万能に使えるSPDシューズ「シマノ・XC7」を使ってみた

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Presented by SHIMANO 撮影協力:トレイルアドベンチャー・よこはま

昨年フルモデルチェンジを果たしたシマノのオフロードシューズ最上位モデル、XC9。そのテクノロジーを惜しみなく受け継ぎ、さらに磨きをかけたのがセカンドグレードのXC7(SH-XC703)だ。前作の強みをそのままに、フィット感とレスポンスを一段引き上げたこの最新モデル。秘めた実力を確かめるべく、本格的なマウンテンバイクコースで徹底的に試してみた。

シマノ・XC7を使ってみた

 

シマノ・XC7の特徴

シマノ・XC7

シマノ・XC7 ●価格:3万6300円 ●サイズ:38〜48(ワイドタイプのみ) ●カラー:シルバー、ブラック ●参考重要:322g(サイズ43)

 

 

シマノは、あらゆるライダーに向けて用途別のオフロードシューズを展開している。その中で、MTBクロスカントリーやシクロクロスレースといった“本気の競技シーン”をターゲットに据えているのがXCシリーズだ。

昨年、シリーズ最上位のXC9がモデルチェンジを果たしたのに続き、今年はセカンドグレードのXC7が大幅に進化した。オンロードシューズを彷彿とさせるスマートなシルエットや、BOAフィットシステムによるマイクロアジャスト機構など、従来の美点はそのままに、前足部のシューレース配置を見直すことでフィット感を一段と高めてきた。

アッパーには軽量な合成皮革を採用し、優れた通気性でレース中も快適性を確保。さらにサラウンドラップ構造によるシームレス成形で足との空隙を最小限に抑え、ソックスのような一体感を生む。足を入れた瞬間から「包まれる」感覚が伝わってくる仕上がりだ。

ミッドソールは軽量かつ高剛性な強化カーボンタイプだ。フラッグシップXC9と同様にシームレス構造を採用し、スタックハイトを極限まで抑えることで、安定性とペダリング効率を高次元で両立する。剛性指数はXC9の11(プロ/エリートレベル)に対し、XC7は前作と同じ9(エキスパートレベル)とし、レースユースに十分対応する設定としている。

アウトソールには、コンペティションレベルの高いグリップ力を誇るULTREAD XCを採用。ドライからウェットまで確実に路面を捉える。つま先のスパイクは状況に応じて脱着や調整が可能で、特にマッドコンデョションにおいて大きなアドバンテージをもたらす。

XC7は、フラッグシップ直系の設計思想を受け継ぎながら、価格を抑えて高性能を凝縮した「実戦投入可能なセカンドグレード」だ。レースの現場で即戦力となる一足と言えるだろう。

シマノ・XC7のアルレッドXC

シマノ独自のラバーコンパウンドソール「ULTREAD(アルトレッド)」は、オフロード環境ごとに最適化されているのが特徴だ。このXC7は、MTBクロスカントリーやシクロクロスレース向けの軽量なアウトソールパターン「ULTREAD XC」を採用する

BOA® L6ダイヤル搭載

ダイヤルクロージャーの祖であるBOA®のL6型Zダイヤルを、前作から引き続き採用。前方のダイヤルには、岩などのヒットによる破損やリリースを軽減するためのバッシュガードが追加された

サラウンドラップ構造

シームレスに一体化されたサラウンドラップ構造のアッパーをはじめ、アッパーとミッドソールの一体型デザイン、足の複雑な立体形状を忠実に再現したシマノダイナラストなどにより、まるでオーダーメイドのようなフィット感を実現

クロスオーバーレーシングパターン

大きく進化したポイントは前足部のシューレースのレイアウトだ。前作はシューレースを掛け替えることでスタンダードフィットとスリムフィットが選択できたが、新型は滑らかに交差するパターンとし、より上質なフィット感が得られるようになった

 

シマノ・XC7をインプレッション

XC7をインプレッション

インプレッションライダー/フリーランスライター・大屋雄一:ヒルクライムからママチャリまで、さまざまなイベントレースを楽しんでいるフリーランスライター。オフロードはシクロクロスやMTBの24時間耐久などに出場経験があり、SDA王滝の100kmクラスでは7時間切りを2回達成している

