世界がグラベルで一つになる日「リバウンド」参加レポート

目次

Presented by SHIMANO

近年止まるところを知らないグラベルブーム。その自由な遊び方に多くのライダーが魅了されている。そんなグラベルを楽しむべく用意された「REBOUND(リバウンド)」は、世界最大級のグラベルレース「UNBOUND GRAVEL(アンバウンドグラベル)」 2024年大会と同日に開催され、シマノも協賛するユニークなライドイベントだ。今回は、世界中のサイクリストがグラベルを楽しむ1日となった、リバウンドの様子をお届けしよう。

REBOUND参加レポート

 

「REBOUND(リバウンド)」とは?

 

リバウンドとは、全てのグラベルサイクリストのために用意されたライドチャレンジイベントだ。世界で最も有名なグラベルレース「UNBOUND(アンバウンド)」と同日(2024年6月1日)、同時刻に好きな場所からスタート。規定の距離に従って、自身で作ったグラベルルートの走破に挑む。世界中のサイクリストと力を合わせ、累計1000万マイル(1600万km!!)を目指すのがコンセプト。レース後は各自パーティー必須という点もユニーク。まさに世界がグラベルで一つになるライドイベントだ。

 

福岡のショップ「正屋」主催の“リバウンド阿蘇グラベルライド”に参加!

リバウンド阿蘇グラベルライド

正屋のお客さんを中心に集まった今回のメンバー。女性の参加者も多くて終始華やかな雰囲気。本日の最終目的であるアフターパーティーに向かってグラベルを駆け抜けた

REBOUND2024バッジ

リバウンドへ参加を申し込むと発行されるデジタルバッジ。こちらの写真はリバウンド阿蘇グラベルライドを主催した、福岡のサイクルショップ「正屋」のオーナー岩崎さんのもの。ライドエリアと距離が刻まれる

 

九州のサイクリング事情に詳しい岩崎さんが、企画の段階で真っ先に思い浮かんだのが阿蘇での開催であったそう。コースは農道、林道、ガレ場や石畳、さらには芝生などバリエーションに富んだグラベルと、阿蘇山を望む壮大な景色を楽しむことができるもので、九州屈指の極上グラベルライド体験ができる。

 

圧巻の景観、壮大な阿蘇グラベル

REBOUND ASO RIDE1

JR豊肥(ほうひ)本線・阿蘇駅に隣接する「道の駅阿蘇」をスタートして、すぐにグラベル区間へ突入。田んぼの間の農道を縫うようにして通過。目線を上に向けると大観峰が拝めた

 

「阿蘇グラベルライド」。なんて良い響きだろう。壮大な阿蘇山を眺めながら、自然豊かな景色の中をさっそうと自転車で駆け抜ける。

リバウンド阿蘇グラベルライドの取材が決まり、その日が来るのを待ち焦がれたのは言うまでもない、きっと他の参加者も一緒の気持ちでいるのだろう。ギリギリ梅雨入り前。天気が良くなることを祈る日が続いた。

いよいよ迎えた6月1日、大分市の自宅を出ると空は晴れ渡り絶好のライド日和。日頃の行いが良かったかと思いつつ、車を走らせていると……おやっ。阿蘇市内に入る頃には一面くもり空、そして少し肌寒い。日頃の行いは良くなかったのか? まあ仕方がない、雨でないだけありがたいと思おう。

ライドの準備をしていると参加者が徐々に集まり、和気あいあいとした空気が広がりはじめた。全員そろったら簡単なブリーフィングの後、念願の阿蘇グラベルライドがいよいよスタート。曇りで眺めがイマイチなのが少し残念だ。

REBOUND ASO RIDE2

太陽の位置が高くなって徐々に気温が高くなり、暑さを感じ始めた矢先に林道へ突入。ひんやりした空気がありがたかったがすぐに上りの区間へ。上り終えた頃には汗だく状態

 

