新城幸也×Volvo「未来のロードレーサーのための特別講座」レポート前編
2025年7月5日(土)、プロサイクルロードレース選手、新城幸也のトークイベントが東京・港区のVolvo Studio Tokyo(ボルボスタジオ東京)で開催され、その中で新城選手による「未来のロードレーサーのための特別講座」がサイクルスポーツの企画として行われた。
当日は、小学生、中学生レーサーからの様々な質問に新城選手が詳しく答えてくれたので、その模様を紹介していこう。

●小学5年生の小澤フミアツ君からの質問 1
Q:食事についてどんなことに注意していますか?
A:10年くらい前までは選手は最低量のご飯で、いい野菜を食べてご飯を少し食べて、絞るというのが目的でした。今は炭水化物の量で計算します。今日のレースは何キロジュール使いました、アベレージは何ワットでした。そこで使ったエネルギーを計算して、夕ご飯は何グラムの炭水化物を摂ってください、となります。
翌日は山のレースで160kmなので4000キロカロリーくらいかかるね、朝は150gの炭水化物を摂りましょう、という風に、常に炭水化物を体に入れているというのが今の主流です。 つまり、お腹が空いてから食べるんじゃなくて、朝昼晩のごはんプラス、何をしているときでも1時間おきに40gの炭水化物を摂りましょう、と常に体の中に炭水化物を入れている状態です。
というのは、マラソンの選手は2時間でレースが終わるけれど、炭水化物を1時間に60g摂った選手と120g摂った選手、ゼロの選手を比べると、120g摂った選手が明らかにパフォーマンスが高いというデータが出ているんです。
でもまだ若いので、まずは朝昼晩ちゃんと食べることが大事です。僕が父に言われたのが、「今おまえが食べているものが10年後の体になる」という言葉です。父は農業高校の先生だったので、いろんな野菜など体にいいものを食べさせてくれました。今、フィジカルが強いのは両親のおかげかなと思います。そして石垣島にはマクドナルドがなかったんです(笑)。

●小学5年生の小澤フミアツ君からの質問 2
Q:子供の頃は勉強をどのくらいやりましたか?
A:小中高と皆勤賞でした! できることなら勉強はできたほうがいい。その後、自転車選手になれるんだったらいいけれど、勉強ができることによって、自分の生きる道がもっともっと増える。 必要なことは、今必要じゃなくても必要になってくるものがあるし、もう使わないかもしれないし、これは必要、これは必要じゃない、と勉強をして判断しなきゃいけない。
もともと自転車が強かったら練習する必要がないし、強くなりたいから練習をするでしょう? テストで合格できるのなら勉強する必要はない。それから、学校はちゃんと卒業したほうがいいよ。

●中学2年生の稲葉マサト君からの質問 1
Q:レースではどのくらいの速度で走っていますか?
A:どのくらいだろう? う〜ん。アベレージはレースによって違う。逆にレース中はあまりメーターは見ていないです。ロードレースはスピードじゃなくて駆け引きだから、時速50kmで走れれば他の人に勝てるかといえばそうじゃない。50kmで走れても、後ろにぴったり付かれたら意味がないから、展開が重要です。だいたいはアベレージ40kmで走っているかな?
●中学2年生の稲葉マサト君からの質問 2
Q:クラブを作って仲間を集めたい
A:チーム運営は大変だよ(笑)。いや、プロチームとは違うだろうけれど、仲間を集めたければ自転車が好きな人をどんどん勧誘してくるしかないかな。
自転車に乗っていると、同じように自転車に乗っている人に話しかけやすいでしょう? 道を歩いている人をいきなり捕まえて話しかけるのはちょっと抵抗があるけれど、同じロードバイクに乗って荒川なり多摩川なりを走っていると話しかけやすくない? そうやって知り合いを作っていて、誰か近くに自転車のチームに入りたい人はいない?と聞いて作っていくのがいいと思う。
もしくはどこかのチームに自分が所属するというのもあり。このチームがいいとか、自分で作ったほうがいいというのは、いろんな人の意見を聞いて、いろいろ知り合いを作った方が可能性が広がると思う。

