スペシャライズドの超軽量ロードバイク「エートス」が第二世代へ【インプレあり】
目次
世界最高クラスの軽量性とレースを主戦場としない独自の立ち位置により、ロードサイクリストの話題をさらったスペシャライズド・エートス。この唯一無二ともいえるコンセプトを持つパフォーマンスロードバイクが5年ぶりにエートス2へと進化した。初代エートスを愛車とする自転車ジャーナリスト、吉本司の試乗も含めてモデルチェンジの内容をお伝えする。

エートス2の特徴〜真に必要な要素だけを進化させ、エートスの魅力をより多くのライダーへ
発表まで5年を要した難しいモデルチェンジ
ブレイク・ザ・ルールズ(ルールを破れ)のキャッチコピーを掲げて2020年に誕生したスペシャライズド・エートス。ターマックを筆頭にパフォーマンスロードで同社が追い求めてきたレースでの勝利、その獲得に向けた設計手法に縛られることなく開発されたモデルである。カテゴリーにとらわれることなく純粋なオンロードライディングを楽しむための1台であり、そのコンセプトはパフォーマンスロードに新たな風を吹き込んだ。
「エートスの持つ価値観と走りは多くのライダーから称賛されました。だから新たなエートスを開発するには、このDNAを継承することが極めて重要だったのです。(モデルチェンジに)時間を要したのは、エートスのDNAを維持しつつ進化をさせる完璧なコンセプトとレシピの正しいタイミングを見計らっていたからです」と、エートス2の開発を主導したエンジニア、セバスチャン・サーベット氏は、今回のモデルチェンジが簡単ではなかったと語る。そして3つの改良ポイントがエートス2にはあったという。

オンラインでインタビューしたセバスチャン・サーベット氏(エートス2エンジニアリーダー)。ターマックSL6~8、エートス1などの開発にも携わり、エートス2ではリーダーとして開発チームを指揮した。2014~2022年までエートス1を手がけたピーター・デンクとともに仕事をした実績を持ち、デンク氏のDNAを継承する一人でもある
「まずチューブ形状やカーボンレイアップは、ターマックSL8で得た知見を活用すればよりライドクオリティを進歩できるだろうということ。2つめはエートスのライドの楽しさをより多くのライダーに届けることです。そして3つめがシンプルさを極めることです」。
乗りやすさを重視して進化したジオメトリー

前作で外装式だったディスクブレーキのオイルラインはヘッドチューブに内装される。その収納スペースを確保するためヘッドベアリングは上側の径を拡大し、上下ともに1-1/4インチとなった。これによりヘッドチューブの表面積は前作から増している。
より多くのライダーにエートスの走りの楽しさを届けるという点において軸となるのは、ジオメトリーの見直しである。初代はターマックのレーシングジオメトリーを礎としていたが、それはユーザーの実情と乖離があったという。スペシャライズドでは自社のフィットシステム、リトゥールフィットで約10万件のライダーのフィットデータを持っており、エートスの購入者でソートをかけると、ステムの下にコラムスペーサーを高く積む人が多かった。
この事実に鑑みて、エートス2ではヘッドチューブ長を54サイズ以上で15mm(49サイズは8mm、52サイズは11mm)延長している。スタック量を増大させてエンデュランスロードに近づけた新たなジオメトリー設計となり、より多くの人にライディングポジションの無理を強いることなく、エートスのライドクオリティを提供することを可能にした。
ジオメトリー変更はフィッティング面のみならず、プロ選手のようなスキルがなくても自信を持ってライドに挑めるような走行特性も狙ったものでもある。ヘッドアングルを0.5度寝かし、ホイールベースは7mmほど長くなり、BBドロップは3mm下げられ、パフォーマンスロードのコンセプトに安定性のエッセンスが加わり快適性が向上している。加えてタイヤ幅も最大35mmまで飲み込む仕様となり、快適性と安定性の向上ともに軽度なグラベルライドも許容するような多用途性にも足を踏み入れた。

