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クイーンステージとなったツール・ド・とちぎ第2ステージも逃げ集団形成からの勝利!

レース
スタート地点にて繰り上げも含めた各賞ジャージがそろう(photo:TdT2017)
スタート地点にて繰り上げも含めた各賞ジャージがそろう(photo:TdT2017)
4月1日(土)、雪が降るという予報もあったツール・ド・とちぎの第2ステージ。今日は茂木町にあるグリーンパークもてぎをスタートし、那須烏山市、那珂川町、大田原市、那須塩原市を経由して那須町の道の駅那須高原友愛の森のゴールする102.3kmのコースが設定された。雪こそ降らないものの、スタート地点の気温は6度ほどとかなり肌寒いなかで77人の選手たちが各自ウォーマーなどを身につけてスタートしていった。

text:滝沢 佳奈子 photo:Hideaki TAKAGI、TdT2017、滝沢 佳奈子
 

スタート直後にいきなり勝負どころが現れる

パレード区間が終わり、約8km地点からの道幅の狭いワインディングが続く最初の上りで、集団はいきなりバラバラになってしまう。先頭ではキナンサイクリングチームが組織だってペースを上げ、集団の人数を30人ほどまでに絞り込んでいく。「今日は距離も短いですし、最初の上りがきついのもわかっていたし最初から速くなると予想していました。最初30人になった時も(キナンから)5人入れていたし、最初の上りで攻めるというのは予定通りでした。」とキナンの石田哲也監督が話す。

集団がバラバラになった状態で、下ってからさらにアタック合戦が始まる。前方30人ほどに絞られた集団に位置していた宇都宮ブリッツェンの鈴木譲は、「(集団が)細切れのままアタック合戦始まったんで、力ある選手が前に行く展開だったんですけど、まとまるかなと思って川沿いの平地に出たら(リーダージャージを持つチーム)右京がまとまらなくて後ろで止まったんです。前に何人か動いていて自分もホセ(・ヴィセンテ・トリビオ、マトリックスパワータグ)とかと一緒に抜け出して一気に平地ローテーションして逃げが決まりました。」と逃げが形成された様子を振り返る。

アタックによって10人ほどの逃げができかけたところで、明治大学体育会自転車部の野本空もブリッジをかけていく。「集団にいてもどっちみち何もできないんで行くだけ行ってみようかなって思って。10人くらいがアタックして、集団はもう前を追わないっていう状態になっていたので、僕一人だけブリッジかけて、大学生なのでノーマークなんでそのまま前に上がれたっていう感じでしたね。」こうして初日と同じく有力選手ばかり集まる13人の逃げが容認された。
 
一つ目のスプリントポイントはベンジャミン・ヒルがトップ通過でボーナスタイムも稼ぐ(photo:TdT2017)
一つ目のスプリントポイントはベンジャミン・ヒルがトップ通過でボーナスタイムも稼ぐ(photo:TdT2017)
逃げに入ったのは、ブリッツェン、ブリヂストンアンカーサイクリングチーム、キナン、マトリックス、明治大学、アタッキ・チーム・グスト、トレンガヌ・サイクリング・チーム。総合リーダージャージを持つチーム右京からメンバーを送れていないままタイムギャップは1分前後で推移する。一つ目のスプリントポイントは、13人の逃げ集団の中で前日も逃げに乗ったベンジャミン・ヒル(アタッキ・チーム・グスト)がトップ通過。

一方、メイン集団では右京やアンカーが主に集団のコントロールを始めた。アンカーは逃げ集団に大久保陣と石橋学を送り込めたものの、総合で上位にいる鈴木龍や西薗良太をメイン集団に残したままであったため、第1ステージのように逃げ切りが決まってしまうと総合上位から転落してしまう。「前半、最初の小さい上りで龍がパンクして遅れちゃって、あれでもう彼自身今日丸一日棒に振ったような感じになってしまったんです。彼がパンクしなかったら前(の逃げ)に乗って良太プラス龍をエースで展開できたんですけど。そこで(逃げに)乗らなきゃいけない良太も動いたんですけど、ダミアンも龍も後ろにいたから不利な展開になってしまったんでしょうね。」と水谷壮宏監督が振り返る。
 
メイン集団をチーム右京とブリヂストンアンカーがコントロールする(photo:Hideaki TAKAGI)
メイン集団をチーム右京とブリヂストンアンカーがコントロールする(photo:Hideaki TAKAGI)
山岳ポイントでトレンガヌのバトムンフが抜け出そうとする(photo:Hideaki TAKAGI)
山岳ポイントでトレンガヌのバトムンフが抜け出そうとする(photo:Hideaki TAKAGI)
そのままタイム差も1分前後から変わらないまま第2ステージ唯一の山岳ポイントへ逃げ集団が入る。ヒルとジャイ・クロフォード(キナン)が先頭で山岳ポイント獲得に向けて争う横をマラル=エルデネ・バトムンフ(トレンガヌ・サイクリング・チーム)がすり抜けていく。しかし、ヒルがそこから追いかけ、バトムンフを抑えてトップ通過する。

かたやメイン集団、残り30kmを過ぎてもタイム差は変わらず、第1ステージ同様の逃げ切りが濃厚となってくる。「総合上位にいた右京とBS(アンカー)がローテーション回ってたんですけど、前の方が強くて、ラスト25kmくらいで放棄したんですよね。そしたらオリヴァーズ・リアル・フード・レーシングが引きだして、一気に詰まりました。」メイン集団でゴールスプリントを狙っていたマトリックスの吉田隼人がその時の様子を語る。しかしそれでも終盤に向け、脚のそろった逃げ集団も加速する。

