エンヴィの新作「ファンデーションAR40」を開発者と共に徹底レビュー!
目次
アメリカ発のプレミアムパーツブランド、ENVE(エンヴィ)。彼らの新型ホイール「ファンデーションAR40」は、上位モデルのテクノロジーとバリュープライスを両立した意欲作だ。開発者インタビューを通じ、新作ホイールの魅力をお届けしよう。
世界最強、常勝ホイールブランド

エンヴィといえばレーシングパーツのパイオニアである。近年特に印象的なのは2025年、UAEチームエミレーツXRGのシーズン最多勝記録に貢献したことだ(通算97勝)。ハンドルバーやフレームセットも展開しており、2シーズンに渡りチーム・トタルエネルジーのレースバイクとしてフルセット投入されたことも話題となった。
エンヴィの看板アイテムは、フラッグシップホイール「SES(エスイーエス)」。スマート・エンヴィ・システムの略であり、あのタデイ・ポガチャルが実戦投入するシリーズだ。中でも軽量版として新造された「SES 4.5 Pro」は、彼の山岳必勝ホイールとして鮮烈なデビューを飾った。
そんなエンヴィのホイールは、全てがアメリカ・ユタ州の自社工場でハンドビルドされ、数々のテクノロジーをその身に宿している。特に自社内製のカーボンリムは、製法から材質まで多くが企業秘密とされ、ライバルを越える技術優位性、そしてプレミアムブランドの立場を守っている。
ファンデーションAR40の概要

この度デビューした新作「ファンデーションAR40」は、同社のテクノロジーとコストパフォーマンスの融合体だ。従来品の「ENVE 45」の流れを汲むミドルグレードであり、ブランドの魅力をホビーライダーに広く届ける意欲作である。その中身を見ていこう。
まず、ファンデーションAR40のハイライトは以下の通り。
・販売価格:27万9400円
・ハイト40mm、内幅25mmのフックレスカーボンリム
・上位モデルの流れを汲む「インナードライブ・ファンデーション」ハブシステム
・対応タイヤ幅は27mmから50mmまで。グラベル使用可能
・ペア重量1515g(バルブ・テープ込)
特筆すべきはやはり価格だろう。SES 4.5 Proとの比較でおよそ半額、されどエンヴィが培ってきたエッセンスを受け継いでいるのだから、お買い得という他ない。お得意のワイドフックレスリムはしっかり継承され、ミドルグレードながら手抜きは一切感じさせない作り込みだ。その細部をリム、ハブ、スポークごとにチェックしていこう。
まずはリム。ロードからグラベルまでこれ1本でカバーする、内幅25mm/外幅32.2mmという寸法だ。誰よりも早くフックレスを開発してきたエンヴィだから、タイヤ外れによる安全上の心配は無用。ドリリングレスのニップルホールは上位モデルと同等だ。また、ロゴマークはクリアコートの下にプリントされ剥がれ落ちる心配がない。白が褪色しないよう耐UV加工も施されるという。
ハブはオーソドックスな設計とされ、ローフリクションかつ高耐久な面ラチェット方式「インナードライブ・ファンデーション」を採用。ディスクローターはセンターロック式だ。トラディショナルなサピム・CX-RayJのベンドスポークを使用し、左右同本数(計24本)で組み上げられる。
搭載される数々のテクノロジーの詳細は、プレスリリースをぜひ参照してほしい。
エンヴィのブランドマネージャーにQ&A
続いて、エンヴィのブランドマネージャーであるフレッド氏との対談をお届けする。
CS:新製品についてお伺いする前に、改めて御社のブランド哲学について教えて下さい。
我々のアイデンティティは、カーボン素材の最適化、製造技術の高度化にあり、それらの多くは企業秘密です。競争激しいサイクリングコンポーネント業界において、常に最新鋭であり、勝てる機材であり続けること。それが我々のフィロソフィーです。
エンヴィのもう1つの哲学は「リアルワールド・ファスト」です。コンピューター上でのベスト・プラクティスだけでは意味がありません。ホイールをバイクに取り付けて、ライダーがテストして、最速であると実証できた時、初めてデータは意味を持ちます。
CS:メイドインUSAにこだわり続けてきたエンヴィですが、新製品のAR40はアジア生産ですね。これにはどのような意味がありますか?
