[ピナレロの新たな2モデル]グレヴィルFとドグマGR、グラベルを分かつものたち

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イタリアンブランドの雄たるピナレロから、グラベルモデルが一挙に2モデルがリリースされた。それぞれ「ドグマ」、「F」と同社を代表するようなモデルネームが入ったこのモデル。何が違い、どう走るべきか?  本誌副編集長エリグチが、イタリアで開催された発表会からレポートする。

 

グレヴィルF9とドグマGR

 

イタリアの純レースの血統は、グラベルをも網羅する。ピナレロの完全新作モデル「ドグマGR」は、ドグマファミリーに加わるハイエンドレーシングマシンだ。グラベルレースに挑む世界のトッププロのニーズに応えるべく、空力性能に快適性、そして軽量さと、全ての要素をグラベルに向けて高度にバランスするという設計思想により仕上げられた。

そして、このGRと対をなす形で登場したのが「グレヴィルF」だ。長距離ソロライドからトランスコンチネンタルまで、より広域を担うモデルとして前作からブラッシュアップ。1グレードのみのGRに対して、こちらはフレーム素材が使い分けられた5グレードが用意され、ユーザーのスタイルに応じて選択できる。

ピナレロでは「グラベルは、もはやロード以上に細分化を進めなければならない」という認識から、「ファストグラベル」「ライトグラベル」「トレイル」の3領域に分類しており、それは日本でも知られたレースに置き換えるなら、「アンバウンド」「エロイカ」「グラインデューロ」に相当する。ドグマGRはその中で「ファスト」を、グレヴィルFシリーズは「ライト&トレイル」を担う。やはりピナレロはグラベルというカテゴリーの中であっても、レースを軸とした哲学を貫いているのだ。

 

ドグマの名を継ぐ純粋なグラベルレーサー〜ドグマGR

ドグマGR

DOGMA GR
フレームセット価格╱115万5000円
[spec.]
フレーム素材╱トレカM40Xカーボン
サイズ╱43、46.5、50、51.5、53、54、56、57.5、59.5(C-C)
カラー╱インターステラグレーマット、ルクスターブルーシャイニー、ブラックオンブラック
フレームセット付属品╱シートポスト、前後スルーアクスル

「ドグマF」のスピード性能、シクロクロスバイク「クロシスタ」譲りのオフロードの操作性、MTBの「ドグマXC」に通じる剛性感と駆動効率。それらを一つに統合したドグマGRは、まさにピナレロのレースバイクのDNAをグラベルのために昇華させたレーシングバイク。「競技時間が5時間以内の高速レース向け」といった明確な方向性(対するグレヴィルはそれ以上)が定められており、スピードと安定性の両立を求められる局面で、真価を発揮するという。

 

ラモン・シンケルダム

2025年のアンバウンド200マイルレースでは、ピナレロのサポートを受けるオランダの元プロのラモン・シンケルダムがドグマGRを駆り6位に。彼のGRには特別ペイントがあしらわれた

タロン・ウルトラファストGRハンドルバー

7度のフレアを持つ「タロン・ウルトラファストGRハンドルバー」には、カーボン製で+10°の専用TTグラベルバーが直接マウント可能

アダプティブシートポスト

「アダプティブシートポスト」は、縦方向に8mmのしなり量を有し振動を吸収しつつ、パワー伝達性を損なわない。前方上面部分からウスを介して固定される

ドグマGRのリヤ三角

フレーム重量は960g ! その素材には、ドグマFに採用されるM40Xカーボンファイバーを使用。試乗車重量は7.35kg。タイヤクリアランスは42mm(フロントは45mm・700C)まで許容

ダウンチューブ収納ポート

専用トップチューブバッグと共に「エアロロードシステム」と名付けられた、ダウンチューブ収納ポートに収納できる約30cmの長尺バッグ(下画像)は、スペアチューブやポンプも収納可能

長尺バッグ

 

下り重視の万能“楽しむ”バイク〜グレヴィルF9

グレヴィルF9

GREVIL F9
スラム・レッドAXS XPLR完成車価格╱139万7000円
[spec.]
カーボン素材╱T900カーボン
コンポーネント╱スラム・レッドAXS XPLR 1×13
コックピット╱タイガーALステム×ジャガーGR ALハンドル
ホイール╱DTスイス・GRC1400
サイズ╱47、50、53、55、57.5、60(C-C)
カラー╱アトラスサンマット
参考重量╱8.01kg ※受注発注モデル

 

ファストツーリング仕様

ファストツーリングに向けた専用アクセサリーが用意される。フレーム形状に沿ったバッグ類の他、空気抵抗を考慮したバイクラック(最大12Lの専用バッグが装着可能)も

ツインアームド・シートステー

大きく途中でベンドする「ツインアームド・シートステー」は、10mmのしなりを持つ「アダプティブシートポスト」と連携し、快適性、トラクションを強化する。タイヤクリアランスは最大50mmまで(700C)

グレヴィルF9の正面

「TiCR」システムによりケーブルは内装化。また、トップチューブを前モデルから1cm延長しつつ、ステムを短縮したジオメトリを採用

オンダフォーク

サイズごとに50~55mmにオフセットするオンダフォークには台座が3点設けられる。GRと全くの別物だ

 

Impression〜多様化するグラベルの中で何を選ぶか

グラベルレースの高速化に応えるための「GR」では、コンパクトなハンドル形状と高めの空気圧設定(40C・3bar)が功を奏し、未舗装峠でもハイテンポを維持して上り続け、そのままに高速ダウンヒルに切り込める。というか、全てが速い。まさにあの「アンバウンド」のような直進基調レースで真価を発揮する一台だ。一方、「グレヴィル」は緊張を強いることなく、長時間・長距離のアドベンチャーライドでも余裕をもって付き合えるような存在。テストコースとなったワイン畑の丘のギャップが、ただただ愉快そのものに感じられる安定感だ。獲得標高を稼ぐようなストイックなライドに挑むならGR、ゆったり自然を味わいたいならグレヴィル。だけどもしも僕が日本で1台だけ運用することを選ぶなら、GRを取るだろう。その走りと存在感は、“ピナレロらしさ”という輝きを放っており、何よりオン╱オフロードどちらでもその魅力を存分に感じられるのだから、何とも得した気分になる。

江里口副編集長

本誌・江里口恭平

グラベル遊びに首ったけの本誌副編集長。旅やイベント、レースに至るまで、日本でのグラベ ルの広がりを自ら体感しつつ追い続けている。