ジロ・デ・イタリア2016で地元のニーバリが2度目の総合優勝

第99回ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)が、2016年5月29日に古都トリノで閉幕し、地元イタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が、2013年につづいて2度目の総合優勝を果たした。31歳のニーバリは2010年にブエルタ・ア・エスパーニャ、2014年にツール・ド・フランスでも総合優勝していて、4度目のグランツール制覇となった。

ジロ・デ・イタリア2016

クネオからトリノまでの163kmで競われた最終ステージは、ポイント賞のマリア・ロッサを着たイタリアのジャコモ・ニッゾロ(トレック・セガフレード)がスプリントで競り勝ったが、違反があったとして降格処分となり、2位のニキアス・アールント(ジャイアント・アルペシン)が繰り上げで区間優勝になった。アールントの優勝で今年のジロでのドイツ勢の区間優勝は21ステージ中7ステージになり、地元イタリアの6ステージを抜いてトップになった。

日本から今年のジロに唯一出場していた山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)は、3週間のレースを走り切り、初出場したグランツールを初完走した。総合成績はニーバリよりも4時間49分05秒遅れの151位だった。これで山本は、日本人として5人目のジロ完走者になった。

 

最終日前日の逆転劇

今年のジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)は、どんな小説や映画よりも予測不可能で、ドラマチックな3週間だった。最高峰のチマ・コッピを越える第19ステージのスタート時点で、地元イタリアで唯一総合優勝の候補だったビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)は、その日マリア・ローザを着ていたオランダのスティーブン・クルイスウエイク(チームロトNL・ユンボ)に5分近いタイム差を付けられていた。しかも彼は、総合3位にすら入っていなかった。

ニーバリが今年のジロで総合優勝するのは不可能だと、誰もがあきらめかけていた。開幕前、優勝候補に名前が上げられることのなかった28歳のクルイスウエイクは、その日まで非常に好調で、たとえ厳しい山岳ステージがまだ2日間残っていても、打ち負かすことは難しそうだった。

ところが、チマ・コッピだったアニェッロ峠の下り坂で、信じられないハプニングが起こった。マリア・ローザを着たクルイスウエイクが、コース脇の雪壁にぶつかって転倒してしまったのだ。その一部始終はTVカメラがしっかりと捕らえていて、まるで映画のワンシーンのようだった。しかし、それは作り物の世界ではなく、現実だった。幸いクルイスウエイクは、リタイアを余儀なくされるほどのケガを負っていなかったため、レースに復帰することができたが、雪壁にぶつかって一回転した体はあちこち痛み、心が折れてしまっていた。

その日、フランスに越境して上ったリスル山のゴールで、両手を高く上げたのはイタリアチャンピオンのニーバリだった。厳しい山岳ステージをもう1日残してニーバリは、一度は手の届かないところにあったマリア・ローザのスソを、しっかりと握りしめていた。

ジロ・デ・イタリア2016

最終日前日に、マリア・ローザを着ていたのはコロンビアのエステバン・チャベス(オリカ・グリーンエッジ)だった。ニーバリは、まだ26歳でグランツールでの経験も浅いライバルに、たった44秒差だった。グランツールすべてで優勝している『メッシーナのシャーク』にとって、チャベスは格好の獲物だった。

イタリア中が注目した最後の山岳ステージで、ニーバリは期待を裏切ることなくライバルたちを攻撃した。山岳アシストのバレリオ・アニョーリ(アスタナ)は落車のケガで失っていたが、彼にはまだベテランのミケーレ・スカルポーニ(アスタナ)が付いていて、献身的に働き続けていた。

息を吹き返した『シャーク』は、誰にも仕留められなかった。ニーバリは終盤のロンバルダ峠でアタックし、ライバルたちを蹴落として独走を続けた。サンタンナ・ディ・ビナーディオ山のゴールにニーバリが飛び込んだ後、運命のカウントダウンが始まったが、44秒が過ぎてもマリア・ローザのチャベスの姿はまだ見えなかった。今年のジロで、幸運の女神を味方につけたのは、イタリア中の期待を背負って走っていたニーバリだった。

