チームユーラシア橋川代表インタビュー 若い選手を救うひとつのアイディア:U23+U19バーチャル大会iRC TIREチャレンジ始動 

目次

新型コロナウィルスの影響でレースが開催されていない今、橋川健さんが代表を務めるサイクルロードレースチーム「チームユーラシア-IRCタイヤ」が、Zwift(ズイフト)のMeetUp(ミートアップ)機能を使ったレース風トレーニング「iRC TIREチャレンジ」をスタート。その狙いについてスポーツジャーナリストの宮本あさか氏がレポートした。

 

このままなにもできないよりも

新型コロナウイルスの影響で、世界中の公道から自転車レースが消えた。代わりにオンライン上では、たくさんの新しく刺激的な試みが生まれている。ワールドチームのバーチャルレースがTVで生中継され、世界中のファンが連日プロと画面上で並走する。

チームユーラシア-IRCタイヤがこの5月にスタートした、iRCチャレンジもそのひとつ。Zwiftを使った週1回・全6戦で争われるバーチャルシリーズで、特筆すべきは、これがU19+U23レースであること。

「このままなにもできないよりも、なにかとりあえずやってみちゃおう」

iRCチャレンジ

チームユーラシアの橋川健代表

こう語るのは、大会を企画したチームユーラシアの橋川健代表だ。

バーチャルライドやレースをあちこちのぞき、Zwiftの大会開催システムを超特急で研究した。日本学生自転車競技連盟の理事が喜んで手を貸してくれたし、日本のいくつもの育成系チームから、賛同も取り付けた。

「色々と悪乗りして盛り上がっていくうちに『じゃあせっかくだからDJのがらぱさんに実況頼みましょう』ということになって。インターハイやインカレの現場では、いつもがらぱさんの声が聞こえてきます。たとえPC画面上とは言え、がらぱさんに自分の名前を呼んでもらえることが、きっと選手たちのモチベーションになると思ったんですよね」

 

小さなきかっかけのひとつになれば

ベルギーで世話していた日本人選手7人を、欧州各国がロックダウン状態に入った3月末から、橋川は次々と日本へ帰した。「帰りたくない」と最後まで抵抗を続けた選手も、4月10日過ぎに、飛行機へ押し込んだ。

「レースが再開される見通しがまるでたたなかったし、ベルギーで死者数が日に日に増えていく状況を考えると、日本のほうが比較的安全にトレーニングできる環境でした。だから『帰る』という選択肢は正しかった。ただ、選手たちの『思い』は、別ですから」

だから指導者として、まずなにより選手に目標を与えたいと考えた。

「レースがなくなり、どのチームも抱えている問題は同じ。選手のモチベーションをどう保つか。で、まあ、若い選手がやる気になるきっかけって、色々あるわけですよ。女の子にモテたいとか、新しい携帯が欲しいとか(笑)。だから今回のZwiftレースも、小さなきっかけのひとつになってくれればいい。これですべてが解決されるわけじゃない。でも小さな目標は与えられると思ってます」

チームを運営する側としては、スポンサーへのアピールの場にもしたい。

「スポンサーと『年間』契約を結んでいるチームが多いので、今年はまだなんとか、存続していけるかもしれない。でも来年はどうなるか分からない。だから『イベントに参加していますよ』と外に発信していく必要があります。参加チームにはそれぞれ30秒くらいのCMタイムを割り当てます。ここでスポンサーの宣伝をしたり、チームのPRをしたりできる。みんなすでに個々でスポンサー向けの努力はやっていると思うんですよ。でも、一緒にやることで、もうちょっと大きな流れにできるんじゃないかなぁと」

 

若者の進路を閉ざさぬように

出場資格はシンプル。1998年以降に生まれた選手であること。チームの枠を超え、アマチュアライダーと学生選手の区別さえとっぱらった。

こうして5月5日のシリーズ第1戦には、ユーラシア、エカーズ、ブラーゼン、山中湖を筆頭とする8チームと、やはり8つの大学・高校の自転車部が、選手を送り込んだ。1998年〜2005年生まれのあわせて27人がスタートラインに並び、日本代表経験者や日本自転車競技連盟の強化指定選手も8人いた。

「同世代のトップ選手と普段一緒に走る機会がない選手にも、きっといいチャンスになるはずです」

たとえばテストイベントでは、慶応大学の石井悠太郎が3位に滑り込んだ。「彼のような選手は、この成績を自信にしていい」と橋川は語る一方で、良い選手をスカウトしたい大学や国内チームにとっても、見る価値のあるレースになるはずだと考える。

「Zwiftと実走は違うからね……という意見はもちろんある。バーチャルレースで順位をつけることに疑問を持つ人も多い。でも、今、まったく他になにもやれることがない中で、じゃあなにができるのか。なにをしたらいいのか」

なにもできないから、なにもしない、で終わらせてはならない。各チームや日本学生自転車競技連盟、日本自転車競技連盟は、あらゆる案を出し合い、議論を重ね、柔軟に新しいシステムを生み出だしていくべきだと橋川は訴える。

「高校3年生や、大学4年生という、進路を決める大切な時期にいる選手たちのために、考えてあげなきゃならない。なにか少しでも選手を評価してあげられる方法があるはずです」

iRC TIREチャレンジは6月9日までの全6回で争われる。7月1日から、UCI(国際自転車競技連合)の通達どおり、本物のレースが再開されることを祈りつつ。

 

チームユーラシア-IRCタイヤ