Jプロツアーおおいたいこいの道クリテリウム スプリント勝負を制した沢田が初勝利
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10月3日(土)、JBCFおおいたいこいの道クリテリウムが開催された。
Jプロツアーのレースは、1kmの特設コースを45周する総距離45kmのクリテリウム。二人の逃げを行かせた集団はマトリックスパワータグがメンバー総動員で牽引。ラスト5周で逃げを捉えてから、ラスト1周で主導権を握ったチームブリヂストンサイクリングがチームで沢田桂太郎のスプリントをお膳立てすると、しっかりと勝ち切り、Jプロツアー初勝利を手中に収めた。
残り3戦のJプロツアー
もう季節はすっかり秋のはずだが、時折吹く風にちょうどいい心地良さを感じるほど、湿気と暑さが残る一日となった。大分駅目の前にある大分いこいの道に作られた特設コースは、本来であればもっと多くの賑わいを見せるはずだった。新型コロナウイルスの関係で、翌日のおおいたサイクルロードレースは、UCIレースとしての開催を中止。その前哨戦として行われるはずだったおおいたいこいの道クリテリウムと合わせて、JBCFのレースとして開催される運びとなった。
インターバルコースの走り方
雲の隙間から太陽がのぞき始めた11時45分、Jプロツアーおおいたいこいの道クリテリウムがスタートを切った。
レース序盤に、毎レース調子の良さを見せる二人、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)と大前翔(愛三工業レーシングチーム)が抜け出す。集団はマトリックスパワータグの全出場メンバーが前方に固まりはじめ、コントロールを開始した。
このコースは非常に距離が短く、ヘアピンコーナーが1回、90度コーナーが3回ある超絶インターバルコース。特にヘアピンコーナーを抜けた先の立ち上がりでは、前に追いつくために踏まねばならず、確実に脚を削られいく。しかもそれを45回も繰り返すのだから、短いレースながらもその消耗度合いは激しい。今回のレースで集団後方を走っていたシマノレーシングの中田拓也は、「立ち上がり、毎回(パワーが)1000W以上出てました」と相当苦しめられていた様子だった。
これまでこのクリテリウムを3度走ったことがある大前はそれを把握した上で逃げに入っていた。
「このコースは前(逃げ)に行って損するコースじゃないっていうのは分かっていました。去年のパワーデータを見ていると、集団の後ろの方にいるとパワーが低くても立ち上がりで脚を使うっていうのが分かっていたので、とにかく先手先手というのを意識して走っていました」
ただ、逃げの人数という面では想定外だった。
「本当はもうちょっと逃げの人数来てくれるかなと、BS(チームブリヂストンサイクリング)とかシマノとか、1枚くらい送り込んでくれるかなと思ったんですけど」
それでも不安はなかった。走行中のパワーを見ながら、限界よりも少し下になるようペースを刻んだ。逃げのパートナーとなった阿部とも、次の展開を見据えて、どこで捕まりたいかなどの話もしっかり話していたという。
「ラスト5周で捕まるっていうのは、全部計画通りでした。逃げ切れば僕もスプリントあるので、僕で勝てますし、逃げても脚を使わないで行けば、集団に残ってた選手とドッキングして、働けるので。集団にいれば岡本(隼)さんで行こうという話になっていました」
マトリックスのコントロールは最初から最後まで
一方集団では、終始と言っていいだろう、マトリックスの牽引は徐々に枚数を減らしつつ、いいスピードを保ちながら逃げをしっかりとコントロール配下に置いていた。途中シマノレーシングが先頭に入ろうとするシーンもあったが叶わず。マトリックスの後方では、チームブリヂストンサイクリング、キナンサイクリングチーム、シマノレーシング、愛三工業レーシングチームと、スプリントをしたいチームのメンバーが顔をそろえており、その中での位置取り争いも後半にかけて熾烈になってきた。
「ここで勝たなきゃどこで勝つ」
レースが始まる前、「ここで勝たなきゃどこで勝つの!って感じですよね」と息巻いていたブリヂストンの沢田桂太郎は、スプリントができるメンツを多く揃えたブリヂストンの中でこのレースでのエースを任されていた。
「一番もがけるっていうのもあって、先週の広島も調子が上がっていたので、いけるでしょってみんなから推してもらいました」と沢田は話していた。
残り5周のところで逃げ二人がマトリックスの引き続ける集団に飲み込まれると、そのスピードを保ったまま各チームは最終ゴールスプリントに向けて備え始める。
残り1周に入る手前でブリヂストンの近谷涼がマトリックスの前へ出た。そのまま、最後のヘアピンカーブをブリヂストンが先頭でクリアし、近谷から孫崎大樹にバトンタッチ。その際、孫崎の後ろについていた沢田の前へ、リーダージャージを着るマトリックスのレオネル・キンテロに入られてしまう。しかし沢田は、「そこは冷静に。後ろから自分のタイミングでもがこうということで」と、最後に抜け出すタイミングを見極めていた。
”思い通り”まではあと一歩
一方、同様にスプリントを狙う愛三工業レーシングチームには事前のミーティングで共有していた一つの勝ち方のイメージがあった。それは、2017年の同クリテリウムで宇都宮ブリッツェンが1、2フィニッシュを決めた際の勝ち方。ラスト500mのコーナーでアシストが頭を取って、そのまま寄せ付けずに突き進んでフィニッシュという勝ち方だ。
今回の愛三工業レーシングチームはそれをトレースするように、ラスト500mの直角コーナーで大前が頭を取った。しかし、最終コーナー手前でまさかのスプリンター岡本が落車。逃げが吸収されてからもアシスト役を担った大前はもがくものの後続にかわされ、4位に沈んだ。
「形自体は本当にイメージ通り作れて、ただ最後……、まぁリスク冒して僕らやってるので、岡本さんが落車しちゃったのはしょうがないですね」とうなだれた。
初めてのJプロツアー勝利
最終コーナーを抜け、先にキンテロが踏み始めた後ろから沢田が抜け出し、残り100mのところで左側からキンテロをパスした。
「何となく左側から抜こうっていうのは決めていて。ちょうどラインが空いたので、スパンと抜いたらきれいに決まりました」と沢田。
しっかり相手を見ることはできていたが、今シーズンの最大心拍数がそこまで余裕がなかったことを指し示していた。
「しっかり追い込んで、ギリギリでスプリントっていう感じでしたね。今シーズンは昨シーズンほどは練習できていなかったんですけど、調子がバッチリ合ったというのもあって、最後はもう全力でもがきましたね。いいところでもがかせてもらいました。本当にうちは豪華なアシスト勢で。スプリントがみんなできる中で僕のために動いてくれて」
Jプロツアーで初めての勝利を挙げることは、沢田の今年の一つの目標だった。
「とりあえず今シーズン勝てたのが良かったです。全日本(U23カテゴリー最後の年)がなくなってしまって、そこも今シーズンの目標だったんですけど。2分の1は果たせたかなと思います」
レース後、沢田のために力を尽くしたブリヂストンのメンバーは笑顔と涙を見せていた。
リザルト
Jプロツアー 10/3 おおいた いこいの道クリテリウム(1m×45周回=45km)
1位 沢田桂太郎(チームブリヂストンサイクリング) 1時間1分22秒
2位 レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ) +0秒
3位 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +0秒
4位 大前 翔(愛三工業レーシングチーム) +0秒
5位 横塚浩平(チーム右京) +2秒