ピレネー初日のツール・ド・フランス2020第8ステージは地元フランスのペテルスが逃げ切り初優勝

第107回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、9月5日にカゼール・シュル・ガロンヌからルダンビエルまでの141kmで、ピレネー山岳区間初日の第8ステージを競い、地元フランスのナンス・ペテルス(AG2R・ラモンディアル)が独走で逃げ切り、区間初優勝を果たした。

ツール・ド・フランス2020

独走での逃げを成功させた地元フランスのペテルス

総合争いは、最後に越えたカテゴリー1のペイルスールド峠でスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)がアタックし、ライバルたちに40秒差を付けてゴールしたが、総合16位から9位に順位を上げたに留まり、マイヨ・ジョーヌは英国のアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が守った。

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13人がアタック

第8ステージは172選手が出走。スタートしてすぐに13人がアタックし、この日の逃げ集団が形成された。総合成績が最も上位だったのはイルヌール・ザカリン(CCCチーム)で、16分39秒遅れの44位だったため集団はこの逃げを許し、40km地点ですでに10分の大差が付いていた。

42.5kmの中間スプリント地点はジェローム・クザン(トタル・ディレクトエネルジー)が先頭で通過。12分半後に集団はアイルランドチャンピオンのサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭で通過して2ポイントを獲得したが、ポイント賞総合首位のペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)のポイントにはまだ追いつけなかった。

ピレネー初日は負傷者にとって厳しい一日となり、ヨーロッパチャンピオンのジャコモ・ニッツォロ(NTTプロサイクリング)、ウイリアム・ボネ(グルパマ・FDJ)、リリアン・カルムジャーヌ(トタル・ディレクトエネルジー)が途中リタイアした。

59.5kmのマンテ峠(カテゴリー1)は、逃げ集団に加わっていたマイヨ・アポワのブノワ・コスヌフロワ(AG2R・ラモンディアル)が先頭で通過した。今年最初のカテゴリー超級の峠だったポルト・デ・バレス峠の登坂がスタートする前に、逃げ集団からはクザンがアタック。独走で峠を上り始めた。

追走の12人はポルト・デ・バレス峠でバラバラになり、ペテルス、ザカリン、トームス・スクインシュ(トレック・セガフレード)が山頂まで残り9kmで先頭のクザンを捕まえた。メイン集団はポルト・デ・バレス峠が始まるとチームユンボ・ヴィスマが全員で集団を引き始め、中腹でフランスのティボ・ピノー(グルパマ・FDJ)が脱落してしまった。彼は初日の落車で右肩を痛めていた。

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逃げるザカリン(右)とペテルス

先頭はペテルスとザカリンが快調に逃げ続け、ゴールまで残り36.2kmの山頂を2人で通過。メイン集団はその時まだ10分以上後方を走っていた。ところが下りでザカリンは大きく遅れてしまい、ペテルスの独走を許してしまった。

メイン集団ではポルト・デ・バレス峠の下り坂でディエゴ・ローザ(チームアルケア・サムシック)が落車し、鎖骨を骨折してレースを棄権した。レースはまだ序盤だが、ナイロ・キンタナ(チームアルケア・サムシック)は大切な山岳アシストを1人失ってしまった。

ゴールまで残り20.6kmで、最後のペイルスールド峠(カテゴリー1)の登坂が始まった時、先頭のペテルスとザカリンのタイム差は39秒あった。それをザカリンは11秒差まで縮め、一度はペテルスの背中を視界に捉えたのだが、彼に追いつくことは出来なかった。

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観客が溢れかえったペイルスールド頂上付近。新型コロナウイルス感染防止対策は十分ではなかった(©Bettiniphoto)

熱狂的な観客で溢れかえったペイルスールド峠をペテルスは単独で走り続けた。前日にフランスは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規感染者が8900人も出ていたとは思えないような危うい光景で、感染防止対策は十分に取られていないように見えた。そんな山頂を越えた時、ペテルスはザカリンに45秒差を付けていた。ゴールは9.9km下った先にあった。

ペテルスは難なく逃げ切り、26歳でツール区間初優勝を勝ち取り、敢闘賞も獲得した。彼は昨年のジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)でも区間優勝していた。ザカリンはペイルスールド峠の下りで後続に追い抜かれ、結局区間4位でレースを終えた。

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第8ステージは地元フランスのペテルスが逃げて区間初優勝した


ポガチャルが攻撃開始!

