ヤマハの新eMTB「YPJ-MTプロ」をインプレッション

目次

Presented by Yamaha Motor Co., Ltd. 撮影協力:高峰山MTBワールド

電動アシスト自転車の祖であり、2015年からスポーツタイプのYPJシリーズを展開しているヤマハが、そのフラッグシップとなるフルサスタイプのeMTB「YPJ-MTプロ」をリリースした。モーターサイクルメーカーならではの着想による独創的なアルミフレームに、軽量コンパクトかつパワフル、ハイレスポンスなドライブユニットを搭載。オールラウンドに楽しめるeMTBが誕生した。

ヤマハが放つ、同社eバイク最高峰となるMTB

ヤマハ・YPJ-MTプロ

1993年に世界初となる電動アシスト自転車PAS(パス)を発売して以来、このジャンルを牽引してきたヤマハ。UCIが主催するeMTB世界選手権やJNCCでのエキシビジョンレースなど、eMTBを本格的に走らせたい、競い合いたいという土壌が育ってきたことから、2018年に「YPJ-MTプロ」の企画がスタートした。

企画・開発スタッフは全米最大の自転車の祭典「シーオッタークラシック」などを視察し、フルサスeMTBの開発が急務であると実感したという。トップチューブ、ダウンチューブとも双胴化したフレームは、モーターサイクルのダブルクレードルフレームにヒントを得たもので、ホイールトラベル量はフロント160mm、リヤ150mmとオールマウンテンのスペックを採用。これに27.5×2.8インチのマキシス製セミファットタイヤを組み合わせる。

剛性と重量の最適なバランスを実現する「ヤマハ・デュアルツインフレーム」

トップチューブ

ダウンチューブ

トップチューブ、ダウンチューブとも左右にスプリットした独創的な「ヤマハ・デュアルツインフレーム(Dual twin™フレーム)」を採用。トップチューブとダウンチューブがモーターサイクルのようなツインチューブ形状になっている。eバイクとしては斬新な発想のフレームである。トップチューブの中央にリヤショックを配置することでスタンドオーバーハイトを低減。また、ダウンチューブはバッテリーを挟み込みつつフレーム部材で覆い隠さないことで、重量と剛性を高次元でバランスさせ、軽快感のあるスタイリングも実現している。

リンク式リヤサスペンションで路面追従性を追求

リヤサスペンション

リヤサスペンションは、ブレーキング時にもアクティブな状態を維持できるアンチライズ特性を持ったホルストリンク(4バーリンク)を採用。路面追従性を高く維持できるレバー比を追求したという。ショックユニットはフロントがロックショックスのヤリRCブースト、リヤは同じくロックショックスのスーパーデラックスセレクト+だ。いずれもヤマハオリジナルセッティングにカスタムされている。

高ケイデンスに対応するドライブユニット

ドライブユニット「PW-X2」

ヤマハにおいて最小サイズ&最軽量となる旗艦ドライブユニットが「PW-X2」だ。既に数多くの欧州ブランドが採用しているが、YPJシリーズに搭載されるのはこのYPJ-MTプロが初となる。ケースの薄肉化など軽量コンパクトを追求しながら最大で80Nmものアシストパワーを発生。また、高いケイデンス範囲でもパワーを引き出せることも特徴となっている。ヤマハが目指したのは“ライダーの要求にシンクロするアシスト”だ。

ヤマハレーシングカラーとリレーションしたグラフィックデザイン

「YPJ-MTプロ」のグラフィックデザイン

1955年の創業以来、モーターサイクルを製造しているヤマハ。そのことを印象付けるために、同社のレースシーンにおけるイメージカラーのポディウムブルー×ニッケルの2トーンカラーを採用。リヤエンドからヘッドチューブへと前方に力強く押し出すような塗り分けが印象的で、ヤマハのロゴはダウンチューブに控えめに入るのみ。

大容量バッテリーと見やすい液晶ディスプレイ

500Whクラス、36V-13.1Ahのマルチロケーションバッテリーは、車体に付属する専用充電器にてチャージする。充電はトップチューブ上部にある充電口にプラグを差し込み行う。残量がほぼない状態から満充電までに要する時間はおよそ3.5時間。バッテリーの単体重量は3.0kgで、単品でも販売されている(7万1100円)。

バッテリー充電口

走行アシストモードや速度、ケイデンス、ペダリングパワーなどを見やすく表示する「コンパクトマルチファンクションメーター」。上部のランプは走行モードを色別で知らせてくれる。スイッチユニットはハンドル左側にあり、グローブを装着した状態でも操作しやすいエルゴノミクスデザインとなっている。。

手元スイッチユニット(写真左)と「コンパクトマルチファンクションメーター」(写真右)

アシストモードと1充電当たりの走行可能距離

EXPW(エクストラパワーモード)/73km
HIGH(ハイモード)/79km
STD(スタンダードモード)/96km
ECO(エコモード)/133km
+ECO(プラスエコモード)197km
A:(オートマチックアシストモード)/87km

走行アシストモードは最強のEXPWから最小の+ECOまでの5種類と、さらにHIGH/STD/ECOを自動的に切り替えるA(オートマチックアシスト)モードがある。この「YPJ-MTプロ」には速度、ケイデンス、ペダリングトルク、傾斜角の4つのセンサーで構成される「クワッドセンサーシステム」が搭載されており、Aモードでは傾斜角センサーからの情報によってアシストパワーを切り替える。

モーターサイクル&スポーツバイク“二刀流”ライターがインプレッション!