トレンガヌのモンゴル人、バトムンフがスプリントを制する

スプリントを制したバトムンフが右手を突き上げる
スプリントを制したバトムンフが右手を突き上げる
第2ステージの表彰式
第2ステージの表彰式
最後のコーナーを曲がり、ラスト2kmでもメイン集団とは1分差。逃げ切りが確定する。ラスト2kmのプロフィールとしては、橋を上ったあと、緩やかな下りを経て平坦、その後アップダウンを一つこなしてからラスト300mで上り返してゴールだ。逃げ集団の中で3人いるキナンが活発にアタックを繰り出す。

「僕らはスプリンターがいないので、スプリント(勝負)にしたくなくてなるべくきつい展開にしたかった。(山本)元喜はもともとラスト5kmから動くと 言っていました。それでジャイがなるべく有利になるように動ければいいかなというところでの動きでした。」とキナンの石田監督はみる。

逃げ集団の中で唯一の大学生、野本はプロの闘いを目の当たりにする。「ツキイチでもきつかったです。どんどん踏まれるんで。最後上りの斜度が上がってきたら 勝負しようかなと思ってたんですけど、途中平坦でどうしても速いんでそこで脚削れちゃって最後闘えなかったのがすごく残念です」。続けてキナンの山本など がアタックをするが他のチームに阻止される。ヒルとティモシー・ガイの2人を乗せていたアタッキ・チーム・グストが先頭でぐんぐん加速する。

「ラストの直線では僕のチームメイト(ガイ)が前を走っていて、他の選手のアタックを阻止していました。残り250mになったところで自分が仕掛けたんですが、今考えると仕掛けるのが早すぎたかと思います。最後の50mで疲れてしまって、残り20mのところでバトムンフに追い抜かれてしまいました。」とヒルが振り返る。ステージ優勝狙いのマレーシアのチームであるトレンガヌのモンゴル人、バトムンフがそのままスプリント勝負を制し、またしても逃げ切り勝利となった。 優勝したバトムンフは、「今日1位になれたことはすごく嬉しいです。本当に今日はスピードレースだった。」と語った。
 

いよいよ最終日を迎える

初開催のツール・ド・とちぎも明日で最後のステージを迎える。総合では1分以上の差をあけられてしまったアンカーの水谷監督は、「毎日上位の選手が入れ替わってますし、展開によってがらりと変わるレースですから。明日は最後なので今日以上に攻めて、総合逆転優勝とかそのくらいの感じで走りたいですね。みんな考えてること同じですし、そこで自分たちがどう動いていくかですね。」と明日に向けて意欲を見せた。

トップと12秒差の2位につけているクロフォード擁するキナンは、「ベンジャミン・ヒルが強いんで、どこから崩していくかっていうのをこれから考えたいなと。前ばかり見てると、後ろ2人も(タイム差が)近いんで、気をつけながら4人の中でちょっとでも順位あげたいなと思います。」と石田監督。

18秒差の総合3位につける地元ブリッツェンの鈴木譲は、「2日連続結構ハードな展開で、多分周りも疲れてると思うんですけど、明日は割と平地が長いのでゴールスプリントになる展開かなと思います。(岡)篤志が1分くらい遅れてますけどいい位置につけているので、自分は待機でゴールスプリントにしようかなと。ゴールスプリントだったら秒差稼いで(順位を)上げられたらいいかなと。他にスプリントある選手そんなにいないんで、そこにかけるしかない。多分自分は逃げられないんで。チーム的にも悪くはないですね。」と総合優勝への望みを語った。

総合リーダージャージを手にしたヒルは、「実は昨日と今日はステージ優勝を目指していたんですが、2日間ともうまくいかなかった。明日は最後の日で、リーダージャージも手にしているのでステージ優勝を狙うというよりもこのリーダージャージを守るということに切り替えていきたいと思います。」と少し余裕を持った表情を見せた。
 

宇都宮へフィニッシュ

第3ステージは矢板市役所を10時10分にスタートし、宇都宮クリテリウムの会場としてもお馴染みの清原中央公園にゴールする103.5kmの コース。明日もFRESH!でのライブ配信が予定されているため、会場に行けない人も現地の盛り上がりを是非味わってほしい。初代チャンピオンの座が決定 する瞬間を見逃すな!


・第2ステージ順位
1位 マラル=エルデネ・バトムンフ (トレンガヌ・サイクリング・チーム ) 2時間23分43秒
2位 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 同タイム
3位 ジャイ・クロフォード (キナンサイクリングチーム ) 同タイム
4位 アイラン・フェルナンデス・カサソラ (マトリックス パワータグ ) 同タイム
5位 大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) 同タイム

・総合順位(第2ステージ終了時点。ボーナスタイム含む)
1位 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 4時間39分32秒
2位 ジャイ・クロフォード (キナンサイクリングチーム ) +12秒
3位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン ) +18秒
4位 ホセ・ヴィセンテ・トリビ オ・アルコレア (マトリックス パワータグ ) +19秒
5位 サルバドール・グアルディオ ラ・トーラ (チーム右京) +1分10秒

・山岳賞(第2ステージ終了時点)
サルバドール・グアルディオ ラ・トーラ (チーム右京) 10pt

・ポイント賞(第2ステージ終了時点)
ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 51pt

・U23順位(第2ステージ終了時点)
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン )

・チーム総合(第2ステージ終了時点)
キナンサイクリングチーム