前輪のハイトが高いリムにカーボンスポーク搭載 速さを極めたロヴァールの新型「ラピーデ」シリーズ
目次
スペシャライズドが手がけるホイールブランド「ロヴァール」。ロードバイクモデルの中でもとりわけエアロ効果に優れる「ラピーデ」シリーズが刷新された。後輪よりも前輪のリムハイトが高い斬新な設計と独自のカーボンスポークを採用し、これまでにない速さを手に入れている。

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)/デミ・フォレリング(エフデジ・スエズ)
前輪の方がリムハイトの高い特性の異なる2モデルを展開
「Innovate or Die」(イノベート・オア・ダイ)=「革新か死か」をモットーに、独創的なアプローチで高性能なプロダクトを手がけるスペシャライズド。
生まれ変わったロードホイールの「ラピーデ」シリーズは、リム、スポーク、ハブに至るすべてを新設計した、まさに同社らしい刺激に満ちあふれたモデル。その大きな特徴は「前輪の方がハイトの高いリム」「カーボンスポーク」、そして「パンクに強いリム形状」である。

プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
空気抵抗の削減には、バイクのフロントセクションに優れた空力設計を施すことが重要であることはかねてから言われているが、スペシャライズドではホイールでもそれを改めて検証。今回はダミーのライダーをバイクに乗車させ、ペダリングさせた状態で空力を計測すると、空力性能の90%を左右するのが前輪であることが確認できた。
この結果に従って新型ラピーデでは、前輪のリムハイトの方が高いというこれまでの常識を覆す設計を採用するに至った。また、後輪のリム高さが低いと軽量化にもつながり、駆動輪なのでより走りの軽さを演出できるという利点も生まれてくる。
これまでのラピーデはCLXという1モデルだけだったが、今回は新たに「ラピーデ スプリントCLX」、「ラピーデCLX Ⅲ」という2モデルの展開となる。前者のスプリントCLXは、その名のとおりゴールスプリントで勝つための高速時における圧倒的な空力性能と鋭い加速性能を追求したモデルで、フロント63㎜、リヤ58㎜のリムハイトが採用された。
ちなみにスペシャライズドのテストデータによれば、ゴール勝負が決する250mでは、他社の競合製品よりも18㎝、ラスト150mでも8㎝先行する結果が得られているという。また、パリ五輪のロード種目を完全制覇したレムコ・エヴェネプールも、その際、開発中だったスプリントCLXの前輪を装着していたとのことだ。

スプリントCLX。前輪のリムハイトは63㎜で、リム幅の最大値は35㎜。ファットなリムのシルエットだ
対するCLX Ⅲは、フロント51㎜、リヤ48㎜のリムハイトを持つ。前作ラピーデCLX Ⅱと同等以上の空力性能と安定性を保持しながら軽量化(ラピーデCLX Ⅱに対して215g軽量化)を実現して、よりオールラウンドなコースで使用できるモデルに仕上げられている。

こちらはCLX Ⅲ。前輪のリムハイトは51㎜だが、リム幅の最大値はスプリントCLXと同じ35㎜

前輪63㎜(右)、後輪58㎜(左)のリムハイトを採用したスプリントCLX。前後で5㎜の差は意外に見た目の違和感がない

スプリント時の250m、150mのテストデータ。スプリントCLXの速さは圧倒的だ。CLX Ⅲでも前作のラピーデⅡを上回る。
もちろんスプリントCLX、CLX Ⅲのリムは、ハイトが違うだけでなく、それぞれのホイールが求める空力特性や重量などに最適化した断面形状、カーボンレイアップが新たに採用されている。
フロントリムのハイトが上がると当然のことながら横風の影響を受けやすくなり、ハンドリングがシビアになり速さをスポイルする。スプリントCLX、CLX Ⅲは、それを抑えるリムシェイプをそれぞれで追求しているが、両者ではハンドリングの特性が異なる。
表にもあるようにCLX Ⅲは風の入力は受けにくく、安定したハンドリング性能を示す。一方のスプリントCLXは風の入力はより受けやすいものの、ライダーがコントロールしやすい挙動を示すように作られているという。

上の表を見るとスプリントCLXは大きくグラフが触れており、風の入力を受けやすい。しかし下の表を見ると同社の以前の製品であるCLX64やCLX50と比べると、グラフのアールがなだらかなのでコントロールのしやすさにつながる
リム幅については、今や25㎜の内幅を持つロード用モデルもあるが、新型ラピーデは21㎜の内幅に設定された。
当然ながらスペシャライズドでは複数の内幅をテストしている。しかし今回同社では重量や空力性能などのバランスの良さから、28Cサイズのタイヤ(ラピッドエアー28C)の使用を前提としており、この場合に最速(転がり抵抗の軽さなど)となる内幅は21㎜であるという実験データ(回転ドラムによるテスト)に基づいての採用である。そして、28Cタイヤを使用した際、リムの外幅はタイヤの幅よりも1㎜広くする設計にすることで、タイヤとリムがもたらす理想的な空力性能が実現されている。

