キャニオン・アルティメットCF SLXはどんなサイクリストにおすすめか?
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キャニオンの軽量レーシングバイク・アルティメットは、初代のデビューから20年ほどたち、現在の最新モデルが第8世代という長寿モデル。これまでに世界選手権やグランツールなど数々のレースを制してきた。しかし、同ブランドのエアロロード・エアロードの台頭で、今は多くのプロチームの選手がエアロードを選ぶようになってきている。アルティメットシリーズはどんなサイクリストにおすすめか? 上位モデルのアルティメットCF SLXで舗装路やあれた林道など数百km走り込み、その答えを探った。
最新モデルは軽いだけでなく空力性能も進化
キャニオン・アルティメットシリーズは2022年秋に最新モデルの8代目にモデルチェンジした。第8世代アルティメットのテーマは「パーフェクトバランス」。軽さだけでなく、剛性や快適性、空力性能を高いレベルで融合することを目指して開発された。
グレードはフレームの違いで大きく3つに分かれ、最上位モデルのCFR、プロ選手も使う上位モデルCF SLX、コストパフォーマンスに優れたCFがある。全グレードがカーボンフレームを採用し、各グレードでコンポーネントやホイールの違うモデルがラインナップされる。多くのモデルにパワーメーターが標準装備されているのも特徴。レース志向が強い人はもちろん、ロングライド志向のサイクリストも完成車状態でペースメークにパワーデータを活用できるのは魅力だ。
ハンドルバーはエアロードに採用されるハンドル幅や高さを調整できるステム一体型のペースバーを採用。ブレーキケーブルをカットしなくても幅を最大50mm、フォークコラムをカットしなくてもハンドルの高さを20mm調整でき、一体型ハンドルバーの弱点であるポジション調整のしにくさをカバーしている。
空気抵抗の削減にも精力的に取り組んでいる。ハンドルバーからフレームまでケーブルのフル内装の実現や、D型断面形状のシートポストと内蔵型のシートクランプの採用、フレームやフォークの形状もエアロロード・エアロードの技術を採用することで、バイク全体で空力性能向上を図っている。旧モデルと比べ、時速45kmでの走行時に10Wの空気抵抗削減を実現している。
フレーム重量は最上位モデルのCFRで780gと軽量。今回テストした上位モデルCF SLX 8 AXSの完成車重量は約7.4kgと十分軽量に仕上がっている。
●スペック
フレーム:CF SLX
フォーク:カーボン
シートポスト:キャニオン・SP0094 CF
ハンドルバー:キャニオン・CP0048 ペースバー、ステム一体型
サドル:セライタリア・SLRブーストスーパーフロー
メインコンポーネント:スラム・フォースAXS
ホイール:ジップ・404ファイアクレスト
タイヤ:ピレリ・PゼロレースRS 700×28C
完成車実測重量:7.7kg(ペダル、ボトルケージ、ライト、サイクルコンピューターマウントつき)
価格:105万9000円
●部分をチェック
ハンドル調整幅の広さでポジションを最適化でき、レース的な文脈での“速さ”を味わえる
キャニオン・アルティメットは、世界選手権やグランツールなど世界最高峰のレースでも勝利を収めてきた軽量レーシングロードである。地形で言うと、平坦なコースよりはアップダウンのあるコースやヒルクライムで実力を発揮するタイプだ。
第8世代では軽さだけを武器にするバイクではなくなった。空力性能にも磨きがかけられている。
一番はハンドルまわりの空力性能の改善だろう。先代モデルまでとは違い、ケーブルはフル内装化され、ハンドルバーもエアロードと同じステム一体型のエアロ形状のハンドルバーが組み合わされている。ハンドルまわりはバイクの中でも空気抵抗を生み出しやすいセクションだが、ケーブルが露出しなくなり、ハンドルがエアロ形状になったことで、軽量レーシングバイクとしては高速域でも速度が頭打ちになりにくいと感じる。さらにこのモデルはボルトを緩めるだけでハンドルバーの幅を狭くできることもポイントだ。狭めのハンドル幅にすれば、ライダーのフォームも含めて前面投影面積を減らしやすく、明らかに空気抵抗低減効果がある。特に向かい風の中を走る際や、時速40kmに迫るようなスピードでの巡航時にそれを顕著に感じた。
さらにコラムを切ることなくハンドルバーの高さ調整もできる。ステム一体型ハンドルバーはサイズ交換のバリエーションも制限されるほか、ハンドルそのものも高価なのでなかなか交換しづらいが、このバイクのペースバーなら空力に優れ、ライダーがパワーを出しやすいモアベターなポジションに調整しやすい。これがレースバイクらしい速さをもたらすことにつながっていると感じる。アップダウンを繰り返す地形では、下りでエアロフォームをとってスピードに乗せておき、そのスピードを生かして上りを惰性で上れる距離が増え、スピードを維持しながらも脚を温存し、軽さも生かして走ることができるのが印象的だった。
