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ツール・ド・ラヴニール第6ステージはクイックステップ研修生が優勝。日本U23は総合上位を賭けて最終決戦のアルプスへ

レース
国別対抗U23版ツール・ド・フランスである「ツール・ド・ラヴニール」第6ステージが2017年8月23日に開催された。

最終アルプス3連戦を前にした最後のスプリンター向きステージ。2013年のツール・ド・フランスで、マーク・カヴェンデュッシュがスプリントを制した時と同じゴール地点が使われるため、スプリンター達にとっては象徴的な舞台だ。翌日は休息日ということもあり、非常に激しい展開が予想される。

とくに風が激しい区間ということもあり、横風を利用した「集団分断攻撃」を得意とするオランダ、ベルギー、北欧の大柄な選手が幅を利かせることになるだろう。小柄な選手が多い日本チームにとっては最も苦手とするタイプのステージ。この宿題を克服しないと世界では通用しない。
 

第6ステージ「モンリシャール〜サンタマン-モンロン」139.1km

僅差でスプリントを制したコロンビアのアルヴァロ・ホセ・ホデグ・チャグィ(photo:Le tour de l'avenir)
僅差でスプリントを制したコロンビアのアルヴァロ・ホセ・ホデグ・チャグィ(photo:Le tour de l'avenir)


最終アルプス3連戦前のスプリンター&パンチャーが勝利を狙える最後のステージ。スタート直後から、最後の勝利チャンスをものにしたいイタリアのフランチェスコ・ロマーノとアイルランドのマイケル・オローリンがスタートアタックを敢行。

集団の安定化を望むメイン集団はこの逃げを容認し、この逃げに3分25秒の猶予を与えつつも、ゴールスプリントまでにじわりじわりと捕らえにかかる。一見、「逃げvsスプリンターチーム」という定石通りのステージ展開になるかに見えたものの、大柄な選手を揃えるデンマーク、ノルウェイ、オランダが、横風区間と狭い道幅を利用して弱い選手らを削りにかかり、集団内は度々パニックに。小柄な日本選手にとっては、アルプスで総合順位争いを戦う権利獲得のための、生き残りを賭けた展開となる。

そんななか、全日本選手権での鎖骨骨折からの復帰間もない岡篤志が、パンクののちチームカーに激突して落車。不幸中の幸いとしては、治療をした鎖骨には影響がなかった事だろう。その後かろうじて集団復帰を果たした。

ゴールまで残り3km。スプリンターを擁する強豪チームがコントロールするメイン集団は、ゴール2km前に差し掛かるもまだスタートアタックをした2人を捕まえられず、タイム差は25秒。2人はゴール1km手前でも15秒差で抵抗し、逃げ切りもありえるかと思えたのもつかの間、スプリントのための“お見合い”でスピードを緩めたために、ゴールまで残す所500mほどで吸収された。

ギリギリ逃げ吸収に間に合ったメイン集団での混戦のスプリントは、すでにUCIワールドチームである「クイックステップフロアーズ」に研修生として所属するコロンビア人スプリンター、ホデグ・チャグィが僅差で制する。逃げ続けたロマーノとオローリンが吸収後にも関わらずスプリントに参加し、7位と9位に入っている点も圧巻だ。

日本U23の5人はメイン集団でタイム差無しゴール。現時点での総合上位は山で活躍しないであろうスプリンターらが占めているが、総合成績を狙う選手ら90名が位置する「事実上の総合成績先頭集団」(マイヨジョーヌから3分49秒遅れ)に岡篤志、岡本隼、雨澤毅明が入っており、25日から始まるアルプス3連戦での総合成績争いに期待がかかる。

 
歓声を浴びる雨澤毅明(photo:CyclismeJapon)
歓声を浴びる雨澤毅明(photo:CyclismeJapon)
ボトルを運ぶ石上優大(photo:CyclismeJapon)
ボトルを運ぶ石上優大(photo:CyclismeJapon)

