「自転車安全利用五則」が15年ぶりに改訂

警察庁交通対策本部は15年ぶりに「自転車安全利用五則」を改訂した。

(旧)自転車安全利用五則(2007年7月10日)
(1)自転車は、車道が原則、歩道は例外
(2)車道は左側を通行
(3)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
(4)安全ルールを守る
・飲酒運転・二人乗り・並進の禁止/夜間はライトを点灯/交差点での信号遵守と一時停止・安全確認
(5)子どもはヘルメットを着用

 

(新)自転車安全利用五則(2022年11月1日)
(1)車道が原則、左側を通行(歩道は例外、歩行者を優先)
(2)交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
(3)夜間はライトを点灯
(4)飲酒運転は禁止
(5)ヘルメットを着用

警視庁 自転車の交通事故防止

 

自転車活用推進研究会・小林氏の解説:

政府は2022年11月1日に「自転車安全利用五則」を15年ぶりに見直した。新旧を比べると大きな変更は三つある。

まず「(歩道は)車道寄りを徐行」が消え、根本的な考え方が変わった。
私が2007年以来、ずっと批判してきたのは、第一則で「車道が原則、歩道は例外」と言っておきながら、第三則で歩道は徐行すれば走れる、と都合よく解釈できる曖昧さだった。だから、(一)車道通行原則、(二)左側通行の二つをすっ飛ばして歩道通行が常態化してきた。今回の改訂でようやく「歩道は例外」とスッキリさせてくれたのはありがたい。巻き添えを食らって「徐行」までが消えたが、徐行せず歩道で歩行者に危険を感じさせたり、歩行の邪魔をすれば検挙するとのことなので、良い効果を期待したい。

次に「安全ルールを守る」という大雑把な書き方をシンプルにした。
世界で一番複雑怪奇な我が国の道路交通法は守る側はもちろん、取り締まる側ですらよくわからない。ずらずらと禁止項目を並べるより、事故に直結する危険行為に絞ったほうがわかりやすい。「旧」にあった「二人乗り禁止」は、45道府県がタンデム自転車の公道通行を解禁して、遅れている東京と神奈川もやがて追随するだろうから実態と乖離していた。

「新」では緊急性の高い「交差点では信号と一時停止を守って、安全確認」「夜間はライトを点灯」「飲酒運転は禁止」の3項目だけにした。これなら現場の警察官も悩まない。今後はスクランブル交差点を歩行者に混じって突破する輩を是非逮捕してもらいたい。せめてここに挙がった三つくらいは守ってくれないと、安心して街を歩けなくなる。

最後に「子どもはヘルメットを着用」から「子どもは」が消えた。
道交法改正ですべての自転車利用者に着用を義務付けたからだ。電動キックボードのシェアリングサービスが着用を奨励する形(着用義務なし)でスタートしている現状と平仄が合わない。現時点でシェア電動キックボードなどは小型特殊自動車の特例となっているが、2年以内に施行される新法によって、特定小型原動機付自転車カテゴリーに吸収統合されたらどうなるのか、新たな勘違いを産むのではないかと心配するのは私だけではあるまい。

ともあれ交通管理側(警察)は動いた。足並みをそろえて、自転車が安全に通行できる道路整備を急がねばならない。利用五則に呼応した「自転車環境整備五則」を考える必要もありそうだ。

NPO自転車活用推進研究会