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泊まりがけで行く!快走ロード旅入門

ロード旅はいつものスタイルにバッグをプラスするだけ!ちょっとした工夫でロード旅は軽快になる
ロード旅心得帳「必要最低限」の基本装備
 
ロード旅はいつものスタイルにバッグをプラスするだけ!
 東京駅から電車で1時間。新幹線に乗るとこんなに遠くまで来られることに今さらながら驚いてしまう。練習などで走っている土地はあっという間に通り過ぎて、車窓には高層ビルや住宅に代わってシンプルな青や緑が広がっていった。いつもとは違う新しい場所に行くというのは、やはり胸が高鳴るものだ。
 輪行袋とヘルメットに、1人は大きめのサドルバッグ、もう1人はフロントバッグを持って、軽井沢駅に降り立つ。最近改修されたばかりでは?と思わせる駅舎に旅情を感じるのは難しいが、まぁいいや。駅前の広場で自転車を組んで、パチン! バッグをロードバイクに装着してペダルを踏んだ。
 石せき尊そん山さんに向かって国道18号線を走り、中軽井沢交差点を右に曲がると上りが始まる。しばらく行くと、高度を上げるにつれ、観光地のにぎやかな雰囲気は薄れていった。
 今回のルートは長いアップダウンがいくつもある1日約80㎞の山岳ライド。「普段は街中心で30㎞くらいしか走らないですね」と話していた大石貴之さんだが、走りには慣れているし、体は僕より締まっている。勾配が急なところでも「キツいっすねぇ!」なんて笑顔で汗している。補給食も水もしっかり持っているし、心配はなさそうだ。

 峰の茶屋で上りはピークを迎える。下りの途中で昼食をとり、さらに深い森の中へと進む。それにしても、空気が気持ちいい。気温は26度Cと程よく、湿度も低い。大量にかいている汗のほとんどは、風がどこかに運んでくれているようだ。県道54号線、浅間山を背負いながらゆっくり上り、榛はる名な山さんを目指して走った。

標高1390mの二度上峠を越えて急な下りを過ぎると、最後の上りの前には、下り基調の平坦路。体力を回復しながらのんびりペダルを回す。ペダルを回す、やっていることはいつもと変わらないのに、気持ちは高揚する。なんとも言葉にしづらい、「なんかいいよね!」で心が満たされている感じ。きっと自転車乗りならみんな知っているこの気持ちのまま最後の上りを存分に味わったのだった。

