達人が教えるロードバイク輪行のコツ

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  • photo 岩崎竜太

text●中谷亮太/編集部

ロードバイクといったスポーツ自転車で輪行をしている人、あるいはこれから輪行をしてみたいと思っている人に向けて、輪行の達人に聞いたテクニックをまとめてみた。今回は油圧式ディスクブレーキ仕様のロードバイクと最も一般的な前後輪を外すタイプの輪行袋を例にする。輪行にまつわるあなたのお悩みを解決だ。

達人に聞くロードバイク輪行のコツ

 

自転車を分解するコツ

本記事のアドバイザー:アズマ産業 伊美哲也さん。アズマ産業の代表取締役かつ輪行のスペシャリスト。国産輪行袋「オーストリッチ」を手がけ、自ら工房に立つ職人でもある。自社製品を通じ、輪行文化啓発に情熱を注ぐ

輪行袋を準備したら、自転車からアクセサリーを取り外し、ホイールとフレームに分離する。慣れれば簡単だが、実は輪行ならではの注意点がいくつかある。

 

①自転車の装備品を整理する

まずはアクセサリー類の整理から。ハンドルからライトやコンピューターを、フレームからサドルバッグやハンドルバッグを、必要に応じて取り外そう。ボトルは逆さにすると中身が漏れるため、空にすると良い。外したアイテムは、大きなサコッシュにまとめると管理が楽だ。整理が済んだら、車体を逆さにして床に自立させる。ドロップハンドルの場合、左右ブレーキレバーとサドルが接地し、安定して3点倒立するはずだ。

 

②前輪を外す

フロントフォークのスルーアクスルを抜き、前輪を取り外す。アクスルはレバー付きのもの、六角レンチで緩めるものの2パターンある。ポイントは、アクスルを床に置かずに手に持ち続けること。置き忘れたら移動先で自走できなくなり大変な目に合う。前輪を外したら、アクスルをすぐにフォークに戻してしまおう。しっかり締めず、軽く留まっていればOKだ。リムブレーキの場合、クイックを引き抜くことなく最後まで作業しよう。

 

③アウタートップにして後輪を外す

前輪に続いて後輪を外す。より簡単に作業するため、チェーンの位置はリヤスプロケットの一番小さなギヤに、フロントチェーンリングはビッグギヤに変速。いわゆるアウタートップの状態にする。アクスルを抜き去ったら、空いている手でリヤディレーラー本体をつかんで優しく抜き上げる。力は一切必要なく、ホイールをつかんで優しく持ち上げるとスルッと外れる。前輪と同じく、まずはアクスルをすぐにフレームに戻そう。

 

【TIPS】「後でやろう」はバカヤロウ

伊美さんいわく「後でやろうは馬鹿ヤロウ!」がまさに金言。作業の一つ一つの順番を飛ばさずに、外したら元に戻す、順番どおりに一つ一つをこなす、ということが確実かつ最速の輪行手段だ。また、リムブレーキのクイックリリースの反レバー側のナットや、後輪フリーボディ、あるいはBB裏にマウントしたツールボトルなど、輪行中に振動や体との擦れによって外れてしまう恐れがあり、かつ輪行袋が横または下開きの巾着タイプを使用する場合は、基本的にそれぞれを別の袋に分けて保管する、最低限動かなくなるように事前に確認しておく、という意識を付けておこう。

 

自転車を保護するコツ

バイクを分解できたら、必要な箇所に保護材を取り付けていく。適材適所なアイテムを駆使し、バイクを傷から守ろう。勘どころが分かれば、最小限の保護でも十分効果的に仕上がる。

今回使用するアイテムはこちら。多くの場合、輪行は袋1枚では完結しない。ベルトや保護カバーを駆使して、バイクを運びやすい状態にする必要がある。以下に紹介するのはオーストリッチ製の「8つ道具」。どれも伊美さんが実際に愛用中のものだ。Aエンド金具リヤ用(12㎜スルー)/Bパッドスペーサー2つ/C中締ベルト(伸縮タイプ)/Dチェーンハンガー/E中締ベルト2本/F肩ひも/Gスプロケットカバー/Hフレームカバー。オーストリッチの輪行袋はEとFが付属するモデルが大半だ。お手持ちのバイクタイプに合わせて追加品を選ぼう。

 

①リヤディーラーを保護して、サポートパーツを付ける

フレームにエンド金具を取り付ける。エンド金具は輪行状態のバイクが自立する「支え」となり、リヤディレーラーを保護する重要なパーツだ。エンド金具は3種類のパーツから成り、①調整ナット付きサポートアクスル、②折り畳み式のコの字ステー、③左右スペーサーを組み合わせて使用する。慣れないうちは組み立て中に部品を落としがちなので、下に輪行袋を敷いてクッションにするといいだろう。ここでは12㎜スルーアクスル用を例に細部を見ていこう。取り扱いには慣れを要するが、ぜひマスターしてほしい工程だ。

