“自転車に青切符”は必要か 自転車専門メディアが考察

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cooperation 小林成基(自転車活用推進研究会理事長)/絹代(サイクルライフナビゲーター)

2023年8月に「自転車に青切符」と題する記事が各紙に掲載され、その後も「16歳以上が対象」「信号無視や車道逆走など約115種類が想定」といった報道が続いている。きっかけとなったのは警察庁が「有識者会議を設置し、交通反則通告制度(青切符)を導入した場合の効果や運用方法を議論する」との発表をしたこと。これを受けた有識者検討会では、2024年1月下旬に最終報告をする予定となっている。果たして、「自転車に青切符」は必要なのだろうか?

使い勝手を良くすることで違反抑止に効力を発揮

これまで自転車が一定の違反行為を繰り返し行った場合、2013年に新設された「自転車運転者講習」(※)の受講命令が下されていた。しかし受講者数は年間500件余と、危険行為が認められた事案の約2%に留まっていて実効性は疑わしい。一方で刑事罰の対象となる交通切符(赤切符)を積極的に交付する姿勢も示されているものの、こちらは供述調書の作成や刑事手続きにおいて違反者と行政(警察・検察・裁判所)双方の負担が大きく、さらなる拡大は現実的ではない。 自転車運転者講習 そこに白羽の矢が立ったのが青切符。運転免許を保有する人にはなじみの青切符とは、①比較的軽微で現認が可能、②明白かつ定型的な道路交通法違反をした人が反則金を納付した場合は公訴が提起されない制度のこと(図1)。 取り締まり現場での所要時間が短く使い勝手の良いこの制度の対象に、自転車を加えようというのである。対象年齢に関しては前述したように16歳以上とする案があり、これは「義務教育を修了し、交通法規に関する最低限の知識を有している」との前提に基づくもので、原動機付自転車や特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)の対象年齢とも符合する。

交通反則通告制度

図1

課題は反則金が未納付だった場合の対応と交通法規の整序

ただし、話はそう簡単なものではない。反則金の納付は任意で、納付されない場合は改めて刑事手続きを経る必要があり、そうなると赤切符と変わるところはない。自転車を対象とした、新たな行政制裁金制度(路上喫煙防止条例はその一種)を創設する案もある。これは自転車の運転者が犯した比較的軽微な違反を非犯罪化(罰則を廃止)し、その代わりに過料(制裁金)を科すもの(図2)で、刑事手続きが不要となるため違反者と行政の負担は少ないが、支払われない場合は財産を差し押さえるといった強制徴収の手続きが必要で、現行の青切符との整合も問題となる。 また、青切符の対象となる違反行為として約115種類が想定されているというが、それを一律に適用することは現実的ではない。自転車に関する交通法規の周知を図ると共に、その前提として守れるような交通法規に整序することが必要だ。

行政制裁金制度

図2

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