大阪・関西万博に自転車で行った話。

目次

2025年の夏、大阪で55年ぶりに「万博」が開催中! そして万博会場のある夢洲へは、自転車に便利なルートがあって、しかも英国パビリオンにはあの「ブロンプトン」も展示されている!?  大阪愛あふれる本誌エリグチが実走取材してきた。

大阪・関西万博

「Brompton Urban Challenge in Osaka」の参加者集合写真。英国カラーの朱色の特製手拭いがこのイベント参加の証だ

大阪・関西万博

副編集長・エリグチ。サイクルスポーツ本誌で「編集長リレー」や「CSGR」連載などお祭り企画を絶賛進行中! この後ついついお土産にミャクミャクさまグッズを買い漁りました

 

大阪万博、自転車で行こ!

「やっぱ好っきゃねん~」なんて口ずさみながら、天満橋を渡る。大阪市内の南側で生まれ育った僕にとって、たこ焼き屋に吉本新喜劇、アーケード商店街を埋め尽くす自転車たちは、いつも日常の風景だった。

そんな僕の移動手段は、子どもの頃から決まって自転車だった。GTのマウンテンバイクから乗り始め、やがてそれはアルミのロードバイクへと変わり、気がつけば10代から20代前半まで、毎日のように街中を自転車で走り回っていた。

大阪城では、高校の放課後に仲間たちと一緒に与太話をし、中之島のまるで神殿のような図書館には、浪人生時代に勉強という名目で通い、小説を読み漁っていたと思う。上町台地を中心にあらゆるものがコンパクトに詰まった大阪の街は、スポーツバイクで走るのがいつも刺激的で、時間や移動の効率からしても自転車を生活スタイルに取り入れやすかったのだ。

そんな思い出が詰まったこの街に、今回はブロンプトンのミーティングの取材として帰ってきた。なんでも、英国の折りたたみ自転車ブランド「ブロンプトン」が、大阪・関西万博の英国パビリオンに展示されており、そこで英国館主催のもとファンミーティング&特別トークイベントが開かれるというものだ。そして「Brompton Urban Challenge in Osaka」と題したライドも併催され、これは大阪城を出発して市内の名所をスタンプラリー形式で自由に巡りながら、万博会場を目指す。本ライドはブロンプトンユーザーに関わらずあらゆるサイクリストが参加可能となった。

5月21日当日はあいにくの曇りのち雨予報。しかし朝の大阪城公園には、色とりどりのブロンプトンが集合していた。スタート地点は、1970年の大阪万博の際に埋められたタイムカプセルの前。そこから中之島の中央公会堂、淀川サイクルライン、舞洲と巡り、オンラインでのスタンプラリーを行うという形式のグループライドが始まった。

もちろん今回の旅の相棒はブロンプトンだ。イベントはブロンプトンジャパンの全面協力で行われ、ベーシックな「Cライン」、軽量な「Tライン」、プレミアムな「Pライン」、そして新しい「Gライン」まで、フルラインナップの試乗車が揃えられていた。僕はメディアチームの一員として、他メディアの人々と車体を乗り換えながら、それぞれの乗り味を確かめていった。

ちなみにその中でも印象に残ったのは、グラベルモデルの「Gライン」。20インチ化された太めのタイヤと、それに合わせてスケールアップされたジオメトリがもたらす安定感は抜群で、キビキビした挙動が穏やかになり、街乗りからちょっとしたアドベンチャーまでこなせる万能モデルに仕上がっていた。

大阪・関西万博

英国パビリオンと同じ「Great Britain and Northern Ireland」のロゴがあしらわれたブロンプトンの特別モデル

大阪・関西万博

ブロンプトンジャパンの矢野大介氏は午前のライドから参加。ブロンプトンのコンパクトなバイクという特徴だけでなく「オーナー同士のコミュニティを通じ、旅先の街をより深く楽しんでほしい」と出発前に語った

大阪・関西万博

「Brompton Urban Challenge」のデジタルスタンプラリーは、その場所に掲げられたQRコードを自身のスマホカメラで読み込むことで、スタンプを獲得するたけでなくその地の情報を写真やテキストで知ることができる

大阪・関西万博

「淀川リバーサイクルライン」にも設定されているルートは、中之島を東から西へ経由。古くから大阪の商いの中心地として、淀屋橋や中之島一帯には新旧さまざまな建築が入り混じる

 

大阪・ビッグリバー・サイクル

大阪・関西万博

「淀川リバーサイクルライン」をゆく。分岐点には案内表示が描かれている

 

今回のライドルートは、ブロンプトンジャパンのスタッフ・go goさんがアテンド役。週末の静かなオフィス街を抜け、土佐堀川沿いに中之島を西へと進む。大阪は「川の街」だ。水路に挟まれた地形には、交通量の少ない抜け道が無数に伸びていて、その間を見つけて縫うようにして進むのは実に気持ちがいい。

