートラインに並ぶ

開幕戦ということもあり、第一戦目は何がなんでもというような積極的な動きをどのチームも見せていた。それによる影響か、1周目から下り区間で大きな落車も発生したが、ニュートラルを使ってほとんどの選手が復帰。集団からは抜け出そうとしきりにアタックがかかり、10人ほどの逃げグループができた。

JPT初戦

数人の逃げグループが周回ごとに人数を変えながらできあがる

JPT初戦

マトリックスパワータグがコントロール

メイン集団、序盤は前年王者のマトリックスパワータグが先頭でコントロール。中盤にかけては、マトリックスの後ろに愛三工業レーシングチーム、チームブリヂストンサイクリングがチームで固まって位置取りやその後の展開に備える様子が見られた。

JPT初戦

集団ではチームごとにまとまり始める

JPT初戦

チームブリヂストンサイクリングが先頭を引き始めた終盤

終盤戦に入ると、今度はチームブリヂストンサイクリングがチームで固まって先頭を引き始めた。これは、今までロードレースでエースを任されることがなかった橋本英也にスプリントをさせるための動きだった。
「英也には勝てる実力もあるんだから、(トラックの)オリンピック代表なんだし、本人にもエースというプレッシャーを与えていかないと」と、ブリヂストンの宮崎景涼監督は話す。

JPT初戦

各チームが人数を出して逃げを追う

ラスト周回に近づくと、スプリントをしたい各チームが集団牽引のためのメンバーを出し、逃げの吸収に協力した。
一気にスピードが上がった最終周回の上りで逃げグループを捕らえると、先頭は各チームが入り乱れる展開に。そこでチームのエースを任された橋本は痛恨のメカトラ。最後のスプリントに参加することは叶わなかった。

JPT初戦

今年国内レースに戻ってきた入部

昨年から引き続いて全日本チャンピオンジャージを身につける入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)も序盤こそ後方待機していたものの、勝負所ではしっかりと前方に位置取りをしており、逃げ集団吸収のタイミングで前に出た。それを見た元チームメイトの木村圭祐(シマノレーシング)がカウンターで前に出ようとしたが、さらにそのカウンターでフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が先頭に躍り出る。

JPT初戦

最終周回、先頭にはマトリックスが人数を残す

最終盤で人数を揃えていたマトリックスは、ホセ・ビセンテがマンセボの飛び出しに対して車間を切る形でアシスト。マンセボは、後続から数mほど離れた状態でゴールラインを捉え、そのまま両手を高く掲げて初戦の勝利を手にした。

JPT初戦

両手を高く挙げてフィニッシュしたマンセボ

 

初めて任された“エース”

およそ5時間後に行われた第二戦では、第一戦で優勝したマンセボがリーダージャージを着用。レースは、第一戦よりも落ち着いた様子で展開していった。

JPT第二戦

初めてリーダージャージを纏ったマンセボ

JPT第二戦

スタートしてすぐに抜け出した4人

JPT第二戦

逃げにブリッジをかける選手たち

スタートしてすぐの上りで早速4人の逃げができると、さらに逃げグループにジョインしようと数人が飛び出す。
2周目には、マトリックスパワータグから2人、愛三工業レーシングチームから2人、チームブリヂストンサイクリングから2人、ナショナルチームから3人、シマノレーシングから1人、弱虫ペダルサイクリングチームから1人の合計11人程度の逃げグループが決まる。有力チームがメンバーを送り切ったことで集団はペースダウンし、先頭での争いに切り替わった。

JPT第二戦

マトリックスがコントロールする集団はペースダウン

終盤にかけ、逃げグループからもアタックがかかり始めると、数人がこぼれ落ち6人に絞られた。残り5周ほどの上りでチームブリヂストンサイクリングの徳田優がアタックし、他のメンバーがそれを追う。徳田に追いついたタイミングで、今度は同チームの橋本がカウンターで一人飛び出した。ビセンテは橋本につくべく、2人で逃げグループから抜け出す形となったが、橋本が振り切り、独走態勢にもちこんだ。

JPT第二戦

橋本が独走し、ビセンテが追う終盤

JPT第二戦

独走態勢に持ち込む橋本

JPT第二戦

追走グループから飛び出すビセンテ

一度、追走グループに合流したビセンテは、再び橋本を追うために単独で抜け出した。だが橋本は、ビセンテとのタイム差を保ったままラスト1周に入る。橋本には、もしビセンテに追いつかれてもスプリントで勝つ自信もあった。
「追いつかれるまで自分のペースで進んでいこうと思って。ホセ(ビセンテ)は上り早いんですけど、下りと平坦は僕の方がアドバンテージがあるので。スプリントでも全然いけましたね。ラスト1周でちょっと上げて踏んでいって、ホセが追いつかなかったので、これもう大丈夫だなって」
ラスト2周とラスト1周でタイム差が変わらなかったため、橋本は独走逃げ切り勝利を確信。十分な余裕を残したまま、Jプロツアー初勝利を飾った。