もちろんコストダウンのためですが、アジアのパートナー工場にはアメリカ生産のSESシリーズと同じ水準を要求しました。製造ラインの一部を丸ごと買い上げ、アメリカから本社スタッフを派遣し、コピーリスクを回避するとともに細部をコントロールしています。彼らに我々のテクノロジー全てを任せることはなく、“トップシークレット”は固く守られています。
アジア工場で実現できないもう一つの要素は、テストプロダクトの開発です。R&Dは全てアメリカ国内で行い、門外不出としています。約1週間でサンプルを試作できるスピード感も我々の強みです。例えば最新のSES Proシリーズはわずか8か月で完成し、費やしたテストモデルは100に上ります。
CS:最近、低価格高品質を謳う中国製ホイールが増えています。アジア工場の台頭についてどう思いますか?
玉石混交です。我々が知る限り、適切にカーボンを扱える工場は2〜3社程度しかありません。カーボンシートのカッティングなど技術向上が見られる一方で、まだまだ未熟な分野もあります。例えばレジンの調合、シートの重ね合わせ、焼結工程の最適解など。これらは我々がリードしている分野ですが、常に先をゆくために我々も絶えず努力しています。
CS:リムの寸法についてお聞きします。内幅25mmまたはそれ以上のワイドリムが増えていますが、今後ますます広がると予想しますか?
グラベルについては、広いリム幅のほうがエアボリュームを稼ぎつつタイヤを理想的なシェイプに保てることから、有望な選択肢と言えるでしょう。さらにエアロも重視されるようになり、よりハイトが高いものが主流となるはずです。ロードについては内幅25mm以上での社内データがまだなく、具体的にコメントはできません。ただ、広げすぎると重量が増えてしまいますし、タイヤが太すぎてフレームに干渉する問題も生じます。いまだ議論の最中ですね。
CS:現在レースシーンはチューブレスレディ全盛ですが、タイヤシステムに改善の余地はありますか?
現状はチューブレスレディが最良のシステムと考えています。パンクに強く、転がり抵抗が低く、しなやかでグリップがあり、メリットしかありません。ただし、「適切な空気圧で使用すれば」という前提を忘れてはいけません。いまだに高すぎる空気圧で使用しているユーザーは一定数いるので、啓発していきたいところです。
一部で安全性について疑問視されるフックレスリムですが、我々は8年間、1000回以上のチューブレスタイヤテストを重ね、より厳しい自社基準を課しています。適切な空気圧での使用においては、全く問題ないと自負しています。
CS:競合製品ではリム内蔵の空気圧センサーなど、新しい付加価値を持つホイールが登場しています。ライバルの動向をどう見ていますか?
我々のプロダクトに一貫する哲学は“シンプルイズベスト”です。余計な機能を足しても、実際に速くなければ本末転倒です。それよりも大事に考えているのは、よりユーザーフレンドリーなホイールの開発です。例えばバルブやリムテープの改良など、今あるチューブレスシステムをより扱いやすくする努力が必要だと考えています。
CS:現在トレンドのカーボンスポークについてお聞きします。カーボンのスペシャリストとして、自社スポークの製造や、次世代SESシリーズへの採用は考えていますか?
あくまでも、我々の究極のゴールは“最速”です。もちろんカーボンスポークで組み上げたテストホイールも試作していますが、データ上では現行モデルを上回るレベルには至っていません。正式採用するには長い時間がかかるでしょう。
チームUAEと共に常勝街道を突き進み、今や憧れのトップブランドに上り詰めたエンヴィ。そんな絶頂期といえる最中にファンデーションAR40を投入したことは、同社の門戸を広げる意図があると読み取れる。フレッド氏の言葉から滲むのは、厳格なエンヴィのモノづくり精神だ。
ポガチャルのファンやハイエンドブランドを所望するホビーユーザーにとって、この新作登場は福音と言えるだろう。ミドルグレードとて、ファンデーションARに妥協なしだ。


















