究極のオフロードアドベンチャー! SDA王滝100kmを走破せよ。(前編/渡辺航先生編)

目次

『弱虫ペダル』連載開始の翌年から、渡辺航先生がほぼ欠かさず参戦しているのがSDA王滝だ。ロードバイクやシクロクロスとは異なるこのイベントならではの魅力を存分に語ってもらった。

 

渡辺航

 

  • MTBの楽しさ①
    “想像以上”の過酷なアドベンチャー!
  • MTBの楽しさ②
    サポートなし、けれど参加者同士の絆がアツい
  • MTBの楽しさ③
    大自然のエネルギーを満喫できる!

 

弱虫ペダルMTB編

小野田坂道の2年生IH編では「MTB編」が展開! 初めてのオフロード走行体験からクロスカントリー(XC)レース、そして新たなライバル「雉弓射」の登場と、見逃せない内容だ

 

SDA(セルフディスカバリーアドベンチャー)王滝とは?

長野県木曽郡王滝村で開催されている国内最長級のXCマラソンレースで、初開催は2000年。普段立ち入ることのできない国有林野のジープロードを、必要装備品を携行した上で走破するというもの。最も参加者の多い100km(ロング)の部は制限10時間で、獲得標高は2500mほど。7時間を切ると120km(エキスパート)に出場できる。

 

御嶽山へ祈り スタート

 

サポート一切なしの過酷さ

人口600人ほどの長野県王滝村。そこで毎年、1000人以上ものマウンテンバイカーが全国から集結する大きなイベントが開催されている。SDA王滝だ。

アップダウンの激しい100kmものダートを、10時間以内に走破するというもので、運営からのサポートは一切なし。必要な補給食や修理キットは各自が携行しなければならない。まさにSDA=セルフディスカバリーアドベンチャーなXCマラソンレースだ。それほど過酷なイベントに、渡辺航先生は20回も参戦しているのだ。

「ロードバイクを買う以前、古くなったMTBルック車からゲーリーフィッシャーのハードテールに乗り換えて、友達とあちこち走りに行ったんです。多摩湖の周辺や河川敷にあるグラベルを走ってみたんですけど、せっかくのMTBなのに本気を出せる瞬間がなかなかない。そんなときに、確かサイクルスポーツさんの記事で知ったのがSDA王滝だったんです」

友人がゲーリーフィッシャーを買い取ってくれたのを機に、先生はトレックのフューエル(フルサス)に乗り換えて、2009年9月のSDA王滝に初出場する。

「42kmの部もありますけど、最初から100kmにエントリーしました。いやあ、アホでしたね。上りは延々と続くし、下りはバイクが暴れるから休めないし、CPで休憩しても体力は1mmも回復しないしで、想像以上に過酷でした。で、結果はというと、最後の関門の制限時間に僅か2分遅れてDNFでした。悔しさよりも、もう走らなくて済むという安堵感の方が大きかった。それなのに、王滝はゴール地点まで自走で帰らされるんです。鬼かと思いました(笑)」

その帰り道、クルマの中で、王滝には二度と出ないことを誓ったという。当時、既にロードバイクで150kmを難なく走破できる体力はあったが、それが通じなかったことに心が折れたのだ。

「ダートの振動であれほど体力が削られるとは思わなかったんですよね。ただ、帰ってきて日にちがたつにつれ、改善点が次々と浮かんできたんです。手のひらが痛いならグリップにバーテープを巻こうとか、お尻が痛いならもっとクッション性の高いサドルに交換しようとか。あと、1回目は『MTBは乗車が当たり前』という変なプライドがあったんですけど、もし出るなら次はキツい上りで押してもいいことにしようと」

二度と出ないと誓ったにもかかわらず、先生は早くも翌年5月の大会に出場。8時間54分で見事に完走した。そして、10回目となる2015年9月の大会では、エリートライダーの目安となる100km・7時間切りを達成した。

「昔はよくパンクしましたね。いつだったか3回もパンクして、最後の1本もスローパンク気味になり、完全に心が折れた。CPでリタイヤしようか迷っていたら、隣にいた参加者が、『マンガの人ですよね。パンクっすか。チューブ使ってください』と言って助けてくれ、結果的に完走できました」

 

渡辺航 SDA王滝2025

SDA王滝2025

MTBが走るイベントとしてはコースの難度こそ低いが、鋭利なゴロタ石が多いため、最も多いトラブルがリム打ちやサイドカットによるパンク。運営のサポートも一切なし

 

伝説となった悪天候の回も

近年のSDA王滝では、余りの悪天候ゆえに伝説となった大会が二度ある。2016年9月と2017年11月の大会だ。

「両方出てました(笑)。2016年のドシャ降りのときは、腰までつかるほどの濁流を、数人で助け合いながら渡りました。2017年は、標高の高いところで雪が積もっていて、外気温がマイナス7℃ですよ。ディレーラーが凍って変速できないわ、ボトルがガチガチで水が飲めないわ、本当に大変でした。ただ、CPに実はお湯が用意されていたのと、日没の関係で足切り時間が早まっていたことを事前にチェックしておらず初出場だった120kmの部でDNFとなってしまった。そうした自分のミスは今でも反省しています」

 

渡辺航 渡辺航

 

SDA王滝の最大の魅力は

これまでに20回出場し、2022年には100kmの部で6時間9分という好タイムを記録している先生にとって、SDA王滝に挑戦し続ける理由とは何だろうか。

「毎回、体はすごく疲れているはずなのに、王滝が終わった翌日はめちゃめちゃ目覚めがいいんですよね。ずっと不思議に思っていたんですが、もしかすると大地からエネルギーをもらえているのかもしれないなと。あるいは毒素が抜けるというか。一般的なXCレースは、短い周回コースをぐるぐる回るだけで、それも大変ではあるんですが、王滝はワンウェイのダブルトラックですからね。これほどのスケール感で大地の力をもらえる場所はここしかない。だからこそ、もし少しでも興味を持った方には『おいでよ!』という言葉を掛けてあげたいですね」

 

フィニッシュ後の渡辺航

背中に泥

背中の泥は、完走の証だ!

渡辺航のフューエル

渡辺航のフューエル

渡辺航先生が駆るのはトレック・フューエルの29インチで、2015年5月の大会から乗り続ける。今やフロントダブルのMTBは少数派だが、直近の2025年大会では6時間26分で完走した。「乗り換えるとしても、下りを楽しみたいので29インチのフルサス一択ですね!」