感染対策徹底 九十九里トライアスロン2020

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2020年10月11日、新型コロナ禍で実施された数少ないトライアスロン大会の一つ「九十九里トライアスロン」。その感染対策を振り返る。

九十九里トライアスロンは千葉県一宮海岸周辺をコースとして開催される、首都圏のトライアスロン大会として人気。オリンピックディスタンス(スイム1.5km / バイク40km / ラン10km)の大会で、特にバイクとランのコースは東金九十九里有料道路を通行止めにしたダイナミックな景色の中を走ることができるのが魅力だ。新型コロナウイルス禍での開催となった大会は、中止になったときの返金ルールや、感染拡大防止対策のルールといったニューノーマルに合わせた形式で実施された。

九十九里トライアスロン2020

 

レース前から感染対策は始まっている

レースにエントリーすると、Wellness Passportというアプリの案内があった。自分の体温を記録するためのもので、レースの2日前から検温を実施しアプリにその記録を付ける。当日の朝の体温まで入力するとコンプリート画面になり、体調に問題が無いことの証明とし、そのアプリの記録をエントリーの時に提示することが求められた。また、九十九里トライアスロンのルール説明や、コースの注意点については、事前にユーチューブで配信される動画を閲覧し、十分理解することが求められた。過酷な競技ゆえにルールの周知は重要なのだ。

 

九十九里トライアスロン2020

アプリの画面、アクセスすると体温入力画面が毎日立ち上がり、そこに日々の体温を記録していく

 

受付も感染防止を徹底

イベントでは前日を受付日としているものが多くある。エキスポを開催して協賛企業と参加者とのタッチポイントを増やすことが狙いだ。だが、それも人が集まり密になりやすいということで当日受付のみとされた。イベントとしては痛手だったとはおもうが、まずは開催することを優先した素晴らしい対応である。受付では検温、ソーシャルディスタンスをたもって実施することが徹底されていた。また、なるべく少人数でかたまることなく移動するように係員からの勧告が都度都度行われた。

九十九里トライアスロン2020

会場ではスタートギリギリまでマスクを着用。予備のマスクの提供もあった

九十九里トライアスロン2020

受付は広いホールで参加者同士、距離を保ちながら行われた

九十九里トライアスロン2020

受付を終えたことを証明するシールをヘルメットのゼッケンに貼ってもらう

九十九里トライアスロン2020

屋外とはいえ、各所に消毒用アルコールが置かれていた。計測チップもスタッフから手渡されるのではなく、机にずらりと置いてあるところから自分でピックアップ

九十九里トライアスロン2020

トランジションエリアにバイクの装備を置く

 

台風の影響から、デュアスロンに変更

台風からの強い南風により海は大荒れ

 

大会が近づくにつ入れて、新型コロナウイルス以外にも新たなる問題が。それは台風14号の接近だ。トライアスロンはまずスイムからスタートし、バイク、ランとパートをつないでいく。台風からの強い風で波が立てばスイムは難しいし、台風が直撃すれば大会自体の実施が難しくなる。

当初は本州直撃の予想もあったなか、最終的に進路は太平洋上に逸れたものの、台風からの風は強く、波も高い状態だった。これに対応すべく、九十九里トライアスロンは最初のスイムを同距離のランに変更したデュアスロン形式での開催となった。

九十九里トライアスロン2020

最初のランは、一斉スタートではなく、2人ずつ時間差をつけてスタート

 

元競泳日本代表、松田丈志さんも参加

九十九里トライアスロン2020

競泳元日本代表で、五輪メダリスト。現在はスポーツジャーナリストとして活躍する松田さんは、現在趣味としてトライアスロンに参加している。

「元々今年は佐渡国際トライアスロンのロングに出場するつもりでしたが中止になってしまったので、目標を九十九里トライアスロンに切り替えました。競泳では中距離をメインにしていたので、スイム以外の競技を強化して楽しんでします。やはり大会がないとモチベーションが切れてしまうので、この大会にエントリーしました」

 

大会に参加して初めてトライアスリートになれる

九十九里トライアスロン2020

大会を企画したアスロニア白戸太朗氏

「例年日本国内だけでトライアスロン大会は280大会ほど開催されていますが、今年は10大会ほど。そのうちの5大会は全日本選手権などなので、一般のトライアスリートが参加できる大会は5大会ほどです。その一つがこの九十九里トライアスロン。そのうち、参加者の規模が1000人を超えているのは九十九里トライアスロンとセントレア(アイアンマン70.3セントレア知多半島ジャパン)だけです。開催まではいろいろな苦労がありました。実現できたのは、ひとえに熱意と準備。できないことを洗い出して、それを一つずつ解決する。その積み重ねです。台風もうまく進路が逸れてくれました。選手の顔からもいい緊張感にあふれているのでよかった。目標が無いと緊張も切れてしまう。大会に参加しないとトライアスリートにはなれない、ゆえに大会を実現できてよかったです」

 

強風との戦い

時折小雨が混じる中、レースはトップカテゴリーから順次スタート。デュアスロンということで1.5kmをランニング、その後40kmのバイクパート。そして最後に10kmのランニングというコースに。太平洋に面する東金九十九里有料道路は海からの風が参加者を苦しめたが、久しぶりの大会ということで参加者の顔は苦しそうでもあり、どこか充実感に満ちた顔でもあったように思う。かくいう筆者も今年唯一参加できた大会で、その喜びもひとしおだった。

 

すぐに元通りとはいかないが、ニューノーマルに合わせた形でイベントを開催できることを示したといえる。来年は今年より、一つでも多くの大会が開催されることを願う。

 

九十九里トライアスロン2020

風の中のバイクパートではDHバーの恩恵が特に大きく感じた

九十九里トライアスロン2020

フィニッシュ後のハイタッチもなし

九十九里トライアスロン2020

フィニッシュ後、参加賞の受け取り前にもアルコール消毒。とにかく徹底されていた

マヴィックの日本限定ホイールで目立っている参加者に声をかけると、なんとマヴィックの広報チームの皆さんでした! 新作コスミックカーボンを装備しての参加。昨年のバイクパートのタイムと比較すると平均速度がアップ。女性が使っても、向かい風区間で安定して走ることができ10人ほどパスすることができたそう。そして追い風区間では時速40kmでの巡航ができたことで、新作の性能を実感している様子だった。