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ツール・ド・ラヴニール2017はコロンビアのベルナルが総合優勝。日本U23は完全敗北

レース
国別対抗U23版ツール・ド・フランスである「ツール・ド・ラヴニール」第9ステージが2017年8月26日に開催された。

超級のマドレーヌ峠を越え、最後は頂上ゴールとなる最終ステージ。マイヨ・ジョーヌ着用のエガン・ベルナル(コロンビア)による総合優勝はほぼ決まったかに見えるが、総合2位のランブレヒト(ベルギー)、3位のエグ(デンマーク)とのタイム差はそれぞれ1分9秒と1分12秒。ベルギーとデンマークはまだまだ諦めずに攻撃を仕掛けてくるだろう。

日本U23チームの焦点は、現在総合25位に付ける雨澤毅明の総合20位以内へのジャンプアップ。疲労の限界に達し始めた日本U23選手たちだが、最後の力を振り絞って目標達成を目指す。

第9ステージ「ブール-サン-モーリス〜アルビエズ-モンロン」106km

ツール・ド・ラヴニール2017総合1位ベルナル、2位ランブレヒト、3位エグ(photo:Tour de l'Avenir)
ツール・ド・ラヴニール2017総合1位ベルナル、2位ランブレヒト、3位エグ(photo:Tour de l'Avenir)


スタート直後の上りで、チームスカイへの移籍が噂されるロシアのパヴェル・シバコフら2人がアタック。すでに総合成績では6分以上遅れていたシバコフだったが、マイヨ・ジョーヌを擁するコロンビアは大事をとって集団のペースアップを図る。結果、メイン集団はスタートからわずか15km程度で40人ほどに絞られ、日本チームから生き残れたのは雨澤毅明のみ。山本大喜は第2ステージの落車などによる負傷や疲労が限界に達し、無念の途中棄権となる。

最初の1級山岳頂上に向けて容赦なくペースアップを計るコロンビア。凄まじいペースに雨澤毅明はとうとう耐えきれなくなり、頂上1km手前でメイン集団から脱落。そこからはマイヨ・ジョーヌ集団から分裂した集団(逃げ2人を含むと第3集団にあたる)にてゴールを目指すことになる。雨澤にとってはまだゴールまでは1級山岳と2級山岳(ゴール)を含む90kmの距離が残っており、ちょっと気を抜けば一気に総合順位が大幅ダウンとなる苦しい展開。

コロンビアが支配する先頭集団の約20人は、その後も人数を減らしながら2級山岳の頂上ゴールに向かう最後の上りに突入。最終局面では10人弱がステージ優勝を賭けて死闘を繰り広げる。しかしマイヨ・ジョーヌを着るエガン・ベルナルの圧倒的な強さに最後まで立ち向かえたのは、「U23リエージュ・バストーニュ・リエージュ」を制したドイツのビョルグ・ランブレヒトのみ。結局ベルナルが山頂でのマッチスプリントを制してステージ2連勝、総合優勝に向けて王手をかけた。

なお、マイヨ・ジョーヌを着るベルナルのチームスカイ移籍はすでに5月から噂されていたが、レースに帯同していたコロンビアのメディアが第8ステージのゴール地点で「ベルナルのチームスカイへの移籍がこの勝利で確定」との報を発信。まだ正式発表ではないが、勝てばプロに上がれるとされる「ツール・ド・ラブニール」会場ならではの光景だ。

強豪国による戦いの後ろでは、雨澤毅明が総合成績20位以内を目指して、見えないライバル達との競争を繰り広げる。早い段階での先頭集団脱落で大幅な総合順位ダウンの心配もあったが、諦めずに気力で踏み続け、前日までの総合25位をキープしてフィニッシュ。チーム最終目標である総合20位圏内達成への望みを繋いだ。

