JICF国際トラックカップ 五輪前の1年の成長
目次
11月25~26日に行われたJICF国際トラックカップ。そこで活躍した選手にこれまでを振り返りつつ、今後について聞いた。
女子スプリント
11月25日、日本学生自転車競技連盟(JICF)による国際トラックカップが千葉のTIPSTARドームにて行われた。
女子スプリントの予選である200mフライングタイムトライアルからスタート。日本ナショナルチームから唯一の出場となった酒井亜樹がトップタイムを出して勝ち進み、決勝では香港チャイナのイェン・チョーユと当たった。1戦目を酒井が取り、2戦目、3戦目をチョーユが取り、優勝を飾った。
男子ケイリン
ナショナルチームからの出場はなかった男子ケイリンでは、日本大学の三神遼矢が強さを見せつけた。1レース以外全てで早めの仕掛けからの単独逃げ切り勝利で、国際大会での初優勝を手に入れた。
現在大学4年生の三神は、来年5月の入所に向けて競輪養成所を受験中。一次試験を通過後、3週間ほどナショナルチームのメンバーと共に練習を行いつつ、ジェイソン・ニブレットコーチのアドバイスを受けたり、ナショナルチームのスタッフからサポートを受けたりしているという。
「ここ1カ月の経験をしっかり学習して、今回のレースに生かせたのかなと思います。みんなの力を借りて勝てました」と三神は話す。
以前よりナショナルチーム加入を目指していた三神。短い期間ながらもその環境に身を置くことで自信の成長を感じていた。
「まだナショナルチームの一員になったというわけではなくて、とりあえず一緒に練習させていただいてるという感じです。でも3週間ぐらい一緒に練習させていただいて、だいぶ成長してるなっていう実感があるので、できるだけもっと近付けてチームに入れるように頑張りたいと思います」
ナショナルチームへの正式加入、そして海外での国際大会デビューのときを楽しみに待ちたいところだ。
女子マディソン
海外チームも合わせて4チームのみの出場となった女子マディソンでは、垣田真穂、池田瑞紀の日本ナショナルチームが無双。全てのポイント周回をトップ通過しつつ、ラップを1回決めての優勝となった。
「久しぶりに垣田さんとペアを組んで、自分はいつもレースでは焦ってしまうタイプなんですけど、垣田さんがレース中にすごくたくさんコミュニケーションを取ってくれたので、自分も冷静に勉強になる走りができました」と、池田は話す。
今年エリートカテゴリーに上がり、共にナショナルチームのメンバー入りした垣田と池田は、拠点も大学も同じ。
垣田は池田の存在について、「本当に日頃から意識が高くて、でも支え合える存在だから本当に助けられています」と語る。
池田も垣田について、精神的にも助けられる面があると語った。
「自分を頑張り続けさせてくれるすごくありがたい存在です。
エリート1年目で、いろんなことがあったり、ちょっときついときもあったんですけど、切磋琢磨し合いつつ、きついときは話を聞いてくれたりとか。他の人には言えないこととかも言い合えて、パチパチとかじゃない面でもすごく助けられてるなという感じですね」
今年、著しい成長をみせた2人。
現在のナショナルチームでの環境について垣田は、「高校の頃より、朝から練習して、自転車に集中できる環境があるので、集中できてやれています」と話す。
垣田はこの1年、チームパシュートでのパリオリンピック出場枠獲得に向けて動いてきた一方で、個人種目でふるわないこともあったが、前週のジャパントラックカップから少し修正をかけたそうだ。
「来年のオリンピック枠がかかっているので、チームパシュートを集中的にやってたんですが、そうしたら自分個人のレースで全然うまくいかないことが多くなって、この前のレースからもっと積極的に自分の走りができるようにと思って、自分を信じて頑張って走っていました」
パリでの個人種目出場については、「来年(のオリンピック)は梶原さんがいるので。でもいつか勝てるように頑張りたいなと思っています」と笑顔を見せた。
池田もこの1年を振り返る。
「今年すごくレースが多くて、しかも海外に行って、本当にいろんなことを学んだし、やっぱりジュニアとエリートではもう全然違うレベルだなということにも気づかされてるところです。でも、来年のパリオリンピックに向けて、また練習をやっていかなきゃいけないなと思える1年でした」
今年1年、楽しさと辛さ、どちらが強かったか聞くと、少し悩んでからこう答えた。
「やっぱりつらくても、周りのみんなでコミュニケーションを取ってくれる人がいて頑張ってこられたから、60対40で”楽しい”です」
女子チームパシュートのオリンピックランキングは現状10位。10位までの出場と考えると、予断を許さない状況ではあるが、可能性はまだ大いにある。
男子マディソン
男子マディソンは、全てのポイント周回で着に絡みつつ3回のラップを決めた今村駿介と兒島直樹の日本ナショナルチームが他チームを圧倒した。
今シーズンといえば世界選手権でのオムニアムでの銅メダル獲得が何と言っても最も大きなトピックとなった今村だが、「世界選手権ぐらいしかないんですよね。僕はあんまり成績が良くなかったので」と話す。
しかし、その世界選手権で芽生えたのは代表としての覚悟だった。
