ヒルクライム最終兵器!? ヨネックス・カーボネックスSLDの実力とは

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Presented by YONEX

日本のヒルクライムシーンにおいて多くのライダーから絶大な支持を集める、ヨネックスの軽量モデル「カーボネックス」シリーズ。最新作となる「カーボネックスSLD」は、同社史上最軽量となるフレーム単体重量540g(未塗装Sサイズ)という超軽量を実現。技術の粋を余すことなくつぎ込まれたクライミングバイクの走りとは、いかなるものか。

ヨネックス・カーボネックスSLDの実力とは

 

YONEX CARBONEX SLD / ヨネックス・カーボネックスSLDの特徴

ヨネックス・カーボネックスSLD

ヨネックス・カーボネックスSLD 価格:59万4000円(フレームセット) 【試乗車スペック】●フレームサイズ/M ●カラー/ブルー/グリーン ●メインコンポーネント/シマノ・デュラエースD2 ●ホイール/シマノ・WH-R9270-C36 ●タイヤ/IRC・フォーミュラ プロ TLR 700×25C ●ハンドル/プロ・バイブ カーボン コンパクト ●ステム/ワンバイエス・スージーステム ●サドル/プロ・ステルス TH パフォーマンス ●シートポスト/プロ・ディスカバーシートポスト ●ペダルなし実測重量/6.52kg

 

2014年の登場以来、ヨネックスのカーボネックスは、軽量性だけでなく高次元かつ個性的な走りを表現し続けている。その根幹をなすのが、しなりを的確に制御して高い推進力を生む“粘りのある走り”だ。

最新作の「カーボネックスSLD」(以下SLD)はこの美徳を継承しながら、ディスクブレーキ化をはじめとするロードバイクの新基盤に添って性能を進化させている。

カーボン素材の扱いに熟知するヨネックスだが、今回SLDには3つの新たな素材を投入してきた。チェーンステーとフォークブレードに配される、強度と弾性率を高次元で両立した「トレカM40X」は、加速性の向上に効果を発揮。そして、チェーンステーを除くフレームの全てには、従来のカーボンよりも粘り強さと反発、衝撃強度の数値で上回る「ナノメトリックDR」を反映して、従来から16%の軽量化を実現している。

ヨネックスが求める“粘りある走り”の絶妙なスパイスとなるのが「2Gエヌアムドスピード」だ。高弾性カーボンに3次元構造のナノチューブを付着させた先端素材は、強靱なしなり性能を持ちながらも、素早い戻り性能が特徴。この素材をシートステーに用いて加速・反応性の向上が追求される。

こうした新素材と、その特性を生かすフレーム形状を反映して、カーボネックスSLDはカーボネックスシリーズの個性を極めつつも、フレーム単体で540g(Sサイズ未塗装)という世界最軽量クラスのフレーム重量を獲得するに至った。カーボネックスのポリシーである“粘りのある走り”は、果たしてどのように進化しているのだろうか。

カーボネックスSLDのフロントフォーク

前作ではフロントフォークはストレートブレードだったが、本作はわずかにベンドさせている。前方から見ると左右幅は薄くなり、前面投影面積を小さくして空気抵抗を削減する

カーボネックスSLDのヘッド部分

ケーブル類はヘッドチューブ前方からフレームに収納される。従来モデルではD型断面だったコラムは真円となり、剛性の向上ともにヘッドパーツの緩みの低減も効果を果たす

カーボネックスSLDのBBまわり

PF86のBBシェル規格を使用しつつも、BBエリアの造形は、無駄なボリュームを抑えたミニマルな作りだ。脚当たりのいいペダリングフィールの一つの要因とも言えるだろう

カーボネックスSLDのチェーンステー

チェーンステー形状は横扁平を強めた独自の「O.P.S.」。必要な横剛性を確保しながら、振動に対して適度にしなり高い路面追従性が発揮され、制御性と推進力の向上にもつながる

シートステー 80文字程度

ステー上部をモノタイプにして横扁平を強めた特徴的なシートステー。従来のモデルからより細身のデザインとしてより軽量化をしながら、しなやかな乗り味が演出されている

 

ヨネックス・カーボネックスSLDインプレッション〜意図のある良質なしなり

カーボネックスSLDをインプレッション

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト ・吉本 司 フリーの自転車ジャーナリスト。40年におよぶ自転車歴において数々の車種に乗り、多様な楽しみ方を経験。そのキャリアを基に機材、競技、市場動向に至るまで、スポーツバイクシーンに幅広い見解を持つ

 

かつてカーボネックスの開発・製造現場を取材したことがある。そこで耳にしたのは「しぶといしなり」という言葉だ。社内では、この言葉が社訓になるほど浸透しているらしく、同社の製品には「しなり」を意識した設計が反映されているという。ちなみにテニスラケットでは、硬いだけではボールのコントロール性が悪く、スピンがかかりにくくなるという。つまり良い打球にしなりは欠かせないのだが、それも闇雲にあればいいというわけではない。しなりの量や、しなりとその戻り速度などを、製品ごとに最適な制御をすることが優れた性能に結びつくという。先の「しぶといしなり」とは「意図のある良質なしなり」とも言えるだろう。