野田や伝法の一帯では、旧い道の雰囲気が残るワインディングや味のある商店が顔を見せ、大阪市中央卸売市場をかすめて、淀川の河川敷へ。そこからは快適な「サイクルライン」が続く。このサイクルラインは、万博を機に改めて整備された大阪4サイクルルートのひとつ。南は大和川・石川ルート(大和川&石川リバーサイドサイクルライン)、北は淀川・桜川ルート(淀川リバーサイドサイクルライン)と、それぞれが夢洲方面へと導いてくれる。特にこの淀川リバーサイドサイクルラインは、一部中之島の市街地区間を走るが、主に自転車移動にとって快適な道が続く。

道なりに走ってそのまま海まで出ると、大きな橋を渡って2つの人工島へアクセスすることになる。まず「常吉大橋」を渡ると、建築家フンデルトヴァッサーが手がけたカラフルなゴミ処理場が出迎えてくれる「舞洲(まいしま)」。そして続く可動式高架橋「夢舞大橋」を渡れば、いよいよ今回の目的地であり万博会場となる「夢洲(ゆめしま)」だ。

ブロンプトンはそのサイズから想像もつかないほど軽快に進み、時に足を止めてカメラを構える。街角に漂う匂いや喧騒が、いつかの記憶を呼び覚ましていく。

だからこそ思う。
もしもどこか街を訪れ、その地をもっと知りたいと思うなら、自転車で走ってみてほしい。徒歩でも、鉄道でもない、自らの力で多少の距離を移動するという体験。それは効率的で、ヘルシーでエコだ。でも僕が本当に伝えたいのは、自転車で走ることは「その街が好きになる」ことに結びつくということ。それがたまらなく面白いということだ。

今、万博は盛大ににぎわっている。某東京の夢の国を2つ合わせたほどの広大な会場を歩き回るには、公共交通機関を利用するのが一番体力を温存できることは間違いない。遠方から訪れるなら、御堂筋線で本町まで出て中央線に乗り換えるか、新大阪駅から直行バスに乗るのが一般的だろう。

だけど、もし叶うなら、自転車で万博へ遊びに行ってみてほしい。もしも同じコミュニティの中にいる大阪人を誘うことができるなら、ぜひ一緒に行ってみてほしい。なぜって、街にはその人の数だけ記憶が蓄積されているのだから。

大阪の人は捻くれているから、「いや~大阪ってあかんわ~」なんて言いながら、それでも愛のあふれるアテンドをしてくれることは間違いない。もちろんそんな時に、コンパクトに持ち運んでラクに移動できる小径自転車があれば、この上なく大活躍してくれるだろう。

街から海へ、そして夢の万博へ。ペダルを回しながら、変わりゆく大阪の風景に五感と記憶でつながるこの体験こそが、大阪をもっと好きになるきっかけになる。

大阪・関西万博

サイクルラインからそのまま接続される「常吉大橋」を渡る。「これユニバちゃうん?」となるくらい派手な「舞洲スラッジセンター」は、環境保護芸術家として有名な、オーストリアのフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏がデザインした

大阪・関西万博

万博開催に合わせて、2025年1月より歩行者と自転車の歩道部分の通行が可能となった夢舞大橋。しかし2025年6月現在、歩道部の自転車通行は原則「押し歩き」となっている。橋の上からは万博会場となるリングが一望できる

大阪・関西万博

大阪・関西万博

大阪・関西万博会場は駐輪場が設けられており、奥にはなんとサイクルスタンドも完備!利用の際には、オンラインでの事前予約が必要だ

大阪・関西万博

いよいよ万博会場に入場!早速イメージキャラクターのミャクミャクがお出迎え。当日は雨にもかかわらず、多くの来場者でにぎわっていた

大阪・関西万博

「小さなアイディアから世界を変えるイノベーションを」というテーマのもと、おもちゃの積み木がモチーフとなった英国パビリオン。会場では建築を見て回るだけでも価値があると言えるほど、各パビリオンは個性豊かに彩られている

大阪・関西万博

英国パビリオン3Fに特別展示されたブロンプトン。この他にもお土産物コーナーでも特別限定車が展示されている

大阪・関西万博

当日英国パビリオンで開催された「トークセッション&ブロンプトンエキシビジョン」に参加の、関西在住のブロンプトンオーナーズクラブのみなさん。大阪万博は「通期パス(期間中何度も入場できるパスポート)」を入手し、何度も楽しまれているそう

大阪・関西万博

トークセッションでは、2025年大阪関西万博英国政府代表のキャロリン・デービッドソン氏が登壇。都市デザインや環境問題をもとに、自転車交通やコミュニティとの在り方をディスカッションした。デービッドソン氏は日本のママチャリ文化に理解を示しつつ「快適な自転車道までアクセスする複雑さを解消」することによって、日本はより便利な自転車環境へ改善されるだろうと語った

大阪・関西万博

デービッドソン氏とともに登壇した、Chris Willingham氏(同社チーフマーケティングオフィサー)、矢野大介氏、進行役の落合友樹氏。落合氏のPodcast「Radio Rueda」では本トークセッションの模様も配信されている

 

EXPO 2025 大阪・関西万博
会場:大阪・夢洲
開催期間:2025年4月13日〜10月13日
https://www.expo2025.or.jp

▶︎自転車アクセス&駐輪情報
https://www.transport.expo2025.or.jp/route/bicycle/