ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン実証運行 参加レポート

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茨城県中東部にある第3セクター鉄道「ひたちなか海浜鉄道湊線」で、サイクルトレイン実証運行が3月5日に実施された。“海風ルート”と“街乗ルート”の2コースで実施され、筆者はロードバイク持参で海風ルートに参加した。

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

2両連結の1両がサイクルトレイン専用車両。乗降口にステップがあるので自転車を持ち上げて乗り込む

 

バリアフリー構造の駅と揺れない列車

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

全11駅がバリアフリー構造。ホームまで自転車を押し歩きでアクセスできる

 

イベントの名称は “ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン実証運行”。自車持ち込みの海風ルートに5人、電動アシストレンタサイクル利用の街乗ルートに3人が参加した。海風の走行距離は約25km、街乗りは約11km。県の交通政策課の職員各1人が自転車で先導し、サポートカーが付くガイドツアー方式で行われた。

湊線は全線がひたちなか市内を通る。JR常磐線と連絡する勝田駅から太平洋に面する阿字ヶ浦までの14.3kmに11の駅がある。発着は無人駅の金上駅。ここでクイズ、駅名の読みは? 正解は“かねあげ”という縁起の良い駅名。入り口からホームまでゆるやかなスロープがあり自転車を押していける。湊線はすべての駅がバリアフリーなのでサイクルトレインに適している。

阿字ヶ浦行き10時47分発の列車が到着、2両連結の1両がサイクルトレインの貸し切り。前後2か所の乗降口から乗り込む。ホームから車内へはステップを2段登るが、車重20㎏を超える電動アシスト自転車も問題なく車内へ持ち込めた。

 

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

往路はベンチシートの車両、復路はベンチシートとボックスシートを備えた車両。自転車は手で保持するのが決まり

 

ベンチシートの車両だった。手で自転車を押さえるのが決まり。制服制帽姿の同鉄道代表取締役の吉田千秋さんが鉄道と沿線の案内役を務めた。湊線は揺れが少ないとのことだったが、確かに揺れが少なく自転車の保持が楽だった。

24分で終点の阿字ヶ浦駅着。駅構内に引退車両のキハ222を御神体とする鉄道神社がある。国内現役最古級のディーゼルカー、グッドデザイン賞を受賞した駅名標など湊線自体が観光要素になっている。

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

阿字ヶ浦駅にある、ひたちなか開運鐵道神社。鳥居はレール製、御神体はキハ222北海道仕様

 

ルートのハイライトは磯崎海岸、平磯海岸沿いの道

2コースに分かれてサイクリング開始。ここでまたクイズ、ひたちなか市が誇る生産量日本一の産物は? 正解はほしいもと加工したタコ。海風ルートはまず黄金の鳥居列が輝くほしいも神社へ参拝。国営ひたち海浜公園の外周約14kmを回って再び阿字ヶ浦へ。ここは外周ではなく、大人気の観光地であり、中へ自転車で入ることができる海浜公園内を走る方がツアーとしては魅力的だと思う。

 

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

阿字ヶ浦の海を望む高台に鎮座する新名所、黄金色に輝く鳥居が名物のほしいも神社。バイクラックが設置されていた

 

戻った阿字ヶ浦では、医薬の祖神を祀る酒列磯前神社へ参拝。“さかつらいそさきじんじゃ”と読む。海風は3つの神社を巡拝する開運ルートでもある。

神社にある段丘から太平洋へ向かって一気に下り、磯崎海岸から平磯海岸、那珂湊おさかな市場へ至る磯浜沿いの道へ。ここがルートのハイライト。東側に太平洋のパノラマを眺めながらサイクリングできる。海側には、車道と歩道の間に構造分離された自転車専用道を整備中。3か所の工事区間があり、交互一方通行の規制があった。

海風は県のサイクリングモデルルート「大洗・ひたち海浜シーサイドルート」の一部と重なっていた。ルートの案内表示や路面の矢羽が要所に設けられ、経路が分かりやすかった。

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

“海風ルート”は県のサイクリングモデルルート「大洗・ひたち海浜シーサイドルート」の一部と重なる。ルートの案内表示や路面の矢羽が整備されていた

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

海風ルートのハイライトは、磯崎海岸と平磯海岸沿いの海浜ルート。太平洋と岩場を望みながらサイクリングできる

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

磯崎海岸と平磯海岸沿い海浜ルートの海側に、構造分離の自転車専用道を整備中。工事中の区間が多かった

 

昼食場所であるおさかな市場に到着。大人気の市場と飲食施設が集中する人気観光地で大勢の客でごった返していた。市場2階の食堂で刺身定食1430円を食べた。行程が遅れていたので市場を物色できくなかったのは残念。ここはゆっくりと滞在したい。

那珂湊駅で街乗り組と合流して、14時11分発の勝田行きの列車に乗車。“ほしいも王国”のラッピング列車だった。なんと吊り革に黄色のほしいもオブジェが付いていた。ほしいも愛の強さにびっくり。14時22分金上駅着でツアーは終了。所要時間は4時間10分だった。

 

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

ほしいものラッピング列車の吊り革には、ほしいものオブジェが付く。ほしいも愛が深い!

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

那珂湊駅では、電動アシスト自転車の “みなとちゃんレンタサイクル ”を行っている。1日1000円と安価

 

今回は、実証運行だったが、この結果を生かしてぜひサイクルトレインの本実施を実現してもらいたい。2大観光地である海浜公園とおさかな市場に集中する観光客の周遊性促進、GWなどハイシーズンの2大観光地周辺の交通渋滞解消、サイクリングモデルルートの大洗・ひたち海浜シーサイドルートへのアクセス向上などが期待できる。

前出の吉田さんは、「市や観光協会からの要請もあり、サイクリストと列車をしっかりと結びつけたい」と前向きの姿勢だった。

ひたちなか海浜鉄道湊線サイクルトレイン

湊線路線図 <出典: Google マイマップ>