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【TOJ第5ステージ速報】灼熱の南信州、総合争いでトマ・ルバが抜きん出る

レース

強い日差しが選手たちの体力を奪うなか、抜け出したトマ・ルバが区間勝利

スタートの飯田駅前には多くの観客が選手たちを見送った
スタートの飯田駅前には多くの観客が選手たちを見送った
美しい景色が広がる南信州ステージ。気温が高く、周回を重ねるごとに選手たちの体力を奪っていった
美しい景色が広がる南信州ステージ。気温が高く、周回を重ねるごとに選手たちの体力を奪っていった
序盤は9人の逃げグループが形成されるが、すぐに吸収された
序盤は9人の逃げグループが形成されるが、すぐに吸収された
5月24日(木)、折り返しである第5ステージは、長野県飯田市で行われる123.6kmのレース。例年どおり、飯田駅をスタートし、パレードラン7.3kmをこなした後、1周12.2kmの下久堅周回コースを10周する獲得標高2580mの山岳コースだ。
周回コースを抜け、風光明媚な天竜川にかかる水神橋を渡ってから90度カーブを超え、1kmのストレートが最後の勝負どころだ。近年は逃げがギリギリに吸収され、集団スプリントになる展開が続いている。厳しい山岳を越えた後に最後のスプリントのために脚を残せるかどうかが鍵となる。

スタート地点である飯田駅は、朝から真っ青な空が広がり、スタート時点ですでに強い日差しが降り注いでいた。選手たちが走る沿道には、大人から子供まで多くの観客が詰めかけた。

リアルスタートが切られ、逃げたい選手たちが何度も飛び出すが、なかなか容認されない。2周目に入っても、集団は一つのままであった。

逃げグループができたのは、2周目の下り。9人の逃げには、それぞれのチームのセカンドエースを担うような面子を揃えたため、集団はタイム差をなかなか開かせない。たった2周ちょっとで集団は逃げを吸収してしまった。

7周目に入ると、ダミアン・モニエ(愛三工業レーシングチーム)が単独でアタック。集団とのタイム差は最大で2分ほどまで開いた。

9周目にホルヘ・カミロ・カスティブランコ・クビデス(チーム・イルミネート)とトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)がメイン集団から抜け出す。いいペースでメイン集団との距離を稼いでいき、最終周回の上りでモニエをパスすると、そのままゴールへと突き進む。一方、メイン集団はNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニが2人に追いつこうとペースを上げるが時すでに遅し。スプリント勝負に持ち込むことは叶わなかった。

最終ストレート、仕掛けたルバにカスティブランコはつけず、ルバがジャージのキナンのロゴを強調しながら余裕を持ってゴールラインを切った。

メイン集団がフィニッシュしたのは、1分19秒後。集団の頭をとったグリーンジャージを着るグレガ・ボレ(バーレーン・メリダ)はスプリントポイントは稼ぎ、ポイント賞のブルージャージを手にしたが、グリーンジャージはルバへと明け渡した。山岳賞は、1級山岳ポイントを3位で通過した小石祐馬(チーム右京)が獲得した。

 
逃げグループに入った鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が2回のKOMポイントを1位通過し、14pt獲得。山岳賞争いの3位につけた
逃げグループに入った鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が2回のKOMポイントを1位通過し、14pt獲得。山岳賞争いの3位につけた
7周目にダミアン・モニエが単独で抜け出す
7周目にダミアン・モニエが単独で抜け出す
メイン集団はバーレーン・メリダのコントロール
メイン集団はバーレーン・メリダのコントロール
ジャージのキナンのロゴを強調しながらフィニッシュラインを切るトマ・ルバ
ジャージのキナンのロゴを強調しながらフィニッシュラインを切るトマ・ルバ
メイン集団はグレガ・ボレが先頭でフィニッシュした
メイン集団はグレガ・ボレが先頭でフィニッシュした
ステージ優勝を上げ、グリーンジャージも獲得したトマ・ルバ
ステージ優勝を上げ、グリーンジャージも獲得したトマ・ルバ
グリーンジャージは逃したが、ポイント賞ジャージに袖を通すグレガ・ボレ
グリーンジャージは逃したが、ポイント賞ジャージに袖を通すグレガ・ボレ
山岳賞ジャージは草場啓吾(日本ナショナルチーム)から再び小石の手に渡った
山岳賞ジャージは草場啓吾(日本ナショナルチーム)から再び小石の手に渡った
第5ステージ順位

1位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) 3時間13分35秒
2位 ホルヘ・カミロ・カスティブランコ・クビデス(チーム・イルミネート) +0秒
3位 ディラン・サンダーランド(ベネロング・スイスウェルネス・サイクリング・チーム) +20秒

個人総合時間賞(グリーンジャージ)

1位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) 12時間42分16秒
2位 グレガ・ボレ(バーレーン・メリダ)+1分1秒
3位 マルコ・カノラ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +1分4秒

個人総合ポイント賞(ブルージャージ)

1位 グレガ・ボレ(バーレーン・メリダ) 72pt
2位 マルコ・カノラ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) 70pt
3位 ミッヘル・ライム(イスラエル・サイクリング・アカデミー)  50pt

個人総合山岳賞(レッドジャージ)

1位 小石祐馬(チーム右京) 16pt
2位 草場啓吾(日本ナショナルチーム) 15pt
3位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 14pt

