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ツール・ド・ラヴニール第8ステージでベルナルが2連勝! 雨澤は修羅場を生き残り総合20位以内を目指す

レース
国別対抗U23版ツール・ド・フランスである「ツール・ド・ラヴニール」第8ステージが2017年8月25日に開催された。

スタート直後から1600mも上り、120kmの距離でじつに4000m以上の獲得標高となる本レース最難関ステージ。昨日の山岳ステージ初日で優勝し、マイヨ・ジョーヌも獲得したエガン・ベルナルを擁するコロンビアは、総合2位以下の総合成績ライバルたちを確実に「叩きのめす」ために、容赦ない総攻撃を仕掛けてくることが予想される。

マイヨ・ジョーヌから2分37秒差で総合25位につける雨澤毅明は、コロンビアによる攻撃を耐えしのぎ、総合20位以内へとジャンプアップすることが出来るのか?
 

第8ステージ「アルベールヴィル〜サント-フォワ・タランテーズ」 120.5km

ステージ2連勝のエガン・ベルナル(photo:Le Tour del'Avenir)
ステージ2連勝のエガン・ベルナル(photo:Le Tour del'Avenir)


スタート直後の上りで、チームスカイへの移籍が噂されるロシアのパヴェル・シバコフら2人がアタック。すでに総合成績では6分以上遅れていたシバコフだったが、マイヨ・ジョーヌを擁するコロンビアは大事をとって集団のペースアップを図る。結果、メイン集団はスタートからわずか15km程度で40人ほどに絞られ、日本チームから生き残れたのは雨澤毅明のみ。山本大喜は第2ステージの落車などによる負傷や疲労が限界に達し、無念の途中棄権となる。

最初の1級山岳頂上に向けて容赦なくペースアップを計るコロンビア。凄まじいペースに雨澤毅明はとうとう耐えきれなくなり、頂上1km手前でメイン集団から脱落。そこからはマイヨ・ジョーヌ集団から分裂した集団(逃げ2人を含むと第3集団にあたる)にてゴールを目指すことになる。雨澤にとってはまだゴールまでは1級山岳と2級山岳(ゴール)を含む90kmの距離が残っており、ちょっと気を抜けば一気に総合順位が大幅ダウンとなる苦しい展開。

コロンビアが支配する先頭集団の約20人は、その後も人数を減らしながら2級山岳の頂上ゴールに向かう最後の上りに突入。最終局面では10人弱がステージ優勝を賭けて死闘を繰り広げる。しかしマイヨ・ジョーヌを着るエガン・ベルナルの圧倒的な強さに最後まで立ち向かえたのは、「U23リエージュ・バストーニュ・リエージュ」を制したドイツのビョルグ・ランブレヒトのみ。結局ベルナルが山頂でのマッチスプリントを制してステージ2連勝、総合優勝に向けて王手をかけた。

なお、マイヨ・ジョーヌを着るベルナルのチームスカイ移籍はすでに5月から噂されていたが、レースに帯同していたコロンビアのメディアが第8ステージのゴール地点で「ベルナルのチームスカイへの移籍がこの勝利で確定」との報を発信。まだ正式発表ではないが、勝てばプロに上がれるとされる「ツール・ド・ラブニール」会場ならではの光景だ。

強豪国による戦いの後ろでは、雨澤毅明が総合成績20位以内を目指して、見えないライバル達との競争を繰り広げる。早い段階での先頭集団脱落で大幅な総合順位ダウンの心配もあったが、諦めずに気力で踏み続け、前日までの総合25位をキープしてフィニッシュ。チーム最終目標である総合20位圏内達成への望みを繋いだ。

 
日本U23の総合リーダーを務める雨澤がアップする(photo:CyclismeJapon)
日本U23の総合リーダーを務める雨澤がアップする(photo:CyclismeJapon)
最難関ステージを前にアップする日本U23(photo:CyclismeJapon)
最難関ステージを前にアップする日本U23(photo:CyclismeJapon)

ツール・ド・ラヴニール第8ステージ(アルベールヴィル〜サント-フォワ・タランテーズ 120.5km、獲得標高4421m)結果
1位:エガン・ベルナル Egan Arley BERNAL GOMEZ(コロンビア)3時間51分18秒(平均時速31.258km)
2位:ビョルグ・ランブレヒト Bjorg LAMBRECHT (ベルギー)トップと同タイム
3位:ニクラス・エグ EG Niklas(デンマーク)トップから+3秒