JPT第二戦

「ひと握りに魂を込めて」優勝した橋本

「やっぱりいいですね、1位は。JBCFのこのレースで勝てたことは本当にうれしく思います。やっぱりこの環境でレースを開催してくださった皆様には本当に感謝したいです。あとはチームメンバーにもスタッフにも。初戦はゴールスプリント(で狙う予定)だったんですけど、それがトラブってできなかったから逆に落車もなくて良かったです(第一戦ではゴール前に落車が発生していた)」と、橋本は笑顔を浮かべた。今回は、ロードレースで初めてのチームのエースを任されたが、しっかりとその役割に結果で応え、東京五輪に向けて調子が上がっていることをアピールした。

 

ノーマークの新星

3月14日(日)には、場所を移して広島県・広島中央森林公園にて1周12.3kmを7周回する西日本チャレンジサイクルロードレースが行われた。この大会は、広島県自転車競技連盟が主催しており、昨年はコロナの影響で中止となったが、全日本選手権の出場権が得られるシーズン序盤の重要な大会の一つでもある。
今回は、チームブリヂストンサイクリング以外のほとんどの主力チームが前日の播磨中央公園クリテリウムから移動してきての参加となった。さらには、二分された内の片方であるジャパンサイクルリーグ(JCL)に出場を予定している宇都宮ブリッツェンや那須ブラーゼン、地元のヴィクトワール広島などのチームもスタートリストに名を連ねた。

そんな多くの国内プロ選手が集まるエリートカテゴリーのレースで優勝したのは、この4月に大学生になる留目夕陽(エカーズ)だった。
留目はまだ高校生ながら、オープン参加で2020年の全日本大学自転車競技大会(インカレ)のロードレースを優勝しており、昨年のJBCFのエリートツアーなどでも勝利を挙げている若手有力選手だ。
今回の西日本チャレンジロードレースではアンダーのカテゴリーも存在したが、「少しでもレベルの高いレースに出たかったので」と一番上のエリートカテゴリーを選択した。

西チャレ

マトリックスが集団前方に固まってアタックを捌く

西チャレ

3周目の上りの途中で逃げを作ろうとするが、吸収

最初から逃げるつもりであった留目は、スタートしてすぐに集団前方に位置し、機会を伺った。しかし、なかなか逃げが決まらない。
「どこかで自分から行かないとレースは始まらないと思って、中盤で行こうと思ったらちょうど才田(直人)選手が一緒に行ってくれたので」
留目の唯一のパートナーとなった才田(リオモ・ベルマーレ)は、昨年練習中の落車骨折により、集団での下りに対して恐怖心が拭いきれない状態だった。才田は、集団最後尾で車間を空けながら走っていると、4周目の三段坂(コースの中盤にある長めの上り区間)で集団が緩んだ。右サイドが空き、最後尾から勢い良く追いついてそのまま先頭まで一気に駆け上がると、留目が一人でアタックを仕掛けていたところだった。

「このまま最後尾で走っていてもしょうがないから、一発(逃げに)行くかって心を決めて。三段坂の上り切りで彼、ちょっと後ろ見ながら踏んでくれたので、ちょうど追いついたところで2人になって。彼、1周目がとにかく速くて。あんまり上手く回れずに、下りも彼がちょっと待ってくれる感じでやってくれて。でもあっという間に(集団とのタイム差が)40秒ぐらいまで開いたんで、もう行けるとこまでっていう感じで。彼はむしろ初め踏みすぎていたようで、だんだん垂れてきて、自分はずっと一定なら踏めるので、最終的にラスト2周ぐらい足並みが合ってきました」
こう才田は振り返る。

西チャレ

三段坂の頂上付近で留目と才田が合流

集団では、序盤から先頭でアタックの打ち合いを捌いていたマトリックスパワータグが崩壊。後半にかけて愛三工業レーシングチームやシマノレーシングらがメンバーを出して追う形となったが、5周目の時点で2人の逃げと集団とのタイム差は50秒まで広がり、最終周回までもそのタイム差は変わらず。逃げ切りが濃厚となった。
留目の元チームメイトでもある愛三の渡邉歩はこう話す。
「追走はかけてたんですけど、ちょっと想像以上に詰まらなくて、残り周回も思ったより減っていて。まとまって追える区間も短いので、集団が逃がしすぎっていうのはありますね。僕らのミスですね。強かったですね、彼」

