僕が自転車で「ユーロヴェロ」を旅する理由【天星の欧州自転車周学 その1】
目次
はじめに:Hei‼︎(こんにちは‼︎)
僕の名前は天星。今年で20歳になった。
現在はスウェーデンに滞在していて、フィンランド・ヘルシンキをスタート地点に、自転車でヨーロッパを旅している。走行予定距離は約10,000km、沿岸沿いを走りながら、14カ国を巡ることを予定している。ルートは主に「ユーロヴェロ」を参考にして設定した。
「ユーロヴェロ(EuroVelo)」とは、ヨーロッパ全土をつなぐ国際的な自転車道のことで、全17のルートがヨーロッパを縦横に横断する形で構成されている。
道は専用の自転車道、静かな田舎道、市街地の自転車レーンなど多様で地元の観光資源や文化と結びついていて、ルート沿いは観光要素も豊富だ。
「旅」と一言で言っても、そのスタイルは人それぞれ。僕の旅は “五感で物事を感じる” ことに軸を置いている。自転車はそのための最高の手段だと思っている。車や電車と異なり、壁も窓もないから、自然をよりリアルに体感できる。景色を眺めるだけでなく、景色の中に自分が溶け込む。
風や匂い、音、路面の変化を直に感じながら、少しずつ進んでいく。ゆっくりだからこそ、細かなところまで目を配ることができ、意外な発見ができる。
毎日が変化に満ちている。何が起こるかわからないからこそ、面白い。人との出会いも、景色との出会いも、すべてが一期一会。その積み重ねが、自分を大きく成長させてくれると信じている。
なぜ旅に出たのか?
この旅に出た理由は、ひとつではない。いくつもの出来事や感情が折り重なって、自然と「旅に出よう」と思った。気がついたら、そう決めていた。1年前、僕は自転車で日本一周の旅に出た。
生まれも育ちも横浜で、都会の景色しか知らずに育った。4人兄弟の末っ子ということもあって、家族旅行もあまり多くなく、県外に出ることすら珍しかった。いつの間にか「知らない世界」に強く憧れるようになっていた。
旅に出た最初のきっかけは、「日本の景色をこの目で見たい」「地図や教科書でしか知らなかった場所に、自分の足で立ちたい」という素朴な欲求だった。誰かに言われたわけでも、特別な目標があったわけでもない。けれど、その衝動はとても強かった。
日本一周が教えてくれたこと
日本一周の旅では、同じ国の中でここまで多様な文化・地理・価値観が存在していることに本当に驚かされた。とくに印象的だったのは、北と南、西と東でまったく空気が違うこと。食べ物、言葉、景色、時間の流れ。どれも一律ではなく、地域ごとに異なる「当たり前」があった。
横浜と似ている町もあったが、まったく異なる風景や暮らしぶりに出会うことも多かった。その中でも、道中で出会った人たちの存在が自分にとって大きかった。
コンビニの駐車場で差し入れをくれた人、同じ宿に泊まり数日間一緒に行動した人、見ず知らずの僕を泊めてくれた大人たち。きっと、「旅」だからこそ生まれる人とのつながり、そして人の温かさを感じた。あの経験が、自分にとっての旅の原点なのだ。自転車に乗って、自分の足で世界を知ることが楽しくてたまらない。
大学?就職?それとも旅?