 2日目の目的地は赤城山。伊香保の温泉で癒やされた体は準備万端。渋川の街を抜け、赤城山の裾野に広がる畑の中の道を進む。遠くに目をやると、榛名の山々が目に映る。道を左に折れると、さて上りだ。
「速く走らなくていいよ」山がそう言ってくれているようで、緑を見ながらのんびりと走り続けた。正直ラクではないけれど、白樺の木々や赤城山頂で見た景色は深く心に刻まれていった。
 印象に残るものといえば、山頂からの景色や湖などがまずあげられるのだけど、自転車で走った景色というのは、どんな小さなものでも記憶に残るものだと思う。たとえばおばあさんが営む商店、たとえば道沿いの寂れた古刹、たとえばコーナーを曲がった先の急な上り。走った先で触れあった人、目にした景色。体験するすべてが新鮮で、そこにいる人たちとしか共有できない思い出になる。1泊2日、自宅からでもいい、輪行でもいい。少し足を延ばせばいつも違う新しい世界が広がっているのだ。
ちょっとした工夫でロード旅は軽快になる
 今回の旅は、今まで慣れ親しんだワンデイ以上に多くの荷物を持たなくてはいけない。とはいえ、ロードバイクの軽快さを損なうような大荷物では楽しくない。そこで、荷物増を最小限にするためにちょっとした工夫をいくつか考えて実践してみた。
 まずはウエア。レーサージャージは吸汗速乾で、コンパクトに収納できるので普段と同様。晩秋になると長ソデジャージやロングパンツなどがおすすめだが、初秋には半ソデ、ショートパンツをベースとして、アームカバー&レッグカバーそしてウインドブレーカーで体温調節すれば快適だった。保温効果も期待できるので、インナーウエアははずせない。
 荷物を携行するバッグは、使用したフロント&リヤバッグが◎。大石さんが使用したリヤバッグ(容量4l)は携帯工具、パンク修理キット、タイヤレバー、携帯ポンプ、ウインドブレーカー、七分丈パンツ、Tシャツ、下着、アーム&レッグカバー、携帯電話に財布を入れればいっぱいになる。
意外と入ることにびっくりだが、場合によっては入らないこともありそうなので、同社から出ている容量の大きい(8l)モデルもいいだろう。フロントバッグは、ハンドリングに影響するのでは?と心配したが、影響は少ない。装着時に違和感があったものの、すぐに慣れて走行にはまったく問題がなかった。その他の工夫は写真のとおり。ロードらしい軽快な走りを楽しむことができた。
今回のコースは山岳メインのため、汗を多くかくことを想定して吸汗速乾性に優れたレーサージャージをチョイス
(左)
ゴールドウインジャージ:レースライド3Dエルゴジャージ(1万4700円)パンツ:レースライドビブショーツ(1万4700円)グローブ:スタンダードハーフグローブ(2940円)
問ゴールドウインカスタマーサービスセンター 薔0120・307・560
トピークサドルバッグ:ダイナパック(7140円)
問マルイ 078・451・2742
(右)
パールイズミジャージ:シームレスジャージ(1万2390円)パンツ:ブライトスパッツ(1万2600円)
問パールイズミ 03・3633・7556
リクセンカウルフロントバッグ:ディパックボックス(1万3650円)
問ピーアールインターナショナル 052・774・8756
荷物を減らすために着替えのジャージ類は持っていきたくない。到着してすぐに持ってきた洗剤で洗えば、翌朝には乾いていた。パンツのパッド部は乾きにくいので、裏返して干すのがいいだろう
宿泊する場合、盗難防止のためにも自転車は安全なところに置きたい。今回は宿を予約するときに事前に置かせてもらえる場所があるか確認した
宿では、浴衣を着用。バッグには宿で着用する下着や翌日使うソックスを入れておいたほうが快適に過ごせる
下りで体が冷えてしまうのを防ぐために、ウインドブレーカーは持参したい。軽量、コンパクトに収納できるのでかさばらない
ウインドブレーカー
ゴールドウイン・ポケッタブルバイクジャケット(1万500円)
問ゴールドウインカスタマーサービスセンター
ガーミン・エッジ705
価格/9万9750円 問いいよねっと049・267・9114
トレーニング機器としても認知されているエッジ705。GPS 機能で現在位置が正確にわかるので、初めての土地でも道を 間違えることなく、旅を楽しむことができる
シマノ・SH-FN23(右)
価格/1万3200円
問シマノセールス自転車お客様相談窓 0570・031961
マヴィック・スイッチバック(左)
価格/1万9950円
問アメアスポーツジャパン03・3527・8718
両モデルともソールにゴムを配しており、難なく歩行できるシューズ。ちょっと立ち寄りなど自転車を降りる機会の増える旅ライドでは重宝した
ゴールドウイン・アームガード&レッグガード
価格/3465円(アームガード)4725円(レッグガード)
問ゴールドウインカスタマーサービスセンター
山岳コースのため、細かな体温設定が必要と考え、長ソ デ、ロングパンツではなく、着脱が容易なアームガード&レッグガードを使用防
携行する荷物が少ないので、輪行もラク。ジャージはサドルバッグに収納して、代わりにTシャツに着替える。7分丈パンツを着用すれば、街に戻っても違和感のないスタイル
パンツ
ゴールドウイン・クールドライ3/4カーゴパンツ(1万500円)問ゴールドウインカスタマーサー ビスセンター

水沼駅温泉センター

〒376-0141群馬県桐生市黒保根町水沼120-1
0277・96・2500営業時間:10時~22時(季節により異なる) 入館料:500円(大人)

