軽量ロードバイク オルベアの「オルカ」がすごい!

目次

Presented by ORBEA JAPAN

欧州ブランドの中でも近年、躍進が著しい存在といえば、スペイン北部バスク地方から発信されるORBEA(オルベア)である。中でもフラッグシップの一角をなすORCA(オルカ)は、ヒルクライムの走りを徹底的に追求した軽量ロードバイク。最新作となりコンプリートバイクとしての完成度も高まったクライミングバイクの実力を改めて探ろう。

オルベア・オルカを試乗インプレッション

 

オルベアの軽量ロードバイク「ORCA(オルカ)」の特徴

オルベア・M20ILTD PWR

オルベア・M20ILTD PWR(110万6600円〜)【試乗車スペック】●フレームサイズ/53 ●カラー/オレンジクラウド(マット)-ストーンブルー(マット-グロス) ●メインコンポーネント/シマノ・アルテグラDi2 ●ホイール/オークォ・ロードパフォーマンス RP45LTD ●タイヤ/ヴィットリア・コルサ プロ TLR 700×28C ●ハンドルステム/OCコンポーネンツ・ロードパフォーマンス RP11 カーボン ●シートポスト/OCコンポーネンツ・パフォーマンスXP10-S カーボン ●サドル/フィジーク・ヴェント アンタレス R1 ●ペダルなし実測重量/7.13kg

 

オルベアのロードバイクを世界的な存在へと引き上げた出世作が「オルカ」である。同社では求められるライドシーンで最適解の走りを届けるべく、現在は空力性を重視した「オルカエアロ」と軽量性に特化した「オルカ」の2モデルを展開する。後者のオルカは2024年モデルで第7世代目となった。

最大の注目点はフレーム単体で730g(53サイズ)を記録する軽量性だが、もちろんそれだけに留まらず現代のレーシングバイクで必携となる空力性も考慮されている。特にオルカの得意科目である上りにおいては、エアロロードに対して勾配5%で3W、10%では6Wの出力が抑えられるという。また、独自のコンポパーツ「OC」に加えて「OQUO」(オークォ)のホイールセットを新たに搭載し、完成車での走行性能がさらに高まっている。

フレームのグレードは上位となる「OMX」と、同一のフレーム形状でカーボン素材のグレードを変えた「OMR」を用意。今回試乗をするのは、OMXのフレームにアルテグラDi2コンポを搭載した「オルカM20iLTD PWR」。ちなみにオルベアの車名は、モデル名に後記される欧文がフレーム素材、数字がコンポグレード、その次の欧文がフレームのグレードなどを表す。一見すると暗号のようだが、法則を覚えれば一目瞭然である。

オルベア・オルカのトップチューブ

極端に薄いトップチューブが印象的。ヘッド部のねじれ剛性を高めつつも縦方向の荷重にフレームがしなりやすくなり、乗り心地をはじめとする快適性の向上にも効果を発揮する

オルベア・オルカのハンドルまわり

ハンドルセットはポジションの調節性と整備性、カスタマイズ性を考慮して、あえて分割式とする。ライダーの側を向いた仕様がうれしい。自社ブランド「OCコンポーネンツ」の製品を装備する

オルベア・オルカのフォーク

フォーク形状も特徴的。クラウンまわりに大きな体積を持たせて、ブレードは細身に作られている。軽量化とフォークの過剛性を回避する。片側だけ塗り分けられた塗装も小粋だ

オルベア・オルカのシート集合部

シートチューブ上端にシートステーが接合する伝統的な造形は昨今珍しい。横方向へ強く扁平したステー形状は、必要なねじれ剛性を得ながら、乗り心地やトラクションを高める

 

完成車付属のオリジナルホイール「OQUO(オークォ)」にも注目

オクオ・RP45LTD

オークォ・RP45LTD ●価格/28万1600円(前後セット価格) ●リムハイト/45mm ●リム材質/カーボン ●スポーク材質/ステンレス ●リム内幅/21mm ●適合タイヤサイズ/700×25〜32C ●適合タイヤシステム/チューブド、チューブレスレディ