最終日の記者会見でマリア・ローザを着たニーバリは、不調の原因が、実はウイルス性の胃腸炎だったと明かした。彼はそれをライバルたちには隠しつづけ、じっと回復の時を待っていたのだ。マリア・ローザを着た祖国のチャンピオンを迎えた古都トリノの街に、イタリア国歌の大合唱が響いた。もしも、チマ・コッピの下りで、あの若いオランダ人が転倒しなかったら…なんて考えるイタリア人は、そこにはいなかっただろう。

 

ジロ・デ・イタリア2016

 

■4度目のグランツール制覇を成し遂げたニーバリのコメント

「僕はジロの期間中、ウイルス性の胃腸炎を患っていたのだが、時にはすべてを話さない方がいいこともある。最後の休養日のおかげでよくなった。決して家に帰りたいとは言わなかったし、ずっと総合上位に留まっていた。クルイスウエイクはドロミテ山岳区間のあとでいいアドバンテージを持っていたが、僕はまだ最も高い山岳が残っているとわかっていた。標高2000メートルを越えて走るのは誰にとっても簡単なことではないが、自分の調子がいいことに気がついた。クルイスウエイクは転倒したが、アニェッロ峠の頂上に向かっていた時、彼の呼吸が荒くなっているのに気がついていた。だから上りとその後の下りで、彼にプレッシャーをかけたんだ。もしそうしなかったら、おそらく何も起こらず、チャベスも楽に走っていただろう。僕は自分の成績を顧みることはあまりないが、そうしてみると、大きな成功に満ちあふれているのだと気がつくよ」

 

■第21ステージ結果[2016年5月29日/クネオ~トリノ/163km]
1 ニキアス・アールント(ジャイアント・アルペシン/ドイツ)
2 マッテーオ・トレンティン(エティックス・クイックステップ/イタリア)
3 サシャ・モドロ(ランプレ・メリダ/イタリア)
4 アレクサンドル・ポルセフ(カチューシャ/ロシア)
5 ショーン・ドビー(ロット・ソウダル/ベルギー)
6 イワン・サビツキイ(ガズプロム・ルスベロ/ロシア)
7 リック・ツァーベル(BMC/ドイツ)
8 エドゥアルド・グロス(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/ルーマニア)
9 ジャイ・マッカーシー(ティンコフ/オーストラリア)
10 アルベルト・ベッティオル(キャノンデール/イタリア)
12 ジャコモ・ニッゾロ(トレック・セガフレード/イタリア)*降格
29 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)
136 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+45分06秒

 

[第99回ジロ・デ・イタリア 個人総合最終成績]
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)86時間32分49秒
2 エステバン・チャベス(オリカ・グリーンエッジ/コロンビア)+52秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分17秒

4 スティーブン・クルイスウエイク(チームロトNL・ユンボ/オランダ)+1分50秒
5 ラファウ・マイカ(ティンコフ/ポーランド)+4分37秒
6 ボブ・ユンゲルス(エティックス・クイックステップ/ルクセンブルク)+8分31秒
7 リゴベルト・ウラン(キャノンデール/コロンビア)+11分47秒
8 アンドレイ・アマドール(モビスター/コスタリカ)+13分21秒
9 ダーウィン・アタプマ(BMC/コロンビア)+14分09秒
10 カンスタンティン・シウツオウ(ディメンションデータ/ベラルーシ)+16分20秒
20 ドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル/イタリア)+51分49秒
151 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+4時間49分05秒

 

[各賞]
■ポイント賞(マリア・ロッサ):ジャコモ・ニッゾロ(トレック・セガフレード/イタリア)
■山岳賞(マリア・アッズーラ):ミケル・ニエベ(チームスカイ/スペイン)
■新人賞(マリア・ビアンカ):ボブ・ユンゲルス(エティックス・クイックステップ/ルクセンブルク)
(http://www.giroditalia.it/it/)