Fumy’s eye 別府史之が見た世界 étape04

目次

ボンジュール!

日本では緊急事態宣言が出され、みなさん大変な時期を過ごされているのではないでしょうか。身動きがとれなくなった人も多いと思います。……まあ、ここで、いきなりネガティブな話をしてもしょうがないので、とにかく運動不足には気をつけて。アクティブに体を動かしましょう!

Fumy's eye 第4回

ただ、ひとつだけ、言いたいことがあります。「ソロライド」についてです。ひとりでも自転車を楽しく乗ろうという動きは、健康上の理由だけで見れば、たしかに素晴らしいことです。おそらく普段より道がすいてるでしょうから、自転車としては走りやすい環境だとも思うんです。

でもフランスでは、プロの自転車選手でさえ、屋外へ走りに行くことは許されていません。なぜなのか。

 

プロ選手でも、家から1km圏内で1時間の運動に制限されている

外に出ることで、それだけ事故の危険性が増えるからです。もちろん家の中でだって事故は起きます。子供が頭をぶつけたとか、包丁で指を切ったとか、階段から落ちたとか。じゃあ自転車で山の中を走っていて事故にあったら? ひとりで走ってたら簡単に助けを呼べないかもしれない。ただでさえ医療機関がパンクしそうな状態なのに、救急隊に迷惑をかけてしまう。場合によっては救助の人たちが巻き込まれて、二次被害三次被害の恐れだってある。

今、優先されるべきは、新型コロナウイルスの患者さんたちです。また他の重病で治療が必要な方々です。たくさんの人が必死に新型コロナウイルスと戦っています。そんな時に、単純にスポーツがしたいから、というだけの理由で行動すべきではないと思うんです。

僕も3月中旬に外出制限が出されて以来、外を走ってません。フランスの規則では、家から1km圏内を、1時間だけ運動できることになってます。それを守ってます。プロのスポーツ選手として、ルールを守ることは当然だと考えてます。これは罰金の問題じゃなく、モラルの問題です。

 

自宅でできることを創造しよう!

だからといって運動不足はいけません。自宅でできる限りエクササイズしましょうよ!

筋力トレーニングや体幹トレーニングなら、家で簡単にできますからね。今は携帯にトレーニングアプリが色々あります。僕も使ったことがありますが便利ですよ。家の中で孤独にやってると、挫折しちゃう人も多いと思うんです。でもアプリなら上手にコーチングしてくれる。「次のエクササイズ、行きましょう!」とか「次はこのレベルに挑戦!」とか。モチベーションが上がりますよ。

あとはその場で腿上げ。30秒を10本とか。これだけでも結構ハードです。縄跳びもいい心肺トレーニングになります。心臓を動かしてくれるし、汗もかきます。

あんまり張り切りすぎてもダメ。頑張りすぎると次の日に響きます。続かなくなったら元も子もないですから。1日だけハードなエクササイズをするのではなく、毎日少しずつ継続的にやることが大切です。

僕はローラー台で毎日しっかり汗かいてます。チームのトレーナーからメニューが送られてくるので、集中して練習に臨んでいます。実は今朝10時半からズイフトでチームセッションがあったんです。欧州在住選手でみんないっしょに走ろうぜ〜って。そしたら僕はスタートからいきなり出遅れちゃった(笑)。

でもみんなと「つながっている」感じがしていいですね。1人でローラー台に乗ってるけど、1人じゃない。

それにしても、こんなにプロ選手がズイフト使ってる状況って、初めてじゃないですか?すごく新鮮です。あとズイフトじゃないですけど、ツール・デ・フランドルの当日にも、バーチャルレースでロックダウンエディションが開催されてましたし。本物さながらのレース展開でしたよね。「これが未来のプロサイクリングか!?」って思ったほどです。

もちろん僕だって外を走りたい。「外で練習していいよ」っていう日が早く来て欲しい。数日前にフランスのプロ選手連盟が、スポーツ大臣に「プロ自転車選手は外での練習を許可して欲しい」と陳情したそうです。そりゃあ許可が出たら嬉しいですけど、フランスの状況を見ていると、まだまだ解除されそうにないとも感じてます。少なくともレースが再開される1ヶ月前くらいには、外で走れるようになっているといいんですけど。

とにかく今の時点で、僕がやれることは2つだけ。筋力を落とさないこと、そして体重を増やさないこと。目標とすべきレースが見えないので、難しい状況なんですけど、とにかくこの2つを心がけて室内トレーニングを続けてます。屋外練習が許可されたら、そこから心肺機能を再調整していくつもりです。

 

食事には気を使って

まあ、家にこもっている時間が長くなると、ストレスがたまって、どうしても食べる量もお酒を飲む量も増えちゃいますよね。でも「体重管理」に一番効果的なのは、とにかく「食べすぎないこと」。動く量が減ったら、食事の量もコントロールしましょう。

僕自身は基本的に体重のアップダウンがあまりないほうなんです。オフシーズンでも2〜3kgしか増えない。例年なら、春先から暖かくなり、レースが増えていくにつれて、さらに自然に体重が落ちていきます。でも今はレースがない。だからローラー台でしっかり汗かいて、体を引き締めつつ、食事の量も気をつけてます。

まあ誕生日くらいはケーキを食べようかな。これまでパリ〜ルーベの当日が誕生日だったこともあるし、アジア選に向かう途中の飛行機の中で誕生日を迎えたこともあります。家で落ち着いて誕生日を過ごすというのは……やっぱりなんか変ですね。せっかくだから自分でケーキを作って、祝ってみるつもりです。

 

Fumy's eye 第4回

愛娘と一緒に作ったバースデーケーキ

 

質問コーナー

今回も質問ありがとうございます。タイミングよく、自宅トレーニングに関連する質問をいただきました。ぜひ参考にしてください!

