電動コンポ搭載で税込40万円代前半のカーボンロードバイク ジャイアント・TCR アドバンスド 1 KOMに試乗
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第4世代プロペルの登場で話題のジャイアントだが、同社のピュアレーシングモデルのアイコンと言えばTCRを忘れてはならない。「TCR アドバンスド1 KOM」は、2024年3月の現行TCR発表時からラインナップされている定番モデルで、シマノ・105 Di2コンポを採用しながら42万9000円というお手頃な価格を誇る。登場から2年が経過した今、あらためてその魅力に迫ろう。
ジャイアント・TCR アドバンスド 1 KOMの特徴

ジャイアント・TCR アドバンスド 1 KOM ●価格/42万9000円 ●試乗車サイズ/S ●カラー/マーズダスト

トップチューブを傾斜させたスローピングデザインを引っ提げ、ジャイアントの「TCR」がデビューしたのは1997年のこと。2002年の第2世代で早くもフルカーボンフレームをラインナップ。続く2008年の第5世代ではプレスフィットBBや内装ケーブルルーティングを導入。そして2016年の第8世代で初めてディスクブレーキが採用された。今となっては見慣れたスローピングデザインだが、それをロードバイクで最初に導入したのはTCRであり、どれだけ革新的かつ有益であったかが分かるだろう。
現行の第10世代は2年前の2024年に登場。第9世代に対して空力性能と剛性の向上、さらなる軽量化をコンセプトに開発が進められた。フレームセットのバリエーションは、上位から「アドバンスドSL」、「アドバンスド プロ」、「アドバンスド」の3種類で、今回インプレッションする「アドバンスド」は、フレーム及びフォークの双方にアドバンスドグレードカーボンを採用。TCRらしい軽快な走りを維持しつつ、手に取りやすい価格を実現している。
ここに紹介する「TCR アドバンスド 1 KOM」はシマノ・105 Di2仕様となる。アルミ製のホイールやハンドルなど軽量化の余地を十分に残しながらも完成車重量は8.3kgに仕上がっており、シリーズを通じてTCRが軽量なレーシングモデルだということが分かるだろう。

フォークには、広い範囲のヨー角で空気抵抗を低減する独自の翼断面形状「トランスケイテッド・エクリプス」を採用しエアロ性能を向上。ワイドなタイヤクリアランスを持ち、最大33mmを許容する

50×34T、11-36Tというワイド&ローレシオのギヤ設定により、モデル名の末尾に「KOM=キング・オブ・マウンテン」と入っている

第10世代のTCRにおける空気抵抗の削減に大きく貢献しているのが、ケーブル類の内装化だ。コンタクトエアロライトステムのフェイスプレート下部はケーブルガイドの役割も果たす

前後とも36mmハイトのアルミリムに、タイヤはジャイアントのガヴィア コース1(25C)を組み合わせる

カーボン素材でTCR専用設計のバリアントシートポストを採用。この断面形状にもトランケイテッド・エリプスが取り入れられている

サドルは、エルゴノミックカットアウトデザインを採用したジャイアントのアプローチ。ユニクリップシステムにより、テールランプなどさまざまなアイテムがスマートに装着可能だ
ジャイアント・TCR アドバンスド 1 KOM スペック
●価格/42万9000円(税込)
●フレーム&フォーク/アドバンスド カーボン
●サイズ/XS、S、M、M/L
●カラー/マーズダスト、アスファルトグリーン
●メインコンポーネント/シマノ・105 Di2
●ホイール/ジャイアント・P-R2 ディスク ホイールセット
●タイヤ/ジャイアント・ガヴィア コース 1 700x25c
●ハンドル/ジャイアント・コンタクト
●ステム/ジャイアント・コンタクト エアロライト
●サドル/ジャイアント・アプローチ
●シートポスト/ジャイアント・ヴァリアント コンポジット
●参考重量/8.3kg(Sサイズ・ペダルなし)
ジャイアント・TCR アドバンスド 1 KOM試乗インプレッション〜クリアな加速フィール、これがいい!