 

オルベアでは完成車としてのトータルパフォーマンスを向上する肝として、自社のホイールブランド「オークォ」を2022年から展開。製品はスペイン・バスクの本社工場で設計から製造までが厳格に管理され、高品質・高性能のホイールが届けられる。展開当初は完成車の専用品だったが、昨年からはホイール単体での購入が可能になった。

ロードレーシング向けのモデルに装備されるカーボン製リムは、装着できるタイヤ幅の範囲が広い21mmの内幅(25~32Cサイズに対応)。さらにミニフックを備えるTLRタイヤ対応なので、チューブドタイヤまで幅広く使用できるオルベアらしいユーザーフレンドリー仕様だ。グレードは上位モデルの「LTD」(リム高/57mm、45mm、35mm)。

今回の試乗車に装備された「PR45LTD」は、45mm高さのリムとジップ・コグニッションV2Sハブを搭載。28万1600円(重量/1390g)の価格は、他社製品の同スペックに照らし合わせるとリーズナブルだ。

オクオホイールのハブ

ハブはジップのホイール、NSWシリーズにも搭載される同社の最高峰。独自のフリー構造「アクセルクラッチV2」が、空走時のエネルギーロスと瞬発的な駆動性能を両立する

オークォのリム形状

一見すると認識し難いが、リムは左右非対称形状。スポーク長を左右均一にして、ホイールの剛性バランスを最適化し、走行性能を高める。スポークはサピムのCXレイだ

オクオホイールのカラー塗り分け

カスタマイズプログラムのMyO(マイオー)にも対応しており、リムの一部(写真の光沢部分)を10あるカラーの中から選んでバイクとのカラーコーディネートも楽しめる

 

カラーオーダーがアップチャージなしでできる!? 完成車でパーツカスタムまで可能! 

©ORBEA

©ORBEA

走行性能はもとより、好きなデザイン、体に合った仕様でなければ本当に満足できるバイクにはならない。それを可能にするのがオルベアのカスタマイズプログラム「MyO」(マイオー)だ。

あらかじめ用意されたデザインテンプレートとカラーを組み合わせると、自分だけのカラーリングのフレームが手に入る。もちろんそのペイントは、バスクの工場で熟練の職人によるハンドメイド。

さらにホイールをはじめコンポ以外のパーツの変更も可能(パーツ選択により金額は変わる)だし、ハンドル幅やステム長、クランク長やギヤ比も自分に合ったサイズを選べる。店頭で事前にしっかりフィッティングさえすれば、納品されてすぐにベストポジションのバイクで快適なライドをスタートできる。購入後の無駄な出費もないから経済的だ。

マイオーのカスタム画面

マイオーのカスタム画面

 

他社でも類似のサービスもあるが、受けられる価格帯が高額な場合が多い。しかしマイオーは価格を問わず可能なのがうれしい点だ。カスタマイズの方法はオルベアのサイトにアクセスして、直感的な操作によって楽しみながらカラーリングやパーツの仕様を決められる。

 

オルベア・オルカ試乗インプレッション〜山岳コースに舞い降りた美しき立ち姿

オルベア・オルカを試乗インプレッション

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト・吉本 司 フリーの自転車ジャーナリスト。40年におよぶ自転車歴において数々の車種に乗り、多様な楽しみ方を経験。そのキャリアを基に機材、競技、市場動向に至るまで、スポーツバイクシーンに幅広い見解を持つ

 

スペインでも最も自転車競技が盛んな地域、北部バスク地方。東北部にはピレネー山脈があり、グランツールでは幾多の名勝負が繰り広げられ、有能なヒルクライマーを輩出してきた。古くからのロードサイクリストにとってオルベアといえば山岳が似合い、オルカといえば優れた軽量クライミングバイクの証だ。そうしたイメージは、オルベアのあるバスクの風土が作り出した必然である。