 
第9ステージで優勝を果たし面目躍如のシバコフ。山岳賞、総合敢闘賞も獲得した(photo:Tour de l'Avenir)
第9ステージで優勝を果たし面目躍如のシバコフ。山岳賞、総合敢闘賞も獲得した(photo:Tour de l'Avenir)
ポイント賞獲得のU23世界王者ハルフォルセン(ノルウェー)(photo:Tour de l'Avenir)
ポイント賞獲得のU23世界王者ハルフォルセン(ノルウェー)(photo:Tour de l'Avenir)

ツール・ド・ラヴニール第9ステージ(ブール-サン-モーリス〜アルビエズ-モンロン 106km、獲得標高3525m)結果
1位:パヴェル・シバコフ SIVAKOV Pavel(ロシア)3時間3分27秒
2位:ニールソン・パウレス POWLESS Neilson(アメリカ)トップから+2分31秒
3位:ディミトリ・ストラコフ STRAKHOV Dmitrii(ロシア)トップから+3分1秒

88位:岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)トップから+26分33秒
100位:岡篤志(宇都宮ブリッツェン)トップから+26分33秒
103位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+26分33秒
104位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップから+26分33秒


<第9ステージまでの最終総合成績>
1位:エガン・ベルナル Egan Arley BERNAL GOMEZ(コロンビア)29時間56分33秒(時速40.946km)
2位:ビョルグ・ランブレヒト Bjorg LAMBRECHT (ベルギー)トップから+1分9秒
3位:ニクラス・エグ EG Niklas(デンマーク)トップから+1分12秒

39位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+40分33秒
77位:岡篤志(宇都宮ブリッツェン)トップから+1時間8分48秒
83位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップから+1時間13分21秒
99位:岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)+1時間22分33秒

・ポイント賞:クリストファー・ハルフォルセン(ノルウェー)
・山岳賞:パヴェル・シバコフ(ロシア)
・チーム総合:オーストラリア
・総合敢闘賞:パヴェル・シバコフ(ロシア)

*フルリザルトへのリンク:
https://www.tourdelavenir.com/wp-content/uploads/2001/04/Stage-9-Final.pdf


エガン・ベルナル (コロンビア)総合優勝、第7&8ステージ優勝。第9ステージポディウム上で来季チームスカイへの移籍が決まったことを発表。
『過去のツール・ド・ラヴニールの勝者を見てると偉大な選手ばかりで、この中に自分の名前が入るなんて信じられないくらい光栄だ。来季はチームスカイへ移籍することになったが、今からクリス・フルームの近くで走れることを楽しみにしているよ。恐らく一年目はジロ・デ・イタリアでの新人賞ジャージ獲得を目標に走ることになるよ』

ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー)総合2位(+1分9秒差)
『予想通りエガン・ベルナルは最強だった。ステージスタート時は、なんか脚が重くて心配していたんだ。正直なところ、総合2位を守る事さえも危ういと思っていた。でも走るごとに調子が上がってきて、最後の上りではベルナルは2、3名のチームメイトを揃えていたので、アタックを仕掛ける事は出来なかったね。ベルナルは何度もスピードを上げ、集団を絞りにかかったんだ。自分的にはその揺さぶりに生き残ることができて満足。僕らの世代にとっての試金石的な大会で、ポディウムに立つことができて非常に満足している。』

 
マドレーヌ峠で雨澤の遅れを最小限にすべく集団牽引をする日本U23(photo:CyclismeJapon)
マドレーヌ峠で雨澤の遅れを最小限にすべく集団牽引をする日本U23(photo:CyclismeJapon)
マドレーヌ峠に向かう日本U23を含む集団(photo:CyclismeJapon)
マドレーヌ峠に向かう日本U23を含む集団(photo:CyclismeJapon)


・雨澤毅明(U23日本ナショナル/宇都宮ブリッツェン)
第9ステージ103位/総合39位(+40分33秒)
「このツール・ド・ラヴニールがU23世界最高峰レースだと言うことを再認識、痛感しましたね。ここで活躍した選手がワールドツアーでそのまま活躍できるんだということが身に染みてわかった戦いでした。自分としては今の力を思う存分出し切ったんですが、思っていたよりは走れなかったというのが率直な感想。これが自分の実力なんだな、という事がわかった。また世界の壁に阻まれた感じです。完敗です。もうちょっとなんか出来たんじゃないの?と自問もしています。悔しさで一杯です。