それはロードバイクにも通じる。筆者(吉本)もインプレで「脚当たり」という言葉を使うが、剛性が過度なフレームは脚に伝わる感覚が強すぎてペダルを踏み抜けずバイクの進みが悪くなる。また脚力を消耗しやすい傾向がある。しかし、脚当たりのいいフレームは、脚への負担が少なくペダルを下死点までしっかり踏み抜けてトルクをかけられるので進む感覚が強い。もちろん脚力も消耗しにくい。カーボネックスSLD(以下SLD)に乗り終えると、やはり「意図のある良質なしなり」の重要性を改めて考えさせられる。

 

信頼を寄せることのできる軽さ

SLDの540gというフレーム重量(試乗車はMサイズなのでもう少し重いだろう)は、さすがに直感的な運動性能の軽さだ。軽量車の中には動きは鋭いけれど、どこかふわふわとして落ち着きのないモデルもあるのだが、SLDはそうした素振りを見せない。軽快だけどしっかり路面に根を下ろし、当然ながら下りでも腰高な印象はなく、ハンドリングもニュートラル。とりたてて軽量車という意識を持たずに、普通に乗りこなせる。SLDのような軽量車は上りの性能ばかりがクローズアップされる。しかし、上れば当然同じように下りも走らなければならない。だからそこで違和感を覚えないのは、本当の意味でヒルクライムを満喫するには重要である。

 

無駄なパワーを使わず効率的な走りができる

ペダリングフィールの善し悪しを左右するパワートレインの剛性感は、実にいいあんばいだ。フレームに一本芯が通っているかのようなしっかり感を持ちながらも、かといって剛性が高すぎることはまったくない。さすがに初代のカーボネックスのしなりを存分に用いたというほどではないにせよ、ハンガーまわりの剛性に微妙な“いなし”を感じる。

ペダルにトルクをしっかりかけて踏み下ろせるのはもとより、下死点から上死点までのペダリングフィールが絶妙だ。このエリアで足の動きをアシストしてくれるかのようで、スムーズかつ速く上死点へと脚が移動する。これにより全周においてペダリングはスムーズになり、なおかつトルク抜けも起こりにくく推進力を保ち続けることができる。一方ダンシングに移ってもこの感覚は変わらずで、シティングへの移行も滑らかにしてトルク抜けがない。ヒルクライムは極めてリズミカルにして、無駄なパワーも使わず効率的な走りを展開できる。

この独特なペダリングフィールは、ヨネックスのしなりを生かした基本設計やフレーム形状はもちろんのことだが、SLDに新たに採用された「ナノメトリックDR」や「2Gエヌアムドスピード」といった素材が効いているのではなかろうか。あくまで筆者の想像だが、SLDはペダリングのダウンストロークでは粘り強くしなり、アップストロークでは速く戻る特性によって先述した効率的なペダリングを生むのではなかろうか。

超軽量な重量と卓越したペダリングフィールを武器にして、SLDは自己記録の更新を狙うようなヒルクライマーが攻めの走りをできるのは間違いないだろう。そして、その重量だけにヒルクライムに特化した存在にも見えるが、バイク全体の完成度は高く、アップダウンを繰り返すようなコースにおけるロードレースやグランフォンドでは高いレベルで活躍できるはずだ。

カーボネックスは初代から各モデルに試乗してきたが、カーボネックスSLDはヨネックスが理想とするしなりの特性を生かしつつも、ディスクブレーキがデフォルトとなり高剛性となりがちな最新ロードバイクの基本設計とを巧みに折り合いをつけ着実に進化を遂げた、緻密なエンジニアリングの結晶とも言える一台である。

 

こちらのモデルも注目〜カーボネックス

ヨネックス・カーボネックス

ヨネックス・カーボネックス ●価格/51万7000円(フレームセット) ●サイズ/XXS、XS、S、M ●カラー/ブルーグリーン、バーガンディー、ブラック/レッド ●フレーム重量/590g(未塗装/Sサイズ)

 

車重の軽さを追求するのなら今なおリムブレーキのバイクが優勢だ。それを極めるべくヨネックスはリムブレーキ仕様の「カーボネックス」を進化させた。フレーム形状は従来型をほぼ踏襲するが、素材はカーボネックスSLDにも使われる「2Gエヌアムドスピード」と「ナノメトリックDR」を追加。フレームセットで60gの軽量化を実現(フレーム単体は590g)しながら剛性の向上にも成功している。さらに、カーボネックスの美点であるしなりは、より柔軟に変形しより早く戻る特性となり、反応性や駆動効率が高まっている。ヒルクライマーをはじめ、軽さにこだわるライダーには究極の一台となるはずだ。

 

Brand Info〜YONEX(ヨネックス)について

テニスやバドミントンなどのラケットスポーツで世界に名をはせる日本のスポーツブランド。2014年に超軽量ロードバイク「カーボネックス」を発表してスポーツバイクにも進出。ほとんどのモデルは国内で開発から製造まで一貫して行われ、高性能と高品質を極めたプロダクトは、日本のサイクリストから絶大な信頼を得ている。

問い合わせ先

ヨネックス(ロードバイク)
https://www.yonex.co.jp/roadbike/