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ピレネー初日のツール・ド・フランス第12ステージはバルデが区間優勝、イタリアチャンピオンのアルーが総合首位!

レース
photo : Luca Bettini/BettiniPhoto©2017
photo : Luca Bettini/BettiniPhoto©2017

第104回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月13日にポーからペラギュード山頂までの214.5kmで第12ステージを競い、最後は総合を争う選手が顔を揃えた10人でのゴール勝負になり、地元フランスのロマン・バルデ(アージェードゥゼール・ラモンディアル)が区間優勝した。

2位にはコロンビアのリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)、3位にはイタリアチャンピオンのファビオ・アルー(アスタナプロチーム)が2秒遅れで入り、ボーナスタイムを獲得した。

マイヨ・ジョーヌのクリストファー・フルーム(チームスカイ)は、ゴールの急峻な上り坂でアルーとバルデのアタックについて行けず、まさかのブレーキがかかり、22秒遅れでゴール。スタート時点で総合2位のアルーとのタイム差は18秒だったため、ピレネー初日で総合首位の座を明け渡さなくてはならなくなった。

26歳のアルーは、2度目のツール出場で初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通した。しかし、フルームとのタイム差はたった6秒だ。
 

 

12人に逃げ集団が先行

MAP : ASO
MAP : ASO
第12ステージは雨天の中を179選手が出走。前日の落車で負傷したデンマークのヤコブ・フルサング(アスタナプロチーム)は、ゴール後の精密検査で左手舟状骨と橈骨に小さな骨折が見つかったが、レースを続けることにした。

スタートからアタックと吸収が繰り返された後、15km地点で12人が逃げ出すことに成功し、18km地点で集団に1分半のタイム差を付けた。この12人には、マイヨ・ベールを着たマルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)とライバルのマイケル・マシューズ(チームサンウェブ)が加わっていた。

80km地点で逃げとの差が5分を越え、集団はチームスカイが引き始めた。94km地点の中間スプリント地点はマシューズが先頭で通過して20ポイントを獲得。キッテルは2位通過で17ポイントだった。集団はここで5分45秒遅れだった。

レース中盤、111.5km地点のコル・デ・アレス峠(カテゴリー2)の山頂はトーマス・ドヘント(ロット・スーダル)が先頭で通過。2位はマシューズだった。キッテルはまだ逃げ集団に加わっていた。ゴールまで残り84kmで、12人は集団に6分20秒差を付けていた。

カテゴリー1のコル・ド・マンテ峠が始まると、マイヨ・ベールのキッテルは逃げ集団から脱落したが、マシューズはまだ加わっていた。彼は山頂を1位で通過して山岳賞総合2位のドヘントにポイントを与えず、マイヨ・アポワを着ているチームメートのワレン・バルギル(チームサンウェブ)をアシストしていた。

つづくカテゴリー超級のポルト・ド・バレス峠のふもとで、11人の逃げ集団と集団のタイム差はちょうど4分だった。ポルト・ド・バレス峠が始まるとマシューズが脱落し、先頭は10人になった。


霧に覆われたポルト・ド・バレス峠で、逃げ集団は次第に小さくなっていった。山頂まで残り5.5kmでドヘントがアタックし、英国のスティーブン・カミングス(チームディメンションデータ)が合流して先頭は2人になった。そして山頂まで残り3kmでドヘントがついて行けなくなり、カミングスの一人旅が始まった。

集団ではバルギルが攻撃の口火を切り、アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)もアタックを試みたが、チームスカイ列車がそれを許さなかった。ここでマイヨ・ジョーヌ集団は25人に減っていた。

ゴールまで残り20kmのポルト・ド・バレス峠山頂はカミングスが単独で通過。集団は1分40秒後方だった。カミングスは峠をフルスピードで下りきり、残り12kmでカテゴリー1のペイルスールド峠を上り始めた時にはマイヨ・ジョーヌ集団との差を2分にまで広げていた。

ペイルスールド峠の登坂でチームスカイの3人のアシストが引くマイヨ・ジョーヌ集団からは、ナイロ・キンタナ(モビスターチーム)が早々に脱落。マイヨ・アポワのバルギルも残り11kmを切ってついて行けなくなった。