ツール・ド・ラヴニール第6ステージ(モンリシャール〜サンタマン-モンロン」139 .1km、獲得標高1129m)結果
1位:アルヴァロ・ホセ・ホデグ・チャグィ HODEG CHAGUI Alvaro Jose(コロンビア)3時間0分46秒
2位:アラン・バナツェク BANASZEK Alan(ポーランド)トップと同タイム
3位:コンラッド・ゲスナー GEßNER Konrad(ドイツ)トップと同タイム

34位:山本大喜(鹿屋体育大学)トップと同タイム
53位:岡篤志(宇都宮ブリッツェン)トップと同タイム
82位:岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)トップと同タイム
110位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップと同タイム
118位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+3分49秒

<第6ステージまでの総合成績>
1位;パトリック・ギャンパー(オーストリア)19時間40分36秒 (平均時速44,635 km/h))
2位:イリヤ・ヴォルカウ VOLKAU Ilya(ベラルーシ)トップから+1分23秒
3位:キャスパー・アスグリーン(デンマーク)トップから+3分45秒

31位:岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)トップから+3分49秒
46位:岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)トップから+3分49秒
92位:雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)トップから+3分49秒
113位:石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) トップから+7分22秒
129位:山本大喜(鹿屋体育大学)トップから+20分25秒

*フルリザルトへのリンク:
https://www.tourdelavenir.com/wp-content/uploads/1997/04/Stage-6.pdf


・ステージ1位:アルヴァロ・ホセ・ホデグ・チャグィ(コロンビア)のコメント:
「チームメイト達は僕がスプリントしやすい位置に連れて行くために、最終局面の複雑なコースレイアウトで素晴らしい働きをしてくれた。ゴール3km手前地点で10-12番手。スプリンターの僕にとっては、平坦ステージが終わる今日が最後のステージ優勝チャンスだったし,ここまで2度も2位になっているからどうしても勝ちたかった。家族とチームメイトには本当に感謝している。この勝利は彼らのものだ。ゴール地点でガッツポーズをしなかったのは、僅差のスプリントだったので自分では勝利の確信がなかったからなんだ。(今後はコロンビアの強豪スプリンター、フェルナンド・ガビラと比べられる事になるね?との質問に)いやいや、フェルナンドとはまだまだ次元が違うよ!彼とは親友だけど、次元が違う選手だよ。彼はジロ・デ・イタリアで4勝したんだよ。いつか彼のレベルになれるように頑張りたいね」

・パトリック・ギャンパー(オーストリア)第5ステージの大逃げでマイヨジョーヌを獲得し、今日もキープ:
「逃げにチームメイトが2人いたので休むことができた。レース終盤は横風が凄まじかったね。デンマークとノルウェーがその区間で横風を利用して集団を壊そうとしていた。昨日よりもスプリントする脚が残っていたんだけど、ゴール数キロ手前からの複雑なコースレイアウトが頭に入っていなかったので、しっかりスプリントに挑めなかった。でもマイヨジョーヌをキープできてよかったよ。25日からのアルプス最終3ステージは、ここまでの平坦気味ステージとは全く別のレースになるだろうね。僕はクライマーじゃないから今日が最後のマイヨジョーヌ着用日になるだろう。オーストリアとしては、クライマーであるベンジャミン・クルキックとマルクス・フライベルガーにトップ10入りの勝負を託すことになる」

 
出走サインボードにサインする山本大喜(photo:CyclismeJapon)
出走サインボードにサインする山本大喜(photo:CyclismeJapon)
スタート地点のU23ジャパンナショナルチーム(photo:CyclismeJapon)
スタート地点のU23ジャパンナショナルチーム(photo:CyclismeJapon)


■U23ジャパンナショナルチーム選手ピックアップ!:
自転車選手ブログ界の総合リーダー 岡 篤志(日本U23/宇都宮ブリッツェン)

