ニセコグラベル2025オータムライドを実走レポ!「日本最大規模のグラベルフェスだ!」

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北海道の大自然を遊び尽くすライドイベント「ニセコグラベル」が今年も開催! 9月13日から2日間、秋空の下で愛好家たちが極上のライドに酔いしれた。日本のトップシーンをひた走る、界隈No.1の人気イベントに密着した。

ニセコグラベル2025

カルチャーの立役者、ニセコ

ニセコなくしてニッポンのグラベルは語れない。小さなローカルイベントから始まり、今やマニアから一目置かれるイベントへと成長したニセコグラベル。カルチャーの盛り上がりに大きな貢献を果たすとともに、日本全国のみならず海外ライダーをも集める一大イベントへと登り詰めた。ご存じの通りニセコはアウトドアリゾートの急先鋒であり、世界中から人気を博すエリアだ。今年は620名ものエントリーを集めものエントリーを集め、底堅い人気ぶりを見せつけた。

昨年は春秋の2部開催だったが、2025年は秋に一本化された。主催者は一般社団法人HOKKAIDO EVENTS、タイトルスポンサーにはカルチャーの牽引役であるパナレーサーが就任。キャノンデール(インターテック)やシマノといったお馴染みの面々も協賛各社に加わる。会場はニセコ駅前の「中央倉庫群」に開かれ、豪華なスポンサーブースとフードトラックが会場を彩る。会場の中心には巨大な牧草ロールが設置され、北海道に来た実感が湧く演出であった。

ニセコと聞けば、北海道民でない方々には参加ハードルが高く感じるかもしれない。実際は空路で東京→新千歳が1時間半、ニセコまでレンタカーで2時間もあればたどり着けるエリアだ。筆者は富山空港から昼の直行便で向かい、日没前に宿に到着。地図以上に近いと感じた。国内線だから飛行機輪行もそれほど大きな負担ではなかった。

企業ブース フードトラック 牧草ロール

残暑が続く本州を尻目に、ニセコエリアは早朝気温15度前後と冷涼だ。絶好のコンディションを期待したが、あろうことか土曜日に大雨が襲来。コースへの影響が心配された(前座のライドセッション50kmは雨の中開催されたそうだ)。翌朝はスタート直後こそ小雨に濡れたが、しばらくしてすっきりと晴れ渡り、参加者たちの表情は明るかった。さあ、冒険の扉は開かれた!

幻に消えたヒグマ

コースは走力別に3タイプ。ヒグマ130km、エゾシカ100km、シマリス45kmと地元の野生動物にちなんだネーミングが採用された。中でも最長ヒグマコースは獲得標高約2000m、未舗装路率5割と中々にチャレンジング……だったのだが、雨の影響でコースが短縮。エゾシカコースに統合される形で、合計約300名が100km/獲得標高1700mのコースへと挑んだ。筆者ナカタニもこのエゾシカコースを実走した。ヒグマは来年に持ち越しとしたい。

本イベントはレースではなく、ソロまたはグループライドでの完走が最大目標となる。ローカルルールとして熊鈴の携行がマストとされ、深い森は集団走でやり過ごすのがニセコ流だ。獣害のニュースが世間を賑わせて久しいが、開催前に地元有志で爆竹を焚きながらコースチェックに繰り出したそうだ。そのおかげか、ライド中にケモノの気配はほぼ感じられず、最後までリラックスして走れた。スタッフの見えない努力に感謝だ。

スタート直後は冷たい雨が続いたが、舗装路のクライミングで火照る身体を冷やすにはちょうど良かった。最初の林道区間に入るころには晴れ間が差し、最高のサイクリング日和に。湿り気を帯びたトレイルはややテクニカルさを増したものの、しっとりとグリップの効く極上オフロードが伸びていた。

ニセコのグラベルは粒の小さい玉砂利が主で、スリップしにくく安心感と親しみやすさがある。路面状況が良かったからか、パンクで止まっている人は全く見かけなかった。木漏れ日が差し込む白樺林をジャリジャリと進んでいくと、なんとも言えない多幸感に包まれる。轍に残る水たまりを目掛けて、弾けるスプラッシュを全身で浴びる。誰も彼も、バイクもウェアも、泥のペインティングでなんだかいい感じになっていた。

そのライド体験は「これぞニセコ」と言うほかなく、とにかく最高だ。本州では味わえない大平原を貫くフラットダートに、一直線に伸びるダウンヒル。そしてコースの至る所から、“蝦夷富士”と称される羊蹄山が目に飛び込んでくる。未舗装路率は4割程度とちょうど良く、追い風に押されるオンロードの高速巡航区間もあった。タイヤはパナレーサー・グラベルキングX1プラスの45cで大正解。1ランク上の耐パンク性能で最後までノートラブルだった。