ゴールまで残り9.3kmで、先頭を引き続けていた元世界チャンピオンのミハウ・クフィアトコフスキー(チームスカイ)が仕事を終えて後退したが、フルームにはまだミケル・ニエベとミケル・ランダのスペイン列車が残っていた。その時点でカミングスのアドバンテージは1分を切っていた。

ニエベが引くマイヨ・ジョーヌ集団はゴールまで残り8.6kmでカミングスを追い抜き、先頭になった。カミングスはツールで3年連続の区間優勝を逃してしまったが、敢闘賞を獲得した。

マイヨ・ジョーヌ集団はすでに11人に減っていて、キンタナは1分以上後方を単独で走っていた。そしてペイルスールド峠の山頂まで300メートルでコンタドールも遅れ始め、残り5kmの山頂は10人が先頭で通過した。
 
 

激坂ゴールでマイヨ・ジョーヌのフルームが失速!

ゴールまで残り2.4kmで、この日最後の難関だったペラギュードの登坂がはじまった時、先頭はまだニエベが引いていた。しかし彼もここで仕事を終え、最後はランダが先頭に立ち、マイヨ・ジョーヌを引き続けた。

ランダの後ろでフルームはライバルのアタックを警戒して何度も後方を振り返っていたが、フラム・ルージュを通過しても誰も飛び出す選手はいなかった。そこから最初にアタックしたのはニュージーランドのジョーシ・ベネット(チームロットNL・ユンボ)だったが、残り500メートルでランダの引くマイヨ・ジョーヌ集団に捕まった。

最後は残り300メートルでイタリアチャンピオンのアルーがアタック。しかし、残り100メートルでバルデに追い抜かれてしまった。バルデは16%の勾配を物ともせずに駆け上がり、右腕を突き上げてフィニッシュラインを通過した。

フルームはこの攻防に加われず、後方で苦しんでいたが、その傍らにランダの姿はなかった。彼はフルームを置き去りにして飛び出し、バルデよりも5秒遅れの区間4位でゴールし、レース後は様々な噂の的になってしまった。

区間2勝目は逃したものの、アルーはこの日区間3位で4秒のボーナスタイムを獲得。フルームは20秒遅れてゴールしたため、前日まで18秒遅れだったアルーは6秒差で総合首位に立つことが出来た。

区間2位に入ったウランは6秒のボーナスタイムを獲得。本来であれば総合成績はアルーよりも35秒遅れになるはずだったのだが、彼はゴール手前10kmから禁止されていたボトルの補給を受けたため、20秒のペナルティタイムを食らってしまった。

しかし、ゴール後、キャノンデール・ドラパックのマネージャー、ジョナサン・ボーターズはツイッター上で「バルデも同じことをした。彼も同じペナルティが必要だ」と、告発した。

第12ステージでは補給の違反でベネットとセルジュ・パウエルス(チームディメンションデータ)も20秒のペナルティを受けたのだが、ベネットと同じタイミングで観客からボトルを受け取る姿が中継に映っていたバルデには、何のお咎めもなかったのだ。



■ツールで3年連続区間優勝を果たしたバルデのコメント
「日曜日は区間優勝を逃してすごくがっかりした。でも今日は大きな幸せを感じている。(5月に)両親と一緒にここに来ていて、僕はここの新しい道路を最初に走ったサイクリストだった。今日は長い1日だったから、ゴールではメンタルが重要だった。

今シーズンの初めから狙っていた区間優勝を得られたから、これで総合成績に集中できる。過去の経験を踏まえて、去年よりも早く表彰台圏内に到達したいと思っていた。それが自分のサイクリングをより良くしていく方法なんだ」

■26歳で初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通したアルーのコメント
「3位より上にはなれず、フィニッシュラインを通過して後ろを振り返り、フルームがちょっと後ろにいるのを見た。すぐに計算して、マイヨ・ジョーヌが自分のものだと思い、それが確定したときには、ものすごい感動だった。すごく満足している。