1)フランスの自宅で個人的にトレーニングする際に乗るロードバイクの洗車やメンテは、自分で全て行うのでしょうか?(オサウムさん)

正直に言うと、自転車のメンテはあまり得意じゃありません。だから「プロ選手になればプロのメカニックが僕のバイクのメンテナンスをしてくれる!」というのも、プロを目指すモチベーションのひとつでもありました(笑)。

しかも乗る距離が伸びて、疲労が増えていくと、だんだん手間を掛けられなくなっちゃうんですよね。でも自転車のフレームはスポンサーの顔。やっぱりプロ選手として、自転車はきれいに保たなきゃならない。

そんなわけで、最近は、車の洗車場に行って一気に洗っちゃいます。乗る距離が半端ないんで、家のホースだけじゃ落とせないような汚れもありますから。ただ洗車場で洗うと、グリスも一緒に落ちてしまう。だから家に帰ってから、しっかりグリスを塗り直すようにしてます。

3月中旬からはローラー台に張り付いてるんで、汗を軽く拭くだけです。でも……そしたら……ブラケットの鉄の部分が汗で錆びて折れちゃいました。ローラーってすごく汗かくんですよ。

ブラケットがなくてもローラーは回せるけど、どうしようかな〜ってチームのメカニックに連絡してみたら、彼が家の中から探し出し、郵送してもらえることになりました!

 

————————————————————————————————————

 

2)ズイフトで好きなトレーニングメニューはありますか?またリアルレースとは違うズイフトならではの速く走る方法、タイムが出る方法があれば教えてください。(モリコータローさん)

好きなメニューは「Jon’s Mix」。ズイフトの創始者グループの1人の名前を冠したメニューです。一番スタンダードなのでおすすめです。

あとはマシュー・ヘイマンのパリ〜ルーベエディションも。短時間でタフな走りができるメニューです。しかもこのメニューには物語があるんです。2016年の春にヘイマンは鎖骨を折って、しばらくはローラー台しか乗れなかった。周りからは「ローラーしか乗ってなくて(レースを戦うなんて)無理だろ」なんて言われてたのに、ルーベで優勝しちゃった!

まさにズイフトのおかげで勝ったという、感動的な物語です。ズイフトとローラーを使って本物のモニュメントを制したなんて、本当に歴史的なことですよ。グリーンエッジの映画(栄光のマイヨ・ジョーヌ)でも触れられてるので、映画を見た方は、ぜひこのメニューを試してみてください。「なるほどね」と納得してもらえると思います。だってこれ、キツイんですよ、結構。

 

————————————————————————————————————

 

3)Twitterでアップしていた床の上で足を滑らせながらやるトレーニングは、体幹トレーニングでしょうか?ほかにもお薦めメニューがあれば知りたいです!(ひらおうMさん)

ペダルでダンシングするようなイメージで脚を動かしてます。動かしている時は、なるべく腰が動かないように。体がねじれたりぶれたりしないように。体幹を鍛えバランスを良くするるためのトレーニングですね。

動画のトレーニングでは、ボスボールとスライドディスクを使ってます。このスライドディスク、最近流行ってますよね。色々なムーブメントに使えるんで、自分でもやってみたいな〜と思って取り入れてみました。

ずっと同じことを繰り返しやるより、新しいトレーニングや新しいグッズを取り入れていろいろ試すのが楽しいです。刺激的ですし。マンネリを避けることもできますから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————————————————————————————————

 

とにかく今回、みなさんに一番お伝えしたかったのは、「ソロライドにはリスクもありますよ」ということ。

自分も自転車業界の一員ですから、「なるべく外を走らないで」って言うのはすごくつらい。僕のこの訴えは、もしかしたら業界を追い詰め、知り合いを苦しめる行為なのかもしれない。

ただ、今は、みんなで戦わなきゃいけない時期なんです。フランスのマクロン大統領が「これは戦争なんだ」って言ってました。この言葉を初めて聞いた時は、なんて大げさなんだろう、って僕も思いましたよ。でも今は分かります。本当に僕らみんなで戦っているんです。みんなで力を合わせて戦い、モラルを持って行動することで、この苦境を終わらせなければならないんです。

1か月後がどうなっているのか分かりません。今よりポジティブな状況になっていることを願います。また会いましょう!

 

 

別府史之

 

 

※質問やメッセージはinfo@cyclesports.jpで。メールタイトルには「Fumy’s eye」とご記入ください。またTwitterやFacebookコメント欄からの質問もお待ちしております!

 
(宮本あさか)