スタート直後、すぐにグラベル区間へ突入。辺りを田んぼに囲まれて牧歌的な雰囲気が広がっていて心地良い。ふっと空を見上げると少しばかり晴天が見えてきた。阿蘇市内は周囲に広がる外輪山の影響で雲海が発生しやすいのだとか(つまり阿蘇市内が雲海の中)。前方におぼろげながら大観峰が確認できた、この調子で雲よ、どいてくれと祈りながらグラベルを突き進む。

林道区間に入ると同時にヒルクライムがスタート。短いけれどパンチのある急坂は上り応え十分、バイクを右へ左へと蛇行させながらはうようにして何とか上り切ったらひとやすみ。

ログを確認してみるとわずか150mほどしか上っていなかったことに驚く。グラベルライドでは得てして数値データに合致しない苦労が発生するものだ。そして、お互いその苦労をねぎらうひとときは、そこにいるもの同士にのみ共感できる経験であり、それこそがグループライドの醍醐味だとも実感する。

REBOUND ASO RIDE3

前日に降った雨の影響で所々に水たまりが出現。サイクルジャージを汚した者勝ちと言わんばかりに深そうなところへ突入! 童心に帰ってバイクとジャージをしっかり汚した

 

快適な下りで林道区間を抜け、再び農道に出ると正面には晴れ渡った青空と、堂々と鎮座する阿蘇山の姿が! やっぱり日頃の行いは良かったんだ。いや、自分ではなくて参加した皆さんの日頃の行いがいいのか。

すっかり最高のライド日和になり、阿蘇の壮大な景観を味わいながら一向は進む。そう、この景色を見たかったんだ。ロードバイクと異なり、ほどほどなスピード感で進むグラベルバイクは、周囲の景色を楽しむのにも向く。「ああ、最高…」。自然とひとり言があふれる。

REBOUND ASO RIDE4

たとえバイクで通過することができなくても担げばOK。バイクに乗車して道を進むことだけがグラベルライドではないことが分かる一枚。冒険的な要素がそこにはある

REBOUND ASO RIDE5

その昔、熊本藩が参勤交代で用いたという熊本市と大分市を結ぶ豊後街道を通過。石畳の区間もあり、当時の主要道路であった名残と、凛とした趣のある雰囲気を味わうことができた

 

道中、かつての参勤交代で使われていた趣のある豊後街道や、九州特有の草原と丘陵が織りなすグラストラックなど多様なグラベルを楽しむことができた。最近、阿蘇で遊ぶのにハマっているという正屋の岩崎さんが選定したルートは、ライダー達を飽きさせる瞬間がない。まさに自転車遊びの達人だなあと、尊敬の念を抱く。

REBOUND ASO RIDE6

田植えが済んだところも多く、緑が広がり目にやさしい。道中、長靴を履いてサッカーボールを持った少年たちと遭遇。田植えの手伝い? それともサッカーをやりに行くのか?

REBOUND ASO RIDE7

前方には阿蘇五岳がくっきり。その山容の集合が涅槃像のように見えると有名。ライド中は“涅槃像”の正面や足元など、通過する先々からいろいろな“寝姿”を拝むことができた

REBOUND ASO RIDE8

阿蘇のライドには、北に大観峰、南を向けば阿蘇山と方角がすぐに分かるランドマークがあるので方向感覚を正常に保ちやすい。何ともぜいたくで壮大な方位指標である

REBOUND ASO RIDE9

阿蘇一帯を見渡せる小高い丘からの爽快ダウンヒル。草むらのふかふかした未舗装路なので、バイクに伝わる衝撃が優しくて何だか不思議と心地良い。今回一番のご褒美区間だった

REBOUND ASO RIDE10

九州を中心に活動するインフルエンサー、ベキさんもリバウンドに参加。九州が誇る阿蘇の壮大なグラベル、そして大いに盛り上がったアフターパーティ(後述)とご満悦の様子だった

REBOUND ASO RIDE11

水たまりを見つけては果敢に突入し、参加者に水しぶき攻撃をお見舞いする“エンターテイナー”岩崎さんのライド後の背中。もはや美しくも見えてくる見事な泥のスプラッシュ模様

 

ゴールが近づくにつれて、もっと自転車に乗っていたいという気持ちや、無事にゴールできる達成感や安堵感、そしてアフターパーティーへの期待など、さまざまな感情が去来した。そして参加した皆さんも、後ほど聞いてみると同様の想いに浸っていたそうだ。

