アルプス山岳最終日のツール・ド・フランス2020 第18ステージはイネオス・グレナディアズがワンツーフィニッシュ

第107回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、9月17日にメリベルからラ・ロッシュ・シュル・フォロンまでの175kmで、アルプス山岳最終日の第18ステージを競い、前日にエースのエガン・ベルナルがレースを棄権していたイネオス・グレナディアズのリチャル・カラパスとミハウ・クフィアトコフスキーが2人で逃げ切り、最後は肩を組んでゴール。区間優勝はクフィアトコフスキーが獲得した。

ツール・ド・フランス2020

逃げ切ったカラパスとクフィアトコフスキーは肩を組んでゴールした(©Bettiniphoto)

総合上位の選手たちは揃ってゴールし、マイヨ・ジョーヌはプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ・ヴィスマ)が守った。


32人の逃げが決まった

ツール・ド・フランス2020

●第18ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

第18ステージは150選手が出走。スタートしてすぐにトマス・デヘント(ロット・スーダル)、ニコラ・エデ(コフィディス)、ダリオ・カタルド(モビスターチーム)がアタックしたのをきっかけに、32人の大きな逃げ集団が形成され、カラパスとクフィアトコフスキーもここに入っていた。

この日は14km地点に中間スプリントが設定していたため、32人の逃げ集団にはマイヨ・ベールを着たサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)とペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)も加わっていた。中間スプリントはベネットで先頭で通過し、サガンは3位だった。逃げは25km地点で2分差を付けていた。

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アルプス最終日はスタートから32人の大きな逃げ集団が形成された

集団ではアタックする選手がまだ続き、後方ではアンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネイション)がレースを棄権した。この日最初に越えたカテゴリー1のロズラン峠の登坂が始まると、逃げ集団は小さくなり、山頂まで残り3.5kmで19人に減っていた。

46km地点のロズラン峠山頂はマルコ・ヒルシ(チームンウェブ)が先頭で通過し、カラパスが続いた。山岳賞は前日総合首位に立ったタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)が着用しているが、ヒルシやカラパスはこのステージでポイントを稼げば、首位に立つ事ができた。

ロズラン峠の下りでこの2人が逃げ集団から先行し、次の峠のふもとでクフィアトコフスキー、ペリョ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)、エデが追いつき、先頭は5人になった。67.5km地点のカテゴリー3の丘はヒルシが先頭で通過した。

次にカテゴリー2のセズィエ峠越えが始まり、5人の先頭グループは後続グループに1分、メイン集団に4分45秒のタイム差を付けていた。山頂まで残り3kmでエデが脱落し、先頭は4人になった。山頂はヒルシが先頭で通過してさらにポイントを稼いだが、カラパスも2位で通過し、マイヨ・アポワを諦めては居なかった。


下りでヒルシが転倒

着実に山岳賞ポイントを稼いでいたヒルシは、セズィエ峠のダウンヒルで転倒し、先頭集団から遅れてしまった。続くカテゴリー1のアラビス峠のふもとで、エデが追いついた先頭グループとヒルシは45秒離れていた。集団は6分45秒後方で、チームユンボ・ヴィスマがコントロールしていた。

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チームユンボ・ヴィスマはレースをコントロールし続けた

アラビス峠が始まると、先頭からは再びエデが遅れてしまい、メイン集団ではナイロ・キンタナ(チームアルケア・サムシック)が早くも脱落した。117.5km地点の山頂はカラパスが先頭で通過し、ヒルシは1分遅れていた。

この日最後の難所だったカテゴリー超級のプラトー・デ・グリエール峠が始まり、先頭は山頂まで残り3kmでビルバオが遅れ、カラパスとクフィアトコフスキーのイネオス・コンビだけになった。7分以上後方のメイン集団では、この峠でリゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)とアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が遅れてしまった。

プラトー・デ・グリエール峠の山頂はカラパスが先頭で通過し、20ポイントを獲得。彼はこのステージで合計42ポイント稼ぎ、総合でポガチャルよりも2ポイント上回って首位に立ち、マイヨ・アポワを獲得した。

プラトー・デ・グリエール峠の山頂を通過後、コースはストラーデ・ビアンケのような未舗装路へと突入した。マイヨ・ジョーヌのグループは、山頂の手前でマイヨ・アポワを着たポガチャルが攻撃を開始し、未舗装路を先頭で引いた。不運にも、ここでリッチー・ポート(トレック・セガフレード)はパンクに見舞われてしまい、自転車を交換しなくてはならなかった。

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アルプスの峠を走る集団

未舗装を抜けた時、マイヨ・ジョーヌのグループはログリッチ、ポガチャル、エンリク・マス(モビスターチーム)、ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)、ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナプロチーム)の5人になっていた。後方で繰り広げられる総合争いを尻目に、イネオス・コンビはまだ5分以上のタイム差を守って先頭を逃げ続けていた。