山岳3連戦の初日ではエガン・ベルナルからのタイム差も2分37秒。叩きのめされた程ではなく、戦えるぞ!と思った。しかしその後の山岳2ステージでは完膚無きまでにやられた。力も経験も体調管理も気持ちも全部の全部が足りていない。あまりにも世界との差があるという事を痛感したので、もっとしっかり考えてやっていかないと行けない。コテンパンにやられたレース直後なのですぐに先のことは考えられないんですが、今後どうしていくか?は早急に考えなければいけませんね。

シンプルにいえばUCIワールドツアーやプロコンチネンタルチームとの契約が取れないのであれば、選手を続けていくつもりはない。今年がU23の最終年だったので、プロ契約をわかりやすく獲得できるチャンスであったツール・ド・ラヴニールにはもう出れない。よって、今後プロコンチネンタルチーム以上に上がるにはUCIの1クラス以上での勝利を地道に集めていくしかないのは重々承知しています。

それを目指すには日本のチームに居ては終わりですね。絶対に海外のチームに行かないと始まらない。トレーニングや人生プランをどう構築していけばよいか?全てを見直さないといかなければならない時です。今回、明日からでもワールドツアーで活躍できそうな選手らと走ってみた感触では、今の自分の実力はプロコンチネンタルチームからギリギリ声が掛かるか掛からないかの境界線。もっともっともっと強くならないと何も始まらないです。ここで成績を出した選手が翌年UCIワールドツアーで戦える、っていう話に心から納得しました。悔しい。もう悔しさしか無い。」

・岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
第9ステージ100位/総合77位(+1時間8分48秒)
「初めの目標は前半6ステージで見せ場を作り、ステージで一桁台の結果を出すことでしたが、最高で16位。非常に悔いが残る結果でした。最後の山岳3ステージは雨澤選手が本当に頑張ってくれていて、自分の力不足でアシストが思う存分できない場面があったのが反省点です。U23は今年が最後で、ツール・ド・ラヴニールで走ることはもう出来ませんが、今シーズンの残りレースに焦点を合わせてコンディションを整えて行きたい。」

・石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence)
第9ステージ104位/総合83位(+1時間13分21秒)
『U23の昨年1年目に引き続き、今年も出していただきましたが、まだまだ世界トップのU23選手との差は大きく、レースで出来る事が非常に少なかった。来年は雨澤さんもU23を卒業するので、これからは自分がU23の先頭に立って総合を狙えるリーダーにならないといけないを思っています。』

・岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)
第9ステージ88位/総合99位(+1時間22分33秒)
「この先選手を続けていくにあたっては、もっと力がないと話にならないことを痛感した。ここに来なければいつまでも気が付かなかったかもしれません。あと単純に僕は国際レースの経験が少ないので、海外選手とやり合う集団内での位置取りや、ボトル運びのスムーズさ、峠の後の下りスキル等で大きく遅れを取っていることがわかった。それこそチームメイトを不安がらせてしまう程のレベルでもあったので、要改善です。」

・山本大喜(鹿屋体育大学)
第8ステージでリタイア。
「初めの6ステージは逃げに乗ることを考えて走りました。ちょっとは逃げには乗れましたが、勝負を賭けた逃げには乗ることが出来なかった。後半の山岳3ステージも雨澤さんのアシストが出来ればよかったんですが、もう自分のコンディション的には完走できるかどうか?の瀬戸際まで追い込まれていたので、力不足を痛感しました。来年はこのレースでエースになれるように力を付けていきたいです。」

・小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
第4ステージで落車リタイア。
「リタイアする形でU23最後のツール・ド・ラヴニールを終えてしまったので、心残りしか無い。やはり技術が足りなかったのが落車の根本的な原因だと思うし、出場した昨年からの強化が足りなかったのだなと思う。途中でレースを去ってしまい、チームのみんなに協力できずに申し訳なかったですが、僕には次のツール・ド・ラヴニールはもうないので、新たな目標に向かって前向きに頑張りたいと思います。」

