ツール・ド・フランス2025 雨の第20ステージはグローヴズが逃げ切り区間初優勝
フランスで開催中の第112回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月26日に南東部のナンチュアからポンタルリエまでの184.2 kmで、丘越え区間の第20ステージを競い、雨の中を逃げ切ったオーストラリアのケイデン・グローヴズ(アルペシン・ドゥクーニンク)が区間初優勝を果たした。
スプリンターのグローヴズは既に2022年にブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)、2023年にジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)で区間優勝していて、これでグランツール全てで区間優勝した選手の仲間入りを果たした。彼はブエルタで区間7勝、ジロで区間2勝していて、グランツールの区間通算優勝数は10勝になった。
区間2位は54秒遅れでオランダのフランク・ファンデンブルーク(チーム ピクニック・ポストNL)、区間3位は59秒遅れでオランダのパスカル・エーンクホールン(スーダル・クイックステップ)だった。
7分4秒遅れのメイン集団では、ゴール目前に集団の前方で落車事故が発生したが、マイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ・XRG/スロベニア)は難を逃れ、総合首位の座を守って最終日のパリへと凱旋する事になった。
雨の丘越え区間
第20ステージは160選手が出走。カザフスタンのエフゲニー・フョードロフ(XDS・アスタナ チーム)が感染性胃腸炎でスタートしなかった。ナンチュアは曇り時々晴れで気温21℃だったが、すぐに雨が降り出し、気温も下がっていった。オフィシャルスタートからアタックがかかり、65km地点で13人の逃げ集団が形成された。
逃げ集団で総合成績が最も上位だったのはフランスのジョルダン・ジェガット(トタルエネルジー)だったが、マイヨ・ジョーヌのポガチャルよりも38分42秒遅れの総合11位で、上位選手には影響がなかった。しかし、34分34秒遅れで総合10位だったオーストラリアのベン・オコナー(デカトロン・AG2Rラモンディアル)にとっては、総合トップ10の座を脅かす存在だった。
そのジェガットがこの日の難所だったカテゴリー2のテジーの丘の頂上まで2kmで逃げからアタックし、先頭に立った。そこに頂上手前でオーストラリアのハリソン・スウィーニー(EFエデュケーション・イージーポスト)が追いつき、ゴールまで残り62.6kmの頂上はスウィーニーが先頭で通過した。
残り54kmでジェガットは遅れ、スウィーニーが単独で逃げ続けた。ジェガットは追走グループに戻り、先頭のスウィーニーを追いかけた。メイン集団は5分近く遅れ、オコナーが先頭を引き始めた。この日最後の丘だったロンジュヴィルでスウィーニーは吸収され、ゴールまで残り24.1kmの頂上はフランスのロマン・グレゴワール(グルパマ・FDJ)が先頭で通過した。
残り22kmの下りでイバン・ロメオ(モビスターチーム)がスリップして転倒し、グレゴワールとシモーネ・ヴェラスコ(XDS・アスタナ チーム)が巻き込まれ、先頭はグローヴズ、ファンデンプルック、ステュワートの3人になった。そこからゴールまで残り16.5kmでグローヴズがアタックを決めて独走を開始した。彼は1分近いタイム差を守ってポンタルリエにゴールし、26歳でツール区間初優勝を果たし、グランツール全てで区間優勝した114人目の選手になった。
グローヴズはポイント賞を狙っていたベルギーのヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)のリードアウトとして今大会に参加したが、フィリプセンは第3ステージの落車で棄権し、もう1人のリーダーだったオランダのマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)も肺炎で最終週をスタートしなかった。チームは2人のリーダーが今大会でそれぞれ区間1勝を上げていたが、グローヴズが逃げ切りを成功させ、アルペシン・ドゥクーニンクに3勝目をもたらした。
フランスのジェガットが総合10位
第20ステージの逃げに加わったフランスのジェガットは、1分04秒遅れの区間7位でレースを終えたが、オコナーが居たメイン集団は7分以上遅れてゴールしたため、26歳のジェガットがオコナーを抜いて総合10位になった。彼は昨年トタルエネルジーに加入し、これが2回目のツール参加だった。
■区間初優勝したグローヴズのコメント
「グランツール全てで勝つのは全選手の夢で、とりわけツールだから素晴らしい。独走で勝ったのも初めてで、それをツールでやってのけたからより特別だ。だからとても感動的だ。我々は今日は逃げから勝つチャンスがあるとみなしていた。我々は正しくプレイし、ボクはとても強い脚を持っていた。最後の数kmは思い描いたようには楽しめなかった。この状況は初めてで、観客の声援で無線を聞き取るのがとても難しかった。30か40秒差があると分かっていたから、ただただ可能な限り早くゴールに辿り着きたいと望んでいたよ」
■4回目の総合優勝まであと1ステージになったポガチャルのコメント