30位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+14分24秒
80位:岡篤志(宇都宮ブリッツェン)トップから+33分42秒
102位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップから+34分49秒
111位:岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)トップから+42分45秒
DNF:山本大喜(鹿屋体育大学)
(本ステージでのリタイア選手=22名)

<第8ステージまでの総合成績>
1位:エガン・ベルナル Egan Arley BERNAL GOMEZ(コロンビア)26時間50分5秒(時速41.663km)
2位:ビョルグ・ランブレヒト Bjorg LAMBRECHT (ベルギー)トップから+1分9秒
3位:ニクラス・エグ EG Niklas(デンマーク)トップから+1分12秒

25位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+17分1秒
76位:岡篤志(宇都宮ブリッツェン)トップから+45分9秒
85位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップから+49分49秒
101位:岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)トップから+59分1秒

*フルリザルトへのリンク:
https://www.tourdelavenir.com/wp-content/uploads/2000/04/Stage-8.pdf


・ビョルグ・ランブレヒト (ベルギー)のコメント
第8ステージ2位/総合2位(+1分9秒)
「最後はスプリントを早く仕掛けすぎた。また2位だよ・・もう20回ぐらい2位になっているかもしれない・・ストレスが溜まるよ。でも良かった事と言えば、今日のレース中に調子が上がってきたことかな。第1ステージからあまり調子が良くなかったんだよ。脚の感触は徐々に良くなっているね。でも結果を見る限り、まだ十分調子が良いとは言えないよね。また明日も勝負を仕掛けるよ。エガン・ベルナルの強さが際立っているので、勝つのは難しいかもしれないが、挑んでいくよ。」

・パヴェル・シバコフ(ロシア)のコメント:
第8ステージ35位/総合34位(+23分20秒差)
「レースの初めに集団を分解させたかったので、2人での逃げを打ったんだ。コロンビア人達の戦術はよく分からなかった。彼らは僕を行かせたくなかったようだね。メイン集団とのタイム差は最大で1分10秒しか開かなかった。メイン集団からは何人かで集団を牽引して追い詰めてきたので、逃げる事ができなかったね。今シーズンのコンディションのピークはすでに終わってしまったようだ。今日は一日中苦しんだ。スタートから全開で入ったんだ。今考えるとバカげたことをしてしまったけど、何かしら挑戦してみたかったんだよ。でも、脚の調子は昨日よりも良かったので、もうちょっとレースが進んでからアタックしたほうがいい結果に繋がったかもしれない。いずれにせよ、今シーズンは好成績を残せてきたので、成功と言えるよ。今の目標はツール・ド・ラヴニールで完走をすることだね」

 
総合20位以内への目標達成に望みを繋いだ雨澤がゴール(photo:CyclismeJapon)
総合20位以内への目標達成に望みを繋いだ雨澤がゴール(photo:CyclismeJapon)
補給をする市川メカ(photo CyclismeJapon)
補給をする市川メカ(photo CyclismeJapon)


・雨澤毅明(U23日本ナショナル/宇都宮ブリッツェン)のコメント:
第8ステージ30位/総合25位(+17分1秒)
「最初の山岳でロシアのシバコフがアタックし、マイヨ・ジョーヌを擁するコロンビアがメイン集団をハイペースで牽引したんです。非常に苦しめられてどうしても耐えきれず、とうとう頂上1km手前で千切れてしまった。本当に、本当に苦しくて、人生で一番きつい思いをした瞬間でした。若干諦め気味になった瞬間もあり、完走さえも出来ないんじゃないか!?と一時は思ってしまったんですが、気持ちを奮い立たせて弱い気持ちを吹っ切りました。

幸い、自分が居た集団の選手たちの士気は高く、先頭集団とのタイム差を最小限に抑えようと協力してペースを作っていました。先頭から千切れてきたシバコフや、オーストラリアのロバート・スタナードが非常にいいペースで走っていたので、ゴールに向けてむしろペースを上げることが出来ました。最後の上りで浅田監督より「このまま行けば、目標である総合20位以内でゴール出来るぞ!」と聞いて、さらに力が湧きましたね。