西チャレ

愛三工業レーシングチームやシマノレーシング、マトリックスパワータグのメンバーが追走する集団

西チャレ

逃げの2人はタイム差をキープ

西チャレ

逃げ切りを確信し、最終周回に入る留目と才田

最終周回には、スプリントでは勝ち目がないと踏んだ才田が、三段坂で留目を振り切るべくジャブを打ったものの留目は軽く対応。
スプリントでも勝てる自信はあったと話した留目だが、決して余裕があったわけではなかった。
「余裕はなかったです。だけど、付いていけるだけの脚はあったんで、最後スプリントだったらいけるかなと思って」
ゴールラインが見え、先にスプリントを仕掛けた留目を才田は見送った。留目は、集団が遠く後方に見える状態でゴールラインを一番に切った。

西チャレ

留目が先にスプリントをかける

西チャレ

集団を後方にして先頭フィニッシュする留目

「格上相手に全力出して戦ってきます」と前日にツイートしていた留目だったが、国内プロ選手たちを相手に完全勝利したことに対して、「できちゃいましたね」とあどけなく笑う。
「まさか、うまくいくと思ってなかったんで、本当に運もあって良かったなと思ってます」と、話した。

近くで留目の走りを見た才田は、「強いですね。強いし、脚を溜めたりすることなく、全部バンバン行くので、いいなと。若くていい走りですね。彼みたいな人に頑張ってほしいです」と話した。
留目は今春、中央大学へ進学。チームパシュートや個人パシュートなどのトラック競技も並行しつつ、前代未聞のインカレ5連覇を目指す。

 

日本のレースで見るチーム戦

西チャレ

チームでまとまって位置取りをして、エースを勝たせるために動くというのは、ヨーロッパのレースを見ていると当たり前のように思うかもしれないが、ここ最近の日本のレースではそれができるチームも限られていたように感じる。強い個人だけしか終盤の展開に残らない、そんなレースがほとんどであった。だからこそある程度、“勝てる”選手の候補も限られており、その選手をマークしておけば良いという考えもあったように思える。

今シーズン初戦で見えたのは、チームで戦おうとする姿勢だった。
昨シーズンのJプロツアーでは、チームでレースを動かそうと目立ったのは、マトリックスパワータグと宇都宮ブリッツェンの2チームの印象が強い。今年は、JBCFとJCLの二分化によって、それらのチームが別々のレースを走ることになるために、今シーズンのレースはどうなるのだろうと少し不安に思う面もあったが杞憂だった。

JPT初戦

Jプロツアー初戦では、集団でチームごとがまとまってそれぞれ意志を持って走っているように思えた。
これは、宇都宮ブリッツェンから移籍した鈴木譲や海外でメインに活動していた渡邉歩が加入した愛三工業レーシングチームや、ほとんどのメンバーがトラック競技でナショナルチーム入りをしているチームブリヂストンサイクリングなど、チーム内で足並みが揃っていることがおそらく大きい。
愛三の大前翔は、「去年よりはまとまって動けているし、脚も揃っていると思います」と話していた。

JPT第二戦

Jプロツアーでは、マンセボ率いるマトリックスが強いという事実は変わらないだろうが、それにチームで対抗するレースがこれから見られることを期待させてくれるようなレースだった。
Jプロツアーでも西日本チャレンジロードレースでの留目のような新たな勝者が生まれていくことにも期待したい。

3月27日、28日には、栃木県でJCLの開幕戦、同日には再び広島県でJプロツアーの第3、4戦目が行われる。5月15日の群馬サイクルスポーツセンターでのJプロツアーのレースにはリオモ・ベルマーレからアダム・ハンセンが出走するということも発表されている。
どんなレースが見られ、どんな化学反応が起きるのか。今シーズンも楽しみにしていきたいところだ。

 

リザルト

第1回JBCF播磨中央公園クリテリウム P1-1
1位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ) 1:29:57
2位 蠣崎優仁(JCF強化指定チーム) +0:01
3位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +0:01

第1回JBCF播磨中央公園クリテリウム P1-2
1位 橋本英也(チームブリヂストンサイクリング) 1:08:08
2位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +0:17
3位 床井亮太(シマノレーシング) +1:32

第25回西日本チャレンジサイクルロードレース
1位 留目夕陽(エカーズ) 2:08:07
2位 才田直人(リオモ・ベルマーレレーシングチーム) +0:04
3位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) +0:12