後続グループに加わって前を追い続けたポートは、ゴールまで残り10kmでマイヨ・ジョーヌのグループに追いつく事ができた。カラパスとクフィアトコフスキーは残り1kmのフラムルージュでまだ後続に3分差を付けていた。熱狂するファンの目前で勝利の喜びを分かち合いながらゴールに到着した2人は、肩を組んでフィニッシュラインを通過した。

先に車輪がフィニッシュラインを通過したクフィアトコフスキーは、これがツールでの区間初優勝だった。英国のイネオス・グレナディアズは、ベルナルが総合優勝した昨年は区間優勝をしていなかったため、2018年以来の区間優勝になった。

マイヨ・ベールを着たアイルランドチャンピオンのベネットは、31分32秒遅れの最終集団でゴール。連日制限時間との闘いが続いていたが、何とかアルプスを越えることができた。彼はポイント賞総合で298ポイントを獲得していて、2位のサガンに52ポイント差を付けている。

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ログリッチはアルプスでもマイヨ・ジョーヌを守った

■区間初優勝したクフィアトコフスキーのコメント
「只々チーム全体とカラパスに感謝している。我々にとって素晴らしい日だった。決して忘れないだろう。自転車競技で素晴らしい瞬間を得た。最後の数kmは鳥肌が立った。どれくらいなのかは分からなかったが、タイム差はとても大きくて、自分たちがこれからなし得る事が分かっていたからだ。

ヒルシはカラパスとマイヨ・アポワを争っていた。彼はコーナーで早く曲がりすぎた。ボクは彼のすぐ後ろにいて、プレーキをかけた。99%で走って、安全第一がベストだった。その前に、ヒルシはあまり熱心に働かなかったから、ボクたちはボクたち自身のレースをしたかった。今日ボクたちはショーをやって見せて、それは大きな祝福に値する」

■アルプスを越えられたマイヨ・ベールのベネットのコメント
「ハードだったが、このステージのスタートがとても重要なのはわかっていた。ボクはサガンに付いていって、中間スプリントで彼を打ち負かさなければならなかった。とても大きな逃げ集団に加わって、さらにポイントを稼げて満足している。

今、50ポイントのアドパンテージがあり、不幸な事が起こった場合でも安全な差だ。逃げに乗ったから、最初の上りで良いスタートを持てて、自分自身のペースをセットできたのも良かった。マイヨ・ベールを勝ち取る事がどれほど近づいているかは考えないようにしている。日々積み重ねたいね」

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マイヨ・ベールのベネットはアルプスを何とか越えることができた

■第18ステージ結果[9月17日/メリベル~ラ・ロッシュ・シュル・フォロン / 175km]
1. MICHAL KWIATKOWSKI (INEOS GRENADIERS / POL) 04h 47′ 33”
2. RICHARD CARAPAZ (INEOS GRENADIERS / ECU)
3. WOUT VAN AERT (TEAM JUMBO – VISMA / BEL) + 01′ 51”
4. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) + 01′ 53”
5. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 01′ 53”
6. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 01′ 54”
7. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 01′ 54”
8. MIKEL LANDA (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) + 01′ 54”
9. DAMIANO CARUSO (BAHRAIN – MCLAREN / ITA) + 01′ 54”
10. TOM DUMOULIN (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 01′ 54”
12. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM) + 01′ 54”
17. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 04′ 34”
19. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 04′ 34”

■第18ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) 79h 45’ 30’’
2. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 57’’
3. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM / COL) + 01′ 27’’
4. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 03’ 06’’
5. MIKEL LANDA (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) + 03’ 28’’
6. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 04’ 19’’
7. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 05’ 55’’
8. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 06’ 05’’
9. TOM DUMOULIN (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 07’ 24’’
10. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 12’ 12’’

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):SAM BENNETT (DECEUNINCK – QUICK – STEP / IRL)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):RICHARD CARAPAZ (INEOS GRENADIERS / ECU)
■新人賞(マイヨ・ブラン):TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
■チーム成績:MOVISTAR TEAM (ESP)
■敢闘賞:MARC HIRSCHI (TEAM SUNWEB / SUI)

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逃げたカラパスは山岳賞総合首位に立ち、マイヨ・アポワを獲得した


第19ステージは翌日に山岳TTを控えた平坦区間

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●第19ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

9月18日はブールカン・ブレスからシャンパニョルまでの166.5kmで、平坦区間の第19ステージが行われる。翌日にはラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの山岳個人タイムトライアルが控えているので、集団はつかの間の休養を望み、逃げが決まるかもしれない。

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(©Bettiniphoto)

 

 

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