それにしても先頭で僕より15分程度前でゴールしている集団の強さは圧巻です。すぐにでもグランツアーで走れるレベルですよ。彼らの次元にはまだまだ距離がありますが、追いつくようにレベルアップを目指します。」

 
ASOのテクニカル・ディレクター(コース設定の最高責任者)をリタイアしたジャン・フランソワ・ペシュー氏が実地監修「厳しいコースでプロの舞台を経験してほしい」(photo:CyclismeJapon)
ASOのテクニカル・ディレクター(コース設定の最高責任者)をリタイアしたジャン・フランソワ・ペシュー氏が実地監修「厳しいコースでプロの舞台を経験してほしい」(photo:CyclismeJapon)
メディア責任者は、フランスを代表するスポーツ新聞「レキップ紙」に35年間務めたフィリップ・ブヴェ氏。「今の日本には若者への組織的なサポートが絶対に必要」と語る(photo:CyclismeJapon)
メディア責任者は、フランスを代表するスポーツ新聞「レキップ紙」に35年間務めたフィリップ・ブヴェ氏。「今の日本には若者への組織的なサポートが絶対に必要」と語る(photo:CyclismeJapon)


U23日本ナショナルチーム浅田顕監督のコメント
「第8ステージは1級山岳2つを越え2級山岳にゴールする最難関ステージ。日本チームは雨澤の個人総合順位の上昇を狙いスタートを切った。レースは序盤からの有力な少人数アタックに対しコロンビアがハイペースでコントロールし早々と脱落者が続出する。最初の一級山岳では先頭は吸収され50人以上がメイン集団で越える形となるが、チームからは雨澤のみがここに残る。次の1級山岳に差し掛かる前の上りでさらにハイペースは続き、雨澤は20人ほどのグループで遅れてしまう。しかし2つ目の1級山岳では先頭のハイペースな展開で先頭から脱落する選手を次々と吸収し順位を上げていく。最後のゴールの上りでもグループから少し飛び出した形でゴールするが、優勝者との差は大きく14分差の30位でのゴールとなった。

総合順位では昨日までの上位者の多数の脱落があったため25位と同位に留まった。岡、石上、岡本は最初の1級山岳で遅れ、各完走グループでのゴールとなった。優勝は昨日に続きコロンビアのエガン・ベルナルで、チー力も個人力も他を圧倒した。山本は序盤から不調を訴え、途中リタイアとなった。明日は締めくくりの最終ステージ。雨澤の個人総合を目標の20位以内に上げるために戦い方を練ってスタートする。」


第54回ツール・ド・ラヴニール
Le Tour de l'Avenir(未来のツール)
https://www.tourdelavenir.com/
-カテゴリー:UCI Europe Tour (2.Ncup)
-期間:2017年8月18日(金)-27日(日)
-距離:全9ステージ=総走行距離1,201km、総獲得標高=16,673m

-U23日本ナショナルチームメンバー(監督:浅田顕)
雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
石上優大(EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)
岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
山本大喜(鹿屋体育大学)

-出場国(各チーム6名、24チーム=計144人):
ドイツ/オーストラリア/オーストリア/ローヌアルプ・オーヴェルニュ地方選抜(開催国特別枠)/ベラルーシ/ベルギー/ブルターニュ地方選抜(開催国特別枠)/コロンビア/デンマーク/アメリカ合衆国/イギリス/アイルランド/イタリア/日本/ルクセンブルグ/モロッコ/ノルウェイ/オランダ/ポーランド/ポルトガル/チェコ/ロシア/スイス

U23日本ナショナルチーム 全ステージの概要
http://www.cyclisme-japon.net/modules/race/details.php?bid=819
 

レース動画(U23ジャパンナショナルチーム撮影)

・「ツール・ド・ラヴニール2017」第8ステージ 上りでのコロンビアによる攻撃で集団が粉砕:
https://youtu.be/lzQ5ldQDAZc

・「ツール・ド・ラヴニール2017」第8ステージ 雨澤を含む集団の下り&フランス人選手のパンクをサポート
https://youtu.be/sfAzePrUZos