仕事しながら世界を狙う。社会人レーサーのマスターズ戦記【その1】
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家庭と仕事と両立しつつ、本気で“マスターズ”世界一を狙う45歳の社会人レーサーの岸本伊織(きしもと いおり)さん。葛藤や挫折を乗り越え、「それでも走りたい」という想いを原動力に再び挑戦を続ける。限られた時間と体力の中で積み上げるリアルな日常と、その先にある戦いを描く新連載がスタートします。
やっぱり自転車競技を走りたい!
愛知県在住、兵庫県育ちの45歳。家庭と仕事を持つ会社員として働きながら、ロードとトラックの両方で全日本マスターズチャンピオンになり現在も競技を続けています。
これだけ聞くと順風満帆に思われるかもしれないですが、実際はその逆でやめる理由の方が常に多かったんです。仕事、家庭、年齢、体の衰え。どれも言い訳ではなく、実際に降りかかって来ました。実際に一度競技から離れたし、「もういいかな」と区切りをつけようとしたことも何度もあります。それでも結局、自転車から離れきれなかったのは「やっぱり走りたい」という気持ちが消えなかったからでしょう。
同じように一度離れた人や、続けるか迷っている人は多いと思います。やめる決断も正しいし、続けることだけが正解ではない。ただ、その中で「もう一度やりたい」と思っている人がいるのも事実だし、その気持ちは年齢を重ねた今だからこそより強く、そして現実的な重さを持っているのではないでしょうか。
自分は特別な人間ではないし、同じように悩みながら、それでも続けている姿に意味があると思っています。速さや結果だけでなく、「続けること」そのものに価値があると感じるようになったのも、この年齢になってからです。
自転車との出会いは幼少期に遡ります。小児喘息で体が弱く、思うように動けない中で、自転車に乗るのは好きでした。中学では片道10kmの自転車通学を続け、何故か人より速かったので勘違いをして「自転車競技ができる高校」を基準に進学を決めました。高校では厳しい環境の中で競技に打ち込み、うまくいかないことや衝突も多かったのですが、その経験が今の自分の土台になっています。
仕事、家庭、競技を両立する日常
社会人になり一度競技から離れた後、30歳で仲間とのサイクリングをきっかけに復帰しました。そこからまた一歩ずつ積み上げてきたのですが、大きな落車もありました。それでも周りの言葉に背中を押され、もう一度跨いだ時、「自転車があってよかった」と心から思えました。その感覚が、今も自分を支えています。
何度も言いますが、現在は家庭と仕事を抱えながらの競技生活。時間も体力も限られている中で、どう積み上げていくかが勝負だと思っています。そして今年、自分は本気で世界一を、狙いにいきます。簡単ではありませんし、現実的に見れば厳しい挑戦だと思います。それでも40代でも、仕事や家庭があっても、ここまでやれるということを、自分自身で証明したいんです。
結果はもちろん狙いますがそれ以上に、「まだやれる」と思えるきっかけを届けたい。自転車は人生を劇的に変えるものではないかもしれませんが、止まりそうな時にもう一歩踏み出させてくれる力があります。
だから今日も走る。かつてやめた自分にも、そして今まさに迷っている誰かにも、「もう一度やってみるか」と思ってもらえるように。
















