ヘルメット着用の努力義務化に備え、知っておきたい8つのこと

目次

取材協力 警察庁広報室、カブト

カブトのアーバンヘルメット

シティサイクルでも違和感を与えない、ファッショナブルなヘルメット

 

ヘルメット着用の努力義務が4月1日から

昨年4月の道路交通法の一部改正に伴い、今年の4月1日から自転車に乗る全ての人にヘルメット着用の努力義務が課されるのはご承知のとおり。自転車に乗るときの基本ルールを定めた『自転車安全利用五則』の5番目も、「子どもはヘルメットを着用」だったものが(単に)「ヘルメットを着用」へと改められた。ただし、同じ五則でも信号無視や一時不停止などには「3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等」といった罰則があるもののヘルメットの未着用には罰則がないため、はたしてどれだけ守られるのかと懸念を抱く声も聞く。

 

未着用者の倍以上の致死率、さらに致命傷の過半が頭部という事実

もちろん自転車乗用時のヘルメットの着用は、事故の際に身の安全を守るためのもので、強制されずともかぶってしかるべき。警察庁も未着用で事故にあった人の致死率の高さ(着用者の2.2倍)や、死に至る原因となった傷の6割弱が頭部であった事実を示し、ヘルメットの重要性を訴えている(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html)。筆者自身もヘルメットをかぶらずに転倒して脳しんとうを起こしたことも、前転して頭から地面に落ちたもののヘルメットをかぶっていたお陰で無傷だったことも身を持って体験。今や「ヘルメットをかぶらないと不安」との境地に至っている。

 

ファッションアイテムとなるヘルメットが登場

それでも「シティサイクルでヘルメットはダサい」「ヘルメットをかぶると髪型が崩れる」「かぶっていないときのヘルメットが邪魔」といった理由から、ヘルメットの着用をためらう人もいる。女性をメインに、おしゃれに気を使う人はなおさらだろう。もちろんメーカーもその点への配慮は怠りなく、カブトではヘルメットをファッションアイテムの一つと捉え、シティサイクル+普段着でも違和感を与えない帽子タイプの「シクレ」や「デイズ」、最近ではキャップタイプの「リベロ」もラインナップに加えている。また、髪型が崩れるのは避けられないとしつつも、ファッショナブルでスマートな形状と豊富なカラバリをそろえることで抵抗感を和らげている。そして邪魔なヘルメットは持ち歩かず、駐輪時は車体に掛けておけばいい。盗難防止用のヘルメットロックやヘルメットホルダーもあるけれど、ヘルメットの通気口にワイヤロックを通し、車体にくくりつけるだけでOKだ。

シクレ

ファッションアイテムの一つとなるカブトのヘルメット
■シクレ(9240円)
サイズ:54〜57cm
重量:350g
カラー:ベージュ、チャコール、ブラウン

デイズ

■デイズ(9240円)
サイズ:54〜57cm
重量:325g
カラー:カーキ、ブラック

リベロ

■リベロ(9680円)
サイズ:54〜57cm 重量:315g
カラー:チャコール、ベージュ

ヘルメットロック

ヘルメットの普及を見据え、ヘルメットロックが登場

 

仕事でかぶる人が増え、街の光景が変える

着用する人が加速度的に増えれば、コロナ禍のマスクと同様に“人の目を気にして”ヘルメットをかぶる人も現れる。そこで鍵を握るのが、公務員や大手企業に勤める人の動向だ。特に自転車で巡回する警察官や荷物の運搬に自転車を利用する宅配便業者などは、半ば強制的にヘルメットの着用がなされるだろう。市民に着用を求める警察官は言わずもがな、宅配便業者もいざ事故にあった場合にヘルメットが未着用だと過失割合に影響し、損害を賠償する会社の負担が増すからだ。これは望むべくことではないものの、街の光景を変える原動力となるはずだ。

 

警察庁は罰則付きの義務化に対し、慎重な姿勢

一方で改正道路交通法の施行後、未着用の人に対して警察官がどのように対応するかを警察庁に問うたところ、「交通ルールと併せて周知徹底を図る」「ヘルメットの着用について指導啓発する」とのこと。将来の罰則付き義務化への布石なのかとの問いに対しても、「義務化による違反取り締まりによるよりも、交通安全教育・広報啓発によって普及・定着を図ることが重要」と慎重な姿勢を示す。ヘルメットの安全基準やかぶり方に関しても、「SGマークなど安全性を示すマークの付いたものを使い、あごひもを確実に締めるなどして正しく着用することを推奨」との表現に留まるが、事故が起きた場合は着用の有無はもちろんのこと、安全基準の有無やかぶり方も必要に応じて捜査を行うとしている。

 

自転車用ヘルメットの安全基準は自動車との衝突にも有効か?

この安全基準について日本国内では、前述のSGマークとJCF(日本自転車競技連盟)の公認もしくは推奨が一般的で、JCFの場合はストライカと呼ばれる重量物(4.70kg)をヘルメットをかぶった人頭模型に落とし、その模型に内蔵された加速度計で衝撃加速度を測定。それが300G以下であることと、150G以上を生じた場合の継続時間が4mm秒以下であることが条件となる。この測定環境は落車の際には概ね当てはまると思われるものの、自動車との衝突にはどうなのか。これについてカブトでは「突発的なアクシデントにはさまざまな要因が複合的に発生するため、その複合的要因を全てカバーすることは不可能に近い」としつつ、「安全基準はそれらのアクシデントを想定して作られており、定期的に見直し改定も行われている」「自動車との衝突だけを特別にとらえて言及する事柄でもない、大前提の条件である」との回答を寄せてくれた。

 

原付の保有台数減少には、ヘルメット着用義務化が影響

「ヘルメット着用の(努力)義務化によって自転車に乗る人が減り、それが日常における運動量の低下を招き、ひいては自転車事故による死亡者数の減少を上回る病気での死亡者の増大になる」といった見方もある。まずは義務化により、自転車に乗る人が減るか否かを検討しよう。参考となるのは1986年に行われた排気量50cc以下の第一種原動機付自転車、いわゆる原付のヘルメット着用義務化である。原付の保有台数は1985年の1460万9399台をピークに、90年には1353万9269台、95年には1165万5390台と減少に転じ、2020年には485万3131台と往時の3分の1にまで縮小してしまった。この推移を見る限り、ヘルメット着用義務化が影響を及ぼしていると言わざるを得ない。

 

運転免許もヘルメットも必要としない交通手段は皆無

ただし、これが日本における自転車のヘルメット着用(努力)義務化にもそのまま当てはまるかどうか。かつて原付に乗っていた人は、自転車を代替とすることができた。2000年に至るまで順調に増加し、その後も横ばいで推移する自転車の保有台数、さらに電動アシスト自転車(電アシ)の隆盛を見れば、それは明らかであろう。では、今現在電アシに乗っている人がヘルメットを着用せずに代替できる交通手段があるかといえば、答えは「ノー」と言わざるを得ない。注目を集める電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は自転車と同様にヘルメットの着用が努力義務となる予定で、どちらも将来的には義務となることも想定されている。となると近い将来において、運転免許の取得もヘルメットの着用も必要としない交通手段は皆無であり、否応なく自転車に乗り続けるしかないのである。