おすすめグラベルロードインプレシリーズ⑥“メリダ・サイレックス4000”編

目次

スポーツ自転車のジャンルとして確立された感があるグラベル&アドベンチャーバイク。その実態は多様で、モデルごとに独自の世界観を感じさせる。どれが優れているかというよりも、どれが自分の用途にふさわしいかという視点が求められる。ここでは、「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長の田村浩と、「サイクルスポーツ」編集部の江里口恭平が、メリダの「サイレックス4000」の実走インプレをお届けする。

サイレックス4000

MERIDA SILEX 4000
メリダ・サイレックス4000

シマノ・GRX完成車価格/38万5000円
問・メリダジャパン

700Cタイヤに最適化しあらゆるニーズに応える第二世代モデル

2020年に登場した先代のサイレックスは、MTBライクでアップライトなポジションと650Bホイールを採用し、その特徴的なルックスと群を抜く走破性で異彩を放った。それから4年の時を経て登場したサイレックスは、グラベルバイクの定義や多用途であることの意味を問い直したかのように、再びまったく新しい姿をまとって登場した。

大きな特徴は、原点に回帰するように採用した700Cホイールであり、長いフォークによって幅45mmというタイヤクリアランスを確保したこと。これにより650Bホイールは必要ないという判断に至っている。ヘッドチューブは以前より短くされているが、そのアングルは69.5度というかなり「寝た」数値が採用されており、フォークの長さと相まって先代のサイレックスと同様なリラックスした乗車姿勢を確保している。変えるところは大胆に変えつつ、悪路の走破性に一切の妥協はないモデルだ。

この新型サイレックスは決してレーシーな走りを強調したモデルではないが、2023年のグラベル世界選手権に先行投入され、優勝バイクという栄冠を得ている。キャンプツーリングを視野に入れたバイクパッキングなど、多用途であることが身上のサイレックスだが、単に安楽さと積載力を追求したモデルではない。「速さ」を追求できる実力も確実に備わっている。そしてプライスパフォーマンスも群を抜いている。メリダの技術力を体現した、恐ろしいほど魅力的なモデルだ。

BBまわり

チェーンステーをBBの下方から伸ばすことで、ギヤとワイドなタイヤクリアランスを両立。フェンダーを付けても700×42Cタイヤの装着が可能

フォーク

最大45mm幅のタイヤに対応。フォーク先端近くのディスククーラーがブレーキキャリパーの空冷を促進する。サスペンションフォークへの換装も考慮

ヘッドチューブ

フォークが長くなった分、ヘッドチューブは短めになっている。乗車ポジションは先代モデルと同様になっており、悪路の高い走破性を受け継いでいる

シートポストまわり

シートクランプはトップチューブ上面に配置され、下面にボトルケージ台座が設けられている。シートステーにはフェンダー用のブリッジを追加できる

SPEC

フレーム:サイレックスCF II
フレームサイズ:44(XS)、47(S)、50(M)、53(L)cm
フォーク:メリダ・サイレックス II CF2
カラー:ガンメタルグレー
メインコンポーネント:シマノ・GRX400
クランクセット:シマノ・GRX600 30/46T
カセット:シマノ・CS-HG50 11-36T(10スピード)
ブレーキ:シマノ・GRX400
ホイール:メリダ・エキスパートSL II
タイヤ:マキシス・ランブラー 700×45C
ハンドル:メリダ・エキスパートGRII
ステム:メリダ・チームCC III
サドル:メリダ・コンプSL Vマウント
シートポスト:メリダ・エキスパートCC
試乗車実測重量:9.9kg(ペダルなし)

IMPRESSION

サイレックス4000に乗る田村さん

異様にヘッドチューブが長かった先代モデルと比べると、ずいぶん普通になったなあと思いながら乗ってみたところ、悪路の走破性に重きを置いていることに変わりはないと実感。物理的なサスペンションを持たないグラベルバイクとしては、最高レベルの快適さと安定性を感じます。拡張性も満点。内容に対して手頃な価格も魅力です(田村)。

サイレックス4000に乗る江里口

世界選手権優勝バイク!と思って乗ると、よくも悪くもイメージが裏切られます。乗り手を急かすようなレーシングバイクらしさは希薄で、驚くほど安定志向。フレーム自体は十分に軽量ですが、アップライトな乗車ポジションや最大級に太いタイヤのアッセンブルなどが合わさって、誰もが扱いやすい汎用性が際立っています(江里口)。

「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長 田村浩

「グラベルバイクを遊びつくす!」などヤエスメディアムックシリーズの編集・執筆を担当するサイクリスト。スポーツ自転車歴は30年を超えるが、常にツーリングの相棒ととらえており、グラベルライドやキャンプもその一環。現在所有するグラベルバイクはジェイミス・レネゲードC2。近著に「自転車キャンプ大全」(技術評論社)。

サイクルスポーツ編集部 江里口恭平

温泉とグラベルを求めて全国を走り回るサイクルスポーツ編集部員。学生時代は自転車競技部に所属し、レーサー目線であらゆるジャンルの自転車とアイテムを評価することもできる。海外を含むグラベルイベントの実走参加経験も豊富だ。現在所有するグラベルバイクはサーヴェロ・アスペロ。

 

このようなグラベルバイクのインプレが掲載された、多彩なサイクリングの楽しみ方を紹介し、バイクパッキングで活躍するバッグやタイヤ選びのヒントも詳解する、グラベルバイクを楽しむヒントが詰まった一冊「グラベルバイクを遊びつくす!」。全国の書店、Amazonで販売しています。

グラベルバイクを遊びつくす!