グラベルを通じて想いと体験が共有され、温かくて心地良い空気に包まれながらフィニッシュを迎えることになった。

後日、各国のリバウンドの様子をSNSで見てみた。それぞれがそれぞれのスタイルでグラベルを楽しみ、ミッションの達成に挑んだことがうかがい知れた。大会公式発表によると6大陸でリバウンドが行われ、総合計距離は445万2229マイル(約716万5000km)。目標の1000万マイルには届かなかったが、これはものすごい数字だと思う。自身もその一端を担っていたと思うと何だか少し誇らしく、世界中にいるライダー達と想いをともにしてグラベルライドを満喫していたのだと気がついた。

あの日、阿蘇はもちろん、世界もグラベルで一つになっていたのだった。

 

アフターパーティーは必須!

アフターパーティの様子1

お待ちかねのアフターパーティー、みんなで乾杯したらいよいよスタート。ライドで終盤を迎えて疲労を感じ始めても、アフターパーティーがあるから頑張れたなんていう声も

 

リバウンドはライドの完走だけではクリアにならない。その後のパーティーを楽しんでやっとミッションクリアになる。

「乾杯」の合図でアフターパーティーがスタート。BBQとビールという最強の組み合わせに一同大はしゃぎ。参加者の中には自前のクーラーボックスにぎっしりと缶ビールを詰め込んで来た猛者も。

ライドと同等にパーティーは大事だ。ほど良い疲労感と無事に帰ってきた安堵感でリラックスムードの中、パーティーは盛大に行われたのだった。

アフターパーティの様子2

ライド後の一杯はやはり格別。身に染みるとはまさにこのこと。1本目は一瞬でなくなった。天気も良く、カラッと乾いた気候も相まって空き缶の増えるペースが速い速い

アフターパーティの様子3

阿蘇名物の赤牛や馬肉の串焼きなどバラエティに富んだボリューム満点のBBQに舌鼓。今日のライドを思い返したり、次回のサイクリングの予定を立てたり、自然と話が盛り上がる

※参加者は車で乗り合いで現地へ来ており、運転者は飲酒していません。ノンアルコール飲料で乾杯しました。

 

参加者のスタイルを紹介

 

吉村茂子さん〜ロード用タイヤで全部こなす!

REBOUND参加者の声1

正屋のオリジナルフレーム「レスピラーレ」にGRX Di2(11速)をアッセンブルしたバイクで参加した吉村さん。何とタイヤは25mm幅のロード用で、彼女はこれでロードからグラベルまでこなしてしまうという強者だ。一眼レフを首にかけて、行く先々で撮影も楽しんでいた。

 

まみさん〜ハイスペックバイクにカジュアルなウェアの組み合わせが光る

REBOUND参加者の声2

ふだんからロードもグラベルも満遍なく楽しんでいるまみさんは、夫と一緒に参加。今回のリバウンドも大満足だった様子。最近は汎用性の高さから、ライドをさらに身近な存在にするグラベルバイクに乗る機会が多いのだとか。愛車はトレック・チェックポイントSLで、コンポはシマノ・GRX Di2(11速)。カジュアルなロングスリーブジャージとハーフパンツのスタイルがすてきだ。

 

主催者・岩崎さんの愛車〜自社ハンドメイドバイクに限定仕様のコンポを搭載

リバウンドに参加した正屋代表・岩崎さんのスタイル

カジュアルなサイクリングジャージにハーフパンツのスタイルでまとめる。装備はハンドルバーバッグとボトル1本とシンプル。愛機は正屋オリジナルブランドの「レスピラーレ」で、コンポは限定生産のシルバーカラーとなる機械式11速GRXを搭載。シブい!

 

筆者紹介

金指 明裕

金指 明裕(かねざし あきひろ) 都内でサイクルメッセンジャーを経験した後、刺激を求めて青年海外協力隊に参加してアフリカの地へ。帰国後、自転車業界を経て、現在は大分在住で九州を中心に活動するフリーのライターとして活動中