自転車にも適用の「あおり運転」とは? 注意点を解説

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発端は共同通信発のニュース

「自転車のあおり運転『危険行為』 14歳以上、違反2回で講習」。ネット上に流れたこの共同通信発のニュースを発端に、さまざまな記事が自転車の〝あおり運転″について取り上げた。

そもそもは6月に閉会した通常国会において自動車運転死傷行為処罰法が改正され、いわゆる〝あおり運転″が処罰対象に加わったことに由来する。車同士のあおり運転ならわかるが、自転車でのあおり運転と言われても、頭に「?」が浮かんだサイクリストも多いのではないだろうか。本記事ではこの法解釈について、警察庁への取材を元に紐解いていく。

停止した車を危険運転の処罰対象とするために

2017年6月に東名高速道路において、故意に停車した車に進路をふさがれ、後続の家族4人が乗った車が停車。その車にトラックが追突して夫婦2人が死亡した事故では、裁判において検察側が、故意に停車した車の運転手に対し危険運転致死傷罪を主張し、裁判所もそれを認めた。しかし同法は「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する」ことが条件とされ、「徐行または停止させる行為に当てはめるのは拡大解釈」との疑義が示された。そこで徐行または停止させる行為を追加したのが今回の改正である。

「STOP! あおり運転!」のチラシ 出典:警察庁ウェブサイト

 

「妨害運転罪」は〝あおり運転″そのものを罰するもの

同法はその名のとおり被害者を死傷させた場合に適用されるわけだが、〝あおり運転″そのものを罰するため、同国会において道路交通法(道交法)を改正し、創設されたのが「妨害運転罪」である。具体的には①車間距離を極端に詰める(車間距離不保持)、②急な進路変更を行う(進路変更禁止違反)、③急ブレーキをかける(急ブレーキ禁止違反)、④危険な追い越し(追越しの方法違反)、⑤対向車線にはみ出す(通行区分違反)、⑥執ようなクラクション(警音器使用制限違反)、⑦執ようなパッシング(減光等義務違反)、⑧幅寄せや蛇行運転(安全運転義務違反)、⑨高速道路での低速走行(最低速度違反)、⑩高速道路での駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)という10類型が示され、違反した場合は最大で5年の懲役または100万円の罰金が科されることになった。また、妨害運転をした者は一発で運転免許を取り消されることになる。

 

軽車両である自転車にも「妨害運転罪」は適用

「自動車運転死傷行為処罰法」が自動車(自動二輪車や原動機付自転車を含む)に対象を限る一方、「妨害運転罪」は軽車両である自転車も含んでおり、それが冒頭で述べた「自転車のあおり運転『危険行為』 14歳以上、違反2回で講習」という記事に示されたというわけだ。前述した10類型に沿うならば、「ドラフティング効果を期待して、車のすぐ後ろを走る」(車間距離不保持)、「渋滞をすり抜ける」(進路変更禁止違反・追越しの方法違反)、「車道を逆走する」(通行区分違反)などが当てはまる。

 

「妨害運転罪」が適用されれば懲役又は罰金も

「自動車運転死傷行為処罰法」が自動車(自動二輪車や原動機付自転車を含む)に対象を限る一方、「妨害運転罪」は軽車両である自転車も含んでおり、それが冒頭で述べた「自転車のあおり運転『危険行為』 14歳以上、違反2回で講習」という記事に示されたというわけだ

これまでも道交法では信号無視や酒酔い運転、指定場所一時不停止など14項目が自転車の危険行為として規定されていたのだが、そこに妨害運転が加わった。なお、冒頭の記事には「14歳以上の場合、危険行為は3年間に2回の摘発で安全講習が義務となり、受講しないと5万円以下の罰金と定められている」とあるが、これは行政罰であって、酒酔い運転などは他に「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という刑事罰も科されており、これは自転車での妨害運転においても同様だ(「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」もしくは「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」)。

 

妨害運転の認定には、ドライブレコーダーとGPSが有効

とはいえ自転車が加害者になる場合であれ被害者になる場合であれ、妨害運転かどうかの認定には、極めて高い壁が立ちはだかる。他車の走行を妨げる目的で行っていることを、事実として証明する必要があるからだ。例えば急ブレーキや対向車線へのはみ出しであっても、それが前方の障害物を避けるためというケースも十分に考えられる。

サイクリック

サイクリックの「FLY6CE GENERATION2」リヤライトとカメラが一体になっている

 

となると求められるのが客観的証拠であり、それは第三者の証言やブレーキ痕などはもちろんのこと、最も威力を発揮すると思われるのがドライブレコーダーとGPSだ。自転車にドライブレコーダーというとピンとこないかもしれないが、アクションカメラならドライブレコーダーとしても利用できるし、専用品ではライトと一体になったものもある。前だけでなく後ろにも取り付ければ、後方からの他車の接近に対しても有効だ。

GPSは誤差が10m程度あるため、対向車線にはみ出したかどうかの判定などに利用するには無理があるが、準天頂衛星「みちびき」の補正情報を加えることで誤差は1m程度に向上。これなら証拠として十分に通用するはずだ。

埼玉県桶川市の〝ひょっこりはん″や東京都杉並区の〝自転車当たり屋″のように、報道では自転車での妨害運転がクローズアップされていたが、やはり自転車は妨害運転の被害者となるケースが大半であろう。そのありがたくない未来に備え、ドライブレコーダーやGPSの装着を強く勧めたい。