今回の旅のゴールはわたらせ渓谷鐵道の 駅「水沼」。温泉施設が併設されているので、 列車に乗る前にさっぱりできて便利。帰りの 電車では、気持ちよく乾杯!もできてしまうのだ
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ロードのフォルムを崩さない“スマート”なバッグを選ぶ
ロードバイク最大の魅力はなんといっても、その風を切るようなフォルムと、そこから生み出されるスピード。1分1秒を削り合うようにして走るレースではなく、自分のペースで楽しみながら旅に出かける場合も、このロードバイクの魅力を崩さないアイテム選び&収納法が重要となってくる。
 ロード旅と自転車のフォルムやスピードは関係ないように思うかもしれないが、それは大きな間違い。張り出しが空気抵抗になるだけでなく、大容量の荷物を収納するため、ペダリングするごとに重心が左右にズレやすくなってしまう。
 スマートなバッグ選びのポイントはバイクとライダーの軸上、そしてライダーに近い位置にアイテムを収納すること。そのためには、横や後方・前方に大きく張り出しやすい大きなキャリアバッグではなく、ライダーの後方にまとまる少し大きめサイズのサドルバッグ(シートポストやサドルレールに装着できる程度の大きさのバッ グ)1つか、ハンドルバーバッグ+小さなサドルバッグを選ぶのがおすすめだ(次ページ「TYPE1」「TYPE2」参照)。
 ロードバイクのフォルムを崩さないことを基準に収納バッグを選ぶことは、そのスマートな見た目を確保するためだけなく、ロードバイクが本来持っている高い走行性能を犠牲にしないことで、より安全&快適に旅を楽しむことが可能となるポイントとなるのだ
軽量&コンパクトは当たり前。使いやすさも考慮して選ぼう
 大きなサドルバッグ1つか、ハンドルバーバッグ+小さなサドルバッグの場合、容量にすると全部で6~9l程度。決して大容量とはいえないこのバッグで旅するには、そこに収納するアイテムを厳選することも重要なポイントとな 大きなサドルバッグ1つか、ハンドルバーバッグ+小さなサドルバッグの場合、容量にすると全部 で6~9l程度。決して大容量とはいえないこのバッグで旅するには、そこに収納するアイテムを厳選することも重要なポイントとなに使える。
 さらに、途中でお土産などを買って帰路は荷物が増えてしまうことも考えて、コンパクトに折り畳めるバックパックなどを携帯しておくのもお薦めだ(84ページ「プラスアルファ収納の快適アイテムバックパックを活用しよう!」参照)。
ロードの“スピード”を生かしてより速く、そしてより遠くへ!
 ロードバイクの魅力はその高い走行性能から生み出されるスピードだが、自転車旅においてもこのスピードがロードバイク最大の武器となる。この場合の武器とは、「他人より速く走ることができる」という意味ではなく、ロードバイクのスピードを生かせば、MTBやミニベロなどよりも、「より遠くへ旅することが可能となる」ということ。さらに、携帯するアイテムをコンパクト&軽量化することで上りのスピードも上がれば、より高い標高のポイントまで走りやすくなり、絶景を楽しむという旅のだいご味も広がっていくだろう。
 自転車旅において、このロードバイクのスピード性能を最大限引き出すためには、軽さや使いやすさを考えた収納バッグ・アイテムのチョイスのほかに、そのアイテムをどのように収納するかも重要になってくる。重量バランス、バッグ内の上下に詰める順番などにも注意して収納しよう(83ページ「パッキングのコツ」参照)。
 また、スピードを考える場合、走行中の速度だけでなく、パンクなどのトラブルが発生してしまったときに素早く対応できることにも気を配っておくことが重要だ。使い勝手がよく、トラブルの再発のしにくさも考慮して、インフレーター(携帯ポンプ)やタイヤレバー、チューブなどを選ぶようにしたい。
 素早く修理を完了できればストレスも少なく、さらに結果として走行スピードの維持↓長距離を安全&快適に走ることができることにつながっていくだろう。
ロード旅心得帳
 
 
「必要最低限」の基本装備
 
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