「パパチャリ」eバイクに500km乗ってわかったこと

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子育て世代にとって自転車選びは、単なる移動手段の選択ではなく、日々の生活そのものに密接に関わる重要なテーマ。そんな中で本誌編集長エリグチが選んだのは、一般的な電動アシスト付き自転車ではなく、電動アシスト付きのスポーツバイク「eバイク」でした。
今回は、子供乗せ用途としてeバイクを導入しそれを「パパチャリ」と呼びながら、約500kmを日常の中で乗り込んでみたからこそ見えてきた、その実用性と楽しさのバランスについてお伝えします。

eツール

日本におけるeバイクという立ち位置

まず前提として、日本におけるeバイクはまだ発展途上のカテゴリーだと言えるでしょう。電動アシスト付き自転車(以下、「電動ママチャリ」とします)は、すでに生活インフラとして広く普及している一方で、スポーツバイクに電動ドライブユニットを組み合わせたeバイクは、価格帯や用途のイメージの曖昧さもあり、一般的にはまだ浸透しきっていません。

さらに近年では、いわゆるフル電動に近い違法車両の存在もあり、「eバイク」という言葉そのものに誤解が含まれてしまっている側面もあります。しかし本来のeバイクは、サイクリングの楽しさをより広げるための乗り物。また、海外では自転車がトレッキングバイクをベースとした文化的背景もあり、カーゴバイクやコミューターバイクとして生活に溶け込む存在としても普及が進んでいます。
そのうえで、eバイクとは、「スポーツ」と「日常」の両方を横断する存在だと言えるかもしれません。

なぜママチャリではなくeバイクなのか

子供乗せ自転車として考えた場合、電動ママチャリが最適解であることは疑いようがありません。重い荷物や子供を乗せてもスムーズかつパワフルに走り出せるアシスト特性や、乗り降り・駐輪時の安定性、各種街乗り装備の充実度など、生活に最適化された完成度の高さは、まさに日本に住む人が享受できる大きな魅力です。

それでもあえて僕がeバイクを選んだ理由は、自転車を趣味とする者として、「自転車に乗る楽しさ」を日常の中でも維持したかったから。単なる移動手段ではなく、乗ること自体が楽しいという感覚を手放したくなかったというのが正直なところで、その両立を目指した結果としての選択でした。

購入したeバイク:BRUNO「e-tool*」

今回選んだのは、BRUNO(ブルーノ)のe-tool(イーツール)というモデルです。

20インチの小径ホイールを採用しながらも、太めのブロックタイヤによる安定感と低床フレームによる乗り降りのしやすさを兼ね備え、「日常で使い倒せるeバイク」という思想が明確に反映された一台です。

リヤキャリヤは最大30kgまで対応とチャイルドシートの装着にも対応する高い積載能力を持ち、子供を乗せる用途をしっかりと想定した設計となっています。また、バッテリーは取り外し可能な外装式で、集合住宅などで車体を室内に持ち込めない環境でも現実的に運用できる点も、日常使いにおいて大きな利点でした。

ここからは、このような子供乗せ用途のeバイクを、「ママチャリ」に対比させるかたちで「パパチャリ」と呼称します。

eツール

送迎というリアルな使用環境で見えたもの

今現在の僕の実際の使用シーンは非常にシンプル。朝に子供を乗せて保育園へ送り、そのままの足で編集部へ通勤という流れが基本になります。この一連の中で感じるのは、これまでスポーツバイク通勤で当たり前だった小さな負担が確実に軽減されているということです。

信号での発進や、河川敷に上がるための短い坂、荷物を積んだ状態での加速といった場面では、電動アシストがしっかりと効いてきて、脚への負担を和らげてくれます。それでいて、完全に「楽すぎる」わけではなく、自分の脚で走っている感覚がしっかりと残るため、移動が単なる作業にならないという点が非常に印象的でした。

ドライブユニット

正直なところ、ママチャリほどの「楽さ」はない

一方で、パパチャリeバイクが電動ママチャリほどの分かりやすい快適さを持っていないのも事実です。発進時にはある程度の踏み込みが必要で、「踏めばガッと進む」といった直感的なアシストではありませんし、スタンドや装備面の完成度といった点でも、日常用途に特化して進化してきたママチャリの方が優れていると感じる場面もあります。めちゃくちゃ正直な話、僕は妻に「eバイクより普通の電動ママチャリに乗りたい」と怒られました(なのでブリヂストン・Bikke(ビッケ)と二台運用中)。

実際に一般的なユーザーの視点で見れば、ママチャリの方が使いやすいと感じるのは自然なことであり、この点はeバイクの弱点として正直に受け止めるべき部分だと思います。

eツールとビッケ

それでも乗りたくなる理由は「楽しさ」

それでもなお、このパパチャリeバイクに乗り続けたいと思わせる最大の理由は、「楽しいから」という一点に尽きます。電動アシストがありつつも、車体性能がやはりスポーツ用途を前提しているからこそ、スピードが上がると自分の脚で走る感覚が強くなります。特に時速20〜25km付近の速度域では、さらに踏み込んでみたいという気持ちが自然と湧いてきます。

この感覚は明らかに僕らの好きなスポーツバイクの延長線上にあるものであり、その結果として、保育園送迎という目的が終わった後にそのまま遠回りをして河川敷でサイクリングを楽しむ、そんな余裕が自然に生まれるようになりました。
もちろんそれは人力スポーツバイクたちでもあるのですが、それが毎日となると、このちょっとした気楽さや余裕が大事になってくるものです。

さらにeバイクの魅力として大きいのが、スポーツバイク由来のカスタム性です。タイヤやハンドル、サドルといったパーツを変更することで、用途に合わせた最適な仕様へと仕上げていくことができ、その過程自体も楽しみの一つになります。

たとえ子供を乗せる期間が終わった後も、そのまま遊びのために使い続けることができる点や、あるいは家族に乗ってもらって一緒にサイクリングを楽しむことも。ライフステージの変化に寄り添ってくれる乗り物であるということも、大きな価値だと感じています。

タイヤ ハンドル サドル

eバイクは「日常と非日常の境界」にある乗り物

こうして500km乗ってみて改めて感じたのは、eバイクは何か一つの用途に特化した乗り物ではなく、「日常と非日常の境界」にある自転車だということです。

ママチャリのような便利さ(けれど使いこなすことを楽しめる不便さ)。スポーツバイクのような走る楽しさ(だけどそれをいつ何時誰もが味わいやすいもの)。
それぞれ中間に位置することで、両方の価値を行き来できる存在であり、それが日々の移動を豊かな体験へと変えてくれます。

eバイクは、便利さだけでもなく、楽しさだけでもない、それら両方を日常に取り込むことができるカテゴリー。保育園送迎という現実的な用途の中に、サイクリングという非日常的な楽しさが自然に入り込むことで、自転車との関係性そのものが変わっていきます。

何よりも「パパチャリ」、すなわち家族であり子供との時間を過ごすための自転車。自身がペダルを心地良く回すその真後ろで、子がふんふんと鼻歌を歌っている。そんな今しか過ごすことができない時間を感じられた時点で、僕はもうこのパパチャリeバイクを手に入れて本当に良かったと思えました。
パパチャリは結果として、家族皆のライフスタイルを広げてくれる存在。それはeバイクというカテゴリーが持つ可能性かもしれません。

世の親世代のサイクリストの皆さん、せっかく自転車が好きでここまで来たんです。こんな選択肢もアリではないでしょうか?

 

 

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「OGK技研・urban iki リヤシート」【CS編集長エリグチの「パパチャリeバイクカスタム」モノ語り】その1