「YPJ-MTプロ」は下りだけでなく上りも楽しめるジオメトリーを採用したとのことで、eMTBやDHバイクの専用コースである茨城県の高峰山MTBワールドで総合性能をチェック。さらに2~3時間たっぷり試乗してバッテリーの減り具合も確認した。

今回のインプレッションライダー、フリーライターの大屋雄一氏。モーターサイクルとスポーツバイク両方のライターとして活躍する、稀有なライダー。モーターサイクルのオフロードスポーツにも造詣が深い(text:編集部)

心を読んでいるようなきめ細かなアシスト制御

MTBが活躍するフィールドでは、木の根を越える際やガレた上りなど、踏力の微調整を余儀なくされる場面が多いのだが、「YPJ-MTプロ」のアシスト制御はどの走行モードでもサポートが自然で、ライダーのイメージどおりに走ることができる。PW-X2ユニットは最大で80Nmを発揮するだけあって、特に最強のEXPWモードでは壁のような上りを楽々とクリアできるほどにパワフルだが、その一方で180度向きを変える超タイトな上りコーナーでもスムーズに走れるのは、踏力に対するアシスト制御がリニアなおかげだろう。

HIGH/STD/ECOモードの3種類、つまり強/中/弱のアシストを自動的に切り替えるAモードが秀逸だ。傾斜角センサーが勾配の強弱を感知しているのだが、走行モードの切り替わりは体感できないほどにスムーズ。HIGHモードはEXPWほどパワフルではないが、その差はギヤ1~2枚分というイメージだ。一方、平坦や下りに入るとすぐにECOモードに切り替わるので、省電費にも大きく貢献していると思われる。

コントロール性が高く、重さを感じさせない

公称車重は試乗したMサイズで24.1kg。カーボンフレーム採用のeMTBよりは重いが、リヤタイヤを抜重させるときなど意外にそれを感じさせない。登坂性能を高めるためにリヤセンターを長めにしたとのことだが、それが結果的に後輪荷重を減らし、車体のコントロール性が高まったようだ。

160/150mmという十分なホイールトラベル量に2.8インチのセミファットタイヤ、コントロールしやすく強力なマグラのブレーキセットにより、下りのポテンシャルは非常に高く、デュアルツインフレームが根を上げる気配は微塵もなし。そして、さりげなくライダーをサポートしてくれるのがドロッパーシートポストで、今回の試乗ではシフトよりも多く操作していたほどだ。

電動アシストとオフロードを知り尽くした、ヤマハならではのフルサスeMTB

既存のeMTBの中には、ガレ場でリヤタイヤのグリップを失ったり、コーナーでプッシュアンダーが出るなど、アシスト制御の甘さを感じさせるモデルもあるが、「YPJ-MTプロ」はライダーのイメージどおりにサポートしてくれるので違和感はゼロ。まるでPCのCPUが8ビットから32ビットに上がったぐらいの違いを感じる。

一方、車体もノンアシストで楽しめるほどオールマウンテンMTBとしての完成度が高く、11-46Tというワイドなギヤ比もあって、バッテリー残量がゼロになってもグラベルライドを継続することが可能だ。

そして、独創的なフレームの造型と、それを際立たせるペイントの美しさは一見の価値あり。所有欲をも満たしてくれる稀有なフルサスeMTBと言えるだろう。

動画もチェック!

 

YAMAHA YPJ-MT Pro

●価格/60万円(税抜)
●サイズ/S、M、L
●カラー/ポディウムブルー/ニッケル
●バッテリー/リチウムイオンバッテリー(36V・13.1Ah)
●バッテリー充電時間/約3.5時間
●フレーム素材/アルミ
●フロントサスペンション/ロックショックス・ヤリRCブースト160mm
●リヤサスペンション/ロックショックス・スーパー・デラックスセレクト+150mm
●メインコンポーネント/シマノ・デオーレXT
●タイヤ/マキシス 27.5×2.8
●参考重量/24.1kg(Mサイズ)

取扱いは「YPJプロショップ」 のみ!

「YPJ MTプロ」は、適切なセッティングはもちろん購入からアフターサービスまで相談できる高度な知識と技術を有する「YPJプロショップ(YPJ Pro Shop)」のみで販売する、特別モデルとなる。このショップを通じ、ユーザーは安心してバイクを使用できるようになっている。

■PAS/YPJ販売店地図検索ページ
https://www2.yamaha-motor.co.jp/Locator/Pas-Map/

撮影協力:
高峰山MTBワールド