異なる内幅のリム(19、21、23㎜)に3種類のサイズのタイヤ(26、28、30C)を履かせて、滑らかな路面(左上)、荒れた路面(右上)を想定したドラムによるローリングテストの結果。総合的(下)に見ると内幅21㎜は少ないパワーで走れる
1本あたり1.7g軽い専用カーボンスポーク
今回のモデルチェンジでもう一つの大きなポイントがカーボンスポークの採用だ。現在カーボンスポークの供給元となっているのは中国製のブランドだが、スペシャライズドでは新たにカリフォルニアにある複合素材製造メーカーの「アリスコンポジット」社との協業により、オリジナルのカーボンスポークを開発した(スペシャライズドの独占使用)。
カーボン強化サーモプラスチック製のスポークは、ステンレスの製品に対して1本あたり1.7g、ホイール全体では101.6gの軽量化を可能にし、でありながら強度は63%優れているという。ちなみにスポーク剛性やエアロ性能は、DTスイスのエアロライトと同レベルに仕上げられている。スポークヘッドはチタン素材だ。
このスポークだけでなく、ハブも従来からフランジをかなり小型化して刷新しており、ホイール全体では前作のラピーデCLX Ⅱよりも軽量化が進んでいる。ホイール重量はスプリントCLXが1395g(前後セット)、CLX Ⅲが1305g(前後セット)で、それぞれ前作に対して129g、215g軽量化されている。

アリスコンポジット社製のカーボンスポークは、素材、形状すべてにおいてオリジナル。競合他社に比べてエアロ形状の部分が長いので、空力性にも優れる
リム打ちパンクのリスクを低減するリム形状
タイヤの太幅化とチューブレス化が進んだことにより、タイヤの空気圧が低くなり、以前に比べてタイヤのリム打ちによるパンクが起こりやすい昨今だ。そこで、新型ラピーデは「フラットビードフック」という形状によってリム打ちパンクの低減にアプローチしている。
内幅21㎜のリムは外幅を29㎜(ビード部)に設計することで、ビードフックの幅を従来に比べて広くし、さらにその末端が平らとなる面積を増やした。これにより、リム打ちパンクを発生させるインパクトに対して39%耐性が高まっているという。
それだけでなく、リムのベッド部分の破断強度にセーフティーマージンを大きくとるために、衝撃試験で加える大きさをUCIが定める40ジュールを超える70ジュールに設定することで堅牢性や安全性が高められている。
こうして、速さを実現する空力性能や軽量性だけでなく、強さも身に付け全方位で圧倒的な進化を遂げたのが、新型ラピーデシリーズである。

フラットビードフックは、底面(赤部分)の幅広いのでリム打ちをしてもパンクをしにくい。底面の幅はスプリントCLXが4.2㎜、CLX Ⅲが4.1㎜に設計される
ステンレススポークに置き換えたミドルグレード、ラピーデCL Ⅲ
今回のラピーデシリーズのモデルチェンジでは、プロレースでも使用されるトツプモデルのスプリント CLX、CLX Ⅲに加えて、セカンドグレードの「ラピーデCL Ⅲ」もラインナップされる。スポークにステンレスタイプのDTスイス・コンペティションレースを採用し、カーボン製のリムはCLXⅢと同様だ。
もちろんリム打ちパンクを抑制するフラットスポットビードフックを搭載し、空力特性も極めて上位グレードに近い。ハブはDTスイスの350グレードとなる。重量は前後セット1550g。
ラピーデ・シリーズ製品概要
ロヴァール・ラピーデ スプリントCLX
ロヴァール・ラピーデ スプリントCLX
税込価格/19万3600円(前輪)、29万400円(後輪)
Spec.
リム高さ:前63㎜、後58㎜
リム最大幅:前35㎜、後31.3㎜
リム内幅:前後21㎜
ビードフック幅:4.2㎜
重量:前640g、後755g 前後セット1395g(バルブキット、リムテープ含む)
スポーク本数:前18本、後24本
対応タイヤ:チューブレスレディ、チューブド
カラー:サテンカーボン/グロスブラック、グロスカーボン/サテンホワイト
ロヴァール・ラピーデCLX Ⅲ
ロヴァール・ラピーデCLX Ⅲ
税込価格/19万3600円(前輪)、29万400円(後輪)
Spec.
リム高さ:前51㎜、後48㎜
リム最大幅:前35㎜、後31.3㎜
リム内幅:前後21㎜
ビードフック幅:4.1㎜
重量:前600g、後705g 前後セット1305g(バルブキット、リムテープ含む)
スポーク本数:前18本、後24本
対応タイヤ:チューブレスレディ、チューブド
カラー:サテンカーボン/グロスブラック、グロスカーボン/サテンホワイト
ロヴァール・ラピーデCL Ⅲ
ロヴァール・ラピーデCL Ⅲ
税込価格/9万6800円(前輪)、14万5200円(後輪)
Spec.
リム高さ:前51㎜、後48㎜
リム最大幅:前35㎜、後31.3㎜
リム内幅:前後21㎜
ビードフック幅:4.1㎜
重量:前716g、後839g 前後セット1555g(バルブキット、リムテープ含む)
スポーク本数:前18本、後24本
対応タイヤ:チューブレスレディ、チューブド
カラー:サテンカーボン/サテンブラック