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1型糖尿病患者の希望となるチームノボノルディスクプロサイクリングチーム 日本人選手田仲駿太(鹿屋体育大)応援プロジェクトもスタート

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ツール・ド・とちぎ開幕前日の3月22日(木)、東京都丸の内のMY PLAZAにてチームノボノルディスクプロサイクリングチームのメディアイベントが行われた。チームノボノルディスクのメンバーは全員が1型糖尿病患者であり、同じ病気を持つ患者の希望となるべく、スポンサーをするノボノルディスクファーマと手を組み、糖尿病克服を目指している。チームノボノルディスクとしての活動紹介や、選手らの体験談について、また新たに日本人である田仲駿太選手(鹿屋体育大)を応援するプロジェクトについても発表された。




text●滝沢 佳奈子
photo●山口顕太

糖尿病とともに生きる人たちを元気づけるチーム

ノボノルディスクファーマのマーケティング本部ジョン・ドーバー本部長が挨拶をする
イギリス・マン島出身のサム・ブランド選手が自身の経験を語る
元選手で現在チームのアンバサダーを務めるジャスティン・モリス氏
第2回ツール・ド・とちぎを前日に控えた3月22日(木)、東京は丸の内にあるMY PLAZAにてUCIプロコンチネンタルチームであるチームノボノルディスクプロサイクリングチームのメディア向けイベントが開催された。

チームノボノルディスクは、ライダー全員が1型糖尿病患者で構成されている世界的に注目が集まるチームだ。2008年にアメリカで設立され、2011年にプロコンチネンタルチームとして登録。多くのワールドツアーなどに出場し、日本では近年ジャパンカップ出場常連チームとしてももうおなじみだろう。

では1型糖尿病とは一体どんな病気なのか。小児期に発症が確認されることが多く、自分の体の中でインスリンを作ることができなくなってしまうという病気だ。多くの原因が生活習慣による2型糖尿病と異なり、先天性でもなければ、必ずしも遺伝で発症するものではないという。現在は、血糖測定・管理を日常的に行いながら、毎日インスリンの自己注射などを続けていくことが主な治療法である。

毎日の血糖値管理、毎日の注射など考えたこともない人たちにとって、そんな人たちがスポーツ選手に?と思ってしまうだろう。ましてやロードレースなんて長ければ7~8時間走りっぱなしだ。しかしチームノボノルディスクのメンバーが実現可能であることを実際に証明している。

チームノボノルディスクのチームカーには専属のドクターが常駐しているという。メンバーはレース中も各自血糖値をモニタリングし、コントロールしていく。先日のミラノ~サンレモを完走したサム・ブランド選手は、

「レースの経験を積んでいくと、血糖値のパターンが分かってくるので、より上手くコントロールできるようになってくる。パーフェクトにはならないけれども、一生懸命やっているうちに自分の境界線や自分がこのゾーンに入っていれば大丈夫だというのが分かるんだ。血糖値を高くするのではなく、一定に保つことが大事」

と話した。

レースを走る上で血糖値以外にどんなことを管理する必要があるのだろうか。チームノボノルディスクの元選手で現在アンバサダーを務めるジャスティン・モリス氏はこう語った。

「レースを走る上で一番トリッキーなことは、食事、天気、高度、自分の気持ち、全てが影響を及ぼすこと。いろんなことが複合的に影響してくる。他のアスリートよりも栄養面は特に気にするね。」

ハンガーノックなどにはよりシビアであるため、より高い自己管理能力が求められる。レース中の補給食についてモリス氏は、

「他の選手よりもカロリーが必要で、もっと量が必要。食べているものは日によるかな。レースの前の日の状況などにもよるし、内容は同じではない。他の選手よりも吟味して管理していかないとならない」

と話した。

血糖値や体調をコントロールする経験は、他のチームメイトに必ずしも当てはまるわけではないそうだ。

「もちろん体調管理の処方箋みたいなものは自分で学んで築き上げていくけど、チームメイトがみんな同じ糖尿病なのでチームの経験が役立つこともあるんだ。このチームにいることで、病気を理解して対応していくペースは、圧倒的に早いと思う。実は自分以外の経験を聞くことが一番情報源になる。薬剤はもちろん必要だけど、それ以外にうまく管理していくためには他の選手の経験が非常に有益な情報になるんだ」