ステム一体型のカーボンハンドルもロヴァール・アルピニスト コックピットⅡへと進化した。新たに採用したD型断面のアップバーは、前作から表面積を12%拡大して確実なグリップ性能を追求。全体の快適性も28.3%向上している。重量は270g(バー幅400mm、ステム突き出し100mm)。4度のフレア角がつく。サイズは13種類。ハンドルバー単体販売もあり価格は8万8500円
そして、シンプルさを極めるという点においては、前作ではフレームから露出していたケーブル類が課題だった。これをエートス2ではヘッドチューブ内に収め、さらにステム一体型のハンドルバー「ロヴァール・アルピニスト コクピットⅡ」を新たに開発して、そのミニマルなフォルムを昇華させている。
軽さとライドクオリティの源「フローステートデザイン」

フロントフォークは重量と剛性の最適なバランスを崩さない部分とあって、フォークブレードはカムテール仕立てだ。ヘッドチューブからフォークにかけたフロント周りの剛性も向上している

ヘッドチューブの大径化によりトップチューブは若干細くなったも必要な剛性を確保できるようになった。言われなければ分からない細かな変化だが、細部まで徹底的に形状が吟味されている

トップチューブからのシートチューブの出しろもエートス2では短くなっている。トップチューブの傾斜自体もスタック量の増加に合わせて最適化されている

BB接合側のダウンチューブ外径は従来よりも抑えられる。シートチューブのBB接合側はラッパ型に広げられるが、この部分も新作では大きくなった。これらによりBBエリアの剛性が最適化され、ペダリングフィールが向上している。BBシェル自体も6g軽量化。チェーンステーはミニマルな美観を優先して、従来の形状を引き継ぐ直線的なシェイプとしている

UDH対応のディレーラーハンガーはエートス2の専用品。トップギヤのチェーン落ちを防止するつめが内側に装備される。2gの軽量化を達成した

フロントのブレーキマウント台座も軽量化のために専用品を用意している。シマノの純正品に対して2g軽量化している

シートポスト本体は従来のアルピニストシートポストと同じだが、やぐらを新たに設計。肉抜きを大きくして9g軽量化している
ヘッドチューブが長くなり、ケーブル類を内蔵し、タイヤクリアランスを広げた変化は重量増を招きやすい。実際にこれらの要素を反映してコンピューターで設計をシミュレーションするとフレームは625gの重量になり、エートスの特徴である軽量性が大きく損なわれてしまうのだ。必要とされる性能と外観を得ながら、軽量性と特異ともいえるライドクオリティを向上させるべく、エートス2ではチューブ形状やカーボンレイアップが緻密に設計された。そして、これに大きく寄与したのが「フローステートデザイン」であり、サーベイ氏は以下のように説明する。
「フローステートデザインはエートスの真骨頂であり、軽さとライドクオリティをどのようにしたら実現できるかをデザインするものです。エートスの開発ではFEA(有限要素解析)をフレーム形状がある程度決まった状態で行うのではなく、パラメーターを与えて計算をさせ、最適だと思われる形状をコンピューターにいくつか提案してもらいます。その中でベストに近い形状でFEAを行います。もちろんカーボンレイアップを当てはめてテストを行います。
その際、私たちが求めたのはフレームの応力が流れるように伝わることでした。その出発点はターマックSL6の開発時でした。スプリントのような大きな力をフレームにかけてテストをすると特にヘッド部が大きくたわんで変形し、チューブは“呼吸”(Breathing)をするような動きを見せたのです。実際にチューブの寸法が変化する(膨らむ)のです。私たちが理想とするのは、FEAを活用して特定の部分に応力が集中せず、それが構造全体に流れるように伝わる形状でした。それができれば余分なカーボンの使用量を減らし、フレームを軽量化できるのです」。
ちなみにフローステートデザインは初代エートスの設計時から行われていた手法であり、今回新たに名称が与えられた。エートス2ではこれまで個別だったチューブ形状とカーボンレイアップを一緒のプロセスとしてFEAを行うことにより、結果としてフレーム単体の重量を大きく抑えることに成功している。
エートス2のフレーム形状は、一見するとヘッドチューブが長くなったこと以外気付きにくいが、フローステートデザインを経てチューブの形状、カーボンレイアップともに全てが再設計されている。フレーム単体の重量は595gを実現し、これは初代エートスと比べても重量増は10gでしかない。
新ホイール ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅲも登場〜完成車としての高性能を構築する

ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅲ ●価格:18万400円(フロント)、27万600円(リヤ) ●リム素材:カーボン ●スポーク素材:カーボン強化サーモプラスチック ●ハブ:DTスイス・180 EXP ●スポーク本数:21(フロント)、24(リヤ) ●リムハイト:33mm ●リム内幅:21mm ●参考重量:1131g(フロント、リヤ合計/バルブ&テープ込)
さらに今回のモデルチェンジでは、前記した「アルピニスト コクピットⅡ」とともに、軽量ホイールの「アルピニストCLX Ⅲ」も新たに投入された。
ラピーデシリーズ同様、アリス社と共同開発したエアロコンポジットスポークにより軽量化を追求。ステンレススポークに対して20%優れる強度も実現した。リムは33mmの高さをはじめ、前作の形状やカーボンレイアップを引き続き採用する。前後セット重量は、前作が1265gであるのに対して125g軽量化した1131g(リムテープ、エアバルブ込み)。28mm幅のタイヤに性能を最適化している。
「ロヴァールのエンジニアであるジェフとは住んでいる場所も近いので、常にお互いが手がけるプロダクトのアップデートを確認しながら開発を進めてきました。エートス2はフロントセンターが10mm伸びて安定性が増しています。一方でアルピニスト(Ⅲ)はより軽くなったことでバイクの振りが軽くなり、コーナリングでの回頭性も上がります。フレームとホイールは相殺し合う形となり、バイクの反応性は向上するけれど、安定感にも優れるという効果をもたらすのです。前作のヘッドアングルが立ったエートスだと、新しいアルピニストを装備すると、ハンドリングが軽すぎて下りは自信を持って走れなかったかもしれません。ジェフとコミュニケーションをとりながら製品を作ることで、最適な性能を達成することができました」とサーベイ氏が語るように、自社ブランドのロヴァールを持つスペシャライズドの圧倒的な強みは、完成車での高性能を高度に追求できることにある。
エートス2は見た目の変化に派手さはないが、初代で作り上げた世界観を維持し、ユーザーの声を細かく拾い上げ、現代の最新仕様を盛り込んだ丁寧な進化である。われわれはついドラスティックなモデルチェンジを期待しがちだが、基本コンセプトを守りつつ地に足のついた進化を遂げたエートスは、まさにタイムレスな価値を創造するロードバイクであり、やはり唯一無二の存在であろう。
エートス2のラインナップ
エートス2のフレームは最高峰となる「Sワークス」の名を冠した「Sワークス エートス2」と「エートス2」があり、それぞれフレームセット販売される。両者はカーボンのグレードが異なり、Sワークスエートス2 はFACT12rカーボン、エートス2はFACT10rカーボンで、フレーム単体重量は前者が595g、後者は705gとなる。完成車は「Sワークス」、「プロ」、「エキスパート」の3グレードの販売。SワークスのみFACT12rカーボン、プロ、エキスパートはFACT10rカーボンのフレームだ。ステム一体型の新型ハンドル、ロヴァール・アルピニスト コックピットⅡは、Sワークス、プロの完成車に搭載される。
Sワークス エートス2 シマノ デュラエースDi2