「総合優勝はほぼ確定しているが、それについてはまだ何も言いたくはない。パリの最後のフィニッシュラインを越えるまで、チームと一緒に集中し続けたい。パリのように大きくて美しい都市を走るのはいつも楽しい。それはこのスポーツの最も素晴らしい部分の1つだ。我々180人の男たちが数週間山岳を走り、そして最後に、突然世界で最も大きな都市の通りにやってくるんだ。
最後のステージがどうなるのかはまだ分からない。それはクラシックではないだろう。20ステージの後で、コースは比較的短いし、それはかなりパンチの効いた努力になるだろう。最後のサーキットに入った後で、どのようなリスクを負うべきかを判断した後、我々がどう感じたかで計画を立てるだろう。我々にはボクやナルバエスのような勝ちに行ける選手がいる。
今日はエンジン全開のレースで、とりわけ最初の1時間は激しい雨の中をアップダウン、右やら左やらだった。非常に危険で、ある時点ではマイヨ・ジョーヌですら危なかった」
■第20ステージ結果
[7月26日/ナンチュア~ポンタルリエ/184.2 km]
1. K. GROVES (ALPECIN-DECEUNINCK / AUS) 04h 06′ 09”
2. F. VAN DEN BROEK (TEAM PICNIC POSTNL / NED) + 00′ 54”
3. P. EENKHOORN (SOUDAL QUICK-STEP / NED) + 00′ 59”
4. S. VELASCO (XDS ASTANA TEAM / ITA) + 01′ 04”
5. R. GREGOIRE (GROUPAMA-FDJ / FRA) + 01′ 04”
6. J. STEWART (ISRAEL – PREMIER TECH / GBR) + 01′ 04”
7. J. JEGAT (TOTALENERGIES / FRA) + 01′ 04”
8. T. WELLENS (UAE TEAM EMIRATES XRG / FRA) + 01′ 04”
9. M. JORGENSON (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / USA) + 01′ 04”
10. H. SWEENY (EF EDUCATION – EASYPOST / AUS) + 01′ 04”
■第20ステージ後の総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES XRG / SLO) 73h 54′ 59”
2. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN) + 04′ 24”
3. F. LIPOWITZ (RED BULL – BORA – HANSGROHE / GER) + 11′ 09”
4. O. ONLEY (TEAM PICNIC POSTNL / GBR) + 12′ 12”
5. F. GALL (DECATHLON AG2R LA MONDIALE TEAM / AUT) + 17′ 12”
6. T. JOHANNESSEN (UNO-X MOBILITY / NOR) + 20′ 14”
7. K. VAUQUELIN (ARKEA-B&B HOTELS / FRA) + 22′ 35”
8. P. ROGLIC (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 25′ 30”
9. B. HEALY (EF EDUCATION – EASYPOST / IRL) + 28′ 02”
10. J. JEGAT (TOTALENERGIES / FRA) + 32′ 42”
11. B. O’CONNOR (TEAM JAYCO ALULA / AUS) + 34′ 34”
[各賞]
■ポイント賞:J. MILAN (LIDL-TREK / ITA)
■山岳賞:T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES XRG / SLO)
(※第21ステージは J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN) が着用)
■新人賞:F. LIPOWITZ (RED BULL – BORA – HANSGROHE / GER)
■チーム成績:TEAM VISMA | LEASE A BIKE (NED)
■敢闘賞:H. SWEENY (EF EDUCATION – EASYPOST / AUS)
■ベストチームメート賞(3週目) : Q. SIMMONS (LIDL-TREK / USA)
最終日のパリ・サーキットはモンマルトルを通過
3週間の長旅を終えたツール一行は、7月27日にフランスの首都パリでグランフィナーレを迎える。最終日の第21ステージは、イヴリーヌ県のマント・ラ・ヴィルをスタートし、パリのシャンゼリゼ大通りまでの132.3kmで競われるが、今年は最後のサーキットのコースが刷新した。前半は例年通りだが、後半はパリ五輪でコースになったモンマルトルの丘を越える新しいサーキットを3周してゴールする為、集団ゴールスプリントでは終わらない可能性がある。
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