タイで過ごす新城幸也がコメント「また、何倍もの笑顔でお会いできますように!!」

3月10日にフランスに戻った新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は、出場予定だったレースの中止をチームから告げられた。フランスも新型コロナウイルスの感染拡大により外出禁止措置が取られるのではないかと刻一刻と変わる状況の中、UCI(国際自転車競技連盟)が4月末まで(3月時点。4月15日現在は6月1日までに延長されている)のレースの中止を決定したことから、各選手は自国に帰国するようにとのチームの指示が出た。新城はその時点での日本の状況を考慮し、タイの合宿地へ避難することを選択し、 チームが迅速に手配したチケットで、フランスのロックダウンが開始されたまさにその日の午後、タイに飛び立つことができた。
 
新城
 

現在はタイ北部の合宿所で過ごす新城は次のようにコメントしている。

「ご無沙汰をしております。バーレーン・マクラーレンの新城幸也です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 大丈夫ですか? 世界中の皆さんが不安な日々を過ごしている中、あらゆる種目のスポーツ選手たち、トップアスリートのみんなが、いろいろな発信をする中で、レースがない自分は何もできないのではないかと無力さを感じ、自分が何を発信すればいいのか、どんな言葉が正しいのかと迷いがありました……。

自分は、昨年3月、怪我をして病院のベッドでレースを見ていました。何か月も走れない時期は、また絶対に走れるようになる、レースに復帰するという強い思いで、その期間を耐えてきました。何もできない治療中では、1日1日、今日は顔が洗えるようになったとか、松葉づえなしで歩けたとか、そんな一つひとつの進歩に幸せを感じる毎日でした。そして、レースを走れるようになったときは何百倍も楽しくて、嬉しかったです。 皆さんも今は耐える時期、我慢の時期ですが、この状況を克服できたとき、きっと当たり前だった生活が何倍にも幸せに感じるはずです。

今、皆さんが家で過ごすことができるのであれば、家族や大切な人に寄り添ってください。私は今、家族と一緒に過ごすことができません。何かあっても助けることができません。世界中、安全といえる場所はどこにもないのなら、家族に寄り添っていれば良かったと後悔しています……。だからといって、急いで実家に避難したりすることは絶対に止めてください。もし自分が感染していたら、家族や地元のみんなを命の危険に晒すことになるということをよく考えてください。私の故郷石垣島のような離島は医療施設も整っていませんし、高齢者も多いですから、とても心配です。今の自分にできることは、このことを呼びかけるだけですが、これだけは本当に一人ひとりの心に届いて欲しいです。

必ず世界に平穏が戻ると信じて、その時を静かに待ちましょう。自分はレースが再開したら、また皆さんに応援してもらえるように、皆さんに勇気や元気を届けられる走りができるように、今はしっかり備えます。そしてまた、何倍もの笑顔でお会いできますように!!」

また、オリンピックの1年延期については、

「1年延期になったことは世界中のどのアスリートも同じ条件ですから、まずはどんな状況でも、代表に選ばれるためにレースが再開されるときまで、しっかり備えながら、選考基準に関しての判断を待ちます」

と語っている。

タイからの帰国については全く目途が付かない状況だが、新城はテレビ電話で番組に出演するなど、できる範囲での活動をしている。