6月の全日本日本選手権での落車で鎖骨を折り、その後の夏のレースは終わったか!?に見えた岡篤志。1カ月半後に迫った「ツール・ド・ラヴニール」への出場も正直難しいかと思われたが、落車1週間後のコメントは「鎖骨折れちゃいましたけど、ラヴニールの遠征が楽しみです」というものだった。

そして無事、ラヴニールの日本U23メンバーとしてフランスにいる。数年前に欧州でこてんぱんにやられ、一時期は引退も考えたようだが、心身ともに復活&グレードアップし、宇都宮ブリッツェンの主力選手にまで上りつめた岡選手。

「洋菓子系がとても好きなんでフランスのパティスリーにあるお菓子に目移りしますね、自分で作るのも好きです。この遠征が終わったら、ご褒美に食べたいところ(笑)」と、明らかにメンタルが数年前から格段に図太くなっている。

そんな岡篤志を語る上で外せないのは、シャイな佇まいとは裏腹に軽妙なタッチで饒舌に語るブログ(http://blitzen.txt-nifty.com/oka/ )だ。
「日常の事はブリッツェンサポーターの方へ、レースの事は自分のメモ書きのような気持ちも含めて書いてます。他の選手のブログをそこまでチェックしているわけではありませんが、チームメイトのブログは見てますね。山本元喜選手や吉田隼人選手のブログなどわかりやすく書かれていて面白いと思います。」

感性豊かな人柄が滲み出ている岡選手のブログには、なんと今大会の速報も掲載されている。

 
レース後、選手にボトルを渡す穴田悠吾マッサー(photo:CyclismeJapon)
レース後、選手にボトルを渡す穴田悠吾マッサー(photo:CyclismeJapon)
イギリスナショナルチーム監督 キース・ランバート氏が視察に訪れた(photo:cyclismejapon)
イギリスナショナルチーム監督 キース・ランバート氏が視察に訪れた(photo:cyclismejapon)


U23日本ナショナルチーム浅田顕監督のコメント
前半の6つのスピードステージを終えての感想
「ここには世界のトップが集まっている。U23のトップというよりこれから世界をリードする連中が確実に集まっていると感じる。スプリンターは驚異的な爆発力と粘りがあり、逃げる選手は狂っている。ここでのステージ1勝をどんなに望んでいるのか良くわかる。他のネイションズカップともプロのレースとは性質が違い、各チームの動きは組織的だが選手の可能性を殺さない。だから何があるかわからない。シナリオはあるが決め台詞は心の底からの叫びのようなアドリブだ。そんな日本選手を輩出したい。いよいよ試される山岳ステージが始まる。日本の位置と将来を占う大切なステージになりそうだ。」


第54回ツール・ド・ラヴニール
Le Tour de l'Avenir(未来のツール)
https://www.tourdelavenir.com/
-カテゴリー:UCI Europe Tour (2.Ncup)
-期間:2017年8月18日(金)-27日(日)
-距離:全9ステージ=総走行距離1,201km、総獲得標高=16,673m

-U23日本ナショナルチームメンバー(監督:浅田顕)
雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
石上優大(EQADS/Amical Vélo Club Aix en Provence)
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン)
岡本 隼(日本大学/愛三工業レーシング)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
山本大喜(鹿屋体育大学)

-出場国(各チーム6名、24チーム=計144人):
ドイツ/オーストラリア/オーストリア/ローヌアルプ・オーヴェルニュ地方選抜(開催国特別枠)/ベラルーシ/ベルギー/ブルターニュ地方選抜(開催国特別枠)/コロンビア/デンマーク/アメリカ合衆国/イギリス/アイルランド/イタリア/日本/ルクセンブルグ/モロッコ/ノルウェイ/オランダ/ポーランド/ポルトガル/チェコ/ロシア/スイス

U23日本ナショナルチーム 全ステージの概要
http://www.cyclisme-japon.net/modules/race/details.php?bid=819