注目の最新モデルを試乗&紹介 リドレー・カンゾーアドベンチャー

目次

リドレーが初のグラベルバイクを発売したのは2015年のこと。今回紹介するカンゾーアドベンチャーは、初代が2019年に誕生し、2代目となる本作は2022年にリリースされた。なお、初代の方はモデル名の末尾に「1.0」を加え、継続して販売されている。

カンゾーアドベンチャー

RIDLEY
KANZO ADVENTURE

リドレー・カンゾーアドベンチャー
シマノ・GRX RX810完成車価格/55万円

最新トレンドを取り入れてMTB並みの走破性を実現

ほぼ白紙の状態から開発された2代目カンゾーアドベンチャー。外観上の違いとしては、ドロップドシートステーの採用やケーブル類のフル内装化が挙げられるが、それ以上の進化はジオメトリだ。ヘッド角を寝かせる一方で、シート角は立て気味に。BBドロップを深くし、リーチやホイールベースは伸長。これらは最新MTBのジオメトリを参照したもので、付け加えるとサスフォークの取り付けも考慮されている。タイヤクリアランスは初代の47mmから53mm(700C)へと拡大され、これに伴いドライブトレインはフロントシングル専用設計となっている。

ネジ穴が増えたのも2代目の特徴だ。マウントの位置については初代と共通だが、ネジ穴が増えたことでケージ類の自由度が向上した。注目すべきは、そのネジ穴を利用して積載した際の強度が増したことで、例えばフォークブレードは片側に3kgまでの荷物を積むことができる。

堅牢性を重視したことで、フレームの重量(XSサイズ)は1086gから1260gへと増えたが、反対にフォークは480gから415gへと13%軽くなった。なお、販売形態は完成車のみとなっている。

DETAILS

フォーク

フォークブレードのケージ用のネジ穴は2つから3つとなり、フェンダー用と合わせて片側4つに増えた。耐荷重は片側3kgで、より低い位置にマウントできるようになったのもうれしい進化だ

シートチューブ

シートチューブは、シートステーとの接点から下側が幅広くなっており、剛性と振動吸収性を最適化しつつ、タイヤクリアランスも確保。ここのネジ穴も初代の2つから3つへと増やされている

BB裏側

タイヤクリアランスを広げるために大きくドロップさせたチェーンステー。裏側から見るとドライブトレインのある右側が極端に薄いことが分かる。許容タイヤ幅は700Cなら53mm幅、29×2.1サイズが目安だ

SPEC

フレーム╱カーボン
フォーク╱カーボン
メインコンポ╱シマノ・GRX RX810
ホイール╱フォルツァ・ノルテグラベルTLR
タイヤ╱ヴィットリア・テレーノドライ 700×47C
ハンドル╱リッチー・ブターノ
ステム╱フォルツァ・ストラトス
サドル╱セライタリア・モデルXスーパーフロー
シートポスト╱フォルツァ・シラスアロイ
サイズ╱XS、S、M
カラー╱レーシンググリーン×グレー
試乗車重量╱9.24㎏(ペダルなし)

GEOMETRY

カンゾーアドベンチャーのジオメトリ図

SIZE

カンゾーアドベンチャーのジオメトリ表

IMPRESSION「未舗装路の勘所を知り尽くしたリドレーらしい秀作」

カンゾーアドベンチャーに乗る大屋さん

RIDER 大屋雄一

カンゾーシリーズでは、最上位のカンゾーファストと、アルミのカンゾーAに試乗したことがある。前者はエアロロードのようなシルエットで、フラットなダートでの速さは間違いなくトップクラス。一方、エントリーモデルのカンゾーAは、アルミフレームながらも硬過ぎず、価格以上の満足度が得られることを実感した。リドレーはベルギーのブランドだけに、昔から国技とも言われるシクロクロスで活躍している。ゆえに未舗装路はホームのようなもの。生まれたばかりのグラベルセグメントにおいて、有力なブランドであることは間違いない。

日本で販売される完成車は、コンポにシマノ・GRX機械式、アルミリムのホイールを採用し、実測重量は公称値に限りなく近い9.2㎏だ。決して軽い部類ではなく、踏み出しも重めだが、いざ走り始めると舗装路では意外なほど気持ち良く進んでくれる。これは標準装着のヴィットリア・テレーノドライがいい仕事をしているようで、47Cというワイドな見た目に反して転がり抵抗が低く、しかもハンドリングに変なクセがないのもいい。

乗車位置から見えるフォークブレードのスパンの広さは、まるでリジッドフォークのMTBのようだ。長めのホイールベースが生むワイドな旋回半径もMTBに似ており、カンゾーファストよりも明らかに悪路走破性に重きを置いていることが伝わる。フレームは積載時の安全を考慮して堅牢性が高められているが、少なくとも空荷の状態で走ってみて過剛性な印象は少なく、走りに何ら不満がない。

変速系は11速のRX810シリーズで構成されている。昨年9月に12速のRX820が発表された今となっては旧世代感があるものの、変速フィールもブレーキタッチも優秀で、これについても不満はない。

ハブダイナモ用のケーブルを通すための穴や、フロントライト用のネジ穴まで設けるなど、完全にアドベンチャーライドを想定した設計に、リドレーの本気が伝わってくる。速さを追求したカンゾーファストとの二本立てでグラベルセグメントを席巻しそうな勢いであり、完成車で55万円はお買い得と言えよう。

充実したリドレー・グラベルバイクシリーズ一挙紹介

カンゾーファスト カンゾーファスト

KANZO FAST
カンゾーファスト
フレームセット価格/42万9000円
シマノ・GRX RX815 Di2 1×11Sバイククラフト価格/65万4500円
シマノ・GRX RX820 1×12Sバイククラフト価格/57万9700円
シマノ・GRX RX610 1×12Sバイククラフト価格/53万5700円

カンゾーアドベンチャー1.0 カンゾーアドベンチャー1.0

KANZO ADVENTURE 1.0
カンゾーアドベンチャー1.0
シマノ・GRX RX600完成車価格/40万7000円

カンゾーA カンゾーA

KANZO A
カンゾーA
シマノ・GRX RX400完成車価格/25万3000円

グリフィン グリフィン

GRIFN
グリフィン
シマノ・GRX RX610完成車価格/45万1000円

汎用性の高いオールロードバイクとして開発されたモデル。舗装路ではロードバイクのような走行性能と速さを、未舗装路ではグラベルロードのような快適さを発揮する。安定したハンドリングを得ることができるヘッドアングルと、低重心化されたBBドロップ、快適性を高めるためのシートアングルなど、新しいフレーム形状とジオメトリを採用。また、多数のアイレットを備えており、目的に応じてバッグやボトルケージ、その他のアクセサリーを装着することができる。タイヤクリアランスは38mmまでだが、フロントシングルならさらに40mmまでに広げられる。