 
ゴール直後にうなだれる雨澤(photo:CyclismeJapon)
ゴール直後にうなだれる雨澤(photo:CyclismeJapon)
ゴール直後の日本U23の選手たち(photo:CyclismeJapon)
ゴール直後の日本U23の選手たち(photo:CyclismeJapon)


U23日本ナショナルチーム浅田顕監督のコメント
「最終ステージは標高約2000mの超級マドレーヌ峠を越え、さらに1級山岳にゴールする締めくくりのステージ。レースは総合優勝候補にも挙げられながら難関第8ステージで遅れを取った2名の逃げ切りリベンジでステージを飾った。総合リーダーであるコロンビアのベルナルは強力な登坂力と慎重なレース運びでリーダーを守り総合優勝に輝いた。

日本チームは雨澤の総合成績アップを目標に臨んだが、第8ステージから疲労から体調を落としつつあった雨澤は序盤からのペースアップに苦しめられ、他のチームメンバーと共に完走目標の集団でゴールする結果となった。今日の結果で雨澤の個人総合成績は昨日の25位から39位と大きく後退し、目標成績を残すことが出来なかった。厳しい全9ステージを終えて、昨年からの向上はあるものの、U23世界最高峰のステージレースで残した成績が、同カテゴリーにて世界での日本の評価であり、日本レベルの現状そのものであることに正面から向き合い、引き続き強化活動を続けて行きたい。」


第54回ツール・ド・ラヴニール
Le Tour de l'Avenir(未来のツール)
https://www.tourdelavenir.com/
-カテゴリー:UCI Europe Tour (2.Ncup)
-期間:2017年8月18日(金)-27日(日)
-距離:全9ステージ=総走行距離1,201km、総獲得標高=16,673m

-U23日本ナショナルチームメンバー(監督:浅田顕)
雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
石上優大(EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)
岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
山本大喜(鹿屋体育大学)

-出場国(各チーム6名、24チーム=計144人):
ドイツ/オーストラリア/オーストリア/ローヌアルプ・オーヴェルニュ地方選抜(開催国特別枠)/ベラルーシ/ベルギー/ブルターニュ地方選抜(開催国特別枠)/コロンビア/デンマーク/アメリカ合衆国/イギリス/アイルランド/イタリア/日本/ルクセンブルグ/モロッコ/ノルウェイ/オランダ/ポーランド/ポルトガル/チェコ/ロシア/スイス

U23日本ナショナルチーム 全ステージの概要
http://www.cyclisme-japon.net/modules/race/details.php?bid=819
 

レース動画(U23ジャパンナショナルチーム撮影)

・「ツール・ド・ラヴニール2017」第9ステージ マドレーヌ峠を越える日本U23を含む集団:
https://youtu.be/5bjLT0mFON4

・「ツール・ド・ラヴニール2017」第9ステージ メインから遅れた集団のペースを上げる日本U23:
https://youtu.be/_RsY0LTp6l8



 
アンドローニ・ジョカトーリ代表ジャンニ・サヴィオ氏。ベルナルのチームスカイ移籍について「まだ若い選手なので肉体的な成長を待ちながら大事に扱って欲しいとお願いした」photo:CyclismeJapon
アンドローニ・ジョカトーリ代表ジャンニ・サヴィオ氏。ベルナルのチームスカイ移籍について「まだ若い選手なので肉体的な成長を待ちながら大事に扱って欲しいとお願いした」photo:CyclismeJapon
クイックステップフロアーズのスカウト担当ホセアン・フェルナンデス・マチン氏。「コミュニケーション能力があれば、日本人が海外チームへ移籍するチャンスが増えると思う」photo:CyclismeJapon
クイックステップフロアーズのスカウト担当ホセアン・フェルナンデス・マチン氏。「コミュニケーション能力があれば、日本人が海外チームへ移籍するチャンスが増えると思う」photo:CyclismeJapon