●シマノ・デュラエースDi2完成車価格:176万円
●ホイール:ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅲ
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ TLR レースタイヤ 700×28C
●ハンドルステム:ロヴァール・アルピニストコックピットⅡ
●サドル:スペシャライズド・Sワークス パワー ウィズ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:2種類
●参考重量:6.05kg(56サイズ)
Sワークス エートス2 スラム レッド AXS

●スラム・レッド AXS完成車価格:176万円
●ホイール:ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅲ
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ TLR レースタイヤ 700×28C
●ハンドルステム:ロヴァール・アルピニストコックピットⅡ
●サドル:スペシャライズド・Sワークス パワー ウィズ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:2種類
●参考重量:5.98kg(56サイズ)
Sワークス エートス2 フレームセット
●フレームセット価格:77万円
●付属品:ロヴァール・アルピニスト(シートポスト)
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:4種類
エートス2 プロ シマノ アルテグラ Di2

●シマノ・アルテグラDi2完成車価格:110万円
●ホイール:ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅱ
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ TLR レースタイヤ 700×28C
●ハンドルステム:ロヴァール・アルピニストコックピットⅡ
●サドル:スペシャライズド・パワープロ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:1種類
●参考重量:6.73kg(56サイズ)
エートス2 プロ スラム フォース AXS

●スラム・フォース AXS完成車価格:110万円
●ホイール:ロヴァール・アルピニスト CLX Ⅱ
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ TLR レースタイヤ 700×28C
●ハンドルステム:ロヴァール・アルピニストコックピットⅡ
●サドル:スペシャライズド・パワープロ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:2種類
●参考重量:6.73kg(56サイズ)
エートス2 エキスパート シマノ アルテグラ Di2

●シマノ・アルテグラDi2完成車価格:79万2000円
●ホイール:ロヴァール・C38
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ 700×28C
●ハンドルバー:ロヴァール・アルピニスト カーボンハンドルバー
●サドル:スペシャライズド・パワープロ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:1種類
●参考重量:7.12kg(56サイズ)
エートス2 エキスパート フォース AXS

●スラム・フォース AXS完成車価格:79万2000円
●ホイール:ロヴァール・C38
●タイヤ:スペシャライズド・Sワークス ターボ 700×28C
●ハンドルバー:ロヴァール・アルピニスト カーボンハンドルバー
●サドル:スペシャライズド・パワープロ ミラー
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:2種類
●参考重量:7.05kg(56サイズ)
エートス2 フレームセット
●フレームセット価格:47万3000円
●付属品:ロヴァール・アルピニスト(シートポスト)
●サイズ:49、52、54、56、58、61
●カラー:2種類
エートス2ファーストインプレッション~全ての動きがクリアになり走りの快感が極まる

