チネリ・キングジデコ 流麗なフレームワークがもたらすレーサー譲りの硬質な走り

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ウエア協力:ウエイブワン、ダイアテック

 

キングジデコ

チネリ・キングジデコ

かなり勝ち気なツンデレ系

ロードレースで培ってきた輝かしい戦歴を誇りつつ、カジュアルな自転車を作るのもうまいイタリアンブランドがチネリ。流行を追わないのがポリシーながら、自然と流行をリードする存在だ。

そんなチネリがグラベルバイクを作るとこうなる、というのが「キングジデコ」だ。思い切り太いヘッドチューブとダウンチューブが目を引き、そこから下方へ延びるチェーンステーの造形が圧巻だ。最大で700×47mmという極太で径も大きなタイヤに対応するためのデザインである。一方でトップチューブとシートステーはきゃしゃに見えるほどスリムで、振動吸収性への配慮も察せられる。

グラベルバイクのトレンドを余すところなく盛り込んだキングジデコだが、走りの印象はかなり異質。一言で表すならシャキッとしている。乗り手を安住させず、前へ急かしてくる。振動吸収はタイヤに任せればいいという意思が感じられる。試乗車はかなりコラムスペーサーが挟まれていたが、それでもグラベルバイクとしては前傾姿勢が深く、あくまでもレーシー。ハッチンソンのオーバーライドという万能系のタイヤを装備してなお、緊張感を伴う。個人的には「もう少し優しく接してよ」と泣きを入れたくもなる硬質感だが、脚と技術がある乗り手なら、じゃじゃ馬を乗りこなすような快感と速さが味わえそうだ。

キングジデコ

フォークエンドに収まるインサートの向きを変えることでオフセット量を選ぶことができる。フェンダーに対応したアイレットをブレードと肩の後ろに備えている

キングジデコ

BBの後方、かなり低い位置から伸びるチェーンステー。この取りまわしによって、左右同形状という理想を実現しつつ、チェーンリングとタイヤのクリアランスを確保。こうした凝った造形のフレームながら、重量はわずか1000gという。キングジデコはフレームセット販売モデルだが、アルミフレームを採用した手頃な価格の完成車「ジデコ」もラインナップ

キングジデコ

プロテクターを備えたダウンチューブ下面。BBシェルと一体になり、ぐっと後方まで伸びているのが特徴だ。シェル幅が86.5mmと広いBB386EVOを採用している

キングジデコ

扁平なトップチューブと細いシートステーがシートチューブを挟んで滑らかにつながる。いかにも乗り心地がよさそうに見えるが、乗ると印象が異なるのが面白いところ

インプレッション

オフロード:タイヤに仕事をさせる剛性感

キングジデコ

とかく振動吸収性が尊ばれるグラベルバイクだが、キングジデコのフレームはかなり硬質だ。振動吸収性はタイヤに任せればいいというコンセプトだろう。700×38Cのタイヤを履いてなお着座したシーンでは路面からの突き上げが気になるが、踏んだ時の気持ちよい加速感が評価を逆転させる。

オンロード:前へ急かす強気な姿勢

アスペロ

オンロードでもスピードに応じて路面の凹凸がコツコツと伝わるが、決して嫌味ではなく、ストレスよりも操っているという喜びが勝る。スカッとした登坂力とシャープなコーナリングの印象は、グラベルバイクというカテゴリーを超えている。実際に速いかはともかく、速く走れそうな気分にさせてくれる一台だ。

SPEC

フレームセット価格:20万円(税抜)
フレーム:コロンブス・カーボンモノコック
フレームサイズ:S、M、L、XL
フォーク: コロンブス・フーツラクロスカーボン
カラー:ディープウォーター
試乗車実測重量:8.5kg(ペダルなし)