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト 大屋雄一/モーターサイクルにも造詣が深いフリーランスライター。ヒルクライム、エンデューロ、ブルベ、シクロクロス、MTBレース、ママチャリ耐久、仮装レース、バイクパッキングなど、自転車遊びを一通り経験して今に至る。今年は12年ぶりに富士ヒルにエントリーした
ジャイアントのTCR アドバンスドは、かつて「TCR コンポジット」の名で展開されていたモデルであり、筆者も18年前にそのフレームセットを手に入れたひとりだ。デビュー当初からコストパフォーマンスの高さで頭ひとつ抜きん出た存在だったが、内容的には他ブランドなら確実にワンランク上の価格帯に位置する仕上がりだった。TCRアドバンスドは常にロードバイクの“ベンチマーク”を塗り替え続けてきた存在であり、その根底にはエントリーユーザーを本気で取り込み、育てていこうとするジャイアントの強い意思が感じられる。
今回試乗したのは、その最新世代にあたる「TCR アドバンスド 1 KOM」だ。
シマノ・105 Di2のスリムなブラケットに手を添えて走り出す。踏み出した瞬間から自然と身体に馴染み、まるで長く乗り込んできたかのような安心感があるのは、歴代TCR アドバンスドに共通する美点だ。軽量化の余地が残されたパーツ構成ながら、走りはとても軽快である。バイク全体が意思を持ったかのように前へ前へと進もうとする。ペダリングに対するレスポンスは鋭く、それでいて決してピーキーではない。とりわけ上りでダンシングに移行した際の伸びは見事で、踏み込んだ力がほとんどロスなく推進力へと変換されていくような感覚がある。それでいて、踏み負けるような過剛性感は皆無だ。このクリアな加速フィールは同価格帯の中でも明らかにワンランク上にあり、「速い」だけでなく「気持ち良い」と思わせる完成度に達している。これは「味わい」と表現を変えてもいいだろう。
その優れた走りの質を文字どおり足元から支えているのが、同価格帯で標準装着されること自体が稀少なTLRタイヤだ。転がり出しは軽く、それでいてコーナリング時にはしっかりとアスファルトをつかむ安心感が返ってくる。急減速を繰り返すシーンでもグリップ力は安定しており、ライダーに余計な緊張を強いることがない。さらに特筆すべきは快適性の高さで、荒れた路面でも突き上げ感は穏やかだ。これについてはしなやかなフレーム剛性との相乗効果もあり、長時間のライドでも確実にアドバンテージとなるだろう。実測28mm幅相当のタイヤもバイクの総合力を底上げしている。
KOMの名の由来であるワイド&ローレシオのギヤ設定も、実際に走らせてみるとその恩恵は明確だ。最軽ギヤは34×36Tであり、10%を超えるきつい勾配でも過度に構える必要はなく、一定のリズムを保ったまま上り続けることができる。さらにシマノ・105 Di2の存在も大きく、ペダルにトルクをかけた状態でも躊躇なく変速できるその正確性は、ヒルクライムやレースシーンにおいて確実な武器となるはずだ。
こうして実際に走らせてみると、第10世代へと進化した最新のTCRアドバンスドもまた、“ロードバイクのベンチマーク”であり続けていることを強く実感する。シマノ・105 Di2を採用する競合モデルと比較しても、その走行性能は明らかにワンランク上に位置し、しかも軽量化などさらなる伸び代も残されている。レース志向のライダーはもちろん、ロングライドを快適かつ速く走りたいサイクリストにとっても、この1台が有力な選択肢となることは間違いない。
Brand Info〜ジャイアントについて
台湾に本社を置くジャイアントは、自転車業界のリーディングカンパニーだ。1972年の創業以来、他社のOEM生産で培った高い技術力を武器に、自社ブランドを展開。軽量なアルミフレームや、現代ロードバイクの標準となったスローピングフレーム(コンパクトロード)の開発など、業界に革新をもたらしてきた。最大の強みは、「自社工場での一貫生産」による圧倒的なコストパフォーマンス。同価格帯であれば他社ブランドよりも1つ上のグレードのコンポを搭載することが多く、初心者からベテラン、そしてプロにまで幅広い層に支持されている。