個人総合新人賞(ホワイトジャージ)

1位 サム・クローム(ベネロング・スイスウェルネス・サイクリング・チーム)
2位 ディラン・サンダーランド(ベネロング・スイスウェルネス・サイクリング・チーム)
3位 ベンジャミン・ペリー(イスラエル・サイクリング・アカデミー)

チーム総合順位

1位 キナンサイクリングチーム

区間勝利をあげたトマ・ルバのコメント

グリーンジャージも獲得したトマ・ルバ
グリーンジャージも獲得したトマ・ルバ
ステージ勝利をあげた感想についてルバはこう話した。

「例年どおりですが、とても難しいコースで、今年も非常にハードなステージでした。チームの戦略があったんですが、それがとてもうまくはまって、ステージ優勝することができました。

2012年からTOJに7年間出場していて、トップ10に入ったことはあるのですが、初優勝なんです。とても嬉しいです。」

チームとして、どんな作戦を立てていたのだろうか。

「チームの作戦としては、3人のライダー、マルコス・ガルシア、サルバドール・グアルディオラ、そして僕の誰かが総合でトップに出るというプランでした。総合を狙える位置にいた3人なので、誰かが出られればという狙いでした。最初出たのがサルバでした。その3人の中で誰かが逃げを打って、その一人が追いつかれたら他の二人のどちらかが前に出る、またその一人が捕まったらもう一人が出るとといった戦略を立てていました。それがうまくいきました。」

逃げ切れるなと思ったタイミングについてはこう話した。

「ラスト2周でトップに出てから逃げ切れるという自信が出てきました。ダミアン・モニエが前にいた時は、彼との差が3分以上ついてしまうと難しいだろうとはっきり思っていたんですが、それ以下(のタイム差)で迫っていたので、(カスティブランコと)二人でどうにか追っていこうと話して、実現できました。」

富士山ステージ、総合を守る自信はあるかどうか聞くと、

「正直わかりません。僕は自分としては良いクライマーだと思うのですが、富士山というのはやっぱり特別で、非常に急斜面な上りが続きます。どうなるかはわからないですが、ともかくベストを尽くす限りです。」と答えた。

山岳賞ジャージを奪還した小石のコメント

山岳賞を取り返した小石が会見でコメントする
山岳賞を取り返した小石が会見でコメントする
「今日のステージは山岳賞の配点が多かったので、逃げに乗るのは大事だと思ったんですが、最初から逃げに乗りたいチームが多かったので、昨日のように簡単には行かせてもらえず、2周目に入っても集団一つのままでした。

その後、9人の逃げで、うちのチームからも一人送り込めたので結果としては良かったんですが、僕が山岳賞を取れるかどうかは微妙になってしまって。

2回目のKOMに向けて、集団がペースアップしたので、前が2人だけの状態になって、逆転可能な位置になったので、集団から抜け出して(山岳ポイントを)取ることができたので良かったと思います。」

単騎で逃げたダミアン・モニエのコメント

この後、メイン集団から抜け出したダミアン・モニエ
この後、メイン集団から抜け出したダミアン・モニエ
一人で集団から抜け出したタイミングについて、モニエはこう話した。

「アタックがいっぱいいっぱいあって、いなべ(ステージのとき)と一緒で僕もアタックしたけど、今回は単独でした。集団とのタイム差は1分半くらいだったから一人で逃げようと思いました。逃げ始めた段階での目的はKOM。一人での逃げ切りは難しいと思いました。」

トマ・ルバらが後ろから追いついてきたときに、後ろにつくのは難しかったのか。

「ペースが速くて無理でした。上りでは力が足りなかったです。もし頂上でつかまってたとしたら良かったかもしれないです。上りでは無理。最後、ゴールの残り50mくらいで集団につかまりました。でもトマが勝ったからうれしいです。」
 

NIPPO大門宏監督のコメント

集団で仕事をするNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニのメンバー
集団で仕事をするNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニのメンバー
今日のレースで総合という面では後手に回ってしまったが、NIPPOとしてはどうだったのか。

「今日はマルコがきつそうだったんですよね。最後ちゃんと残ってくれて良かったです。アタックするのはどっちかというとマルコの脚(向け)じゃないんでね。

最後ポイントもとって、スプリントジャージは取り返したいっていうのがあって。ただ今日はスタートからきつかったみたいで、疲労を感じたと言っていました。

今日は予想だにしない人間が遅れてるんじゃないですかね。最後に抜け出した2人は上りのスペシャリストじゃないですか。無理してついていかなくて良かったとは言ってますけど。今日はグレガもきつかったんじゃないですかね。結局誰も動けなかったんでね。最後、NIPPOの人間が前ひいて、ちょっとは詰めましたけど、基本的に総合は明日ですからね。」

最後のNIPPOの集団牽引は、スプリントというよりタイム差を最小限に抑えるためだったのか聞くと、

「いや、やっぱりポイントを意識してたんで。ポイント賞の争いは修善寺とかになってくると思うんですけどね。グレガも明日、どれくらい遅れるかってことしか考えていないと思うので」と答えた。

NIPPOとして富士山ステージはどう捉えているのだろうか。

「中根とか初山とかが得意なんで。中根に期待してます。総合で少しでも上位に入って欲しいと思ってます。」