ピナレロのエンデュランスバイク「Xシリーズ」にフラッグシップ「ドグマX」が登場

ロードレースだけでなく近年トラックやシクロクロス、MTBでもタイトルを立て続けに獲得しているピナレロ。同社のエンデュランスロードであるXシリーズにフラッグシップを含めた4モデルが追加され、その発表会がイタリア・トレヴィーゾで開催された。

 ピナレロ・ドグマX

斬新な「Xステイズ」を搭載したピナレロの「ロングライドにおける最適解」のお披露目を現地からお届けする。

ピナレロ・ドグマX

記事の導入で早速使った「斬新」という言葉はピナレロのDNAでもある。突拍子のないフレーム形状でマーケットを驚かせてきたピナレロ。インパクトあるヴィジュアルは機能性とパフォーマンスを追求したもので、実際にレースシーンで数々の成績を残してきた伝統がある。その流れはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の傘下を経て経営体制が変わった今も変わらない。

2023年、ピナレロはロードバイクを含めたラインナップを「F」と「X」に分類した(継続エントリーモデルのラザを除く)。スピードを徹底的に追求したレーシングバイクのFシリーズに対して、Xシリーズは少しアップライトなジオメトリーで快適性を追求したラインナップ。シンプルな棲み分けがなされ、2月に先行する形で「X3」と「X1」が発表されている。

今回発表されたのは「ロングライドにおける最適解」を押し出したXシリーズの最高峰「ドグマX」。東レとの長年のコラボレーションは健在で、イネオス・グレナディアズが乗る「ドグマF」と同様にT1100 1Kカーボンファイバーを使用している。さらにパフォーマンスと軽量性、振動吸収性を追求したT900カーボン使用の「X9」と「X7」、そして最小限の重量増で振動吸収性を向上させたT700カーボン使用の「X5」の合計4機種が追加。これにより「ドグマX」を頂点とするエンデュランスバイクのラインナップが揃った。

ピナレロ・ドグマX

ピナレロ・ドグマX

なんと言っても特徴的なのは、「X3」と「X1」で採用されている比較的オーソドックスかつコンパクトなリヤ三角とは似て非なる「フレキシ・ステイ2.0」だろう。振動吸収を狙ったと容易に想像できる湾曲&細身のシートステーが、二股に分かれる形でシートチューブに接合されている。

シートステー上部はトップチューブとシートチューブの接合部に滑らかに繋ぎ合わされており、下部はシートチューブの真ん中に溶け込むように接合され、横から見ると「Y字」を描く。さらに最上位機種の「ドグマX」に限り、後ろから見ると「X字」に見える「Xステイズ」を採用している。文字通り、左右のシートステーを繋ぐブリッジ部分がシリーズ名の「X」を示している。

「パフォーマンスを損なうとともに重量がかさむサスペンションシステムではなく、フレームの軽量性とBB剛性を犠牲にすることなく振動を吸収する先進のフレキシ・ステイ2.0を採用した」。かつて電子制御アクティブサスペンションをシートステーとシートチューブの接合部に搭載したドグマK10-S DISKをリリースしたこともあるピナレロだが、振動吸収に関して(造作は複雑であれど)よりシンプルな方向に舵を切った。

ドグマの名前を冠しているが、Fシリーズのコンペティションジオメトリーとは差別化されたエンデュランスジオメトリーが採用されている。

ピナレロ・ドグマX

「X9」以下に採用されているエンデュランス+ジオメトリーとの中間に位置するもので、ドグマFと比較するとリーチが3.9mm短く、スタックは15.4mm長い(サイズ53)。アグレッシブすぎるポジションで走ることもなく、スペーサーを積み上げることなく、長時間サドルに跨る多くのサイクリストを満足させるリラックスしたポジションを実現する。世界中のサイクリストのバイク使用用途を考慮すると、このアップライト気味のジオメトリーに行き着く(行き着くべき)というのがピナレロの答えなのだろう。

そしてこれらの特性を最大限生かすのが最大35mmというたっぷりとしたタイヤクリアランス。35mmというビッグボリュームなタイヤこそ、快適性とスピードを両立するフレームのポテンシャルを最大限に引き出すものであると語られた。

「フィリッポ・ガンナのように速く走らないにしても」という前置きとともに、エアロダイナミクス性能の高さも強調。TICRシステムでステム一体型ハンドルにケーブルは内蔵され、フロント周りは「ドグマF」と見分けがつかない。

ピナレロ・ドグマX

奇しくも、発表会の数日前に公開されたUCIグラベル世界選手権のスタート地点にあるホテルに宿泊し、同大会のコースを部分的に走るテストライドが行われたが、あくまでも「Xシリーズ」はグラベルバイクではなくエンデュランスロードもしくはオールロードという位置付け。

ピナレロはグラベルバイクとして「グレヴィルF」と「グランジャーX」をラインナップしている。なお、UCI公認フレームだが、イネオス・グレナディアズの選手たちがパリ〜ルーベを含めたロードレースで使用する予定もないという。

ピナレロ・ドグマX

ピナレロ・ドグマX

プレゼンテーション内で流されたプロモーションビデオでは、「ドグマX」に乗る男女ペアのサイクリストがフランドルクラシックやストラーデビアンケのコース、さらにはドロミテの峠道を走る姿が映し出された。

驚異的な出力でプロ選手が踏むようなレーススピードではなく、より一般的なスピードで様々なライドを網羅するための「Xシリーズ」。「パフォーマンスを損なうことなく最高の快適性を実現する」という、多くのサイクリストに寄り添ったエンデュランスロードの発表会に世界各国から集まったジャーナリストは約20人。2月の「ドグマF」の発表会よりもより多くのジャーナリストを招待していることにピナレロの本気度を感じた。

 

ドグマ X 製品概要

ピナレロ・ドグマX

XOLAR SUN / E200

 

ピナレロ・ドグマX

XOLAR BLUE / E201

 

ピナレロ・ドグマX

XOLAR BLACK / E2012

 

ピナレロ・ドグマX

XOLAR GREEN / E203

 

DOGMA X(ドグマ X)

フレームセット価格:110万円

メインマテリアル:Carbon Torayca T1100 1K

ボトムブラケット:イタリアンスレッド

ブレーキシステム:Rad Systemディスクブレーキ(フラットマウント)

アクスル:フロント/100x12TA、リヤ/142x12TA

ローター最大径:160mm

最大タイヤサイズ:700×35c

カラー:XOLAR SUN / E200、XOLAR BLUE / E201、XOLAR BLACK / E2012、XOLAR GREEN / E203

※2023年11月頃より順次入荷予定。

※Xシリーズに追加されたX9、X7、X5の詳細は追って発表します。

ピナレロ・ドグマX
ピナレロ・ドグマX