ニセコグラベル2025 ニセコグラベル2025ニセコグラベル2025ニセコグラベル2025羊蹄山グラベルキングX1プラス

大地の恵みに感謝 目に映る全てが愛おしい

ニセコグラベル2025

コース最大のハイライトは、丘の上に広がるビューポイント「磯谷牧場跡地」だ。クネクネと蛇行する舗装路を上ると、風車群が林立するオーシャンビューが待っていた。爽やかな風で汗を乾かし、エイドに供されたカレーが5割増しでおいしく感じる。グラベルではおなじみのソファが絶景を背にして設置され、フォトセッションの列が続いていた。ちょっとした仕掛けがコミュニケーションのきっかけとなり、グループライドはどんどん賑やかになっていく。

さてエイド食だが、自転車抜きに大人気のジャンルである“北海道グルメ”だ。どれもこれも、ペダルを漕いで山谷を越えてきた身体には一層おいしく感じられた。前述のカレーと並び、じゃがバター、かまぼこ、甘酒、アイスクリーム、メロン。蘭越(らんこし)エリアの特産物が勢揃いし、質量共に大満足の美食を堪能できた。ちなみに皆平等に味わえるよう、1人1食のチケット引き換え制だった。

カレー じゃがバター アイスクリーム メロンを食べる参加者 引き換えチケット

朝8時にスタートし、全てのエイドと撮影ポイントを回り、15時に完走。メイン会場の閉場する17時まで、祭りの賑わいは続いた。ゴール後は目移りするほど多彩なフードトラックで食を堪能したり(参加者は500円割引)、洗車サービスを提供する「ラバッジョ」でバイクをリフレッシュしたり、仲間と歓談を楽しんだりと、思い思いに過ごすライダー達の姿があった。ライド中に初めて知り合い、そのままゴールまで伴走した一期一会なグループもいたようだ。共に走ればもう仲間、これぞグラベルマジックだ。

グラベルマニアはなぜニセコを目指すのか? その答えは極上のフィールドはもちろん、アウトドアリゾートの醸し出すオープンな空気にもあるのだろう。ニセコに来ると誰でも開放的になってしまう、その気持ちが理解できた。周辺エリアにはeMTBのレンタルや羊蹄山ハイキング、ジンギスカンに温泉など。数えきれないエンタメが揃いに揃っている。せっかくの北海道旅行だから、遊び尽くし食らい尽くして最高の思い出を作っていただきたいと思う。

ラバッジョ

世界がうらやむニセコグラベルへ

ニセコグラベル2025

ニセコグラベルの人気ぶりは数字にも表れている。その指標のひとつがリピーター率の高さだ。会場でインタビューした参加者の多くがリピーターであったが、主催者発表によるとおよそ55%と驚異的だった。うち道内参加者がおよそ48%であり、半数は県外からはるばるニセコにやってくるというのも興味深い。男女比はおよそ5:1で(筆者の体感だが)女性ライダーの割合も他イベントに比べ多かった。

会場では台湾のインフルエンサーであるリンダさんなど、海外勢の参加も見られた。海外からのエントリー数は昨年比6倍と順調に拡大中だ。今や世界的リゾートであるニセコだから、極上のグラベルは海外からも注目の的だ。聞けば台湾にグラベルイベントはまだ少なく、カルチャーの盛り上がりは日本がリードしているようだ。無論、彼らの表情には大満足の3文字が浮かんでいた。

海外発祥の分物を、日本流にアレンジして昇華する。これは我々が古来から得意としてきた営みだが、グラベルについても同じだろう。本州にもグラベルイベントの芽が育ちつつありどれも魅力的だが、ニセコの“大冒険感”は頭一つ抜けている。絶好のフィールドの中で、ニッポン流のグラベルカルチャーは着実に育っている。ニッポンのグラベルは世界のライダーを魅了しつつあり、ニセコはその最前線を走るパイオニアと言っていいだろう。

主催者インタビュー

一般社団法人HOKKAIDO EVENTS 杉本タケシさん

杉本タケシさん

「今回は日本海沿岸を走る国道229号線をコースに組み込み、海山が揃った北海道の大自然を味わうルートに仕立てました。グラベルイベントは山間部で行われることが多いので、新鮮なライドになったのではと思います。ニセコのグラベルロードは水捌けがいいので、前日の雨で荒れることもなく無事開催できてホッとしました。この一帯には競技勢が揃うニセコクラシック(グランフォンド)に、ファンライド志向のニセコグラベルもあります。イベントを通じて、様々なレベルの方にニセコに来てもらえることを目指してます。インバウンド集客の受け皿も広くしていきたいですね。夏冬どちらも素晴らしいニセコをこれからもよろしくお願いします!」

参加者スナップ

坂東テルヒコさん

お名前:坂東テルヒコさん(美唄サイクリングクラブ)
バイク:ドネリー・G//C

スーツにネクタイ、早朝の会場で存在感を放っていた坂東さん。2017年のニセコHANAZONOヒルクライムにブロンプトンと正装(スーツ)で参加して以降、その姿で走る様子が名物となっているそうだ。ちなみにスーツはユニクロの「感動スーツ」で、速乾性とストレッチ性がありサイクリング向きだそう。愛車は知る人ぞ知るアメリカンブランド「ドネリー」のグラベルフレーム。スピナジーのホイールにマイクロシフトのコンポと一捻りあるパーツで固められる。