高校卒業後、まわりの友達の多くは大学に進学していった。僕も最初は大学に行くつもりだったし、進路相談でもそれが「普通」とされていた。就職して、安定した仕事に就いて、堅実に人生を歩むのが「正解」だと思い込んでいた。でも、自分の中にずっとモヤモヤした気持ちがあった。「この道を進んで、本当に後悔しないのか?」
しかし、旅をするという選択肢は現代日本において「ドロップアウト」「現実逃避」と呼ばれ、「社会不適合者」のレッテルを貼られる。社会から厳しい視線に晒されるだろう。堅実に生きるか、自分の気持ちを優先するか。この葛藤は旅を始めた後も常に頭の片隅にある。特にトラブルや疲れで気持ちが落ち込んだ時、よりこの迷いが大きくなる。自分は今、就職もしていないし、収入も少ない。未来がはっきり見えているわけでもない。「この選択で本当に良かったのか?」と。
それでも今は自分の決めたことをやり遂げるしかないというのが本音だ。きっと堅実に進んだとしても必ず悩みは出てくる。「正解」なんてものはないだろう。今は自分の本心を優先してベストを尽くすしかない。多様な文化や人々に触れることで、見える世界が広がっていく。それによって将来設計なんてものは二転三転するだろう。ただ今の日々は自分にとっては唯一無二の“学び”そのものだと確信している。
現在地:北欧からスタートした自転車旅
2025年7月4日、フィンランド・ヘルシンキから旅が始まった。これからスカンジナビア半島を横断しデンマークへ渡り、中央・西・南ヨーロッパを巡る予定だ。
相棒の自転車は、ARAYA(アラヤ)のランドナー「Federal(フェデラル)」。日本一周でも活躍した愛車を、再び旅に連れてきた。
旅立ち前には整備を入念に行った。飛行機輪行用にブレーキワイヤーの位置やフロントフォークを抜きやすく変更したり各パーツをヨーロッパに行っても調達しやすい規格か確認した。特にチェーンやチューブなどは消耗品かつ壊れれば走行不可になってしまうものなので田舎でも買えるものでなくてはならない。
また長期間の旅なのでいかにストレスなく過ごせるか、パッキングの方法にも重きをおいた。日本一周時は経験値不足で重い道具や使わないものも多く積んでいた。70kg弱僕の体重を含めると合計120kgを超えていたが今回は道具の厳選を行い、必要最低限の荷物に抑えることで100kg未満に収めることができた。
旅は過酷だが、機材に命を預ける以上、信頼できる装備が必要だと痛感している。荷物は最小限に抑えつつ、テント、寝袋、調理器具など生活に必要なものはすべて積んでいる。国によっては物資の調達も難しくなるため、備えは常に怠れない。
テントはアライテントの「トレックライズ1」、寝袋はイスカの「エアプラス450」を使用。どちらも日本の山岳用品メーカー。山岳用品の「軽く、小さく、頑丈」この3つは自転車旅に通ずる。
自炊は毎日行う。SOTO(ソト)のガソリンストーブ、「MUKA(ムカ)ストーブ」を使用。ガスストーブに比べてガソリンストーブは火力も高く燃費もいい。ガスは10℃を下回ると気化しづらくなり火力も落ちるが、ガソリンは変わらず使える。
海外ならではの苦労と工夫
海外旅でまず直面したのは「盗難」の不安だった。パスポートや現金はもちろん、自転車そのものを盗まれたら旅が即終了になるリスクもある。
ある日、急な腹痛でトイレに駆け込んだとき、自転車の鍵をかけ忘れていたことに途中で気づき、慌てて戻ったら、見知らぬ男性が自転車に近づいていた。声をかけると立ち去ったが、肝を冷やした。
もうひとつの大きな壁は「物価」。旅を始める前は1ユーロ=160円台だったが、2025年7月22日現在は170円を超えており、予算計画にも影響している。
だから今回は、キャンプ道具や調理器具をフル活用し、極力現地で節約できるよう自炊を基本としている。その分、現地のスーパーに立ち寄ったり、買ったりすることが増えた。文化や生活感が見えるこうした瞬間こそ、旅の醍醐味だと感じている。
旅先で出会ったサイクリスト

同じくトゥルクで出会った家族。これからサマーバケションでスウェーデンを自転車で巡るとのこと。お母さんが「eバイクだから子供が乗っても疲れないし、三輪で安定してて安心」と教えてくれた。この自転車は自転車はヨーロッパではメジャーなタイプのeバイク
旅の費用(7/4〜7/20)17日間 フィンランド〜スウェーデン編
・食費:2万3816円
・移動費:1万2799円
・修理費:9635円
・観光費:4962円
・燃料費:629円
・宿泊費:0円
・その他(ポストカードなど):5962円
合計:5万7793円
※これは金額はあくまで僕自身の経験をもとにした目安。旅先で現地の方に家に招待されたこともあるが、そうした経験は費用に含めていない。
旅にかかるお金は「いくらで済ませるか」よりも「何を経験できたか」によって価値が変わる。これから旅を計画する人にとって、ひとつの参考になればうれしい。

































