「自転車用ヘルメット着用に関する実態調査」をシナネンが実施 自転車利用者は4/1以降減る?

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エネルギー・住まい・暮らしの総合サービス事業を提供するシナネンホールディングスと、その子会社で、自転車の製造・卸売及び自転車専門店「ダイシャリン」を展開するシナネンサイクル、シェアサイクル「ダイチャリ」を運営するシナネンモビリティプラスが、2023年4月1日からの自転車用ヘルメットの着用努力義務化を踏まえ、日常的に自転車を利用する全国の約1300人を対象に「自転車用ヘルメット着用に関する実態調査」を実施した。その中から気になる点を紹介しよう。

 

ダイチャリの新型車と三橋社長と若松部長

アンケート調査の結果は、ダイチャリの新型電動アシスト自転車とともに発表された

 

調査概要

・調査方法:セルフ型ネットリサーチ Fastask(ファストアスク)でのアンケート調査
・調査期間:2023年2月16日(木)~2月18日(土)
・調査対象:週に1回以上自転車(他人と自転車を共有するサービスを含む)を利用する全国の15歳~69歳の男女1299人

 

ヘルメットの着用率

自転車用ヘルメットの着用状況について聞いたところ、「毎回着用している」と回答したユーザーは21.2%で、約8割のユーザーはヘルメットを着用していないことがあることが判明した。
ユーザーの自転車利用頻度別に着用率を比較したところ、「ほぼ毎日自転車を利用する」ユーザーの着用率は27.7%、「週の半分以上は自転車を利用する」ユーザーは24.6%、「週に1、2回程度自転車を利用する」ユーザーでは11.8%と、自転車利用頻度の高いユーザーほど着用率は高い傾向が見られる。
一方、ヘルメットの所有者の約半数は毎回は着用していなかった。

ヘルメットの着用率ヘルメット所有率と所有者の着用率

 

ヘルメットを使用する場合に重視するポイント

自分自身がヘルメットを使用する場合に重視するポイントについて聞いたところ、1位は「軽量性」(51.8%)だった。2位には「安全基準を満たしている」(49.5%)がランクインし、安全性の高さを重視して選びたいという傾向が伺える。また、3位には「自分専用であること」(40.3%)が入っている。自転車を共有するサービスも利用するユーザー(n=345)でも、「自分専用であること」が2位(48.7%)、また、「抗菌仕様」が5位(31.9%)となっており、安全性の観点に加え、衛生面からもヘルメットは自分専用品を使用したい意向があるように感じられる結果となった。

ヘルメットを使用する場合に重視したいポイント

ダイチャリでも、自分に合ったサイズがヘルメットには重要であり、また、衛生面の問題もあることから、シェアサイクル利用者のために準備することは考えていないという。

 

ヘルメット着用努力義務化の認知度

4月1日からのヘルメット着用努力義務化についての認知度を調査したところ、67.9%のユーザーが認知している結果となった。年代別に見ても、全年代で認知率は高く、特に20代では8割を超える結果となった。さまざまな場所で情報が発信されていることに加え、ユーザー自身も自分に関わる事象として、関心を持って情報を捉えていることが伺える。

着用努力義務化の認知度

 

ヘルメット着用完全義務化による自転車利用の意向

自転車用ヘルメットの着用が仮に完全に義務化された場合に自転車を利用する意向は、「利用が増えると思う」「変わらないと思う」が58.1%。「利用が減ると思う」「利用をやめると思う」が29.5%だった。

ヘルメット完全義務化による自転車利用意向

ここで、ヘルメット努力義務化の立法事実(条文を作った理由となる事実)について、警察庁の楠芳伸交通局長は、「ヘルメットの着用時と非着用時で致死率に大きな差があるという事実」と、第十一次交通安全基本計画において、「全ての年齢層の自転車利用者に対してヘルメットの着用を促すべきなどとされて」いることを挙げている(参照:国会会議録検索システム)。交通安全基本計画と関係する第2次自転車活用推進計画にも後者は盛り込まれてしまっているが、努力義務化でも自転車の利用者数が減るとすれば、自転車活用「推進」とは真逆の施策だと言える。また、法は規範として機能するだけでなく、それが守られたときに理想的な状態を示すものでもある。全ての人がヘルメットを被って自転車に乗る光景が理想的な状態だと言えるのだろうか?

シナネンモビリティプラスの三橋美和社長は、ヘルメット着用が努力義務化された場合のダイチャリの利用者数への影響について、「少なからず影響はあるのかなというふうに感じている。ただ、実際どこまでというところは努力義務がスタートしたときのユーザーの行動変化が非常に大きく影響すると思うので、そこをしっかり注視しながら、私たちとしても減少というところは見ていきたいと考えている」と話す。ヘルメット着用努力義務化後に自転車の利用者数の変化を調べ、場合によっては条文を廃止することも必要だろう。また、1970年に成立している自転車道の整備等に関する法律6条には、
「道路管理者は、自転車の通行の安全を確保し、あわせて自転車の利用による国民の心身の健全な発達に資するため、道路法第四十八条の十三第一項の規定による指定をした道路又は同条第二項の規定による指定をした道路を設置するよう努めなければならない」(1項)
「国は、第一項の道路の設置の促進に資するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない」(3項)
とある(参照:イーガブ法令検索)。ヘルメットの着用を促す前に、自動車と完全に分離された自転車道などを行政は整備すべきだ。

 

三橋社長と警視庁の川嶋交通安全担当管理官

アンケート結果についての感想を述べる三橋社長(右)と警視庁交通総務課の川嶋康雄交通安全担当管理官。3月22日から、交番の警察官などは、自転車に乗る際にヘルメットを被るという

ダイチャリの新型車

ダイチャリの新型車。2023年4月から投入される。まずは約1万2000台中160台と珍しく、インスタグラムに写真を投稿するとヘルメットなどが当たるキャンペーンを実施する

ダイチャリ新型車のバッテリー

新型車の最大の特徴はバッテリー。最大100km走行可能な大容量。また、取り外せば災害時にUSB電源としても使用可能で、1本で約35台のスマートフォンを充電できる

ダイチャリ新型車のスイッチ

アシストはオン、オフのみで、強弱などのモードは廃された