UCIワールドチーム使用のウィリエール・フィランテSLRを試乗!

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レーシングバイクのブランニューモデル、それがフィランテSLRだ。チェントディエチプロで培ったエアロダイナミクスをさらにブラッシュアップし、素材にはゼロSLRと同じ最新のカーボン素材と液晶ポリマーを採用。これにより卓越した剛性重量比を達成している。マヴィックのスピードリリースに対応するなど、まさにプロ選手のために誕生したモデルだ。

アスタナ・プレミアテックが使用したフィランテSLR

@AstanaPremTech

2007年を公式な設立年とするチーム・アスタナ。アルベルト・コンタドールやヴィンチェンツォ・ニバリらが三大ツールで大活躍するなど、UCIワールドツアーにおいてなくてはならない存第だ。ゼネラルマネージャーはあのアレクサンドル・ヴィノクロフで、2020年からウィリエール トリエスティーナの機材を使用する。2021年はカナダの企業が共同スポンサーとなり、チーム設立以来初めて企業名を加えた「アスタナ・プレミアテック」に。

今回の試乗車-フィランテSLR-

ウィリエール・フィランテSLR

ブランド誕生100周年の際に誕生したチェントシリーズと、軽量クライミングバイクのゼロシリーズ。この2本立てでレーシングモデルのラインナップを構築してきたイタリアのウィリエール トリエスティーナ(以下、ウィリエール)が、2021年モデルとして突如発表したのがフィランテSLRだ。エアロロードとしてはブランド初のディスクブレーキ専用モデルであり、しかもアッセンブル可能なのは電動コンポのみという潔さだ。フィランテとはイタリア語で飛行機雲を意味し、その名のとおりエアロダイナミクスを徹底的に追求している。ダウンチューブの断面形状は、チェントディエチプロのNACAプロファイルをベースに、ヨー角の空気抵抗を軽減するべく下流側の角をなだらかに。また、特徴的なのはワイドスパンのフォークブレードで、チェントディエチプロに対して13.6%も拡幅している。素材はゼロSLRと同じHUS-MOD(ハスモッド)カーボンとLCP(リキッド・クリスタル・ポリマー)の組み合わせで、これによりリムブレーキ版のチェントディエチプロに対して、ディスクブレーキモデルながら110gもの軽量化を達成しているのだ。

日本仕様はゼロSLRと共通のステム一体型ハンドル「ゼロバー」が標準となり、希望により専用設計の「フィランテバー」も選択可能。どちらもケーブル類のフル内装化に対応

専用設計のシートポストは165gを公称。オフセットは0mmと15mmの2種類を用意する。固定はウス式で、4mmのアーレンキーを使用。トップチューブ上面には締め付けトルク値の印字も

シートチューブ下方はリヤタイヤに沿うデザインを採用。リヤセンターをフレームサイズごとに微妙に変えているあたりに真摯さが感じられる。ボトムブラケットの規格はBB86だ

ダウンチューブの断面形状は、チェントディエチプロのNACAプロファイルをベースに下流側の角をなだらかにすることで、さまざまなヨー角からの空気抵抗を低減することに成功

ヘッドベアリングは上下とも1-1/4インチを採用。カーボンコラムは安全性の確保と剛性向上のため丸断面を採用する。なお、フレーム自体は電動コンポ専用設計となっている

スルーアクスルを完全に抜かなくてもホイールの脱着が可能なマヴィックのスピードリリースに対応。そのためフロントは右側が、リヤは左側がオープンエンドとなっている

フィランテSLRインプレッション-横風も上りも許容する次世代エアロ-

インプレッションライダー/大屋雄一。初めて購入したアルミフレームがウィリエールのゲロルシュタイナーレプリカだったフリーランスライター。自転車はジャンルを問わず探究心旺盛で、モータースポーツにも造詣が深い。

試乗車のカラーリングはベルベットレッドと呼ばれる光沢の深い赤で、フォークやシートステーなどにシンプルなグラフィックが入るのみ。それによってフィランテSLRの美しい造型がより際立っており、眺めているだけでも所有欲を満たしてくれるのはさすがイタリアンブランドだ。

ミケのカーボンホイールを履いた試乗車は、まさにレーシングバイクそのものだ。踏み込みに対するレスポンスも、入力から旋回に移行するまでの反応も、全てがダイレクトなのだ。特に感心したのはステアリングの動きのスムーズさで、これがハンドリングの良さにつながっている。真円コラムのままケーブル類のフル内装化を達成するため、わざわざヘッドベアリングの内径を独自サイズとしており、これが功を奏しているようだ。

試乗日は春一番並みに風が強かったため、ディープリムによる横風の影響を何度も食らったが、そのたびにフロントホイールが瞬間的に向きを変えるものの、車体そのものが横倒しになるような力はあまり感じなかった。プラシーボかもしれないが、横風の影響を比較的受けにくいエアロロードと言ってもいいだろう。

ダンシングで感じる振りの軽さやトレース性の優秀さなどから、山岳ステージでのポテンシャルも相当に高そうだ。エアロロードのジャンルはこのフィランテSLRをもって次のフェーズに移行したような気すらする。

ウィリエールについて-イタリアでも数少ない100年ブランド-

@AstanaPremTech

1906年に自転車工房「スチールホース」として創業。1945年に社名を「ウィリエール トリエスティーナ」に。この時代からプロチームに機材を供給し、ツールやジロなどのビッグレースを筆頭に数多くの成功を収めている。戦後はスクーター人気に押されて1952年に工場を一旦閉鎖するも、ガスタルデロ兄弟の手によって1969年に再興し、イタリア屈指のレーシングバイクブランドとして確固たる地位を築いた。2021年はアスタナ・プレミアテックとトタル・ディレクト・エネルジーに機材を供給する。

FILANTE SLR

●価格/59万円(フレームセット・レッド、マットブラック/レッド・税抜)、69万円(フレームセット・グレー/グリーン・税抜)、74万円(フレームセット・アスタナレプリカ・税抜)、74万円(フレームセット・トタル・ディレクトエネルジーレプリカ・税抜)、120万円(シマノ・デュラエースDi2完成車、レッド、マットブラック/レッド・税抜)、84万円(シマノ・アルテグラDi2完成車、レッド、マットブラック/レッド・税抜)
●フレーム/カーボン
●フォーク/カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・アルテグラDi2 ※試乗車
●ホイール/ウィリエールオリジナル・ULT38KT ※試乗車
●ハンドル/ウィリエール・ゼロバー
●ステム/ウィリエール・ゼロバー
●シートポスト/ウィリエール・フィランテSLR専用
●サドル/ プロロゴ・スクラッチM5 ※試乗車