フレーム左エンドからアクスルを2~3cm挿入し、スペーサー→コの字ステー→サポートアクスルの順に通していく。左手でステーを、右手でアクスルを持つとやりやすい

フレームとエンド金具の隙間に、ギザギザ面を内向きにしてスペーサーを挿入。滑り込ませるように落とすとうまくいく

アクスルを締め込んでエンド金具を固定する。締め込む力加減は、エンド金具がぐらつかない程度にとどめよう。サドル後端とエンド金具が接地し、安定して自立する

 

②ディスクブレーキ用パッドスペーサー

前後のブレーキキャリパーにパッドスペーサーを取り付ける。落下しないようにゴムバンドを巻きつけよう。油圧ディスクの構造上、パッドスペーサー抜きでブレーキレバーを握るとブレーキパッド間隔が狭まり、車輪が入らなくなる恐れがある。無用なトラブルを避けるための対策品だ。なお、機械式ディスクブレーキならばパッドスペーサーは不要だ。

 

③スプロケットカバー

スプロケットにカバーを取り付ける。例では10-36Tのスプロケットに対して、最大32T対応のカバーを使用している。最近はスプロケットが大型化しているが、トップギヤから6~7枚目程度まで覆い隠せれば十分だ。ローターを保護するカバーとスプロケットカバーは形状が共通だが、ローターに油分や汚れが付くのはNG。使い分けよう。

 

④チェーンハンガー

後輪を外した状態では、チェーンがたるんで収まりが良くない。ギアからチェーンが外れてしまい、たるんだチェーンによる傷がつく恐れがある。その対策として、チェーンハンガーを利用してたるみを抑える。ゴムバンドを右シートステーに括り付け、ハンガーをチェーンに引っ掛けると安定する。ゴムの張力が程よく作用する位置に調整しよう。

 

⑤フレームカバー

トップチューブとシートチューブの交点に、フレームカバーを巻きつける。このエリアに後輪スプロケットと前輪ハブ軸が収まるため、フレームを傷つけないための予防策だ。ホイールの固定位置に応じて、カバーの位置も微調整するとよいだろう。フレーム全部を覆い隠す必要はなく、最低限の面積だけをカバーできればOKだ。

 

【POINT】プロテクター同士がかみ合うように

輪行中の傷つきの原因は、フレームとホイールが擦れてしまうことにある。スプロケットやハブ軸の突起は、塗装を簡単に傷つけてしまう。保護材は正しい位置に装着しよう。

 

自転車をまとめるコツ

外した前後輪とフレームを、ベルトでくくりつけて一つにとめる。まずは横型向きで作業してから、最後に縦型へ倒立すると作業しやすい。

前後輪を外す方式は、ハンドルを上にしてバイクを立てる「縦型」と、バイクを倒立させる「横型」に分かれる。前者は荷姿が縦長で省スペースになり、後者はエンド金具が不要。今回は縦型を紹介する。ホイールの固定は、輪行初心者の悩みのタネとなる工程の一つだ。不十分な固定は愛車を傷つけてしまう要因となり、気を配るポイントがいくつかある。前段の保護材と合わせて、持ちやすく傷がつかない荷姿を目指したい。バンドの固定位置は基本は同じだがサイズによって細部が異なるため、練習して最適解を導いてほしい。輪行に対する伊美さんのモットーは、持ち運びがしやすく、バイクに余計な傷を作らないことだと言う。その証拠に、数百回もの輪行を重ねた愛車はピカピカのまま。輪行は一日にしてならずだ。

 

①フレームと前後輪をまとめる

リヤディレーラーを下向きにしてバイクを立て、前後輪でフレームをサンドイッチ。ドライブトレイン側に後輪を、もう一方に前輪を、どちらもローターを外向きに配置。ダウンチューブとタイヤの接点に中締ベルト(伸縮タイプ)を巻きつけ、1か所目の固定を行う。ベルトをダウンチューブに1周巻き、左右からリムを抱え込むよう通すのが正解。こうすればベルトがホイールとフレーム間を通るため安定しやすい。

 

②残りの2点を均等な間隔でまとめる

中締ベルトを2本使い、3点固定でホイールをガッチリ安定させる。1本はシートステー、もう1本はサドル辺りで止めるとおよそ120度間隔になり、最も固定力を得られる。つまり、最初の1本目のバンド位置が全体の出来栄えを左右するのだ。ベルトの作り出す輪の直径が最小となる場所を目がけて、少しテンションをかけながら巻きつける。うまくいけばバイクを持ち上げてもホイールは一切動かず、安定感ある自立を得られる。

 

【TIPS】クランク位置はお尻を意識

例では輪行袋を背負った時、バイクのBBがちょうど脇腹~お尻に接する位置にくる。クランクの向きによっては、ペダルがゴツゴツと身体に当たって不快だ。それを見越して、ホイール固定前にクランク位置を調整するとスマートだ。身体と接する側のクランクを、チェーンステー方向に向けると収まりがいい。快適に運搬するためのTIPSだ。

 

【TIPS】サドルとタイヤの位置関係

ホイールの固定位置は、フレームサイズとサドルの出しろによって変わる。例では前後輪のハブ軸がフレームの前三角内に収まるパターン。サドル高さの低いバイクは、直立させると傾斜がついて不安定になりがちだ。その場合は、ホイールハブ軸を後ろ三角内に収める位置だとうまくいく。タイヤ、サドル、エンド金具をバランス良く接地させよう。