明日のことなんて考えたくないよ。コースを見たときから、それがとても危険なステージだと知ってるからね。以前のステージレースから、短い区間でも深刻なダメージを受けることがあるのはわかっている。ケガをしてはいるが、チームメートたちはマイヨ・ジョーヌを守るために僕のそばにいるだろう。僕は明日のステージをこの数日間と同じ冷静さを持ってスタートするだろう。パリはちょっと近づいたね」

■ピレネー初日でマイヨ・ジョーヌを失ったフルームのコメント
「とてもとても難しいゴールだった。最後に僕は脚がなかった。でも、残りはまだ長い道のりだ。今はただ、素晴らしい区間で優勝したバルデと、マイヨを取ったアルーにおめでとうと言いたい。言い訳はしないよ。ただ、最後に脚がなかった。パリまでの道のりはすごい戦いになるだろう」
 
 


■第12ステージ結果[7月13日/ポー〜ペラギュード/214.5km]
1 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)5時間49分38秒
2 リゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック/コロンビア)+2秒
3 ファビオ・アルー(アスタナプロチーム/イタリア)+2秒
4 ミケル・ランダ(チームスカイ/スペイン)+5秒
5 ルイ・メインティス(UAE・チームエミレーツ/南アフリカ)+7秒
6 ダニエル・マーティン(クイックステップフロアーズ/アイルランド)+13秒
7 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)+22秒
8 ジョーシ・ベネット(チームロットNL・ユンボ/ニュージーランド)+27秒
9 サイモン・イエーツ(オリカ・スコット/英国)+27秒
10 ミケル・ニエベ(チームスカイ/スペイン)+1分28秒
11 ナイロ・キンタナ(モビスターチーム/コロンビア)+2分04秒
12 ワレン・バルギル(チームサンウェブ/フランス)+2分08秒
14 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード/スペイン)+2分15秒
128 新城幸也(バーレーン・メリダ/日本)+27分20秒
■第12ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1 ファビオ・アルー(アスタナプロチーム/イタリア)52時間51分49秒
2 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)+6秒
3 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+25秒
4 リゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック/コロンビア)+55秒
5 ダニエル・マーティン(クイックステップフロアーズ/アイルランド)+1分41秒
6 サイモン・イエーツ(オリカ・スコット/英国)+2分13秒
7 ミケル・ランダ(チームスカイ/スペイン)+2分55秒
8 ナイロ・キンタナ(モビスターチーム/コロンビア)+4分01秒
9 ジョーシ・ベネット(チームロットNL・ユンボ/ニュージーランド)+4分24秒
10 ルイ・メインティス(UAE・チームエミレーツ/南アフリカ)+4分51秒
11 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード/スペイン)+7分14秒 
117 新城幸也(バーレーン・メリダ/日本)+1時間40分18秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):マルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ/ドイツ)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ワレン・バルギル(チームサンウェブ/フランス)
■新人賞(マイヨ・ブラン):サイモン・イエーツ(オリカ・スコット/英国)
■チーム成績:チームスカイ(英国)
■敢闘賞:スティーブン・カミングス(チームディメンションデータ/英国)
(http://www.letour.fr/le-tour/2017/us/)
 
 

革命記念日は注目のステージ

MAP : GEOATRAS / ASO
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MAP : ASO
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革命記念日の7月14日は、今年のツールで最も注目されているステージだ。ピレネー2日目の第13ステージは、サン・ジロンをスタートしてフォワにゴールする、たった101kmの区間だが、その距離の中でカテゴリー1の峠を3カ所越えなければならない。

とくに3カ所目のミュール・ド・ペグエール峠は、その名の通り壁(ミュール)のように反り返った峠だ。全長は9.3kmで、平均勾配は7.9%だが、山頂までの4kmが18%、16%という厳しい登坂になっている。

革命記念日を祝うために、区間優勝はフランス勢が狙ってくるはずだが、第13ステージは1分以内に4選手がひしめくマイヨ・ジョーヌ争いも激しい闘いになるにちがいない。
 
 

第12ステージのハイライト映像


Summary - Stage 12 - Tour de France 2017 投稿者 tourdefrance_en