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト 吉本司/40年以上にわたる自転車歴から、ロードバイクから小径車までさまざまなタイプのバイクに乗り、レースからツーリングまでいろいろな遊び方を経験してきた自転車ジャーナリスト。機材の解説・試乗、レース、市場動向、文化面まで幅広い知見を持つ。初代エートスはその走りにほれ込み56と58サイズの2台を購入している
エートスを愛車に迎えて以来、乗り換え候補が見つからないのだ。パフォーマンスロードでありながら速く走れと肩をたたかないほどよい距離感を保ってくれる運動性能。苦手な上りで背中を押してくれる軽量性。それでいながら下りも攻められる安心感。そして、これ見よがしのロゴのないミニマルなルックス。レースが日常にない筆者にとってエートスは絶妙に寄り添ってくれる良き相棒なのだ。
鮮明な前作との走りの違い
エートス2の登場は期待と不安が交錯していた。もしやエアロっぽさが加わるのか……と思いを巡らせたのだが、目の前に姿を現した新型は“エートス”そのものだった。軽量性を考えれば丸断面のチューブでフレームを構成するのが合理的だ。ジオメトリーの変更はホビーライダーを対象にすれば合点がいく。ケーブル内蔵もタイヤクリアランスの拡大も最新モデルの作法としては必須である。ルックスの変化は少ないもののチューブ形状やカーボンレイアップは再設計されており、前作との走りの違いはペダルを踏めば明確だ。
今回は愛車(58サイズ)を試乗会場に持ち込んだ。試乗車はひと回り小さな56サイズ。ホイールは旧型アルピニストなので、あくまでも比較は参考程度としていただきたい。とはいえエートス2は脚に伝わる感覚がソリッドさを増し、出足は確実にシャープになった。新型と乗り比べるとパワーを瞬間的にかけるような局面では旧型にしなやかさを感じてしまう。エートス2は下りからの上り返し、コーナーの立ち上がり、スプリント的な走りでは、加速に息継ぎ感がなく速度が伸びていく。そして上りにおけるダンシングでの軽快感、ペダリングの軽さも増している。
制御性が増したハンドリング性能
初代エートスはその軽さゆえハンドリングが落ち着かないという声も聞かれ、特にフレームサイズが小さくなると顕著になるという。今では愛車のハンドリングに慣れているので違和感を覚えることはないが、初めて乗ったときは動きが軽い印象だったことことを思い出す。この点においてエートス2はジオメトリーの改善が功を奏し、走り出しや低速でのダンシングやコーナリングでも安定感が増している。得意とされているダウンヒル性能も後押ししてくれる。
フロントまわりの剛性を前作よりも高めて反応性を高めているというが、その一方で若干突き上げ感は強くなった印象を受ける。ヘッド部の大径化とステム一体型のアルピニストコックピットⅡの装備も影響もあるだろう。筆者は前作が体になじんでいるので余計に感じやすいのかもしれない。しかしフレーム全体の剛性バランスで考えれば、このフロントまわりの剛性感のほうが最適だろう。あくまで筆者の好みの問題であり、前作と比べて乗らなければ違和感を覚えることはないはずだ。
総合的に見るとエートス2はわずかながらレーシーさのスパイスが加えられ、加速や操作性などライディングの全域においてよりクリアになった。純粋に運動性能は進化している。とはいえ、あくまでも今までのエートスが持つ懐の深いペダリングをはじめとするキャラクターの輪郭は変わらず、それがより鮮明になったことで走りの快感が極められている。
長くなったヘッドチューブの功罪

走行性能との直接の関係は薄いが、長くなったヘッドチューブは、大きなサイズに乗る筆者には気になった。ユーザーのニーズに寄り添う姿勢は真摯あり、エートスを選ぶ多くの人にとって実利は大きいので否定はしない。ただ、54サイズ以上で15mmヘッドチューブが長くなるのはバイクの見た目に変化をきたす(52以下の影響は小さい)。特に筆者が乗る58サイズでは195mmのヘッドチューブ長となり、大きなサイズになるほどフロントまわりは間延びしたフォルムになる。となるとエートスのミニマルな雰囲気が壊れると感じた。またライダーによってはポジションを出すのが難しくなる可能性もあるだろう。初代エートスはジオメトリーを含めてパフォーマンスロードのしつらえでありながら、ホビーライダーにも使いやすい性能と美しさを持っていることが筆者にとって大きな魅力だった。それがエンデュランスに寄せたジオメトリーを採用することで薄らいでしまったのは残念である。
一般的にニューモデルが登場すると旧型のオーナーは肩を落とすものである。エートスのタイムレスなデザインと走りは、新型が登場しても、わが愛車の魅力が大きく色あせることはない。めまぐるしくトレンドやフォルムが変わる現在のロードバイクシーンにおいてその存在は稀有である。ビジネス面を考慮すれば大胆に形を変えた方が売れ行きは伸びるだろう。しかしそこになびかないエートスは、開発に携わるエンジニアたちの愛情と心意気を感じさせるものがある。短い試乗だったが、なんだかエートスに乗る自分が誇らしい気がした。とはいえ自分のライド仲間がエートスの購入を考えているというのなら、より走りがクリアになった最新型を全面的に勧めるだろう。