メイン集団はペイルスールド峠でもチームユンボ・ヴィスマが引き続け、次第に小さくなっていった。しかし、トム・デュムラン(チームユンボ・ヴィスマ)が先頭を引いていた時に、ポガチャルが攻撃を開始すると、その勢いは一気に消え去り、メイン集団は空中分解した。ポガチャルの2度目のアタックでは、マイヨ・ジョーヌのイェーツも遅れ始めてしまった。

そして山頂まで残り4kmで、ポガチャルは3度目のアタックを成功させ、ライバルたちを置き去りにした。山頂を通過した時、彼はメイングループに1分近いタイム差を付けていた。彼は奇襲を成功させ、前日に失ったタイムをこのステージで40秒取り戻す事ができた。

一方、チームメートに守られてゴールしたピノーは、結局このステージで25分以上遅れてしまい、総合9位から30位へと陥落。総合優勝の夢はあっけなく消えてしまった。

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ポカチャル(左)の最初のアタックにはすぐにキンタナとログリッチが反応したが、3度目のアタックには誰も付いて行けなかった(©Bettiniphoto)

■区間初優勝したペテルスのコメント
「去年初参加したジロで区間優勝したのは、すでに信じられない事だった。今はツールでも同じだ。ボクはなぜツールでもトライしないのかと自問自答した。これは夢で、ボクはそれを実現させたんだ。ザカリンは上りで自分よりも強いのは知っていたが、諦めなかった。自分が力尽きない確信があった。ポルト・デ・バレス峠のダウンヒルでザカリンがヤギみたいに下るのを見て、ステージの最後に彼を打ち負かす自信が出た。(無線の)イヤフォンがなかったから、持っていた唯一の情報は振り返る事だった。残り2kmで、勝てると思った」

■マイヨ・ジョーヌを守ったイェーツのコメント
「すごく幸せだ。本当に厳しい一日だった。我々は逃げを行かせた。総合で最高位の選手でもかなり遅れていたからだ。それは我々にとって、コントロールするには良かった。ある時点でペースが早すぎて、攻撃が左右からあり、ちょっと見逃さなければならなかった。ボクは奮起して残りの優勝候補のグループに何とか戻らなければならなかった。自分に出来る事をして、最高の選手たちと一緒にいようと努力して、今ここにいる。明日はまた厳しいステージた。トラブルを回避して、マイヨ・ジョーヌを守る事を望む。今日は皆が限界に達していたと思う」

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マイヨ・ジョーヌはイェーツが守った

■第8ステージ結果[9月5日/カゼール・シュル・ガロンヌ~ルダンビエル / 141km]
1. NANS PETERS (AG2R LA MONDIALE / FRA) 04h 02′ 12”
2. TOMS SKUJINS (TREK – SEGAFREDO / LAT) + 47”
3. CARLOS VERONA (MOVISTAR TEAM / ESP) + 47”
4. ILNUR ZAKARIN (CCC TEAM / RUS) + 01′ 09”
5. NEILSON POWLESS (EF PRO CYCLING / USA) + 01′ 41”
6. BEN HERMANS (ISRAEL START-UP NATION / BEL) + 03′ 42”
7. QUENTIN PACHER (B&B HOTELS – VITAL CONCEPT P / B KTM / FRA) + 03′ 42”
8. SØREN KRAGH ANDERSEN (TEAM SUNWEB / DEN) + 04′ 04”
9. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 06′ 00”
10. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE /FRA) + 06′ 38”
11. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM / COL) + 06′ 40”
12. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 06′ 40”
13. EGAN BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL) + 06′ 40”
15. GUILLAUME MARTIN (COFIDIS / FRA) + 06′ 40”
16. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) + 06′ 40”
17. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 06′ 40”
64. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 25’ 23’’

■第8ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) 34h 44’ 52’’
2. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) + 03’’
3. GUILLAUME MARTIN (COFIDIS / FRA) + 9’’
4. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) + 11’’
5. EGAN BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL) + 13’’
6. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 13’’
7. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM / COL) + 13’’
8. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 13’’
9. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 48’’
10. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 01′ 34’’
30. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 18’ 56’’

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):BENOIT COSNEFROY (AG2R LA MONDIALE / FRA)
■新人賞(マイヨ・ブラン):EGAN BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL)
■チーム成績:EF PRO CYCLING (USA)
■敢闘賞: NANS PETERS (AG2R LA MONDIALE / FRA)

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ペテルスは敢闘賞も獲得した


ピレネー2日目はカテゴリー1の峠越えが2カ所

9月6日はポーからラランスまでの153kmで、ピレネー山岳2日目の第9ステージが行われる。頂上ゴールではないが、中盤はカテゴリー1のウールセル峠を越え、終盤にもカテゴリー1のマリー・ブランク峠を越える厳しいステージだ。

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