平位カズユキさん

お名前:平位カズユキさん
バイク:タイム・ADHX45

シルバーに輝くレーシーな1台を持ち込んだ平位さん。タイムのグラベルレーサー「アルプデュエズX」のうち、最大45cまでタイヤクリアランスを拡大した派生モデルを使用する。愛車のお気に入りポイントは、リリース間もないXTR Di2のディレーラー。9-45Tとグラベルにおいても無駄のないギアテーブルがメリットだ。ニセコは2回目というリピーターで、最難関ヒグマコースを心待ちにしていた(注記:ヒグマコースは雨でコース短縮となりエゾシカコースに統合)

松崎ユウイチさん

お名前:松崎ユウイチさん
バイク:キャノンデール・トップストーンカーボン

東海エリアを起点にグラベルライドを楽しむ松崎さん。去年のニセコは現地で体調不良に陥り涙のDNS、そして今年念願の初完走を叶えた。「上りがものすごくキツかったけど、ソファのあるエイドの絶景が最高でした!」とコースを振り返った。愛車のトップストーンはGRX Di2の新型ディレーラーでフロントシングル化。カスタム品のようなルックスのラファのジャージは、アムステルダムを拠点とするチーム・パタのコラボアイテムだそう。

チームDirty Boysのみなさま

お名前:チームDirty Boysのみなさま

台湾を起点にオフロードライフを発信するチーム「Dirty Boys」。年一回の海外プライベートツアーにニセコを選び、仲間と共に参加したという。PNSやMAAPなど日本でもお馴染みのファッションで固め、バイクも一癖あって存在感バツグンの一団であった。台湾ではグラベルイベントがまだ少なく、走るエリアも限られているそう。ダイナミックで走りやすいニセコのコースにご満悦の様子だった。

立具ユキヒロさん

お名前:立具ユキヒロさん
バイク:オープンサイクル・U.P.PER. CONCE.PT

2025年5月に大阪にて開業したばかりの新興ショップ「ポイントキャンバス」のスタッフである立具(たてぐ)さん。ショップの常連さんと共にニセコ入りし、スタイリッシュな出立ちのグループが会場に花を添えた。「ニセコはお客さんを遊びのフィールドに連れていくのにピッタリの場所でした。グラベルを通じて世界が広がる感覚がいいですね!」とイベントを絶賛。バイクはオープンサイクルの希少モデル「U.P.PER. CONCE.PT」。エアロフレームにスラム・レッドXPLRを搭載したハイエンドレーシングバイクだ。

スピード商会のみなさま

お名前:スピード商会のみなさま

北海道函館市、1955年創業の老舗「スピード商会」のご一行。揃いのショップTシャツに身を包んで100kmコースに挑戦した。「同じ道内でアクセスしやすいですが、やはりニセコは特別な場所です。2回目の参加でしたが、コースが変わって去年よりもラクに感じました。キツイ上りが減った分、余裕を持って景色を楽しめました!」と語った。ちなみに、ショップ部隊は同日開催のアイアンマン南北海道にメカニックサポートとして参加していたそうだ。

KAZUYOさん

お名前:KAZUYOさん
バイク:リドレー・カンゾースピード

宮城からご参加のKAZUYOさん。2週間前のグラベルクラシックやくらいも参加し、すっかりオフロードにハマり中。RCC(ラファサイクリングクラブ)の仲間を連れて100kmコースを走り切った。「ニセコは2回目です。新しいコースに変わって、去年とはまた違う景色を楽しめました。オフロードは最初怖いんですが、徐々に慣れて楽しくなってくるのがいいですよね!」とグラベル遊びの魅力を表現してくれた。

あーちゃんさんときゃおさん

お名前:あーちゃんさん(左)、きゃおさん(右)(Little Black Angels
東京と地元札幌の友人コンビ。共にアドベンチャーレースを走る相棒だそうで、持ち前の体力で100kmコースを余裕で完走。「ニセコは別の大会で走った経験があるんですが、初めて通る道ばかりで新鮮な気持ちで走れました!」と笑顔で答えてくれた。お揃いのTシャツは2007年創業の国産アウトドアブランド「ティートンブロス」のもので、ニセコに向けて新調したそうだ。泥で汚すためにあえて白をセレクト。

多田光平さんと加藤一司さん

お名前:多田光平さん(左)、加藤一司さん(右)
バイク:スペシャライズド・クラックス

福島県郡山市のショップ「スペシャライズド福島(Loop Cycle)」のスタッフとお客さんでペアご参加のお二人。普段はいわき市のローカルグラベルを走っているというが、ニセコの走りやすいフィールドに大満足。「ニセコは砂利の粒が小さくて走りやすかったです。地元のサイクリストをグラベルに連れていきたいですね。クラックスは車体が軽いから登りがラクで、アップダウンコースにまさにぴったりでした。同じバイクでシクロクロスも走るつもりです!」と愛車を評価していた。