とモリス氏は続けた。

ミラノ~サンレモのような300kmという長距離のレースと100kmもないような短距離のレースで違いはあるのだろうか。

「ルールはシンプルなので、長いからとか短いからとかで特に変わる事はないね。逆に短いレースの方が、よりレースの強度や集中度が高くなるので、コントロールをよりきっちりやらないといけない。長いレースだと、2時間くらいはグッと集中するけど、残りの5時間くらいはそこまでの集中度合ではやらないので、多少の緩みやゆとりがあるね。長い場合と短い場合でそこが違うけども、どうやってコントロールしていくかという点においては長いレースも短いレースも変わらないよ。液体の摂取なんかは特に注意はするけどね」

とブランド選手は答えてくれた。

 

日本人選手のサポートを発表

名門・鹿屋体育大で自転車競技部に所属する予定の田仲駿太選手

今回、チームノボノルディスクがサポートすることを発表した田仲駿太選手は18歳。今年の4月より鹿屋体育大の自転車競技部で活動することになっている。メインはトラックの短距離だ。サポートのきっかけとなったのは、大分で行われたノボノルディスクのサマーキャンプに参加したことだった。来日したモリス氏と一緒に自転車で走ったことが評価され、今回の発表までに至った。

今回のサポートはあくまで個人のサポートであり、チームに所属するわけではない。実際には、海外遠征の渡航費援助や、トップカテゴリーで走るチームノボノルディスクの選手たちの経験をシェアしてもらえる。今までは個人で探り探り血糖値のコントロールをしていたという田仲選手は、

「トップで走っている選手の経験を聞けるのはとても貴重です。大分で行われたサマーキャンプで『全然マイナスに思うことはないよ』と言われ、勇気をもらいました。今度は自分がまわりを勇気付けていきたいですね。

『1型糖尿病だからできないんでしょ』って言われたことはあるけど、できなかったことはほとんどないんです。食事制限と注射でコントロールできる」

と語る。

今、糖尿病をネガティブに思うことはあるか聞くと、「ない」とはっきり答えた。続けて、

「普通の生活はできるし、ここまで病気と付き合ってきて学んできました。まわりでそう思っている人にそうじゃないんだって伝えたいです」

と話した。夢は世界の選手と闘うことだ。

 

チームノボノルディスクに所属する意味

「糖尿病だから」という理由で諦めるべきものは何もない。病気というネガティブな要素を抱えているにもかかわらず、彼らは夢に向かってより前向きで、芯の強さが感じられる。「糖尿病は何かを妨げるものではないということを伝えるために、私たちはどこへ行こうとノボノルディスクのことについて、糖尿病のことについて話すんです」

とモリスは話した。

1型糖尿病は現状で完治する方法は見つかっていない。一生付き合っていく病気だ。モリス氏も幼少の頃に抱いたパイロットになりたいという夢を諦めることになった。しかし、それでも絶望する必要はないのだと気づかせてくれた。モリス氏は自転車と出合い、自転車選手になりたいという新たな夢を叶えることができた。のちに1型糖尿病を患いながらイギリス空軍のパイロットとして活動する人に会い、不可能はないのだと裏付けることもできた。

チームノボノルディスクのミッションは、「糖尿病とともに生きる人々を元気づけ、治療に積極的に取り組み、それぞれの人生の目標に向けて生きていくことを応援すること」だ。大きな夢を持つ糖尿病患者にとって、彼らの活動がどんなに希望の光として輝いて見えるだろうか。

ブランド選手に今後、さらに上のカテゴリーのワールドチームに行きたいという思いはあるのか聞いた。

「私には、一番大きなレースを参戦してみたいという夢がある。チームノボノルディスクは同じゴールを共有していて、チームでいろいろと学びたいことを学ばせてもらっているから、今の自分にとってはパーフェクトなチームなんだ。本当に自分がいたいところにいさせてもらっていると感じるよ。なので、チームノボノルディスクでそういった夢を叶えていくことができれば最高だと思っている。

競技に参加することと同じように、チームノボノルディスクのミッションをものすごく大切であると考えている。糖尿病とともに暮らしている人たちにインパクトを与えることができるこのチームはすばらしいと思うんだ。たとえ100万人に1人でも私たちの闘う姿勢や話によって、『こんな人たちがいるんだ、じゃあ自分も頑張ろう!』と元気付けることができたら、一人の人の人生を変えることができるということだ。こんなにすばらしいことはないよ」。

今後出てみたいレースは?と聞くと、

「テレビで見ていたミラノ~サンレモに出ることは私の夢だったんだ。あとは、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ、5つのモニュメントレースもね! 世界最大のレースは全部出てみたい!」

と笑った。

彼らは多くの人の希望を背負って走っている。一人でも多くの人の人生が明るい未来へと突き進むきっかけとなることを祈るばかりだ。

 
将来について語るブランド選手は3月23日からツール・ド・とちぎの出走メンバーの一人だ
モリス氏(左)とブランド選手(右)がバイクとともに