●小学5年生の小澤フミアツ君からの質問 3
新城選手がお腹をプックリ膨らませるあのパフォーマンス、あの腹圧はどうやって使うんですか?
A:あれはパフォーマンスのためにやっているだけであって、自転車に乗っているときには出さない。そして腹圧は本当は前じゃない、下なの。自転車に乗っているときに必要なのは、下のほうの意識だと思う。
自転車が速くなるのは、全部、毎日の意識です。自転車に乗った瞬間、まずペダリングの意識。自転車に乗って誰かとしゃべっていても、自分の脚がどうやってペダルを回しているか、常に意識する。そしてだんだんペダリングが上達していって、それが速さに変わる。
自転車に上手に乗れないと集団内で動けないし、スピードが出てもコーナーが曲がれなかったら意味がない、そういうのが全部できるようになる。 自転車を漕ぐときに、常に同じ出力でペダルを回したい。そのときに上半身のどこかが抜けちゃいけない。上と下をつながなきゃいけないので、ちゃんと押さえつける。かといってずっと力を入れておくのは不可能なので、ニュートラルのときも作る。
立っているときに両足に力をずっと入れていると疲れちゃうでしょう? それと一緒で、自転車に乗っているときにもいろんなところに力を使って、入れたり抜いたりするんです。
●小学5年生の小澤フミアツ君のお父さんからの質問
ほとんどのプロ選手は小さい頃から英才教育を受けているんでしょうか、それとも才能があって後から自転車に目覚めた選手が多いと思いますか?
A:両方います。今、活躍している選手たちはフィジカルがあって才能もあって、開花しているんですけど、あとは出会いですね。
自分でやっていくには限界があります。いいコーチに会うこと。 いいコーチかもしれないけれどその選手にとっていいコーチかはわからない。実績はあるけれど、コーチのやり方はそれぞれあるので、それは誰に合うかはやってみないとわからない。その出会いで能力が開花するかもしれないし、できないかもしれない。
僕もそうですけれど、たぶん出会いですね。あとは自分が何を選ぶか、チョイスするか。 今はこの世の中にはすべてが揃っているので、どっちのタイプもいるんですね。いきなり始めた子が強くなることもあれば、フランスなどは昔から自転車競技をやってきて年齢順にカデ、ジュニア、エスポワール(U23)と上がってくる選手もいる。 また、レムコみたいにサッカーをやっていていきなり自転車に来る選手もいるし、ポガチャルみたいにコンチネンタルチームから翌年ツールに勝ったりすることもあるので、両方あるけれど、出会いもあると思います。

●小澤君、稲葉君はそれぞれMTBとシクロクロスを楽しんでいます。選手になるためにいつからロードバイクを始めたらいいですか?
A:MTBに乗っているのはすごくいいことで、それは自転車の乗り方を覚えるからです。実走で走るとき、ロードでまっすぐな道を走るよりはMTBで荒れたコーナーとか山道を走る方が、自転車のどこに自分の体重が乗っているか、わかりやすいと思う。それで自転車の筋肉などが鍛えられるし、いつでもロードは乗れるから。
ロード一本に絞るとすれば、MTBとかに比べて競技時間が長くなる。MTBはエリートになると1時間くらいでレースが終わるのに対して、ロードはプロになれば5時間、6時間とトレーニングしなきゃいけない。好きでなければできない。
自転車選手は雨の日も暑い日も、何があってもレースをしなきゃいけないし、他のスポーツと違って自転車選手は転んだ瞬間、転んでいないようなくらいすぐ立ち上がらなきゃいけない。 それくらい自転車選手はすべてを犠牲にしてやらなきゃいけないし、プロ選手になったらもっと大変で、家族と旅行にもいけないし、あれも食べられないし、これも我慢しなきゃいけない。すごい節制の生活になる。 だから自転車が本当に好きになってからロードに行ってもいいのかなと思います。
「もう、ロードレースやりたい!」と思ったとき。いつというのではなくて、やっぱり自分の中でMTBじゃなくてロードがいい!となったときにロードにスイッチして、そこからはもう覚悟を決めたんだから、最後まで頑張ってほしい。
新城幸也×Volvoスペシャルトークイベント「未来のロードレーサーのための特別講座」
日程:2025年7月5日(土)
場所:ボルボスタジオ東京(東京都港区南青山3-1-34 3rd MINAMI AOYAMA)