 

オンロード用シューズのRC7を彷彿とさせるスマートなたたずまいを持つXC7。流れるようなアッパーデザインや、BOA® L6デュアルダイヤルの配置バランスまで含め、プロダクトとしての完成度は高く、欧州の老舗ブランドと並べても見劣りしない。素材の質感や細部の処理にも手抜きは一切なく、シューズとしての美しさと競技用機材としての機能性が、見事に同居している。

足を入れ、ダイヤルを締め込んだ瞬間に伝わるのは、そのフィット感の確かさだ。国内販売はワイドタイプのみだが、シマノ独自のダイナラストは、日本人に多いとされる甲高・幅広の足型を高精度にトレース。新品時から特定部位へのストレスはなく、足全体に均一なコンプレッションがかかる。さらに、今回のモデルチェンジではシューレースのレイアウトが刷新され、特に前足部が広い“面”で包み込まれる感覚が強まった。この密着感が、ペダリング時の入力ロスを抑え、踏み出しの鋭さにつながっている。

走り出してまず感じるのはソール剛性の高さだ。ペダルの踏み面が物理的に広がったかのような安定感があり、入力が瞬時にトラクションへと変換される。その加速感は痛快そのもの。しかも剛性の高さが単に硬いだけでなく、踏力の強弱を繊細にコントロールできる点も秀逸だ。オフロードでは、上り区間であっても岩や根を乗り越える際にあえて力を抜く場面があるが、XC7ならそのタイミングをつかみやすい。ソフトなソールでは曖昧になりがちな“抜き”の瞬間が、明確に足裏から伝わってくるのだ。

加えて、アッパーの伸びにくさや、かかとの確実なホールド力も、このシューズ全体の剛性感を支えている。前輪を上げて障害物をクリアしたり、コーナーで車体を深く倒し込むような動きにも、シューズがしっかりと応える。結果として、バイクコントロールの自由度が高まり、レース中の細かなライン変更や急なバランス調整にも自信を持って臨める。

アウトソールは、歩行時に自然なローリングが得られる形状を採用。剛性指数9という数値から想像する硬さとは裏腹に、押し歩きも苦にならない。加えて泥はけの良さと高いグリップ力を両立しており、濡れた芝やぬかるみでも安定感を保つ。この特性はシクロクロスにおいて確実にアドバンテージとなるだろう。

細部での進化も見逃せない。BOA®ダイヤルの前方に追加されたバッシュガードは、枝やツルが引っ掛かってダイヤルが浮き、シューレースが緩むといったトラブルを防いでくれる。耐久性向上はもちろん、レース中の余計なロスを防ぐという意味でも実に合理的な装備と言えるだろう。

今回のテストでは、XC7を履いたまま長時間走り込み、うっすらと土ぼこりが積もるまで使い込んだ。それでも合成皮革のアッパーは、濡れたウエスでひと拭きするだけで新品同様の状態に戻る。こうしたメンテナンス性の高さは、連戦が続くレースシーズンでは何よりありがたい。

ハイエンドのXC9はプロライダーをも納得させる作りとなっているが、価格を含めた総合評価ではXC7こそ多くのライダーにとって“現実的な最適解”となるはずだ。クロスカントリーやシクロクロスに本気で挑む人に、胸を張って薦められる秀作である。

 

Brand Info〜SHIMANO(シマノ)について

シマノは、日本を代表する自転車コンポーネントメーカーであり、ロード、MTB、グラベルバイクなど、あらゆるカテゴリーで世界シェアのトップを走り続けているブランドだ。優れた設計および高い品質により、プロ・アマを問わず幅広く支持されている。

そして、シマノの強みはコンポーネントだけにとどまらない。ペダリング効率を最大限に引き出すためのシューズ開発にも早くから注力し、アッパー構造やソール剛性、フィットシステムなどに独自の技術を投入。目的別に最適化されたラインナップを展開している。世界中のトップライダーがシマノのシューズを選ぶのは、コンポーネントと同じく“性能と信頼性”が裏付けられているからにほかならない。

 

撮影協力:トレイルアドベンチャー・よこはま