第一回サイクルスクールPRO参加レポート

目次

自転車・トライアスロン専門スタジオ「スマートコーチング」が主催し、JCGA公認サイクリングガイド資格保持者が講師を勤める「サイクルスクールPRO」で、ハンドサインの基本、グループライドの引率方法、事故発生時の対応プログラムなどを学んできた。

開催日時:2022年7月26日(火)
会場:月の輪自動車教習所(滋賀県草津市)
主催:株式会社スマートコーチング
協賛:一般財団法人自転車新文化基金會
協力:一般社団法人日本サイクリングガイド協会

 

サイクルスクールプロ

 

有資格者が講師のB to Bサイクルスクール

サイクルスクールPROは、一般社団法人日本サイクリングガイド協会が公認する資格保持者が講師を務め、乗車・降車・発信・停止やハンドサインの出し方の基本に始まり、道路交通法に基づいたグループライドの引率方法・絶対的に必要な基本技術の習得・事故発生時の対応などのプログラムを学ぶことで、国内全体における自転車の交通マナーの向上と、事故問題について全てのサイクリストに対して、共通認識を深めることを目的としている。

参加者は一般サイクリストや入門者と接する機会が多い自転車メーカー、サイクルショップ、自治体におけるサイクルツーリズム担当者などの自転車事業関係者だ。この日は27名の参加で遠くは、福岡、高知のサイクルショップのスタッフも参加していた。また、この講習はレベルに応じて3つのクラスに分けられているので、初めて講習を受けるひとでも安心だ。実際に参加されていた方に聞くと、ふだんはソロライドばかりだが、これからショップライドを計画しているので参加したというひともいた。

 

1限目~6限目までの充実した講義内容

当日の朝、〇〇限目と書いてあるスケジュール表を見て、お勉強が苦手だった筆者は学生時代を思い出し、「えーっ、6限目まであるんや……」と若干ひるんでしまった(汗)。しかし、今日は講義を受けながら取材レポートを書くという重要なミッションを任せられたので、気合を入れて臨んだ。
具体的な講義内容は以下の通り。

 

サイクルスクールプロの時間割

 

信号の停止位置を確認

ドライバーからの死角を確認

信号での停止位置をドライバーからの死角と共に確認する。実際にまったく見えないゾーンがあることを認識できる

 

二段階右折

二段階右折

二段階右折時の待機場所も講師から細かく指導が入る。信号機があるのも自動車教習所を使うメリットのひとつだ

 

ハンドサインのトレーニング

ハンドサインのトレーニングも周回を先頭交代しながら全員が行う

 

スラローム

基本スキルのスラローム。足を回し続け、後ろ気味にサドルに座り腕が突っ張らないよう姿勢を低くするのがポイント

 

8の字の練習

ハンドルに荷重せず、足を回し続けることで左右のペダルバランスで8の字を練習する。目線を進行方向に向けることがポイントだが、意外にも足を回し続けることが難しいと気づかされた

 

事故発生時における安全確保の意識と手順を学ぶ

事故発生時における安全確保の意識と手順を学ぶ

事故発生時における安全確保の意識と手順を学ぶ。負傷者ケアよりも同行者と後続車両に対する安全確保が優先という意味を理解する

 

公道でハンドサインの練習

自動車教習所内で学んだことを意識して、公道でハンドサインほか実践練習

 

サイクルスクールPROで学んだこと

スポーツバイクの乗り方&降り方、発進の仕方やブレーキのかけ方など、経験が長ければ長いほど簡単に捉えがちだが、初めてスポーツバイクに乗るひとにとっては、それがいかに難しいことなのかをまずは知ることができた。例えばクロスバイクの変速レバーには1~3の数字があるが、「1が軽くて、3が重くなる」という教え方をすると、変速する度に手元の数字を見てしまって前方不注意となるので、「手元を見ないでレバーを操作して、軽くなる、重くなる感覚をつかむ」と伝えたほうが安全だと教わった。

また、合図はハンドサインと声掛けの両方やることが重要で、さらに大きなジェスチャーでやることで、最後尾のひとだけでなく、その後ろの車にも伝えることができるという。そして自分が思っているより早めに合図を出し、しかも性急にならないよう長くゆっくり動かすことがポイントだと教わった。そして、教わったことを自動車教習所の大周回を先頭交代走行しながら実践することで、自分ができること、できないことがすぐにわかる。実際、私の場合、集団走行の先頭で後方確認する際にペダルを止めるくせがある、と講師に何度も指摘された。先頭がペダルを止めることで、速度が下がり、5人グループなら最後尾のひとがブレーキを掛けることになると、その場で具体的に教えてもらえるので理解度が増す。

さらに落車事故対応で最も大切なのは、負傷者ケアよりも同行者と他の車両に対する安全確保が最優先だと教わった。確かに人間心理として、同行者は真っ先に負傷者に「大丈夫ですか?」といきがちであるが、道路上に負傷者が横たわっている場合、まずはバイクを歩道や路側などに上げ、次に後続の車両に止まってもらい、事情を説明し、ハザードランプを点灯してもらうことで、初期の安全確保が可能となる。ここでは具体的な車両の止め方の練習をした。大切なのはドライバーの目を見て、手のひらを大きく向けて訴えること。事故は誰しも起こしたくないが、もしものときの備えは必要だと感じた。

朝一のスケジュールを見て、若干ひるんでしまった筆者だが、どの講義も全て濃厚で、集中して聞かないとついていけないので、時間はあっという間に経ち、6限目が終わると参加者は皆へろへろだった。またこのスクールはサイクルショップのスタッフだけでなく、日頃からグループライドをしている一般のサイクリストでも受講は可能なので、たとえ上級者であっても自分は大丈夫だとは決めつけず、フラットな気持ちで教わることをおすすめする。

<今後の開催予定>
・9月6日(火)茨城県・守谷自動車学校
https://20220906sccycleschoolpro.peatix.com
・9月27日(火)滋賀県・月の輪自動車教習所
https://20220927sccycleschoolpro.peatix.com
・10月18日(火)茨城県・守谷自動車学校
https://20221018sccycleschoolpro.peatix.com

問・info@smart-coaching.info

 

総合監修を務める安藤隼人さんの想いとは?

安藤隼人さん

「道交法の周知、スポーツバイクユーザーのマナーが悪いという問題解決をしようと、2016年より自動車教習所を使った活動を始め、サイクルスクールでは延べ1500名以上、サイクルセーフティも400名以上の方にご参加いただいたのですが、まだまだ業界内での共通認識が不足していると思っています。スポーツバイクユーザーはちゃんとしてるよね!と言われるような世の中にしていきたいというのが私の想いです。また自動車学校は車の免許を取得する場所なので、実際の公道を想定した道路があり、クローズされていていることから、高速走行や並走も可能なので、講習には最適な場所だと思います。」

「また、行政がサイクルツーリズムを頑張ってブルーラインなどを引いていただけるのは大変喜ばしいことですが、それと同時に走り方、マナーといったソフトの部分を一緒に勉強していけたらと思います。そうすることで、観光誘客と地元住民の相互理解という両方の着地点を見出せるのではないでしょうか。」
そういった観点からもこのスクールは行政の自転車施策担当の方にも参加をおすすめしたいと思う。