ただ軽くて速いバイクではなく、レーシングバイクらしいパリッとした堅さの中に路面からの衝撃をうまくいなす快適性の高さも印象的だった。特に150kmを越えるようなロングライドの終盤、路面が荒れているような場所を走るときにそれを顕著に感じた。
快適性を高める重要なポイントの一つは太いタイヤを履きこなせることにあると思う。また、ヘッドまわりの剛性は高めで軽快なハンドリングやシャープなブレーキングを実現しながらも、BBまわりの剛性が高すぎず、脚にダメージが来にくいことも、軽快な走りと快適性という相反する要素を両立する上では重要だと考える。さらに太いタイヤを履かせても軽快な走りに破綻がないことも重要だ。
アルティメットが履きこなせる最大タイヤ幅は、公式には33mmまでとなっている。舗装路を軽快に走ることを重視しつつ、快適性を求めるならこれで必要十分だろう。このバイクに標準でついてくるジップ・404ファイアクレスト(リム内幅25mm)に合わせる場合、軽快さを重視するなら28mm幅、快適性と軽快さのベストバランスは30mmあたりだと感じた。
ちなみに、第8世代アルティメットは、2022年に開催されたUCIグラベル世界選手権の初代優勝バイクでもある。このときフロント33mm、リヤ35mm幅のタイヤを履かせていたようだ。2022年はまだ現在の2代目グレイルが発表される前だったし、ホビーレーサーがグラベルを走るなら、同じキャニオンのグレイルの方がふさわしいとは思う。アルティメットはあくまでオンロードを速く走るためのバイクだ。
レースに軸足を置いてロングライドも楽しみたい――というサイクリストにおすすめ
近年、ロードバイクは得意とするフィールドによって細分化が進んできた。軽さを武器にする軽量レーシングロード、空力性能を武器とするエアロロード、ロングライドを快適にこなすエンデュランスロードなどさまざまなジャンルが確立している。それに未舗装路を得意とするグラベルバイクというジャンルも加わった。それぞれのジャンルの境界が明確にあるわけではなく、車で言うSUVのようなクロスオーバー型のモデルも増えている。例えばエンデュランスロードながら太いタイヤを履きこなし、ロングライドだけでなくイージーなグラベルライドも楽しめるオールロードと言われるタイプだ。
そのおかげで、ホビーサイクリストのロードバイク選びがシンプルになったようでいて、実際のところは難解になっているように思う。「何でもできる」とうたわれることで、自分の楽しみ方にふさわしい1台を選ぶとなると何がベストかがわかりにくいからだ。
「明確にレースで成績を残すことだけ考えたい」とか、「ロングライドさえ楽しめればいい」というサイクリストはむしろまれで、ロングライドを楽しみながらも時々ヒルクライムレースやエンデューロ、ロードレースに参戦するというサイクリストのほうが圧倒的に多いだろう。その中で何に重きを置くのかという濃淡は、サイクリスト一人ひとり違う。そこにグラベルを走るかどうかという要素も加わると、ますます難しくなる。すべてを高い次元でこなすバイクはないというのが実情で、結局は何かを優先して何かを妥協することになる。
ひとまずオンロードだけをシンプルに考えるとしても、レースとロングライドをあらゆるレベルのサイクリストが不満なく楽しめるモデルというのはなかなか少ない気がする。エンデュランスロードの最新モデルが軽さや空力性能を手に入れて速さを手に入れはじめているが、それはあくまで「長距離を気持ちよく走れることに軸足を置いた速さ」であって、「レース的な速さ」ではないからだ。
アルティメットは、ロードバイクでいろいろな乗り方を楽しむ際に、「レースを走ること」に高めの優先順位をつけるなら最高の選択肢のひとつなのではないかと思う。特にヒルクライムなら軽さや必要十分な剛性がもたらす反応の良さを武器として生かせる。
もちろんロングライドを速く走るのも得意分野。アップダウンがあるようなコースもそつなくこなすから、快調なペースで距離を伸ばせる。快適性はレーシングバイクと考えると必要十分で、ロングライドでもフレームが硬すぎて脚に来ると感じる場面もなかった。フレームジオメトリーはレーシングバイク向けでヘッドチューブも短めなので、ややアグレッシブな乗車フォームにはなるが、レースに高めの優先順位をつけるようなサイクリストなら問題ないはずだ。
同じキャニオンのエアロードは、アルティメットよりもっとレース志向の強いサイクリストに向くと思う。主戦場もヒルクライムではなく、比較的フラットなコースや短めの登りがあるぐらいのロードレースやエンデューロになるだろう。
第8世代アルティメット普段は週末にグループでトレーニングライドをしたり、ハイペースなロングライドを楽しんだりしながら、Mt.富士ヒルクライムや乗鞍ヒルクライムのようなイベントに参加し、自己ベストを狙うアグレッシブなサイクリストにドンピシャのバイクだ。





