「ほっとしたっていうのもあるし、あとは目標というか、明確にオリンピックに向けてやっていきたいなっていうところも、メンバーに選ばれなかったとかではなくて、決まったわけではないけど、やっぱり(世界選手権で)メダルを取った自分が狙っていかないといけないという覚悟みたいな」
今年1年の変化量については、「世界選だけにピークを持っていったというところで、うまく自分の脚を理解してレースできるようになってるのかなというのはあります。得意なところはちゃんと得意なレースができるようになったし、そうじゃないとこは逆にそのまんまだなと思います。そこのできてない部分がまだまだです」と言う。
展開を読んで食らいついていく点や、思い切れる部分がある点に強みを持ったが、これからさらに確実に上乗せすべき点についてはこう語る。
「持久系の中でも高速域での持久力、日本的な持久力じゃなくて、ハイペースな展開でもついていけるように耐えられるところと、あとはやっぱりトップスピードですね。国内でももうそんなに抜きん出ている方でもなくなってきたし、海外じゃ全力でもがいても勝てない部分もあるので。そこのスピードのキレというか、(エリア・)ヴィヴィアーニ的な余裕を持ってスプリントに備えられるような力をつけていきたいです」
もちろん個人種目だけではない。チームパシュートでは、まだ集中的な練習には入っていないが、レース種目ではそれぞれが結果を出してきている中で、うまく噛み合わない部分があると話す。
「もちろんチーム種目でも引っ張っていきたいんですけど、そこまでまだ力が突出してるわけじゃないので」と今村。
マディソンでは、世界選手権で共にメダル獲得をした窪木一茂とのペアだけでなく、さまざまなペアでの出場が続いている。
「いろんなペアを試してやってる中で、やっぱ今村だなと思ってもらえるように、どんなペアでも力見せないといけないというのはあります」
今回のペアを組んだ兒島は、振り返って今年1年は長かったと話す。特にシーズン後半のアジア大会からはツール・ド・九州、国体、ジャパントラックカップとレースが続いた。
「今年1年は、成長した1年になったのかなとは思います。でもやっぱり、国際大会で結果を残したかったというのはあったので、それが達成できなかったのは悔しかったかなと。1年を通していいコンディションを保っていたのかなと思うんですけど、やっぱりそれだといけないので、どこかしらに合わせてしっかり結果を出さないといけないとすごく感じた1年でした」
5月のツアー・オブ・ジャパン時点で世界選手権のポイントレースでのメダル獲得が目標だと話していた兒島だったが、実現は叶わなかった。
「ピークは持っていけたのかなと思うんですけど、世界選前の合宿での調整がうまくできていなくて、多分そこが要因で結果がついてこなかったとは思います。
今年は長い時間を乗ることがなくて、そういう体力面に影響が出たのかなと思うので、それも踏まえて来年はもう少しロングとかも入れてもらいながら、そこは相談しながらなんですけど。そういうことをしつつ大会に備えられたなと」
1月初旬のナショナルチームでの沖縄合宿後は、2月初旬のオーストラリアでのネーションズカップ、そしてオリンピック出場枠をかけた最後の機会となるアジア選手権と続く。
「本当にアジア選はオリンピック予選の最後の最後なので、そこはしっかりとポイントを取りつつ、そこにも高い状態で波を持っていきたいんですけど、その先(オリンピック)が本当のゴールであるので、そこにしっかりと最高値を持っていけたらいいなと思っています」
チームパシュートでの出場はもちろんだが、個人種目の出場も虎視眈々と狙う。しかし、まだまだ窪木らも強い状態を保つ。「そびえる壁です」と兒島は話す。さらに、「結果が全てなので、そこをネーションズカップとか出しつつ、また選考に僕も入れたなと」と語った。
男子マディソン
1位 日本ナショナルチーム(今村駿介、兒島直樹)112pts
2位 チームブリヂストンサイクリング(山本哲央、河野翔輝)49pts
3位 Star Track Cycling(KOONTZ Grant、JASTRAB Ryan)20pts
女子マディソン
1位 日本ナショナルチーム(垣田真穂、池田瑞紀)65pts
2位 HONG KONG, CHINA(LEE Sze Wing、YANG Qianyu)27pts
3位 HONG KONG SPORTS INSTITUTE TEAM(NG Sze Wing、LEUNG Wing Yee)-2pts
男子ケイリン
1位 三神遼矢(日本大学)
2位 TO Check Hel(HONG KONG, CHINA)
3位 YUNG Tsun Ho(HONG KONG, CHINA)
女子スプリント
1位 YEUNG Cho Yiu(HONG KONG, CHINA)
2位 酒井亜樹(日本ナショナルチーム)
3位 久米 詩(JPCA)
第9回 JICF国際トラックカップ
開催日:2023年11月25日(土)~26日(日)
会場:TIPSTAR DOME CHIBA(屋内競技場周長250m)
千葉県千葉市中央区弁天4丁目1-1
主催:日本学生自転車競技連盟
https://jicf.info