さらにオルカはルックスという点においても特別だ。出世作となった流麗な姿の2代目、S・サンチェスが北京五輪ロードを制した独創的な造形の4代目といい、デザインにおいても魅了をしてきた。昨今のロードバイクは、性能、仕様もさることながら、その造形もコモディティ化している。ノーズコーンのあるヘッドチユーブにドロップドシートステーというように。だが最新作のオルカはそれらと似つかない。傾斜を抑えたトップチューブ、大きな後三角、直線的でミニマルなデザインによりスマートな立ち姿を披露する。

 

軽快でテンポ良いヒルクライムを後押しする

そんな洗練された姿には痛快なクライミング性能が宿る。高いフレーム剛性を礎にして、ペダルを踏むと直感的に加速の鋭さと走りの軽さが伝わってくる。しかし、普段ハンガーまわりの剛性にしなやかさのあるエートスを愛車とする筆者には、オルカのフレーム剛性に最初は戸惑った。冷静に考えれば、試乗車はプロチームのロットが使用するオルカの上位グレード「OMX」なので、一介のサイクリストである筆者が剛性が高いと感じるのは当たり前である。

とはいえペダリングで脚がヒリヒリとするほどの感覚はそこまで強くない。ライダー側が向き合い方を少しアジャストすれば乗り越えられない剛性感ではない。いつもよりも1枚軽めのギヤを選び、高めのペダルケイデンスを維持することを重視して、アップストロークのペダリングで踏み遅れが出ないような意識を心がけた。すると先述したオルカの鋭く軽い走りが泉のようにあふれ出す。上死点から脚がスッと落ちてリズミカルなペダリングを持続しやすくなり、この感覚が軽快でテンポの良いヒルクライムを後押しする。そして、ペダリングのリズムとバイクが流れるように進む。この両者のシンクロ感に強い快感を覚えるのだ。

シッティングだけでなくダンシングにおいても軽快さと鋭さは鈍らない。シッティティングからダンシングへの移行(その逆もしかり)もストレスはなく、両者を織り交ぜながらのペース維持も無理なくできる。また、勾配変化に合わせて速度を維持するような“ちょい踏み”や脚の自重だけで踏み下ろすようなペダリングによる“休むダンシング”をしやすく、省エネ走行も可能にしてくれる。

 

“幸福な苦しみ”のためのクライミングバイク

今回の試乗コースは筆者が時々走る2kmの上りだった。サイコンを付けていないので実際の速度は定かではないが、いつもよりも景色の流れは速く、自分の感覚では速く走れているような気がした。そしてピークに至っても、力をより自然に出し切ることもできた。

先述したようなオルカのヒルクライムにおけるライディングフィールは、ライダーのレーシングマインドが良い意味で煽られ、自然とアドレナリンが出てもっとプッシュして走りたくなる。やはりプロ選手達が駆るピュアレーシングバイクの味付けである。そのキャラクターは、ホビーサイクリストにとってもヒルライムで勝ちを狙う、タイムを1秒でも削りたいというレーシングマインドが旺盛(おうせい)なライダーに最適なのは言うまでもない。それだけでなく自らのフィジカルと対峙することを楽しみ、峠のピークで爽快感を満喫したいサイクリストにとっては、“幸福な苦しみ”を味わうことのできる理想的なクライミングバイクとなるはずだ。

他方イージーなペースでヒルクライムを楽しみたいサイクリストには、オルカOMXの研ぎ澄まされたレーシング性能は少々荷が重いと感じるかもしれない。であればOMXの基本性能を受け継ぎつつも、もう少しリラックスして乗ることができ、お財布にも優しい弟分「オルカOMR」のフレームを用いたモデルという選択肢も用意されている。

 

Brand Info〜ORBEA(オルベア)について

1840年に創業され、1931年から自転車製造に乗り出したスペインの老舗。北部バスク地方のマリャビアに本社を構え、品質を重視して開発から製造までを一手に手がける。レース活動も積極的で、90年代中盤から2013年には「エウスカルテル」がグランツールで大暴れした。現在はベルギーのプロチーム、ロットにバイクを供給する。