 

【TIPS】まとめた後は、タイヤの位置を「ギュッ!」と修正

3点止めしたホイールの固定力をダブルチェックしよう。車体を数cm持ち上げ、ホイールが追従して動かないかを確認。ズレ動いてしまう時は、床に置いた状態でホイールを上からギュッと押さえつけて位置をリセット。中締バンドの固定位置を見直したり、バンドの引き締めを強めにしよう。正しく固定できれば、持ち上げても一切動かなくなる。

 

自転車を輪行袋に収納するコツ

いよいよバイクを輪行袋に包み込む、仕上げの工程へ。ここまでを丁寧に進めていれば残りは比較的簡単。持ちやすく荷崩れしにくい、理想的なパッキングに仕上げよう。

 

①BB裏に肩ひもの一端を通す

まずは肩ひもの一端を、左チェーンステーとBBの交点に通す。ひもを1周させたら、端をアジャスター(日の字型の樹脂パーツ)に通してループを作る。ひもを軽く引っ張って、ループが緩んでこないかダブルチェックしよう。柔らかいナイロンバンドなので、塗装に食い込んでフレームにダメージを与える心配はない。

 

②輪行袋を下に広げて敷く

輪行袋の底面が全て見えるように広げて、床に敷く。例のウルトラSL-100はサドル側とリヤエンド側のガイドプリントがあり、直感的で分かりやすい。風が強い屋外では、袋が飛ばされてしまわないように注意して作業しよう。

 

③自転車を広げた輪行袋の上に置く

ガイドプリントに従って、バイクを袋の上に置いていく。まずはタイヤ側から接地させ、次にエンド金具側を優しく降ろしていくとよい。ドスンと床に置くと、エンド金具がズレてしまうことがあるのでジェントルに作業したい。

 

④肩ひもを袋の側面にある穴から通す

ほとんどの輪行袋の側面には、スリット状の穴が開いている。先ほど通した肩ひもの一端が、この穴を通る絶妙な設計だ。軽く布地を引き上げて、肩ひもを通して仕上げにかかろう。

 

【POINT】肩ひもの長さは、フロントハブを通すくらいがちょうどいい

輪行状態の車体はそのままでは持ち手がなく、ゴツゴツして運びにくい。そこで、肩ひもを通して背負える状態にする必要がある。例ではBBとステムにひもを渡している。多くの場合アジャスターが付いており、長さ調整が可能。写真のように三角形を作って長さの目処をつけるとよい。輪行袋の本体に、肩ひもが直縫いされたモデルも存在する。

 

【POINT】地面に置くときはまずサドル側から!

輪行袋に収納できたらさあ持ち運びだ!そんな際にも、上記で紹介したとおり「サドル側」→「ディレーラー側」の順番で地面に置くように気を付けよう。袋の中で自転車がどんな状態になっているかを想像しながら扱うことで、輪行のトラブルも減るものだ。

 

⑤ハンドル(ヘッドチューブ)側に肩ひものもう一端を通す

肩ひものもう一端をヘッドまわりに渡し、車体を背負える状態にする。ヘッドチューブが分厚いエアロロード等、フレームによってはひもが通しにくい場合もある。そんな時はステムに巻き付けてもOK。両端を処理したら、ひもを左肩に通して持ち上げ、背負い心地を確認しよう。ひもが長過ぎると袋が身体と密着せず持ちにくい。うまく調整しよう。

 

⑥最後に袋の縛りひもを閉じる

輪行袋を下から上へ向かって、車体に覆いかぶせていく。軽量生地の袋は、バイクの突起部に引っかけて破いてしまわないよう注意。最後に黄色い縛りひもを引っ張り、輪行袋の口を絞っていく。巾着袋と同じ構造をイメージすると分かりやすい。ひもはコードロック(黒い樹脂パーツ)で止め、口が広がらないように処理しよう。これで完成!

 

⑦適切にパッキングできれば余裕は十分!

オーストリッチ製の輪行袋では、ドロップハンドルの標準的なサイズの自転車の場合は、前後輪を外してフレームと縛れば、十分に袋内に余裕が生まれる作りとなっている。もしも袋の生地がパツパツで閉じないという時は、無理して生地を引っ張ってしまうと破れの原因になってしまう。袋の一部がどこかに引っかかっていないかを確かめて、ゆとりを持って作業しよう。容量が余れば、ヘルメットやバッグなどを追加で輪行袋の中にまとめてしまってもOKだ。

しっかり荷締めできれば、袋の中でホイールが動いて車体を傷つける心配はない。脇で袋を抱え込み、身体に密着させるとグッド。

 

【POINT】縛りひもは、移動時の置く時にも活用できる!

乗り物の揺れは自転車が倒れる要因となる。そんな時、余ったひもを手すりや吊り革にくくり付けて安定性を確保しよう。ひもが届かないところは収納袋のベルトで延長するとスマート